34. 研究コミュニティ形成のための資源連携技術に関する
研究「RENKEIプロジェクト」
REsources liNKage for E-scIence RENKEI
- これまで国内では、スパコンの計算能力向上に多くの労力が割かれてきました。もちろん、それはそれで大事な ことであり、本学でも現在 TSUBAME の後継機となる「TSUBAME2」の開発に取り組んでいます。しかし、いく ら計算だけが速くても、それだけでは充分とは言えません。e- サイエンスの進化を促すためには、大量のデータを
「蓄積できる」「高速に読み書きできる」「処理できる」「転送できる」データ基盤が存在するということも同じくら い重要なのです。
ペタ~エクサスケールデータグリッド + スパコンで 実現されるデータサイエンスにより開拓される分野
「RENKEI POP」はその中でどのような役割を担っているのですか。
滝澤氏:RENKEI POP は、RENKEI プロジェクトの 5 つのサブテーマの一つ「実 証評価・ユーザー連携」として実施しているもので、拠点間の高速データ転送をサ ポートするアプライアンスの研究開発を行っています。これを利用すれば、各大学や 研究機関のスパコンに存在する大容量の研究データを、他の拠点でも簡単に利用 することができます。現在は東工大に 2 台、阪大、名大、筑波大、NII、KEK、産業 技術総研にそれぞれ 1 台ずつ RENKEI POP のノードを配備しており、相互にデー タの参照や転送が行えるようになっています。開発にあたっては「globus toolkit」や
「Gfarm」などのソフトウェア資産を活用しているほか、拠点間を結ぶネットワークとし て SINET3 の L3VPN を利用しています。10Gbps の帯域を活用できるため、8GB
のデータでも約15 秒で転送できます。現状、拠点内の通信ボトルネックの存在や、ホスト毎のTCP通信チューニン グが完全でないため、フルに活用できていませんが、各拠点管理者と協力して性能向上に努めています。
RENKEI-POP が作る将来の E-Science インフラ - RENKEI クラウド
それは速いですね。今後 SINET の高速化が進めば、データをさらに短時間で転送できるようになるのですか。
佐藤氏:基本的にはそうなのですが、その際には現在の RENKEI POP の仕様のま まというわけにはいきません。というのも、今まではネットワーク帯域がボトルネック になっていたところが、今度はRENKEI POP側のI/O 性能が問題になってくるんで すね。ちなみに現在の RENKEI POP の仕様は、CPU が Core i7 975 Extreme、メ モリ 12GB、10GbE NIC、データ記憶用ストレージ 30TB と、ハイエンド PC に大容 量のストレージを加えたようなデザインになっています。帯域が 10Gbps ならこの仕 様で問題ないのですが、さらに高速になってくるとこのままでは少々厳しい。
RENKEI POP をうまく動作させるためには、ネットワーク帯域や I/O 性能などの要 素がすべてバランスされている必要がありますので、帯域が 40Gbps にアップしたら 40Gbps 向け、100Gbps にアップしたら 100Gbps 向けに、新たに仕様を作り直すこと になります。
RENKEI POP の仕様策定
各分野の研究者にとっても、こうした環境が実現するのは朗報ですね。
松岡氏:そうですね。大容量データを利用する研究はいろいろありますが、今まではそれをネットワークで転送す ることは非常に困難でした。たとえ 10Gbps の回線を使っていても、実際のスループットはそれにはほど遠いため、
磁気テープやディスクを物理的に輸送せざるを得ませんでした。しかし、RENKEI POP を利用すれば、収集した データを他大学の高性能スパコンで解析するといったことも容易に行えます。我々としても、早期の実用化を目指 して研究開発を進めていきたいと考えています。
最後に SINET への期待と今後の研究に掛ける抱負を伺えますか。
松岡氏:まず SINET に対しては、ネットワーク以外のサービスの拡充を期待しています。回線サービスについては 歴史も古く、RENKEI POPでも役立ってくれています。しかし、今後のサイエンスにおいては、全国的な共通データ 基盤を整備していくことが極めて重要です。我々も各大学の情報センターと連携して基盤整備を進めていますが、
その取り組みにも是非協力して頂きたい。
また、今後の研究という意味では、グランドチャレンジ的な研究に携わる人材の育成に力を入れていきたいです ね。学生にもよく「生活臭の強い研究は止めよう !」と言っているのですが(笑)、Web やケータイを使ったサービス などは民間企業に任せておけばいい。せっかく大学で研究しているのですから、我々はいろいろなサイエンスのグ ランドチャレンジを支援していくべきと考えています。また、そのことが、情報系のグランドチャレンジにもつながる と考えています。
ありがとうございました。