さらに今回、第 2 期システムとなる新遠隔講義システムの運用を開始されました。その狙いについて伺えますか。
櫻田氏:まず従来システムの課題の一つに、プレゼンテーション資料などのコンテン ツ映像が画面上で見にくいという点がありました。こちらはフレームレートが秒間 5 コマだったため、動画映像などの動きのあるコンテンツがスムーズに再生できなかっ たのです。主映像と副映像を切り替える仕組みなども用意してはいましたが、操作が 面倒であまり利用されませんでした。
また、もう一つの課題は、PC やスマートフォン(スマホ)、タブレットといったモバイ ル端末への対応です。従来型の TV 会議システムだと、こうしたデバイスでの利用に は、別途ライセンスが必要になってしまう点が大きなネックになっていました。しかし、遠隔講義システムの利用が 広がる中で、海外留学生の面接に使いたい、教室内での講義だけでなく農場などでのフィールドワークでも使い たいといった具合に、モバイル利用に対するユーザーニーズもどんどん広がっています。そこで今回の更新では、こ れらの課題を解消して、さらなる利便性向上を図ることを目指しました。
具体的にはどのような改善を加えられたのですか。
櫻田氏:前者については、フレームレートの向上を図ると同時に、HD からフル HD 対応へと映像品質を高めま した。これにより、細かい文字や動きのあるコンテンツなども以前より見やすくなっています。講義では資料にアン ダーラインを引いたり、カーソルで特定の場所をポイントしたりする場合もありますので、こうしたものが画面上で もきちんと見えるというのは非常に重要です。また、遠隔講義では、遠隔側の学生からの質問なども活発に行われ ますので、音声のクリアさも重視しましたね。
あと後者については、モバイルデバイス対応の新たなシステムを導入。学生が PC やスマホを利用して講義に参 加できるのはもちろんのこと、先生が出張先などから講義を行うこともできるようになりました。これも特殊な撮 影機材などは一切不要で、手持ちのスマホやノートPC 内蔵のWebカメラ等で映像配信が行えます。もし音声が入 りにくい場合には、部屋の電話などを併用することもできます。また、この仕組みを利用する際の操作についても、
予約システムのチェックボックスを入れるだけですから、IT にあまり詳しくない先生でも手軽に使えます。
システム構成図(2016 年システム)
外からスマホで講義まで行えてしまうというのは凄いですね。そのほかにシステム的な変更点などはありますか。
萩原氏:従来は遠隔講義用の管理サーバ群を本学の学内に置いていましたが、電源や空調、BCP などの問題が あったため、今回から大学間協力協定による BCP 対応設備「多摩 ICT 拠点」にシステム一式を移設しています。
これにより、万一本学が大規模自然災害などの被害を受けた際にも、遠隔講義を継続して実施できるようになり ました。ちなみに、この設備は電気通信大学内に設置されていますが、先方の環境と本遠隔講義システムとはセグ メントを分ける形で運用しています。近年では大学間連携の重要性も一段と高まっていますので、そのモデルケー スの一つとも言えるのではないでしょうか。
各大学間を結ぶネットワークについては、引き続き SINET を利用されています。その利点についてはいか がでしょうか。
櫻田氏:こうした大学間をまたぐ取り組みを行う上で、SINET のような学術ネットワークの存在は大きいですね。
企業などの場合だと、ネットワークの端から端まで自分で考えなくてはなりません。その点、SINET があれば、そ れぞれの大学はデータセンタまでの接続さえ頑張れば良く、その間の通信については意識せずに済みますから。
萩原氏:電気・水道・水などのライフラインと同じようにネットワークが活用できるのは、我々にとっても非常に素晴 らしいことと感じています。インフラに関しては、使いたい時にいつでも使えるということが一番大事ですから、今 後も安定的なサービス提供を望みたいですね。
最後に今後の展望についてもお伺いしたいのですが。
櫻田氏:現在は遠隔講義等でのリアルタイム利用がメインですが、システムには講義収録の機能も備わっていま すので、今後はそうした用途でも使っていければと考えています。ネットワーク障害などで遠隔講義が中断されて しまった場合の対応には既に使っていますが、今後、これについては著作権的な問題をクリアする必要もあるの ですが、講義の録画映像を後から観られるようになれば、e-Learning 的な使い方も考えられます。
また、せっかく構築したシステムを我々だけで利用するのももったいないので、同様の取り組みを行っている他 大学ともお互いに協力して、相互乗り入れをさらに進めていければと考えています。信州大学や慶應義塾大学など のシステムとの接続実績はあるのですが、システムも新しくなったことですし、さらにいろいろな大学との連携に 活用できればと思います。
遠隔講義の様子
ありがとうございました。