31. SINETを介した計算機資源等の提供、
IT に対するユーザーからの要求レベルもかなり高くなっているのではないかと思いますが。
中村氏:そうですね。私の管轄する計算基盤室では、統数研の情報システム部門とし ての役割を担っていますが、信頼性・可用性やセキュリティについてはかなり気を 遣っています。特に最近では、メールなども研究を支える重要なツールになっていま すので、ダウンタイムは可能な限り短くするように心がけています。
また、高速性も非常に重要な要件ですね。当研究所では外部の大学・研究機関に 対してスパコンをはじめとする計算機資源を提供していますし、データの大容量化も 年を追う毎に加速しています。それだけに、ネットワークも速ければ速いほど望まし い。比較的早くから SINET を導入したのも、こうしたニーズに応えていくためです。
スパコンのお話が出ましたが、その他にはどのような用途でネットワークが利用されていますか。
田村氏:たとえば、所内の物理乱数発生ボードで作成した乱数を、オンデマンドで所内外から利用できるサービス を提供しています。物理乱数には、疑似乱数に比べて周期性や「クセ」が少ないというメリットがありますが、その 一方で費用が高額なのが難点です。もちろん物理乱数発生ボードを所有している研究所や大学もありますが、研 究者個人レベルでは手が届かないケースも少なくありません。その点、統数研では世界最高レベルの性能を誇る 装置を開発していますので、これを広く利用してもらおうと考えたわけです。
物理乱数発生ボードのプロトタイプ
ただし、ディスクにダウンロードできるくらいの乱数でしたら問題ないですが、装置の性能を最大限に活用する となると、現在のネットワーク環境ではまだまだ厳しい面もありますね。2010 年 7 月には 3 種類の物理乱数発生 ボードが稼働しますが、これをオンラインの状態でフル活用すると約 600MB/sもの帯域を占有します。そういう意 味では SINET の帯域も、もっと太くなってくれるとありがたい(笑)。
また、その他の例としては、先に述べた私の研究でも実験 / 解析データの共有に SINET を活用しています。当 研究所・共同研究所との間でデータを高速に同期させられるため、非常に便利ですね。こうした大容量データをい ちいち添付ファイルで送ったりしていたのでは、効率が悪くて仕方がありませんから。
研究所の立川移転の際にも SINET が役立ったとのことですが。
中村氏:移転の段階では、まだスパコンのレンタル期間が残っていましたので、スパコンを物理的に移設して稼働 させるか、それともネットワーク経由で利用するかの判断を迫られました。一度スパコンをバラして運び、また組み 上げて設定などを行うとなると、コストも手間もかなり掛かってしまいます。そこで、残りの期間はネットワーク経由 で使用することにしたのですが、SINET の L2VPN を利用していたおかげで、移転後も以前と同じ感覚でスパコ ンを使うことができました。場所は違っても同じセグメントとして一体運用できますし、煩雑なネットワーク機器の 再設定作業も必要ありません。また、研究データやメールサーバのデータなどについても、一度テープに落としたり することなく、SINET を利用して移すことができました。移転に伴うダウンタイムをほぼゼロで抑えられたのは、非 常にありがたかったですね。
キャンパス移転時のネットワーク構成
SINET に対する期待などがあればお聞かせ下さい。
中村氏:ユーザーに対して最適なサービスを提供することが我々のミッションですから、今後も様々な改善を行っ ていきます。特に最近では、コンピュータやディスクの高速・大容量化が急速に進んでいますので、ネットワークがボ トルネックにならないように注意する必要があります。ぜひ SINET にも、より高速で高信頼なネットワークサービ スを提供し続けて欲しいですね。
最後に今後の抱負を伺えますか。
田村氏:統数研では、統計数理に関する最先端研究だけでなく、他の分野への普及活動にも力を入れていきたい と思っています。具体的には、統計の知識を網羅し、なおかつ研究プロジェクトのマネジメントができるような人材 を育てていきたい。他分野との融合を深めることで統計学の裾野も広がりますし、新しい研究分野の開拓にもつ ながります。そのためにも、先端研究と普及・啓蒙活動を両輪で廻していくことが重要だと考えています。
ありがとうございました。