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Tsutahara (2015b)

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 168-174)

4. 両接辞による派生形容詞

5.3. 派生形容詞の関係的用法の起源

5.3.1.2. Tsutahara (2015b)

167

168 詞を収集することができる。

上記の手法により、Google Books Corpus から、498 種類の関係的用法における -dor 派生 形容詞を含む名詞句、および、同様の -nte 派生形容詞を含む名詞句が 360 種類を抽出した。

これらの合計 858 種類の名詞句が Tsutahara (2015b) における分析対象である。

これら 858 種類の名詞句について、主要部となる名詞と形容詞の形式の内訳をまとめた ものが以下の表である。

5. 分析対象の内訳

5.3.1.2.2. 分析

Tsutahara (2015b) では Google Books Ngram Viewer を用いて収集した名詞句の分析を行っ た。三章で紹介したように、Google Books Ngram Viewer では検索された語、句の年代毎に 標準化された使用頻度の推移が折れ線グラフの形で得られる。三章ではある語が新語的で あるか否かを検討するために使用したが、Tsutahara (2015b) では分析対象となる関係的形容 詞を含む名詞句の初出時期と使用が一般的になった時期を特定し、表現としての自発性、自 然さを考察するために使用した。

例えば efecto relajante であれば、以下のグラフが示される 。

頻度 ‐dor ‐nte

efecto 99 87

carácter 97 77

proceso 102 54

actitud 101 87

función 99 55

total 498 360

169 図 1. efecto relajante の使用頻度推移

しかし、Tsutahara (2015b) では、問題となる名詞句のみを分析したわけではない。本研究 では、Google Books Ngram Viewer では同時に複数の語や句を検索することができるという 性能を活用し、競合する同義的な名詞句、N de V 句を同時に検索している。このように、

競合する同義的な名詞句との使用頻度の差を観察することで、関係的用法の表現上の自発 性の記述を試みた。この点については 5.3. で詳述する。既に述べたように、関係的用法の 形容詞は多くの場合において、所有を表す前置詞 (典型的には de を用いたもの) + 名詞と いう形に換言可能である: comida española > comida de España。そして、Tsutahara (2015b) で 扱った -dor, -nte による関係的派生形容詞も、de 句により換言することができる。例えば、

efecto relajante であれば efecto de relajar と言い換えられる。もしも、派生形容詞の関係的用

法が動作と名詞の関連性を表現する手段として自然なものであれば、競合するde句による 名詞句と同等もしくはそれ以上の頻度で用いられると考えられる。そして、もし関係的用法 が文法的に可能ではあるが、一般的、自然ではない用法であれば、その使用頻度はde句を 下回ることが予測される。

例えば、efecto relajanteのケースであれば、同義的な名詞句、efecto de relajarを併せて検索 することで、以下のような結果が得られる。この場合、 2000 年以降は efecto relajante の使 用頻度が efecto de relajar の使用頻度よりも圧倒的に高いことから、名詞 efecto と relajar という動作の関連性を表す際には派生形容詞 relajante を使用することが自然であることが 推測される。

170 図 2. Efecto relajante/efecto de relajar の使用頻度

このようにして得られた分析結果について、Tsutahara (2015b)では、派生形容詞による名 詞句の初出時期(表内①)、関係的用法が広がりを見せた時期の特定のために派生形容詞を 含む名詞句の出現頻度が最大となる点、グラフの頂点(表内②)、および、競合するde句を含 む名詞句との 2000 年以降の使用頻度の差を記録していった。これらはそれぞれ、関係的形 容詞の初出時期、この用法が定着した時期、および表現としての自然さを推定するためのも のである。

5.3.1.2.2.1. 両形容詞の関係的用法の起源

Tsutahara (2015b) では両形容詞の関係的用法が生じた年代を特定するために、収集した

858 種類の名詞句の初出時期を記録した。その結果をまとめたものが以下の二点の表であ る。

表 6. -dor 派生形容詞の初出時期

1750- 1800- 1850- 1900- 1950- 2000- Total

efecto -dor 0 6 42 38 13 0 99

carácter -dor 0 23 39 26 9 0 97

proceso -dor 0 2 20 49 31 0 102

actitud -dora 0 8 24 58 11 0 101

función -dora 0 10 27 53 9 0 99

total 0 49 152 224 73 0 498

171 表 7. -nte 派生形容詞の初出時期

まず目をひく点として、大多数、858 種類の分析対象である名詞句の約 75% は 1850年 から 1950 年の間に最初の用例が確認されたことが挙げられる。この結果は Rainer y

Wolborska-Lauter (2012) の記述を裏付けただけでなく、-dor だけでなく -nte による形容詞

の関係的用法についても、多くの場合において、その初出時期が 1850 年から 1950 年の間 であったということを示している。-nte 派生形容詞の関係的用法も、-dor による当該用法 が生じたのと同時代に生じたと考えられるだろう。

分析対象の名詞句には 1800 年以前に使用されていたものが数種類、確認されている。し かしながら、それらについてはいずれも Rainer y Wolborska-Lauter (2012) のいうところの孤 立したケース (casos aislados) であったと思われる。具体的には efecto と -nte 形容詞によ る名詞句の内の 3 例 (efecto estimulante/purgante/atenuante) が、18 世紀後半から使用された ことを確認したが、例えば、 efecto estimulante は 1798 年に一例の使用が確認されている だけで、18 世紀中の当該名詞句の使用はこの一例に留まる。Efecto estimulante が本格的に 広く使用され始めたのは 20 世紀以降のことである。

(15) 1798 年における efecto estimulante の用例

[...] yo concluyo que todos tienen mas ó menos de efecto estimulante [...]

(Prospecto de medicina sencilla y humana, vol 6. p. 314 )

このように、今回の分析で確認された18世紀中の派生形容詞の関係的用法はいずれも限 定的なものであり、孤立しているといえる。

5.3.1.2.2.2. 関係的用法が広がりをみせた時期

Tsutahara (2015b) では、派生形容詞の関係的用法がいつ生じたのかだけではなく、この用

法が広く使用されるようになった時期についても考察した。この時期を特定するために足 がかりとしたのが、各名詞句の使用頻度の推移を示す折れ線グラフの頂点である。この頂点 に対応する時期を Tsutahara (2015b) では、当該名詞句における派生形容詞の関係的用法が 一部の話者だけではなく、一般に使用が容認されるようになった時期と位置付けた。

1750- 1800- 1850- 1900- 1950- 2000- Total

efecto -nte 3 19 21 38 6 0 87

carácter -nte 0 20 23 26 8 0 77

proceso -nte 0 1 10 34 9 0 54

actitud -nte 0 12 31 38 6 0 87

función -nte 0 3 10 34 8 0 55

Total 3 55 95 170 37 0 360

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収集した 858 種類の名詞句について、それぞれの使用頻度が最大となった時点をまとめ たものが以下の表である。この点については、より精緻に広がりをみせた時期を特定するた めに、20 年おきに時期を区切った。

表 8. 関係的形容詞の使用頻度が最も高い時期

一見してわかるように、この用法は 20 世紀以前に比べ、20 世紀、特に 20 世紀後半か ら広く用いられるようになったと考えられる。より詳しく言えば、関係的用法の起源自体は 19 世紀中ごろ、場合によっては 18 世紀後半まで遡るものであるが、多くの母語話者によ って、広く用いられるようになったのは 20 世紀後半のことであることが推測される。

この結果は、Rainer (1999) における、関係的用法をuso nuevo とする記述の妥当性を支え るものにもなるだろう。特に、222 の名詞句の使用頻度のグラフ上の頂点は 2000 年以降に あり、現代においても、名詞と動作の関連性を表す表現手段として、定着の過程にあること がわかる。

5.3.1.2.2.3. 表現としての自発・自然性

Rainer (1999), Rainer y Wolborska-Lauter (2012) および Tsutahara (2015a, b) における分析に よって、両接辞が主語的な用法だけでなく、関係的用法を持つこと、そして、関係的用法が 生じた時期、および広く使用され始めた年代が明らかになった。Tsutahara (2015b) ではさら に、両派生形容詞の関係的用法の表現上の自発性 (espontaneidad) についても考察した。

両派生形容詞による関係的用法は 20 世紀中ごろから使用される頻度が増加したことが 判明したが、これは 20 世紀以降に、この用法が表現上の自発性を獲得したことを必ずしも 意味するものではない。例えば、派生形容詞の関係的用法は 20 世紀以降に使用される頻度 が増加したが、この用法が動作と名詞の関連性を表す表現手段として、どの程度自発的なも のであるのかはここまでに提示したデータから推し量ることは不可能である。つまり、関係 的用法を含む名詞句は “N de V” などの形にパラフレーズ可能であり、派生形容詞の関係 的用法は動作と名詞の関連性を示す唯一の表現手法ではない。それ故に、両派生形容詞の関 係的用法は、「動作と名詞の関連性を表すための自発的かつ自然な表現手段」である可能性 もあれば、「容認はされ得るものの、例外的であり、動作と名詞の関連性を表すためには通

1800- 1820- 1840- 1860- 1880- 1900- 1920- 1940- 1960- 1980- 2000- total

efecto -nte 0 2 2 2 0 5 8 9 11 24 24 87

efecto -dor 0 0 0 2 2 1 3 4 7 30 50 99

carácter -nte 0 0 2 7 2 8 8 2 13 21 14 77

carácter -dor 0 0 2 9 1 7 4 2 11 27 34 97

proceso -nte 0 0 0 0 0 3 0 3 15 23 10 54

proceso -dor 0 0 0 0 1 1 2 2 10 65 21 102

actitud -nte 0 0 1 2 5 2 12 12 29 14 10 87

actitud -dora 0 0 0 0 0 2 6 26 25 23 19 101

función -nte 0 0 0 0 0 1 4 6 15 16 13 55

función -dora 0 0 0 0 1 1 1 5 20 44 27 99

total 0 2 7 22 12 31 48 71 156 287 222 858

173

常、別の表現手段が用いられる」という可能性もある。拙稿では、この関係的用法のより多 角的な記述のために、この用法の表現上の自発性を考察する必要があると述べた。

そこで、Tsutahara (2015b) では、分析の対象とした858 種類の名詞句と、それぞれの名詞

句と同義的でかつ一定の生産性を有すると考えられる N + de V 句 (efecto calmante/efecto de

calmar) を同時に分析し、その使用頻度の差を分析した。前者を ADJ、後者を DEとし、結

果をまとめたものが以下の表である。全部で 87 種類の efecto -nte 句の場合においては ADJ > DE となるケースが 65 例、DE > ADJ となるのは 22 例となっている。これは、87 種類の efecto -nte 句の内、65 の名詞句が、対応する de V による名詞句よりも使用頻度が 高く、22 の同様の名詞句が同義的な de V 句よりも使用頻度が低かったことを表している。

表 9. 派生形容詞の関係的用法と前置詞句の使用頻度の高低

分析の結果、今回の分析対象となった 858 種類の名詞句の大多数は、同義的な de V に よる名詞句よりも使用頻度が高いことが分かった。つまり、現代スペイン語において、両派 生形容詞の関係的用法は、ある名詞となんらかの動作の関連性を示すための有力かつ自発 的、自然な表現手段であるということができるだろう。

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 168-174)