• 検索結果がありません。

結論

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 122-125)

3. 両接辞による新語的派生名詞

3.6. 結論

121

そしてこの動詞から、20 世紀以降に両接辞によって二種類の派生名詞が形成された。今 回の分析では、いずれの派生名詞も、「何かを象徴・体現する人物、物」という非動作主お よび非使役的道具を表すこと、そして、それ以外の対象を表さないことが確認された。つま り、simbolizador と simbolizante は共に同義的であると考えられる。

-nte がこうした低い動作主性を有する対象を編入し、simbolizante という派生名詞を形成

することは仮説から説明可能であると思われるが、同種の対象を表す simbolizador という 派生名詞の存在は仮説への反例となる。しかしながら、前者の使用頻度は後者のそれに比べ 高く、後者の使用は限定的であり19、この点は -nte の方がこうした低い動作主性の対象を 編入するのに適切な接辞であるとする仮説から説明されるだろう。

このように、新語的な派生名詞のペアには同義的なものもある。そしてこの同義性は、語 根動詞が活動動詞であるケース、または主語に原因以外の対象をほとんどとらない場合に 生じるようである。活動動詞の主語は基本的に非使役的動作主であるが、このタイプの対象 は原因同様、両接辞によって編入されうる。従って、こうした動詞には両接辞が付加され、

かつ、派生名詞が同義的になるのだと考えられる。そしてこうした同義的ペアの存在もまた、

これまでに提示してきた仮説から予測されるものであり、従って、その妥当性を裏付けるも のであるといえるだろう。今回分析した 24 種類のペアの内、8 のペアでこうした同義性が 観察された。当該の 8 ペアを以下の表にまとめた。

表 5. 同義的な新語的派生名詞のペア

122

因の影響が少ないと考えられる。そして両タイプの派生名詞の表す対象はそれぞれ、コント ロールと使役性という二種類の素性の値の組み合わせについて、異なる傾向を示していた。

-dor による新語的派生名詞の多くは使役的動作主、使役的道具を表し、それよりも数の

上では劣るものの、非使役的動作主、非使役的道具、原因を一定の頻度で表す一方、非動作 主や内項相当の対象を表さないことを確認した。この結果は、-dor の編入する対象は最低 でも、コントロールと使役性という二種類の素性について、どちらかが陽性であるとする前 章で提示した仮説を支持するものである。

一方の -nte 派生名詞の意味の分布傾向も、仮説から説明可能である。既に確認した通り、

-nte による派生名詞が使役的動作主や道具を表すことは極めて稀であった。つまり、コント

ロールと使役性の両方の値が陽性である対象の -nte による編入は規則で制限されている といえるだろう。その一方で -nte は原因や非使役的動作主のようなどちらか片方の素性だ けが陽性である対象、ならびに非動作主や内項相当の対象といった両方の素性が陰性であ るような対象を編入可能であることを確認した。これらの点も仮説から予測されたことで あり、仮説を支持するものであったといえる。また、-nte による新語的派生名詞の過半数は 原因相当の対象を表すものであったことも興味深い。この事実は、-nte は上述の条件に当て はまる対象の中でも、特に原因と強く結びついていることを示唆する。本章での分析により、

-nte の典型性が浮き彫りになったということもできるだろう。

上述の通り、本章の分析手法は前章におけるものと同一、つまり、タイプ頻度に基づく分 析であり、対象は派生名詞であった。次章ではトークン頻度に基づく、両タイプの派生形容 詞の修飾パターンの分析を実施する。この分析はこれまでに提示してきた仮説の別角度か らの検証と位置づけられる。

123

124

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 122-125)