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まとめ

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 107-110)

3. 両接辞による新語的派生名詞

3.4. 分析

3.4.8. まとめ

本節では収集した新語的派生名詞の表す対象を有生性、語根動詞の表す動作、状態に対す るコントロール、および使役性の有無により分類を行った。こうした値の組み合わせにより、

使役的動作主、非使役的動作主、被動作主、使役的道具、非使役的道具、原因、内項相当の 対象という七種類の範疇が設定され、両タイプの接辞の意味は異なる分布を示した。これま での分析をまとめたものを以下に表 3 として再掲する。

11 この派生語はスペイン語のルールの中で形成されたのではなく、英語の SF などで使用される用語、

replicant からの翻訳である可能性が高い。しかしながら、この語が英語からの借用語であったとしても、

翻訳される際に -dor が使用されなかったこと、ならびに、-dor による派生語、replicador は複製された人 間ではなく、複製に使用される機会を指す。このことから、複製された人間を表すために -nte が使用され たのにもスペイン語内部からの動機もあったと考えられる。従って本論では replicante を内項相当の対象 を表す -nte 名詞として扱っている。

107 3. 分析結果

そして以下に提示する表 4 は前章で分析した非新語も含む -dor 派生名詞の意味の分布 と、本章で分析した新語的 -dor 派生名詞の意味の分布をそれぞれまとめたものである。

4. 非新語を含む -dor 名詞と新語的 -dor 名詞の意味の分布

このように、非新語的なものを含む -dor 名詞群と新語的な -dor 名詞群の間には概ね、

意味の分布に差異がないことが確認された。いずれの場合においても、 -dor 派生名詞の表 す対象の大多数を占めるのは使役的動作主と使役的道具である。そしてその一方で、非動作 主や内項相当の対象といったコントロールも使役性を持たない対象の編入は厳しく制限さ れている。分析対象を新語に限定した場合とそうでない場合のいずれにおいても -dor によ る外項の編入の方向性は同様のものであるといえるだろう。

次に表5には、同様に前章で提示した非新語を含む -nte 派生名詞と本章で分析した -nte 派生名詞の意味の分布をまとめたものである。

‐dor ‐nte

使役的動作主 94 (42.3%) 4 (5.8%)

非使役的動作主 24 (10.8%) 15 (21.7%)

非動作主 2 (0.9%) 4 (5.8%)

使役的道具 70 (31.5%) 0 (0%)

非使役的道具 3 (1%) 2 (2.9%)

原因 29 (13.1%) 36 (52.2%)

内項相当の対象 0 (0%) 8 (11.6%)

計 222 69

(非)新語的-dor 新語的‐dor 使役的動作主 417 (43.8%) 94 (42.3%) 非使役的動作主 222 (23.3%) 24 (10.8%)

非動作主 21 (2.2%) 2 (0.9%)

使役的道具 251 (26.1%) 70 (31.5%) 非使役的道具 12 (1.2%) 3 (1%)

原因 39 (4.1%) 29 (13.1%)

内項相当の対象 0 (0%) 0 (0%)

計 962 222

108 5. 非新語を含む-nte名詞と新語的-nte名詞の意味の分布

一見してわかる通り、新語的 -nte 名詞の表す対象は非新語的な同接辞による派生名詞の 表す対象に比べ、原因にあたるものが多く、また、非使役的動作主や非動作主、内項相当の 対象の数が相対的に減少している12。本章で扱った分析対象の語根動詞の中には、活動動詞 や自動詞の数がそもそも少なかったことを差し引くとしても、新語的な -nte 名詞の表す対 象の半数以上が原因相当にあたるというこの観察の結果から、現代における、-nte の典型的 な機能は、語根動詞の表す動作の原因にあたる対象の編入であるといえるだろう。

また、前章の分析では、-nte による派生名詞には使役的な動作主や道具といったコントロ ールと使役性を併せ持つ対象を表すものが極端に少なかったが、この傾向は本章で分析し た新語的な -nte 名詞にもみられた。このことは、 -nte という接辞は編入に際し、高い動作 主性を持つ対象を拒絶していることを示唆するものである。

以上の結果から、両接辞はそれぞれ以下のような性質を持った接辞であると説明するこ とができるだろう。

-dor

① 語根の表す動作に対するコントロールと使役性を併せ持つ対象を典型的に編入す る。

→使役的動作主・使役的道具 (+CON, + CAU)

② 語根の表す動作に対するコントロールと使役性のどちらか一つのみを持つ対象を 編入する。

→非使役的動作主 (+CON, -CAU) ・原因 (-CON, +CAU)

③ 語根の表す動作に対するコントロールと使役性のいずれも持たない対象を編入す ることは稀。

→非動作主・内項相当の対象 (-CON, -CAU)

12 同様の傾向が、表 4 にもみられることを確認されたい。

(非)新語的-nte 新語的‐nte

使役的動作主 14 (5.2%) 4 (5.8%)

非使役的動作主 94 (35.1%) 15 (21.7%)

非動作主 47 (17.5%) 4 (5.8%)

使役的道具 4 (1.5%) 0 (0%)

非使役的道具 6 (2.2%) 2 (2.9%)

原因 68 (25.4%) 36 (52.2%)

内項相当の対象 35 (13.1%) 8 (11.6%)

計 268 69

109 -nte

① 語根の表す動作に対するコントロールを持たず、使役性を持つ対象を典型的に編 入する。

→原因 (-CON, +CAU)

② 語根の表す動作に対するコントロールを持ち、使役性を持たない対象を編入する。

→非使役的動作主 (+CON, -CAU)

③ 語根の表す動詞に対するコントロールと使役性のいずれも持たない対象を編入す る。

→非動作主、内項相当の対象 (-CON, -CAU)

④ 語根の表す動詞に対するコントロールと使役性の両方を持つ対象を編入すること は稀。

→使役的動作主・使役的道具 (+CON, + CAU)

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 107-110)