1. 先行研究・本研究の意義、位置づけ
1.5. 本研究の位置づけ
1.5.2. 方法論上の位置づけ
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“cause to become X” (unionize, randomize), sometimes “cause to go into X” (containerize), and sometimes “perform X” (anthropologize); why does the affix -er sometimes create agent nouns (writer), sometimes instrument nouns (opener), and sometimes patient nouns (loaner)? Do these affixes have any unitary core of meaning at all, and if so, what is it?
The multiple-affix question: why does English often have several affixes that perform the same function or create the same kind of derived word (e.g., -ize, -ify for causative verbs; -er, -ant for agent nouns)?
The zero-derivation question: how do we account for word formation in which there is semantic change without any concomitant formal change (e.g., in so-called conversion or zero derivation)?
The semantic mismatch question: why is the correspondence between form and meaning in word formation sometimes not one-to-one? On the one hand, why do there sometimes seem to be morphemes that mean nothing at all (e.g., the -in- in longitudinal or the -it- in repetition)? On the other hand, why do we sometimes find “derivational redundancy,” that is, cases in which the same meaning seems to be expressed more than once in a word (e.g., in dramatical or musicianer)? Finally, why does the sense of a morpheme sometimes seem to be subtracted from the overall meaning of the word (e.g., realistic does not mean “pertaining to a realist”)?
以上、大まかにではあるが、派生の意味論的分析という研究が、どういった理念によるか、
どのような問題を解決することを目指しているのかを確認した。こうした視座に立ち、同様 の問題意識に基づく研究には英語の派生を扱うものはもちろん、イタリア語、ギリシャ語、
フランス語を扱ったものがある (cf. Booij & Liener 2004, Plag 2004, Melloni 2007, Melloni 2010, Ferret et al. 2010, Andreou 2014, Ferret & Villoing 2015, Kawaletz & Plag 2015)。
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言語学を言語学の一分野として位置づける立場と、コーパスをデータの収集、分析のための 技術として位置づける立場である。
前者は既存の理論やモデル、仮説を出発点とせず、白紙の状態でコーパスを観察し、得ら れた発見を追究するという姿勢をとる。研究者の主観、バイアスを排除することが目的とな るため、タグなどは付与されない場合が多い (クリーンテキスト原則)。このように、コーパ ス内のデータが研究の出発点となることから、こうしたアプローチをとる研究はコーパス 駆動型研究 (corpus-driven study) と呼ばれる。Cheng (2012: 187) はコーパス駆動型研究はコ ーパス観察→パターン検出→臨時仮設構築→理論化というプロセスで実施されるものとし ている。
コーパスをめぐるもう一つの立場、コーパスをデータの収集や分析に関わる技術とみな す立場の研究は、特に先述の駆動型研究との区別を強調する場合に、コーパス準拠型研究
(corpus-based study) と呼ばれる。こちらの立場では、コーパスが研究の出発点となっていた
のとは対照的に、コーパスは仮説の検証などを行う際に用いられる。Cheng (2012) は、準拠 型研究は典型的に、理論→仮説構築→コーパス観察→仮説確認という流れで行われるとし ている。
語形成の意味論という理論的枠組みの中で仮説を構築し、その検証をコーパスを用いて 実施する本研究は、後者のコーパス検証型研究と位置づけられるだろう。
しかしながら、石川 (2012) の言うように、駆動型研究と検証型研究は相互排他的なもの ではない。
たとえば、特段の目的を持たず、コーパスデータを漠然と観察していたところ、ある語 の振る舞いについて一定のパタンらしきものが発見されたとします。この時、おそらく 研究者は、パタンらしきものには再現差異があるのだろうか、そうだとすると、当該語 と類似したほかの語についてもそのようなパタンは確認されるのだろうか、そうした パタンをもたらす原因はどこにあるのだろうか、といった素朴な疑問を抱くことでし ょう。
すると、今度は、そうした疑問(つまりこれが仮説に相当します)を解決するために、
新しい目で同じコーパスないしは別のコーパスをより詳しく調べていきます。もちろ ん、すべての問いについて、はっきりした解がすぐには見つからないかもしれません。
その場合、研究者は、再び白紙の状態に立ち返ってコーパスを全体的に眺めます。そう することで、残された疑問を解決するヒントが言語データの中から浮かび上がってき ます。それを新たな仮説に整理した後、再びコーパスを詳しく調べて仮説の妥当性を確 認していくのです。
このとき、コーパス駆動型研究とコーパス検証型研究はめまぐるしく交替しており、両 者が一体的に融合する形でコーパス言語学の実践が成立していることに気が付きます。
(石川 2012: 31-32)
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本研究においても、駆動型研究的アプローチと準拠型研究的アプローチの循環が起こっ ている。五章で論じる-nte 接辞の派生形容詞の持つ非主語的用法であるが、これは単に、-nte派生形容詞の用法を観察しているときに期せずして発見されたものである(駆動型)。そ して同様のケースを多数収集し、一時的な記述を実施、再度コーパスを用いて検証を行った
(準拠型)。
語形成の意味論という枠組みの中で構築した仮説を、コーパスを用いて検証するという アプローチをとる本研究は、コーパス準拠型研究として位置付けられる。しかしながら、同 時に駆動型研究的な契機に基づく問題も扱う。したがって、本研究は、準拠型研究に軸足を 置きつつも、適宜駆動型研究的着想、姿勢を取り入れたスペイン語における派生の意味論的 研究の実践として特徴づけられるだろう。
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2. -dor/-nte 接辞による名詞とその意味
本章では -dor/-nte 接辞による派生名詞の意味を網羅的に分析し、両者間の意味上の共通 点、および差異を探る。そしてこの分析を基に、名詞派生接辞としての両者の固有性がいか なるものであるのかを考察する。
2.1. では先行研究とその問題点を概観しながら、本研究において派生語の意味をどのよ
うに扱っていくのかを述べる。次に 2.2. 節では、議論を進めていくうえで重要となる語彙 的使役性を論じる。次節 2.3. では、データ、およびその収集法などの方法論を紹介する。
2.4. 節では有生物を表す派生名詞を分析し、-dor 派生名詞は経験者や内項相当の有生物の
ような、動作主性の低い対象を表すことが稀であることを示す。同様に -nte 派生名詞は語 彙的使役動詞から動作主を表す名詞を形成することが稀であることも報告する。2.5. 節で は同様に無生物を表す派生名詞を分析する。特に 道具を表す -nte による派生名詞の数が 極めて限定的なことは示唆的である。それをうけて、両接辞による語根動詞の外項の編入は、
その外項の持つ使役性と意思性、または動作・状態に対するコントロールの有無という二点 の語彙意味論的素性の組み合わせに左右されるという仮説を提示し、2.6. 節ではその仮説 の妥当性を、同一の動詞を語根とする両接辞による派生名詞のペア (ej. picador/picante) を 分析しながら検討していく。