1. 先行研究・本研究の意義、位置づけ
2.8. 結論と次章以降での要検討事項
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いる。こうしたペアが存在することも仮説から予測され、同様に仮説を補強するものである。
80 制約は以下のようなものであると主張した。
-dor 接辞は CON, CAU という二種類の語彙的素性の内、少なくともどちらかが +
であるような対象を編入する
次に、-nte に関する分析は以下のように要約される。
-nte
⚫ +CON, +CAUであるような対象、使役的動作主・道具を編入することは極めて稀で
ある
⚫ +CON, -CAUであるような対象、非使役的動作主を編入するケースを一定数確認し
た。しかしながら、-dor とは異なり、状態動詞からこうした対象を表す派生名詞を 形成しない
⚫ -CON, +CAU であるような対象、原因を表す。-dor とは異なり、原則的に、語彙的
使役動詞からは専ら、こうした対象のみを編入する
⚫ -CON, -CAU であるような対象、非動作主や非使役的道具を -dor よりも編入するこ
とが多い。この点は -dor との意味的な差異であると考えられる
⚫ 語根動詞の内項にあたる対象を -dor とは異なり編入する。この点もまた、-nte と
-dor を区別するものであると考えられる
これらの事実から、 -nte による外項編入に関する制約は以下のようなものではないかと 提案した。
-nteはCON, CAUという二種類の語彙的素性の両方が + であるような対象を編入しな
い。
本章では上述の制約を仮説として提示した。次章以降では様々な角度からこの仮説を検 証していく。
第一に、本章で扱った派生語の中には数世紀以上前から使用されているものが少なから ず含まれている。つまり、派生語の意味は語根動詞の意味と接辞の意味(外項編入に関する 制約)から決定されるという前提に立ち、派生語の辞書における語義と語根の意味を対照す ることで、接辞の意味を記述するという方向性を本研究では採用している。しかしながら、
先述の通り、古くから用いられている派生語の語義には固定、固有化されているものがある。
また、接辞の意味が以前と現代では異なっている可能性もあり、以前のルールに沿って決定 された派生語の意味が、慣習としてそのまま残っていたとしたら、分析、およびその結果に 基づく記述の正確性が損なわれうる。
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そこでこの問題の解決のために、次章では、分析対象を新語的な派生語に限定し、再度、
同様の分析を行い、仮説を検証する。新語に限定するのは一章で述べた通り、新語的な派生 語の意味の決定には接辞以外の要素からの影響が少ないと考えられるためである。
そして、本章における分析が限定的なものであるという理由の一つに、それがタイプ頻度 に基づくものであるという点が挙げられる。例えば、本章では -dor の典型的な編入対象は 使役的動作主としたが、それは、-dor 派生名詞にはそうした対象を表すものが多かったこ とを根拠とした。つまり、使役的動作主を表す -dor 名詞の「種類数」を性格付けの根拠と したものである。
こうした種類数、タイプ頻度に基づく分析にも固有の意義があると考えるが、別の視座か らの分析、トークン頻度に基づく分析を補足的に実施することが必要であるだろう。トーク ン頻度とは、実際に、ある -dor による派生名詞が使役的動作主を表す頻度をさす。つまり、
本章の分析では「多くの -dor 名詞が使役的動作主を表す」ことを確認した。しかしながら、
可能性としては、「多くの -dor 名詞は使役的動作主を表すものの、それは極めて例外的な 語義で、実際にはほとんど観察されない」という状況もありうる。この場合、使役的動作主 を -dor による典型的な編入の対象とする記述は誤りとなるだろう。
そこで四章では、両接辞による派生形容詞の修飾のパターンを分析し、これをもってトー クン頻度に基づく分析・検証としたい。形容詞に着目する理由は当該の章で後述する。
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