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ASBJによるストック・オプション等に関する会計基準

第3章  日本におけるストック・オプション会計基準の変遷

第7節  ASBJによるストック・オプション等に関する会計基準

会社財産の分配という点で利益配当と同様の性格であると考え、利益剰余金の減少と考え るべきとの見解がある。自己株式等会計基準では、自己株式の処分が新株の発行と同様の 経済的実態を有する点を重視し、資本取引により利益剰余金を増減させるべきではないと いう考えの下、資本剰余金を減少させることとしている。このとき、減少させる科目とし ては、資本準備金からの減額が商法上の制約を受けるため、その他資本剰余金からの減額 が適切であるとされる。なお、減額しきれない場合には、利益剰余金のうち当期未処分利 益から減額、または当期未処理損失を増額するとされる。なお、処分差益と処分差損は同 一会計年度内に反復的に起こりうるため、自己株式処分差益と自己株式処分差損は、会計 年度内で相殺したうえで処理することとされている。

使用が容易になった。

 このようなことから、ストック・オプションの会計基準の必要性が徐々に高まったが181,

ASBJはまず、商法改正の施行前である2002年3月に、現行の会計基準等を前提とした当 面の取り扱いを示す実務対応報告第1号「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に 関する実務上の取扱い」を公表した。

 国際的に議論されているストック・オプションの費用を公正価値により認識することに なれば、ストック・オプション制度の活用が比較的進んでいる新興企業に対し多大な影響 を与え、経済活性化の障害となりかねない。また、当時は国際的にも公正価値による費用 認識は必ずしも強制とされていなかったので、日本で先行して公正価値による費用認識を 強制すれば、日本企業が国際競争上不利となったであろう。

 このような理由から、産業界は公正価値によるストック・オプションの費用認識を強制 する会計基準の作成に反対を表明した182。このように当時は、会計基準の導入にあたって の環境整備が十分になされているとは言えない状況であったのである。

 その後の2002年6月に、ASBJはストック・オプションの会計基準の検討に着手した。

また、金融庁も同年8月に「証券市場の改革促進プログラム183」を公表し、投資家の信頼 が得られる市場の確立、つまり市場の公正性・透明性の確保のためには、会計・監査の充 実強化が必要であるとし、その為の措置の一つとして、ストック・オプションの会計処理 の明確化を掲げ、ASBJに早期の基準開発を要請した。

 これらの動きの背景には、米国の会計不祥事から生じた国際的なストック・オプション の会計基準見直しという動きがあり、これを契機に日本もストック・オプションの会計基 準導入にむけ議論が進められてきたのである。

7−3 会計基準の概要

7−3−1 ストック・オプションの定義

 会計基準でいう「ストック・オプション」とは、「自己株式オプション」のうち、特に企 業がその従業員等に、報酬として付与するものをいう184。「自己株式オプション」とは、自 社の株式を原資産とするコール・オプションをいい、新株予約権はこれに該当する185。

 なお、上述にある「従業員等」及び「報酬」については会計基準において、以下のよう に定義されている。

「従業員等」:企業と雇用関係にある使用人のほか、企業の取締役、会計参与、監査役及び

181 燒ア会計基準機構にあるテーマ協議会もストック・オプション会計は、緊急性の高いテ ーマであることから議題に加えるべきであるとASBJに提言している(2001年11月12日

「提案書」)財務会計基準機構HP:h廿p:〃www危sfjp/参照。

182 o済団体連合会による意見書「企業会計制度に関する提言(2001年3月27日)」を参照。

(経済団体連合会HP:h廿p:〃wwwkeidanren.orjp佃panese/po1icy/2001/o13/index.html)

183 燉Z庁HP:h廿p:〃www色孔gojp/news/ne剛/14/syouken件20020806−2.htm1参照。

184 驪ニ会計基準委員会[2005b1,2項(2)。

185 驪ニ会計基準委員会[2005b1,2項(1)。

執行役並びにこれに準ずる者をいう186。

「報酬」:企業が従業員等から受けた労働や業務施行等のサービスの対価として従業員等に 給付されるものをいう187.

7−3−2 会計基準の適用範囲

 会計基準は企業がその従業員等に対しストック・オプションを付与する取引を対象とし ているが、それ以外の取引も対象としている。具体的には、以下の取引に対してこの会計 基準が適用される188。

①企業がその従業員等に対しストック・オプションを付与する取引。

②企業が財貨またはサービスの取得において、対価として自社株式オプションを付与する  取引であって、①以外のもの。

③企業が財貨またはサービスの取得において、対価として自社の株式を交付する取引。

 なお、②または③に該当する取引であっても、企業結合に係る会計基準等、他の会計基 準の範囲に含まれる取引については、会計基準は適用されない189。

 また、親会杜が子会杜の従業員等に、親会社株式を原資産として株式オプションを付与 する取引についても、会計基準は適用範囲となる。これは、親会杜が子会杜の従業員等に

自社株式オプションを付与するのは、子会杜の従業員等に対し、親会社自身の子会杜に対 する投資価値を結果的に高めるようなサービス提供を期待しているためと考え190、このよ

うな取引にも対価性を認めることができ、上記②の取引に該当するものとしている。

7−3−3.従業員等に付与するストック・オプションに関する会計処理の基本的考え方  会計基準の適用範囲の中心的なものは上記①の取引であり、これについては、(a)権利 確定日以前、(b)権利確定目以後、の2つに分けて会計基準では会計処理を定めている。

 具体的には、(a)主にストック・オプションの公正な評価額に基づいて費用に計上する 会計処理、(b)主にストック・オプションの権利行使をした場合及び権利不行使等による 失効に関する会計処理、を定めている。

 また、ストック・オプションの権利確定には付与と同時に権利確定するといった単純な 条件は少なく191、通常は一定の条件が付されている。会計基準では、当該権利確定につい ての条件として、「勤務条件」や「業績条件」を例示し、以下のように定義している。

「勤務条件」:ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、従業員等の一定期  間の勤務や業務執行に基づく条件をいう192。

「業績条件」:ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、一定の業績(株価

186 驪ニ会計基準委員会[2005c1,2項(3)。

187 驪ニ会計基準委員会[2005c1,2項(4)。

188 驪ニ会計基準委員会[2005c1,3項。

189 驪ニ会計基準委員会[2005c]、3項。

190 驪ニ会計基準委員会[2005c1,24項。

191 燒ア会計基準機構[2003碑b1,26−27頁参照。

192 驪ニ会計基準委員会[2005c1,2項(lO)。

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 を含む。)の達成または不達成に基づく条件をいう193。

(a)権利確定日以前の会計処理

 ストック・オプションを付与した企業が従業員等から取得するサービスは、その取得に 応じて費用として計上し、対応する金額を、ストック・オプションの権利行使または失効

が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上する一94。各会計期 間における費用計上額は、ストック・オプションの公正な評価額のうち、対象勤務期間を 基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額であり195、

費用総額は、ストック・オプションの公正評価総額と一致する。

 ここでいう公正な評価額とは、オプション価格算定モデルを用いて算出した公正な評価 単価にストック・オプション数を乗じて算定する。ここで公正な評価単価の算定に利用す るオプション価格算定モデルとは、「ストック・オプションの市場取引において、一定の能 力を有する独立第三者間で自発的に形成されると考えられる合理的な価格を見積もるため のモデルであり、市場関係者の間で広く受け入れられているものをいい、例えば、ブラッ ク=ショールズ・モデルや二項モデル等が考えられる196」としている。

 なお、公正な評価額については、会計基準における大きな論点の一つであり、詳しくは 後の章で詳しく整理することとする。

(b)権利確定目後の会計処理

 ストック・オプションの権利行使により、新株を発行した場合には、新株予約権として 計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える197。

 なお、新株予約権の行使に伴い、当該企業が自己株式を処分した場合は、自己株式の取 得原価と、新株予約権の帳簿価額及び権利行使に伴う払込金額の合計額との差額は、自己 株式処分差額であり、2006年12月改正の企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額 の減少等に関する会計基準」9項、10項、12項に従い会計処理を行う198。

 また、権利確定日後ではストック・オプションが失効する場合がある。失効とはストッ ク・オプションが付与されたものの、権利行使されないことが確定することをいう199。失 効には権利確定条件が達成されなかったことによる権利不確定による失効と、権利行使期 間中に行使されなかったことによる権利不行使による失効の2つがある。

 失効が生じた場合、当該失効が確定した期に、新株予約権として計上した額のうち、当

193 驪ニ会計基準委員会[2005c1,2項(ll)。

194 驪ニ会計基準委員会[2005c1,4項。

195 驪ニ会計基準委員会[2005c1,5項。

196 驪ニ会計基準委員会[2005c1,48項。

197 驪ニ会計基準委員会[2005c1,8項。

198 驪ニ会計基準委員会[2005c]、8項。自己株式処分差益の場合、その他資本剰余金に経常 する。また、自己株式処分差損の場合、その他資本剰余金から減額する。この会計処理の 結果、その他資本剰余金残高がマイナスとなった場合、会計期末において、その他資本剰 余金を0とし、当該マイナスの額をその他利益剰余金から減額することとなる。

199 驪ニ会計基準委員会[2005c1,2項(13)。