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新株予約権制度の創設

第3章  日本におけるストック・オプション会計基準の変遷

第6節  新株予約権制度の創設

図表3−2 新株予約権の有利発行規定

新株予約権の有利売行規定 権利行使時に新 発行する場合

定の定め 不要

対象者 制限なし

自己株式で代用の 配当可能利益の限度内。ただし、期末に資本の欠損が

場合の取規制 じるおそれがあるときは取手不可。

数量制 なし

権利行使間 制限なし

株主雀会決議 株主総会の特別決議

総会法竈内容 1新株予約権の目的となる株式の種類、数

②複数の新株予約権に分割して発行するときは、発行する新株予約権の総数

③権利行使価格

④権利行使期間

⑤その他の権利行使条件

⑥新株予約権の消却事由およぴ消却条件

⑦新株予約権につき譲渡制限を設ける場合にはその旨

⑧新株予約権の譲渡につき取締役会の承認を要するものとするときは、その旨。

⑨各新株引受権の最低発行価額(無償で発行するときはその旨)

権利付与期間

株主総会の特別決議から1年以内

白己式処分 新株発行手続の…用

商業登記 必要

財への影 自己資本、発行済 式数に変化なし 権利行使により白己資本および発行済株式数が増加

式の講化 なし あり

その他 白己株式取得の方法は市場買付、公開買付、相対取引

(公開会社)、相対取引( 公π会社)

(出所)興三野[20021,44・45頁を加筆修正。

6−2 新株予約権制度下でのストック・オプションの会計処理

 目本においてストック・オプション目的の新株予約権の会計処理については、当時準拠 すべき包括的な会計基準は設定されていなかった。ここで当時、新株予約権についての実 務上の取扱を規定していた実務対応報告第1号「新株予約権及び新株予約権付杜債の会計 処理に関する実務上の取扱い」においては、当面の会計処理として、ストック・オプショ

ン目的の新株予約権についても、他の新株予約権と同様に商法上の発行価額により負債の 部に計上するとされていた。よって、無償で付与されるストック・オプション目的の新株 予約権の場合には、負債はゼロと測定されるので、負債も費用も認識されないこととなる。

前述の白己株式、新株引受権方式の会計処理と同様に、ストック・オプション付与契約時 には、会計上何ら認識・測定がされず、以下で述べるが、新株予約権者の権利行使時に、

会杜が新株を発行するか、保有する白己株式を移転するかにより、権利行使時に新株発行 の会計処理を行うか、自己株式の再売却の会計処理を行うかの違いがあるに過ぎない。

(1)権利行使時に新株発行を行うケース

 実務対応報告第1号では、「新株予約権の発行価額は負債の部に計上し、権利が行使され たときは資本金及び資本剰余金に振替え、権利が行使されずに権利行使期間が到来したと きは利益として処理する。」とされていた。また商法では、新株予約権の発行価額の払込と

しては役務提供を考慮せずに無償による発行と整理がなされていた。よって新株予約権発 行時にはその発行価額はゼロと測定されるため、何ら会計処理は行われないことになる。

また権利行使時に新株発行を行った場合の会計処理は、上記3.の新株引受権方式で示し た処理と同様となる。

(2)権利行使時に保有している自己株式を移転するケース

 ASBJでは、商法上の自己株式および法定準備金等に関する規定の改正に対応するため、

2002年2月21目に企業会計基準第1号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計 基準(以下、自己株式等会計基準)」と企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び法定準 備金の取崩等に関する会計基準適用指針(以下、自己株式等適用指針)」を公表した。177さ

らに、既述したように、商法上の新株予約権の単独発行規定およびその有利発行規定の創 設に対応するために実務対応報告第1号を公表した。ここで実務対応報告第1号は、権利 行使時に自己株式を移転する場合の会計処理は、自己株式等適用指針第8号に準拠すると

している。178

 以下、ストック・オプション目的の新株予約権の付与に伴う自己株式の取得および再売 却の会計処理が、自己株式等会計基準および適用指針に従うと、どのように処理されるの かを整理する。

[例1

A杜は年限10年の新株引受権をストック・オプション目的で無償で以下の条件で発行し

た179。

 ・発行総数  10単位

 ・1単位の割当株式数  10,000株

 ・権利行使価格  100万円(1株当たり発行時の株価100円)

 ・権利行使停止期間  2年

[権利付与時1

仕訳なし

[3ヶ月後の自社株取得時(株価98円)1

    自己株式  980万円

     (資本の部の控除)

現   金   980万円

177 サ三野[20021,49頁。

178 ゥ己株式等適用指針第8項では次のように規定されている。

「新株予約権の行使に伴い保有する自己株式を新株予約権者に交付する場合の自己株式処 分差額の会計処理は、新株発行の手続きを準用して自己株式を処分する場合の自己株式処 分差額の会計処理と同様に扱う。なお、自己株式処分差額を計算する際の自己株式処分の 対価は、新株予約権の行使の際の払込額と新株予約権の発行価額の合計額とする。」

179 サ三野[20021,50頁参照。

       81

[3ヵ月後の自社株取得時(株価105円)1

    自己株式  1,050万円

     (資本の部の控除)

現金1,050万円

[3年後の権利行使による白杜株譲渡時(自社株の取得単価が98円)1

現金1,000万円   自己株式  980万円

自己株式処分差益  20万円

(その他資本剰余金)

[3年後の権利行使による白杜株譲渡時(白杜株の取得単価が105円)1

  現金1,000万円

自己株式処分差損   50万円

(その他資本剰余金)

自己株式 1,050万円

 ここで、自己株式の取得を資本の控除として扱う理由は、自己株式取得は株主との間の 資本取引であり、会社所有者に対する会社財産の払戻しの性格を持つからである。さらに

自己株式を資本の控除とする場合の会計処理は、①自己株式の保有は処分または消却まで の暫定的な状態であり、自己株式を取得したのみでは発行済株式総数が減少する訳ではな い、という点に着目し、取得原価で一括して資本の部全体の控除項目とする方法と、②自 己株式の取得は自己株式の消却に類似する行為であり、少なくとも自己株式を取得した時 点で社外株式総数が減少する、という点に着目して、資本の部の構成要素に配分して間接 控除または直接減額する方法が考えられる180。自己株式等会計基準では、前者の論拠を重 視し、取得原価で一括して資本の部全体の控除項目とする方法を採用している。

 自己株式等会計基準では、自己株式の処分が新株の発行と同様の経済的実体を有する点 に着目し、その処分差益も株主からの追加払込資本としての性格を有すると考え、これを 資本剰余金として会計処理することとしている。ここで表示科目は、資本準備金が新株発 行時の払込剰余金が表示されている科目であるので性格が近いといえるが、商法上は資本 準備金の積立要件が限定列挙であると解されるので計上できない。そのために、新設され たその他資本剰余金を計上することとしている。そして、この自己株式等会計基準の公表 を受け、商法上公正な会計慣行を掛酌するとされていることから、従来の計算書類規則を 包摂するかたちで新たに制定された商法施行規則においても、自己株式処分差益はその他 資本剰余金として表示する旨が明記された。

 一方、自己株式処分差損については、自己株式の取得と処分を一連の取引と見た場合、

資本の部からの分配の性格を有する。この分配については、①払込資本の払戻しと同様の 性格を持つものとして資本剰余金の減少と考えるべきであるとの見解と、②株主に対する

180 o三野[2002]、51頁。

会社財産の分配という点で利益配当と同様の性格であると考え、利益剰余金の減少と考え るべきとの見解がある。自己株式等会計基準では、自己株式の処分が新株の発行と同様の 経済的実態を有する点を重視し、資本取引により利益剰余金を増減させるべきではないと いう考えの下、資本剰余金を減少させることとしている。このとき、減少させる科目とし ては、資本準備金からの減額が商法上の制約を受けるため、その他資本剰余金からの減額 が適切であるとされる。なお、減額しきれない場合には、利益剰余金のうち当期未処分利 益から減額、または当期未処理損失を増額するとされる。なお、処分差益と処分差損は同 一会計年度内に反復的に起こりうるため、自己株式処分差益と自己株式処分差損は、会計 年度内で相殺したうえで処理することとされている。