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持分決済型の株式報酬取引

第2章  国際会計基準におけるストック・オプション会計の変遷

第4節  持分決済型の株式報酬取引

な株式報酬取引の認識の原則にしたがって、従業員の勤務サービスを費用認識するととも に、それに対応する増加額を資本で認識する。

 以下では、IFRS2におけるストック・オプションに代表される持分決済型制度について の会計処理方法を述べる

力の報酬として株式報酬が付与されることが多いが、このような従業員のサービスの公正 価値を直接測定することは困難である106。

 また権利付与日を測定日としたのは、権利付与目において契約の当事者双方の公正価値 が実質的に同じ、つまり受領が予定されるサービスの公正価値は、実質的に付与される持 分金融商品の公正価値と同じと推定されるからである。なお、IFRS2の検討過程では、権 利確定、行使目、勤務目などが検討されたが、いずれも受領される財貨またはサービスと 付与される持分金融商品の公正価値の間に高い相関関係が存在する可能性が少ないと判断

され、採用されなかった107。

(2)従業員以外との取引

 従業員以外の者との取引については、受け取った財貨またはサービスの公正価値の方が より容易に算定可能であるという反証可能な前提がおかれている。よって、受け取った財 貨またはサービスの公正価値を直接測定することにより、株式報酬が測定される。この場 合、企業が財貨を取得したあるいはサービスが提供された目の公正価値で株式報酬は測定

される108。

 従業員の取引とは異なり、測定目を財貨の取得またはサービスの提供目(引渡目)とし たのは、相手方が財貨やサービスを受領するかどうかを判断するときに、引渡目の持分金 融商品の公正価値が、財貨やサービスの十分な支払いとなっているかどうかを検討するか らである。つまり、財貨やサービスが受領される目の持分金融商品の公正価値と財貨やサ ービスの公正価値との間に高い相関関係があると考えられたからであるI09。

 なお、企業が受け取った財貨またはサービスの公正価値を、信便性をもって測定できな いとしてこの前提に反証する場合には、株式報酬は持分金融商品の公正価値により測定さ れる。この場合、財貨やサービスが受領される目で測定される付与された持分金融商品の 公正価値を参照して、間接的に測定される110.

 IFRS2公表後、従業員以外との取引で、財貨またはサービスが明確に識別できない場合 のIFRS2の適用方法が問題となった。すなわち、このような場合に、上記で述べた受け取 った財貨またはサービスの公正価値が測定できないという反証可能な前提についての規定 の適用方法が問題となったのである。

 具体的には、慈善組織に対して持分金融商品を付与した場合や、受領した財貨、サービ スが明らかに持分金融商品の公正価値を下回る場合などについて、どのようにIFRS2が適

用するのかが検討され、2006年1月、国際財務報告解釈指針委員会(Intemationa1

Financia1ReportingInterpretationsCommittee:以下、IFRIC)は解釈指針第8号「IFRS2 の適用範囲」(8oψθo〆㎜醐:以下、IFRIC8)を公表した。IFRIC8は、認識可能な財貨

106 IAsB[20041,Par孔12.

l07 IASB[2004],paras.BC99−BC105.

108 1ASB[2004],pa胤13,

109 IASB[2004],par孔BC126,

110 IASB[2004],par孔13.

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またはサービスをIFRS2に従って測定しなければならないとし、企業は認識不能な受領し た、もしくは受領する予定の財貨またはサービスを、株式報酬支払いの公正価値と認識可 能な受領した財貨またはサービスの公正価値の差額として測定しなければならないとして

いる111.

4−2 権利確定期間と費用認識

 従業員へ付与された持分金融商品は権利付与日で測定され、測定された公正価値は権利 確定期間にわたり認識される。IFRS2は、付与された持分金融商品が直ちに権利確定する 場合と、権利確定に期間を要する場合に分けて規定している。

 まず、直ちに権利が確定する場合であるが、財貨またはサービスの提供者は、権利付与 目に無条件で持分金融商品の保有者となる。この場合、企業は権利付与日にサービスの総 額を費用認識し、それに対応して資本を増加させる112。

 これに対し、相手方が特定のサービス期間を完了しないと権利確定されない場合がある。

この場合、持分金融商品を対価として得られるこのようなサービスを将来の権利確定期間 にわたり受け取ると仮定して、費用認識が行われる113.IFRS2ではこれについて勤務完了 を条件とする場合と、業績条件の達成を条件とする場合に分けて説明している。

 勤務完了を条件とする場合について、例えば、従業員が3年間の勤務を完了することを 条件にストック・オプションが付与される場合、3年間の権利確定期間にわたり当該ストッ ク・オプションを対価としてサービスが受け取られると仮定することになる114。

 一方、業績条件の達成および業績条件の充足までの継続勤務を条件としてストック・オ プションが従業員に付与されているため、業績条件がいつ充足されるかにより権利確定期 間が変化する場合がある。

 この場合は、企業は当該ストック・オプションの対価として従業員から提供されるサー ビスを、将来において予測される権利確定期間にわたり受け取るものと想定しなければな らない。また、権利付与目において予想される権利確定期間の長さは、業績条件の最も可 能性の高い結果に基づいて見積らなければならない115。

 権利確定期間の長さの見積りについては、株式市場、あるいは株式市場以外の条件が付 与されているかによりそれぞれ以下の点に留意する必要がある。

(1)株式市場条件が付されている場合

 株式条件が付されている場合、予想される権利確定期間の長さの見積りは、付与したオ プションの見積りに用いた仮定と首尾一貫していなければならず、その後修正してはなら

ない116。

111 IFRIC[20061,paras.9−11,

112 IASB[2004],para.14,

113 IASB[2004],para15,

114 IASB[2004],pa胤15(a).

115 PASB[20041,par孔15(b).

116

(2)株式市場条件以外の条件が付与されている場合

 株式市場条件以外の条件、例えば利益、売上規模の増加などを条件とする場合、その後 の情報により権利確定期間の長さが従来の見積りと異なることが示されたときには、必要 に応じて権利確定期間の見積りを修正しなければならない117.

4−3 持分金融商品の公正価値の測定方法

 企業は測定目現在の付与した持分金融商品の公正価値を、市場価格に基づき当該持分金 融商品の契約条件を考慮に入れて測定しなければならない。市場価格を利用できない場合 は、評価技法を用いて独立第三者間価格による測定目現在における公正価値を見積らなけ ればならない118。

(1)株式

 株式を付与する場合は、株式を付与した条件などを考慮して当該株式の市場価格により 公正価値を測定することになる119。

 例えば、従業員が権利確定期間中には配当を受け取ることが出来ない場合には、当該条 件を付与時の公正価値の見積りに考慮しなければならない。また、権利確定後に譲渡制限 が課されている場合にも、その譲渡制限が独立第三者間価格に影響を与える範囲内で公正 価値の測定において考慮しなければならない。

 一方、権利確定期間中に設けられている譲渡制限あるいはその他の制限は、付与時の公 正価値の見積りに影響させてはならない。このような条件は権利確定条件の存在により生

じたものであり、むしろ持分金融商品の数量の見積りに考慮されるからである120。

(2)ストック・オプション

 従業員に付与したストック・オプションについては、市場価格が利用できない場合が多 い。したがって、契約条件が類似している市場取引のあるオプションが存在しない場合に は、付与されているオプションの公正価値はオプション価格算定モデルを適用して見積ら なければならない121。

 オプション価格算定モデノレとしてブラック=ショールズ・モデルが一般的ではある。しか し、このモデルは単純化されたオプション価格算定モデルであり、実際のストック・オプ ションの公正価値測定にそのまま適用することが困難であることが多い。

 例えば、従業員ストック・オプションは長期のものが多く、また権利確定目とオプショ ンの満了時までの期間に行使可能とする条件が設けられ早めに権利行使されることが多い。

ブラック=ショールズ・モデルはこのような期限前権利行使の可能性を考慮せず、その影響 を反映しにくい。また、予想ボラティリティその他モデルの入力値が変動する可能性も考 慮することが出来ない。

 IASB[2004],par孔15(b).l17 l18 IASB[2004],paras.16−17.

l19 IASB[2004],para.B2,

 IASB【2004],par孔B3,120 121 IASB[2004],par孔B4.

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