第4章 ストック・オプション会計基準の国際的収数における相違点
第2節 各国における相違点
2−1 ストック・オプション会計基準対象範囲
IFRS2においては、取得の対価として白杜株式オプションや自社の株式を用いる取引の みならず、対価として現金を支払うものの、その金額が契約等により自社株式の市場価格 と連動することとされている取引や、企業または従業員等の選択により、自社株式または その市場価格に基づく価額に相当する現金が交付される取引についても取り扱っているも
203 蛯ォな相違点として貸方の区分問題があるが、これは後の章にて詳しく検証する。
のがある204.
SFAS123(R)では、企業が、財貨またはサービスと交換に、最低一部が部分商品の公正 価値を基礎とする金額または持分商品を発行し、決済することにより、従業員またはその 他の提供者により従業員またはその他の提供者に対する負債が発生する取引も対象として
いる205。
日本基準は、日本におけるストック・オプション制度の運用実態に即して、その会計処 理を明らかにすることを目的としていることから、その対象範囲を白杜株式オプションや
自社株式を財貨またはサービスの取得の対価とする取引に限って検討を行ったとしており、
範囲が上記IFRS2,SFAS123(R)よりも狭くなっている。ゆえに、SFAS123(R)では 対象範囲とされているファントム・ストック等、負債が生じる取引に関しても範囲には含 めていない。それについて、「企業が従業員等に付与する報酬の類や、財貨又はサービスの 取得に際して付与する対価の額が、何らかの形で自社の株式の市場価格に連動するもので あっても、自社株式オプションや白杜の株式を用いない限り、本会計基準の適用対象とは ならない。ストック・オプションに関する会計処理を取り扱っている他の国際的な会計基 準においては、取得の対価として自社株式オプションや白杜の株式を用いる取引のみなら ず、対価として現金を支払うものの、その金額が契約等により自社の株式の市場価格と連 動することとされている取引や、企業又は従業員等の選択により、自社の株式又はその市 場価格に基づく価額に相当する現金が交付される取引についても取り扱っているものがあ る。しかし、第23項で述べたとおり、本会計基準は、我が国におけるストック・オプショ ン制度の運用の実態に即して、その会計処理を明らかにする必要性に応えることを主な日 的とするものであることから、自社株式オプションや白杜の株式を財貨又はサービスの取 得の対価とする取引に限って検討を行った。206」との解説がなされている。
これは、ファントム・ストックを対象としない理由を明らかにしているわけではなく、
日本では、新株予約権のストック・オプションとしての利用が活発化していることを踏ま え、新株予約権を利用したストック・オプションの会計処理を明らかにすることが急務で あったことから、ファントム・ストック等は対象とせずに議論した結果であるとの説明で ある。したがって、日本においても、ファントム・ストック等の株式連動型報酬制度が増 えてきた場合、これらを対象とした会計基準もいずれ制定することが必要となるであろう と考えられる。
2−2 公正価値の算定方法
IFRS2およびSFAS123(R)は株価条件の効果は、付与目の公正価値に影響を与え、株価 条件がいつ満たされるに関係なく、必要なサービスが提供されれば、費用が計上される207。
204 IASB[2004],paras2(a)一(c).
205 eASB[20041,par孔10.この取引にはいわゆるファントム・ストックが該当すると考え
られる。
206 驪ニ会計基準委員会[2005c1,28項。
207 PASB[2004],paras19−20.FASB[20041,par孔19.
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つまり、IFRS2およびSFAS123(R)では、ストック・オプションの公正な評価単価を算 定する際に、株価条件が考慮に入るのである。
一方、日本基準においてストック・オプションの公正価値はr公正な評価単価X(付与 数一失効の見積数)」として算定される。また、「失効の見込みについてはストック・オプ ション数に反映させるため、公正な評価単価の算定上は考慮しない208」としており、「業績 条件の中には、株価を条件とするもののようなもの209」もあり、公正な評価単価の算定に は考慮することができないとしている。
そもそも、株式オプション価格算定モデルはIFRS2およびSFAS123(R)のように、株 価条件を評価単価の算定に考慮するように設計されている210。日本基準は、公正な評価単 価の算定上、株価条件を考慮せず、失効の見積数で反映させる処理を採用しているが、こ の扱いでは、株価条件を考慮しないため、過大に費用が計上される可能性が考えられる。
なぜなら「株価を条件とするもののように、一般に、権利不確定による失効数を見積もる ことが困難なものが含まれている。211」、「会計処理にあたっては、ストック・オプション の権利不確定による失効数についても最善の見積りを行うことが原則であると考えられる。
しかし、十分な信頼性をもって、ストック・オプションの失効数を見積ることができない 場合には、見積りを行うべきではない。」212と日本基準では述べているからである。つまり、
株価条件による権利不確定による失効数の見積は困難であり、十分な信頼性をもって、最 善の見積ができない限りにおいて、見積を行わないこととしているのである。したがって、
株価条件は原則として、費用計上の際に全く考慮されないことになるのであり、ストック・
オプションの公正価値評価の手法に関しては、日本基準よりIFRS2およびSFAS123(R)
の方が優れているといえるのではないだろうか。
2−3 失効による新株予約権の戻入益
IFRS2およびSFAS123(R)では、ストック・オプションを当初から払込資本と見る考 え方を採っており、権利不行使による失効があっても利益に戻し入れる処理は行わない213。
新株予約権は支払義務を生じさせないため、概念フレームワーク上の負債に該当せず、資 本であるという考え方である。払込資本と考える場合には、利益に戻し入れる処理はあり 得ないことになるのである。
一方、日本基準では、新株予約権は行使された時点で株主資本となり、それまでは株主 資本としての性格が確定していないものとして、権利行使されるまでは株主資本に含めず、
権利行使されずに失効した場合には株主との直接的な取引によらない純資産の増加として
208 驪ニ会計基準委員会[2005c1,6項。
209 驪ニ会計基準委員会[2005c]、51項。
210 レしくは池谷誠[20051を参照されたい。
211 驪ニ会計基準委員会[2005c1,51項。
212 驪ニ会計基準委員会[2005c1,52項。
213
特別利益に新株予約権戻入益として計上するものという考え方を採っている214。
これは、ワラントや新株予約権の会計処理等に関係する既存の会計基準では、これらが 失効した場合に、対応する部分を利益に計上することを求めていたことから215、この処理
との整合性を確保したことによるものである216.
2−4 未公開企業のストック・オプションの取り扱い
IFRS2では、公開、未公開企業にかかわらず、すべての企業でストック・オプションの 公正価値による費用計上を定めている217。これは、未公開企業であっても株価やオプショ ン価格を入手できる類似した上場企業のデータより、予想ボラティリティが見積もること が可能であるとの考えからである。しかし、稀に信頼性を持って権利付与目に未公開企業 の公正価値が測定できないことがあることを認め、そのような場合には、本源的価値によ る測定が適用される218。
また、SFAS123(R)でも、未公開企業のストック・オプションについては、公正価値に よる評価が原則とされている。しかし、IFRS2同様、非常に稀なケースの場合のみ例外的 に本源的価値による会計処理も認めており、かつ、本源的価値による会計処理を行った場 合には、毎期、継続して本源的価値を算定し再評価することが認められており、株価が上 昇するほど、追加的な費用が計上されることになる219。
一方、日本基準では、未公開企業のストック・オプションについては、ストック・オプ ションの公正な評価単価に代えて、単位当りの本源的価値の見積りに基づき会計処理を行
うことができるものとされている220。この単位当りの本源的価値とは、算定時点において ストック・オプションが権利行使されると仮定した場合の単位あたりの価値であり、当該 時点におけるストック・オプションの原資産である自己株式の評価額と行使価格との差額
をさす221。
この処理によると、費用計上額の算定において、付与目にストック・オプションの単位 当りの本源的価値を見積り、その後は見直さないことになる222。したがって、付与目時点 の自己株式の評価額が行使価格以下である場合には、費用計上額がゼロとなる。
このような処理を採用するまでにさまざまな議論がなされた。未公開企業については、
ストック・オプションの公正な評価額について、損益計算に反映させるに足りるだけの信 頼性をもって見積もることが困難な場合が多いと考えられ、未公開企業では一般投資家が
214 驪ニ会計基準委員会[2005c1,9項。なお、権利不行使による失効については、
lFRS2,SFAS123(R)、日本基準ともにほぼ同様である。
215 驪ニ会計審議会[19991,6項一1(1)。
216 驪ニ会計基準委員会[2005c1,42項。
217 IASB[20041,Para.10,
218 PASB[20041,par孔24 (a).
219 eASB[2004].par札25,
220 驪ニ会計基準委員会[2005c]、13項。
221 驪ニ会計基準委員会[2005c1,13項。
222 驪ニ会計基準委員会[2005c1,13項。
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