• 検索結果がありません。

ナスダック

5,803,105,857,098,371.4513,388・6912,396・5219・531・03

187.20 58.57 270.05 132.56 413.22 193.38

(出所)吉川[20021の調査より作成。

 1999年においては、ダウ工業株平均企業およびナスダック100企業ともに費用総額は58 億ドルほどであった。しかし、2001年にはダウ工業株平均企業が約2倍の124億ドル、ナ

スダック100企業は約3.3倍の195億ドルにまで増加している。また、企業規模の違いか ら、ストック・オプションの費用額平均はダウ工業株平均企業の方が高くなっている。次 に、当期純利益の下落率は図表5−2にようになっている。

263 レしい調査方法は吉川[2002]を参照。

図表5−2 当期純利益の下落率

(単位:%)

当期純利益

ダウ

1999年

4.64

ナスダック 21.75

ダウ

2000年

5.78

ナスダック 22.94

2001年

ダウ 9.48

ナスダック 38.36

(出所)吉川[20021の調査より作成。

 当期純利益の下落率は、ダウ工業株平均企業で5〜10%程度、ナスダック100企業で20

〜40%程度の影響を受けることがわかる。またこの3半間で下落率は約2倍にも膨らんだ ことになる。ここから、産業界、特にニュー・エコノミー業種・ベンチャー業界が費用計 上に反対する最大の理由は、利益に与えるこの影響であるといえる。

 次に、株主資本に対する影響である。SFAS123では、ストック・オプションを損益計算 書に費用計上する場合、貸借対照表の資本の部に相手勘定を記載することになる。その場 合、公正価値により算出されたストック・オプションの費用額は株主資本に対してどの程 度の割合を占めるのであろうか。その結果を示したのが図表5−3である。

図表5−3 株主資本に対する影響

(単位:%)

株主資本に対する影響

ダウ 0.86

1999年

ナスダック 3.21

2000年

ダウ 0.99

ナスダック 4.16

ダウ

2001年

1.64

ナスダック 4.74

(出所)吉川[20021の調査より作成。

 前述の図表5−1から明らかなように、ダウ工業株平均企業の方が一企業あたりの費用 額は大きい。しかし、ダウ工業株平均企業はナスダック100企業と比較して多額の資本を 有しているため、その影響は1〜2%程度とそれほど大きなものではない。一方ナスダック 100企業の場合、費用額に対して少量の株主資本しか有していないため、5%に近い影響を 受けることになる。しかし、ストック・オプションの費用計上に伴い株主資本は増加する。

つまり、当期純利益などの利益指標とは変動する方向が異なるのである。株主資本を分母 とするROEなどの指標を計算する場合はマイナスの影響を及ぼすが、自己資本比率に対す る配慮から費用計上に反対することは考えられない。ただし、株主資本が増えるというこ とは、図表5−2で述べたような利益の減少、つまり配当可能利益の減少ということであ る。この観点からすれば、費用計上に反対することは当然ありうると考えられる。

 このように、企業が費用計上に反対する最大の理由は、費用計上により企業利益が大き く減少し、場合によっては赤字に転落することさえ懸念されることであるといえるであろ う。しかし、投資家の立場からすると、開示される当期純利益等を信頼できるものとする

109

ためには、ストック・オプションの費用計上が必須であるともいえる。

 最後に、吉川[20021はダウ工業株平均企業とナスダック100企業それぞれの、注記情報 に記載される公正価値測定時に用いられた変数の違いを調査している。それを見ることで、

ダウ工業株平均企業とナスダック100企業ではなぜ上記のような差が出てくるのかを明ら かにできる。

 公正価値測定にブラック=ショールズ・モデル等のオプション価格算定モデルを用いる 場合、予想配当利回り、予想ボラティリティ、リスクフリーレート、権利行使までの予想 残存期間という変数が利用される。そこで、調査対象企業の各データよりこれらの変数の 平均値を求めたのが図表5−4である。

図表5−4 公正価値測定時に用いる変数の平均値

(単位:%)

1999年 2000年 2001年

ダウ ナスダック ダウ ナスダック ダウ ナスダック

予想配当利回り 1.60 O.07 1.78 0.08 1.84 0.08

予想ボラティリティ 27.87 59.29 31.25 69.38 33.50 71.37

リスクフリーレート 5.45 5.51 6.18 6.00 4.87 4.81

予想残存期間(年) 5.58 4.80 5.63 4.65 5.65 4.60

(出所)吉川[20021の調査より作成。

 図表5−4の変数のうち、ダウ工業株平均企業とナスダック100企業で最も相違が見ら れたのは予想配当利回りと予想ボラティリティである。ナスダック100企業の多くが無配

当であるが、ダウ工業株平均企業はすべて配当があるため、両者に大きな差が生じたので ある。また、予想ボラティリティについても、当該3年間においてナスダック100企業は ダウ工業株平均企業の2倍以上となっている。ブラック=ショールズ・モデルを用いてス

トック・オプションの公正価値を計算すると、配当利回りが小さく、ボラティリティが高 いほどオプションの公正価値は大きく計算される傾向にある。そのため、無配でボラティ

リティが高いナスダック100企業は当然、ストック・オプションの公正価値が高く見積も られることになるのである。

 また、予想残存期間であるが、ダウ工業株平均企業は長期化する傾向にあるが、ナスダ ック100企業は短期化する傾向にある。オプションの公正価値は予想残存期間が長いほど 高く計算されるが、他の要因である配当の低さやボラティリティの高さにより打ち消され ていると考えられる。しかし、このような結果から、ダウ工業株平均企業に代表される伝 統的企業ほど長期的経営目標を定め、人材確保する傾向にあるのに対し、ナスダック100 企業に代表されるニュー・エコノミー系企業ほど人材の変動が高く、より短期的な目標を 設定する傾向にあるといえよう。

 以上のように、ダウ工業株平均企業よりもナスダック100企業の方がストック・オプシ ョン費用計上の影響を大きく受けることが解った。なお、大和総研の調査によると、2001 年に最も多額のストック・オプション費用が見積もられたのはマイクロソフトの22億6,200 万ドルであった。マイクロソフトのストック・オプション付与数は2億2,400万オプショ ンであったが、ストック・オプションの費用額は1オプション当たりの公正価値とオプシ ョンの付与数により決定されるので、多くのオプションを付与したマイクロソフトのよう に、莫大な数のストック・オプションを付与している企業ほど費用計上額は巨額になるの である。逆に、ストック・オプション費用計上の影響が小さい企業は、その多くが300万 オプション以下しか付与していないのである。このような事実は、ストック・オプション 付与数が重要であることを示唆するものである。つまり、ストック・オプションの公正価 値が高くても、付与数が少なければ費用額は少なくなるので、結果的に影響も小さくなる

と考えられる。

 ストック・オプションの公正価値は、ボラティリティによりその値が左右されることが 多い。それは費用計上に伴う影響が大きいナスダック100企業の方がダウ工業株平均企業 に比べてボラティリティが高いことからも明らかであろう。しかし、企業が予想ボラティ リティをコントロールすることには、不確実性が関係することから限界がある。ストック・

オプションの費用総額は、1オプションあたりの公正価値に付与数を乗じて計算されるため、

費用計上が義務付けられた現在、企業がオプション付与数をコントロールすることの重要 性が高まると考えられる。つまり、費用計上による影響を抑えるためにも、この付与数を 企業がうまくコントロールしつつ、ストック・オプション制度を活用していくことが求め

られるであろう。

5−2 日本における影響

  吉川[20021では、日本企業の導入するストック・オプションが報酬の一部であるとの前 提を置いた上で、公正価値法に基づきストック・オプションの価値を測定し、費用計上し た場合にどのような影響を受けることになるかについて調査を行っている。対象企業は、

過去3年以上にわたりストック・オプション制度を継続利用している20社であり264、これ らの企業について前述した米国のケースと同様の分析を行っている265。

 これによると、日本においては、付与数が適切であれば、それほど費用計上による影響 はないとされている。分析の結果、当期純利益の下落率は約6%であり、株主資本の増加も 1%未満であるとの結果がでている。当期純利益の下落率が僅かである理由として、日本で は米国と違い、ストック・オプションの付与数が少ないことが挙げられている266。上田[20031 においても、日本におけるストック・オプションの発行済株式総数に対する付与オプショ

264 g川[20021によると、日本ではサンプル数が少なく、データ入手時の制約が多いとされ

ている。

265 坙{企業におけるストック・オプション費用計上額を試算するにあたり、SFAS123の公 正価値法を参照している。

266 坙{の場合、平均付与数は27万5000株程度であった。

      111