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 上述のとおり、APB025のもとでのストック・オプションに関する報酬費用の計上は、

ほぼ稀であった。しかし、時代とともに株式報酬取引が発展し、複雑化するにつれ、スト ック・オプションに関してもAPB025の規定では不十分となってきた。特に、同じストッ ク・オプション取引であり、業績等で権利行使条件が変わる条件変動型ストック・オプシ

ョンが新たに創出され、従業員等ヘストック・オプションを付与した時点で本源的価値を 測定する方法では、時間的価値が考慮されないので、条件固定型のストック・オプション

との間で会計基準適用上の不備が生じていた305。

 このような状況を踏まえ、1993年にFASBはAPB025にかわる会計基準設定に向けた

公開草案を公表した。この公開草案では、ストック・オプションの価値測定を従業員等に 対するストック・オプション付与時点に統一し、これまでの本源的価値ではなく、強制的 に公正価値で測定することで、ストック・オプション取引に係る報酬費用の財務諸表への 計上を促そうとした。しかし、この公正価値の義務付けに産業界から強い反発を受けた。

である。

301 ̀ICPA[1972]、paras.11−12,

302 ̀ICPA[19721,par孔10,

303 ̀ICPA[1972]、para.14,

304 ̀ICPA[1972]、par札3.相手勘定を株主資本として認識すべきかどうかはA㏄ounting ResearchDivisionにより検討されていたことが明記されている。

305

FASBはこの反発に屈する形で、SFAS123は公正価値による強制的な測定をとりやめ、原 則として公正価値により測定し、本源的価値による測定も容認する形とした。ただし SFAS123では、本源的価値により測定する場合でも、公正価値による測定によれば影響を 受けた当期純利益および一株当たり利益の変動について、注記事項として開示することを

定めている306。

 その後、米国ではストック・オプションに関係した会計不正事件が起こり、経営破綻す る企業が増加したことから、このストック・オプションの会計処理に関する問題は大きく 注目されることとなり、これまで本源的価値により測定してきた企業のうち、自主的に公 正価値による測定を行う企業も出てきたが307,SFAS123は本源的価値による測定を否定し ておらず、依然として本源的価値による測定を続ける企業も多く存在した。このような状 況では、企業間における会計情報の比較可能性が損なわれ、情報利用者から公正価値によ る測定を強制すべきであるとの意見が強まった308。

 公正価値による測定の義務付けの要請が高まるにつれ、公正価値により測定した場合の 報酬費用の計上額に関心が集まるようになった。このストック・オプション取引にかかる 報酬費用計上額が多額なものとなると同じく、相手勘定も多額なものとなる。すでにAPB0 25の規定では、本源的価値による測定で報酬費用の計上が必要な場合は株主持分を相手勘 定とすると想定された。ただし、APB025では、なぜ株主持分とするかについての説明は

されていない。

 FASBは、これまでの会計基準が首尾一貫した会計理論体系に基づいて形成されておらず、

これにより会計理論以外の影響により会計基準がゆがめられているとの批判を受けた309。

この批判を受け、FASBは概念フレームワークにおける財務諸表の構成要素の定義に矛盾し ない会計基準を設定すべく検討を重ねた。

2−1−3 改訂財務会計基準書第123号(StatementofFinancia1A㏄ounti㎎Standaras      No.123(R):λoco口刀施8危r馳〃θ丑舶θゴ地γ㎜θ〃伽凶θ♂2004:以下、

     SFAS123 (R))

 以上のように、ストック・オプションに関連した会計不正事件などから、米国における ストック・オプションにかかる会計基準を取り巻く環境により、公正価値による測定を義 務付ける動きが活発化した。しかしその一方、未だSFAS123は本源的価値による測定を容 認していた。

 同じころ、国外ではIASBがストック・オプションを公正価値により測定することを義務 付ける会計基準について議論を始め、2002年には公開草案を、そして2004年には国際財 務報告基準第2号「株式報酬」(Intemationa1Financia1ReportingStanaard No.2,

跳〃θ丑∂8θ♂地リ㎜θ〃:以下、IFRS2)を公表した。

306 eASB[1995]、para.45,47,

307 eASB[20041,para.B5,

308 eASB[2004],paras.B4−B6,

309 {川[20061,133頁。

      131

 FASBはこのような国際的な動きに合わせる形で、2002年9月にIASBとノーウォーク 合意を取り交わし、SFAS123の見直しに着手した。その結果、2004年12月、SFAS123

(R)が公表された。

 SFAS123からSFAS123(R)への改定で最も注目すべきはSFAS123では従業員等ヘス

トック・オプションを付与した時点に公正価値により測定した際に、計上される報酬費用 の相手勘定が株主持分として認識されるのに対し、SFAS123(R)ではストック・オプショ ンの決済方法に注目し、当初負債として認識する場合が見られることである。

 SFAS123(R)では従業員へ付与されるストック・オプションが、以下のいずれかの条件 を満たす場合、株主持分として認識される会計処理とは異なる方法により処理しなければ ならないとしている310。

・財務会計基準書第150号「負債と資本の両方の性質をもつ金融商品の会計処理」

  (λ…㎜虹〃8加α肋血肋・〃〃加かα〃θ〃広W肋α脳・6θ必此・・ ・肋

 Z由ろ雌ゴθ8刎♂助口切:以下、SFAS150)に規定されるような資本としての性質を有   しない場合。

・もととなる株式が負債として分類される場合。

・現金あるいはその他の資産によりストック・オプションの決済が要求されている場合。

・株価、業績、勤務期間といった(権利確定にかかる)条件ではなく、ある特定の条件に  応じて報酬が調整される場合。

 このうち、SFAS150ではストック・オプションのような株式報酬取引は対象外としてい るが、将来、ストック・オプションが権利行使された場合に、企業側に強制的な償還が義 務付けられているものにっいては、SFAS150を適用することとした311。つまり、当初、

SFAS123では、従業員等に付与するストック・オプションは将来の権利行使の際に、自社 株式を優先的に購入することっまり、持分決済型が前提とされていたのに対し、株式報酬

の形態が複雑化するなかで、ストック・オプションの決済方法に着目した会計基準作りが 進められたのである312。将来、ストック・オプションが権利行使された場合、現金などの 資産が減少する決済方法、つまり現金決済型による場合、従業員等へのストック・オプシ

ョンの付与が株主持分の増加取引に結び付かなくなるのである。

 また、ストック・オプションには、権利行使時点の状況により、持分決済型か現金決済 型かについての選択権が付されている場合もあり、従業員等へのストック・オプションの 付与が単純に株主持分の増加とは考えにくくなってきたのである3i3。したがって、SFAS123

(R)では、ストック・オプションの決済方法に注目し、ストック・オプションの付与時点 において公正価値による測定、報酬費用の計上を前提とし、その後の決済方法に基づいて

310 eASB[2004]、paras.28−35,

311 eASB[2004]、paras.29−30,

312 {川[2006]、136頁。

313

相手勘定を負債とするか、株主持分とするかの判断を行うとしたのである。

 SFAS123(R)では、ストック・オプションが現金決済型により当該報酬費用の相手勘定 が負債として表示される場合、持分決済型のストック・オプションとは異なり、ストック・

オプションは毎期末に公正価値により再測定されることとされている314。つまり、SFAS123 は従業員等へ付与されるストック・オプションを持分決済型とするとの前提で公正価値測 定を行うと考えていたものであるが、SFAS123(R)ではそれぞれの株式報酬取引に見合っ た、より細かな会計処理において、公正価値測定を行うと改訂されたといえる。

 以上のように、現行の米国基準であるSFAS123(R)では、従業員等へ付与されるスト ック・オプションは決済方法により、報酬費用の相手勘定が負債となるか、株主持分とな るか分類される。このような決済方法の違いにより区分表示が異なるのは、そもそも持分 決済型のストック・オプションは、株主持分の増加取引であるという前提から生じたもの

であるとし・えよう。

2−2 岨SBにおけるストック・オプション会計基準