ストック・オプション会計を巡る理論的・制度的研究
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(2) 関西学院大学大学院商学研究科博士学位申請論文. ストック・オプション会計を巡る 理論的・制度的研究. 関西学院大学大学院商学研究科博士課程後期課程. 引地 夏奈子.
(3) まえがき 近年、金融商品の複雑化に伴い、株式や株式オプションを用いた取引が増加してい る。このような背景もあり、国際的にもストック・オプションに関する会計について 議論が盛んになってきた。. ストック・オプション制度は一見すると積極的に活用されるべき制度のように思わ れるが、その活用に対して疑間の声があがった。特にアメリカでは、ユンロン、ワー ルド・コムの経営破綻をきっかけに、費用計上額を抑えた利益追求型の経営に対して の批判が起こった。当時、ストック・オプションは費用計上が義務付けられてはおら ず、ストック・オプションによって得られた経営者の高額報酬が財務諸表に反映され ていないとの批判であった。またそれ以外にも、ストック・オプション制度の導入が 経営者の行動を利益追求型の経営へ誘引する等、ストック・オプション制度が経営者 と株主・投資家の間の利害対立を高まらせる要因となっているとの見方も少なくなか った。さらに、株価の上昇に伴って、多くのストック・オプションが権利行使された 場合、発行済株式数が突然増加して、株式価値の希薄化が起こりかねないとの指摘も なされていたのである。. しかし、ストック・オプション制度を導入することにより、ストック・オプション を付与された経営者や従業員が常に株価を意識して経営を行うようになり、その結果、. 株主重視の経営を行うことと同時に、優秀な人材確保が可能となる。ところがその] 方で、利益等の会計情報はその時点の企業実態を出来るだけ正確に反映していること が望ましいとする観点から、財務諸表に反映されないストック・オプションの存在は、. 会計情報の不透明性につながりかねないとの見解もあった。 このような賛否両論の中、財務諸表の比較可能性の確保、国際的な統一の観点から、. 各国でストック・オプションを付与時に費用認識することが義務づけられることとな. った。まず2004年2月19目に国際会計基準審議会(Intemationa1A㏄ounting StanaardsBoard)が国際財務報告基準第2号「株式報酬」(Intemationa1Financia1 ReportingStandardNo.2,秘〃θ”郷θaPη㎜θ刀C)を公表した。その後、アメリカで. は財務会計基準審議会(Financia1A㏄ountingStandardsBoard)が2004年12月に. 費用計上を義務付ける改訂財務会計基準第ユ23号(Statement ofFinancia1 A㏄ounting Standaras No.123(R):S五〃θ”∂8θ♂0o〃ρθ〃醐方。〃)を公表した。ま. た、わが国でも2005年12月に企業会計基準委員会より、企業会計基準第8号「スト ック・オプション等に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第11号「スト ック・オプション等に関する会計基準の適用指針」が公表され、その結果、3つの基 準は費用認識を義務付けるという点でほぼ同一の内容に収敏された。しかし、費用認. 識義務化という大枠での収敏こそ行われたが、これら3つの基準では未だ取扱いが異 ・1・.
(4) なっているものが存在する。. そこで、本論文では、第1部で今日の費用計上が義務付けられるまでの3つの基準 の経緯と概要、そして3つの基準間における異同を整理する。そして、第2部では、 第1部を受けてその上で、未だ残るストック・オプション会計における問題点を明ら かにし、今後のストック・オプション会計の在り方の提言を試みている。. 本論文で扱ったストック・オプション会計に関する問題には、費用計上の問題、貸 方区分の問題等、会計システムに係るものが存在し、現在において決着はついておら ず今もなお議論され続けている、そのため、筆者にとって壮大なテーマであり、未だ 多くの課題を残している。本論文は決して完成された研究ではなく、これまでの研究 成果をまとめる為に上梓したものであり、今後も頁.’こ研究を進める所存である。. 未熟な筆者が本論文を上梓しえたのは偏に、恩師平松一夫教授のご高配によるもの である。先生には、学部、博士課程前期課程、博士課程後期課程、研究員在籍期間を 通じて今日に至るまでご指導・ご鞭捷を賜っている。論文作成過程において、行き詰 まっている私に適時アドバイスをしてくださった。また、資料収集に当たっては、先 生のご尽力により有益な情報を得ることができた。ここに重ねて厚く御礼申し上げる。. 本論文を礎としてさらに研究を進め、先生の学恩にわずかでも報いたいと期する次第 である。. さらに、関西学院大学商学部の増谷裕久名誉教授、石田三郎名誉教授、梶浦昭友教 授、小菅正伸教授、井上達男教授、林隆敏教授、阪智香教授をはじめ、諸先生からは、. 平素より温かいご厚情とご指導をいただいており、深くお礼申し上げる。また、関西 学院大学大学院経営戦略研究科の石原俊彦教授、西尾宇一郎教授、山地範明教授、上 田耕治教授、中島稔哲准教授、関西学院大学国際学部の木本圭一教授、児島幸治准教 授には、本論文を取りまとめるにあたり、有益なご指導をいただいた。さらに、国際 会計研究会の諸先生からは、研究会等を通じて研究上有益なご示唆をいただいている。 また、深山明教授をはじめとする商学部の諸先生方、大学院の先輩ならびに後輩等、. 多くの方々に研究を進める上で直接・間接にご厚情を賜った。ここに心から謝意を表 したい。. 2010年7月26目 引地 夏奈子. 一2・.
(5) 【目 次】. 序. ストック・オプションを巡る不正会計問題.... 1 はじめに.、.............................. ..1. ........ .2. 2 不正会計問題の表面化........ .2. 3 ストック・オプション制度の問題....... .6. 4 日本における不正操作の可能性........ .9. 5 おわりに.................................................... ....... 第1部 ストック・オプション会計基準の国際的動向.......................... ..11. .13. 第1章米国におけるストック・オプション会計基準の変遷.... .14. 1.はじめに......... .14. 2.APB025からFASB公開草案公表への経緯........................ .16. 3.公開草案からSFAS123へ.... .18. 4.費用計上への動きとSFAS148の公表.... .22. 5.国際的な動向とSFAS123の改訂........... .26. 6.SFAS123(R)の概要.......... .29. 7.ストック・オプション会計の開示例........ .41. 8.おわりに..... .46. 第2章国際会計基準におけるストック・オプション会計基準の変遷_. .47. 1.はじめに..... .47. 2.G4+1の討議資料の内容およびその背景....... .47. 3.IASBにおける株式報酬取引の会計処理の概要............ .48. 4.持分決済型の株式報酬取引...................................__. .52. 5.現金決済型の株式報酬取引......................,............___....、. .64. 6.複合決済型の株式報酬取引.............................._____....._... .64. 7.開示........................ .66. 8.発効目と経過規定.........................................__.___...、___. .69 .69. 9.おわりに..... 第3章日本におけるストック・オプション会計基準の変遷_... ..71. .71. 1.はじめに.... 2.新株引受権付社債利用方式...... _.... 3.自己株式方式.......................................... .72 .73. .74. 4.新株引受権方式.. 5.会計処理例..............................................__.___..一.... ・3一. .75.
(6) 6.新株予約権制度の創設...... ..79. 7.ASBJによるストック・オプション等に関する会計基準... .82. 8.おわりに...... .86. 第4章ストック・オプション会計基準の国際的収敏における相違点... 1 はじめに......................................................................... .88 ...88. 2 各国における相違点....... .88. 3 欧州委員会と国際会計基準との同等性評価............. .92. 4 おわりに...................................、.......................................... ..94. 第2部 ストック・オプションに関する会計問題................_____.一.一一.____.95. 第5章ストック・オプションに関する費用計上の問題.........__.__........___96 1.はじめに......................................................................................................96. 2.ストック・オプションの特徴と問題点........................................一....___..97. 3.SFAS123・SFAS123(R)におけるストック・オプション..........................102 4.費用計上に関する問題点.................................................___.._......._..106. 5.費用計上による影響............................................................._.__._.......108. 6.おわりに.....................................................................................................115. 第6章ストック・オプションに関する公正価値評価の問題..........______.117 1.はじめに....................................、...........................................、...........___117. 2.日本基準における公正価値評価........................................_____......_.118. 3.公正価値単価の評価に反映すべきストック・オプションの特徴.....___.119 4.ストック・オプション公正価値単価の評価方法....................______.123 5.おわりに............................................................................................__..126. 第7章ストック・オプションに関する貸方区分の問題....___.__...____128 1.はじめに......................................................................................____..128. 2.各会計基準における表示区分..............................................._.____....129 3.表示区分の異同..........................................................._____..___138. 4.おわりに.......................................................................................一.__._.142. 第8章ストック・オプションに関する会社法上の問題______..._____.144 1.はじめに............................................................................_____....._144. 2.会社法における新株予約権の規定..........................______..._.___.145. 3.新株予約権の有利発行についての論点..................._____...._一__._147 4.ストック・オプションと労働基準法の関係.............._._.__...、..__._..149. 5.会社法施行後におけるストック・オプション発行手続の実態_____...150 6.おわりに.............................................................................______....151. ・4・.
(7) 第9章 ストック・オプションに関する税法上の問題...... ..... .153. 1.はじめに........... ,153. 2.所得税法上の所得概念........... ,153. 3.ストック・オプション課税の現状....... ,155. 4.裁判例についての考察..... ....... ....... 5.国際課税の視点から見た今後の展望.... 結. ,162 ....... 6.おわりに........ ストック・オプション会計を巡る課題と展望...... .158. ..163. ....... 1 はじめに.... ,167. 2 各章の要約と主な結論...... ,167. 3 課題と展望....... ,172. .166. .174. 参考文献............. 一5・.
(8) 序. ストック・オプションを巡る不正会計問題. 1.
(9) 序 ストック・オプションを巡る不正会計問題. 第1節 はじめに ストック・オプションの歴史は古く、米国ではすでに50年以上の歴史がある。従来は、 優秀な人材に十分な現金報酬を与えられない中堅・中小企業が成功報酬的な目的でストッ ク・オプションを活用してきたが、1990年代以降の株高の過程で大企業にも急速に浸透し. た。米国大企業のCEOの報酬は、80年代までは数百万ドル程度であったが、90年代以降 ストック・オプションの普及により膨れ上がり、例えばTheWaltDisneyCompanies.のMichael. Eisner氏は1993年だけで202億円近い報酬を得た1。. その後、ユンロンやワールドコムの不正と破綻に端を発した会計不信が米国産業界を揺 るがした。それは会計制度にとどまらず、かっては米国企業の強さの源泉の一つとされた. ストック・オプションに対しての会計不信も多発し、ストック・オプション制度自体に対 して猛烈な逆風が吹いた。. ストック・オプションをめぐる主な不正会計操作として、ストック・オプションの権利. 付与目について目付を遡るバックデート操作が不正に行われたという2006年のApple杜疑 惑がある。この事件は、一度は不起訴となったものの、未だ新たな株主代表訴訟が提起さ れている。また、米通信機器大手BrocadeComm㎜ications Systems,lnc.やConverseTechno1ogy,. Inc.セキュリティソフトのMcA舶eなど、ストック・オプション関する不正操作疑惑が噴出 している。これら不正操作疑惑を受け、米国証券取引委員会(SecuritiesandExchange. Commissi㎝、以下、SEC)のCox委員長は2006年9月6日の上院銀行委員会において証言 を行い2、ストック・オプションを巡る不正操作の疑いで、当時100杜以上の米国企業を調 査しており、今後必要に応じて経営者の法的責任を追及していく方針を明らかにした。. 第2節 不正会計問題の表面化 2−1 ストック・オプションの不正操作 ストック・オプションは、あらかじめ定められた権利行使価格で自社株式を購入できる 権利であり、株価が権利行使価格を上回っている場合(イン・ザ・マネー)であれば、権 利を行使して株式を取得し、市場で売却すれば差額分の利益を得ることができる。一方、. 逆に株価が権利行使価格を下回っている場合(アウト}オブ・ザ・マネー)には、権利行 使を行わないでおくことができる。米国では、ストック・オプションの権利行使価格は、 株価の終値または最高値と最安値の平均値を基に決定されることが一般的である。また、. ストック・オプションの付与から権利行使が可能な目までの間に1年あるいはそれ以上の 1園田[19941,17頁。 2詳しくはSEC(h廿p:〃sec.gov/news/testimony/2006/ts090606㏄.htm)を参照。. 2.
(10) 期間がおかれることがあり、その場合にはストック・オプションが付与されても直ちに権 利行使することはできない。ストック・オプションの権利付与日と権利行使が可能な日が 同目である場合には、通常、権利行使価格はその時点の株価に等しく決定される(アット・ ザ・マネー)ため、その時点で権利行使し株式を売却しても差額分の利益は得られないこ ととなる。. SECが調査しているストック・オプションの不正操作疑惑の対象の一つにバックデート の問題が挙げられている3。バックデートとは、ストック・オプションの権利付与目を事前. に定めていないストック・オプションを付与し、付与目については実際にストック・オプ ションを付与した目から目付を遡り設定することである。仮に、ストック・オプションが. 実際に付与された目の株価よりも低い株価をつけた目を付与目とすれば、権利行使価格が その時の株価により決定されるため、ストック・オプションが実際に付与された時点では、 イン・ザ・マネーの状態となる。. 米国では、開示を適切に行っていれば、ストック・オプションの権利付与目をバックデ ートすること自体は違法行為には当たらない。これに対して、上記に挙げたBrocade CommunicationsSystems,Inc.の場合、訴状によれば、起訴されたCEO等は、少なくとも2000. 年から2004年の間、付与目をバックデートして、イン・ザ・マネーのストック・オプショ ンを従業員等に付与していたにもかかわらず、その事実を明らかにしないまま、実際に付 与された目付のみを開示書類に記載して、アット・ザ・マネーのストック・オプションを 付与したかのように虚偽の開示を行っていたとされている4。その結果、イン・ザ・マネー. のストック・オプションの場合に会計上必要である費用認識に関して、同社の場合、数百 万ドルにも上る報酬費用の計上を行わず、利益が実態よりも過大になっていたとされる。 これらは、SECの開示規則、会計基準などに違反する行為である。. このほか問題視されたストック・オプションの操作としては、ストック・オプションを 付与した後の株価上昇を期待して、株価に好影響となる情報が一般に明らかになる前にタ. イミングを操作して付与するスプリング・ローディング、あるいは逆に、株価に一時悪影 響となる情報が明らかになった後にタイミングを図ってストック・オプションを付与する. ブレット・ドッシングなどが行われている可能性があることが指摘されていた。また、企 業情報の開示について、ストック・オプションの付与日を見ながら、開示のタイミングを 操作する行為が行われている可能性が指摘されていた5.. 2−2 学術研究による不正操作疑惑の指摘 ストック・オプションの不正操作に対する疑惑は、経済学やファイナンスの分野の実証 研究が発端となっている。米国企業の経営者に与えられたストック・オプションの収益率 3詳しくはSEC(http:〃sec.gov/news/testimony/2006/ts090606㏄.htm)を参照。. 4詳しくは、Brocade Communications Systems,Inc.(http:〃wwwbrocadejapan.com/news/pr2006 /pr20060726.php)、The New York Times(http:〃wwwnytimes.com/2006/08/1O/business/10brocade.. html?r:1)を参照。 5竹中[2006]、3頁。. 3.
(11) が不自然に高いことに注目した実証研究が行われ、ストック・オプションの付与に際して 不正な操作が行われている疑いがあることが指摘されている。. この問題に関する代表的な研究として1997年に発表されたDavidYe㎜ack教授の論文が. ある6。この論文では1992年から1994年までの間に米国企業のCEOに付与された約600件 のストック・オプションを対象に実証研究が行われ、ストック・オプションの付与目から. 50日間の株価ついて統計学的に有意な通常の収益率を越える正の異常リターンが観察され ている。この結果について、DavidYe㎜ack教授は、株価にプラスとなる情報が一般に明ら かになる前にストック・オプションを付与するスプリング・ローディングが行われていた ことを示唆するものであると指摘している。. その他、ストック・オプションの不正操作に注目した研究として、2000年のAboody教授 とKasznik教授の研究がある。これによると、あらかじめ付与目が定められたストック・ オプションにも正の異常リターンが観察されており、事前に定められた付与目近辺で企業 情報の開示のタイミングについて不正操作が行われているとの指摘がなされている7。. また、2005年に発表されたしie教授の論文では、1992年から2002年の間に米国企業CEOに 付与された約6,000件のストック・オプションを対象に実証研究を行ったところ、付与目の. 前は株価に負のリターンが観察され、付与目の後には正のリターンが観察されると指摘さ れている。また、この傾向は、付与目があらかじめ定まっていないストック・オプション において強く表れることがわかった。この株価の動きについて、Lie教授は、株価が低い目. を狙って付与日をバックデートすることにより、付与したストック・オプションがイン・ ザ・マネーになるように意図的に操作が行われていることが原因ではないかと推察してい る8.. 2−3 不正操作疑惑がある企業例 2005年7月、IT関連の大手企業、Mercury1nteractiveCorp.は、同社のストック・オプション. の不正操作について当局の調査に協力することを表明した。その後の社内調査の結果、ス トック・オプションの付与が適切に行われたものではないことが判明し、経営幹部3人が解. 雇される事態となった。同社はストック・オプションの不正操作に関する内部調査や会計 処理の適正化を行う必要があったため、財務報告の提出が遅れたことにより、2006年1月4 目をもって上場廃止となった9。. また、2006年3月18目、肋e物〃∫炉ee肋舳。Zが具体的な社名を挙げ、ストック・オプショ. ンの付与に関する不正操作疑惑を指摘し(図表1)10、この公表を機に米国内でストック・ 6詳しくはYe㎜ack,D.[19971を参照されたい。 7詳しくはAboodXD.andKasznik,R.[2000]を参照されたい。 8詳しくはLie[2005]を参照されたい。. 9詳しくは日本経済新聞2006年1月4目を参照されたい。 lo. レしくはme肋〃∫炉eeτ力〃moZウェブサイト(http:〃。nline.wsj.com/public/resource/. documents/documents/infb−optionsscore06一仙11.htm1)を参照されたい。. 4.
(12) オプション不正操作に関する疑惑が一気に表面化することとなったのである。. 図表1 不正操作疑惑がある企業例 SEC. 司法省. 経営者. 決算. 調査. 捜査. 辞任. 修正. 経緯. 2006年8月3目、ストック・オプションの付与に関する内部調. ○. ApPle Inc。. 査を1997年まで遡って行ったところ、規則に反する取り扱い が発見されたため、財務報告の修正を行うと公表。. 2006年7月12日、不適切にバックデートされたストック・オプ. ションについて株主から提訴されたことを受け、監査委員会 がストック・オプションについて調査することを発表。8月29. Bames&Nob1e. ○. ○ 目にはニューヨーク南部地区検察局からストック・オプショ ンの付与に関する書類の提出を命じる通知を受け取ったこと を公表。. 2006年1月、前CEOが辞任し、同時に過去のストック・オブシ. Brocade. Communications. ヨンの不適切な会計を修正するべく財務報告の修正を行うと. ○. ○. ○. ○. Systems. 公表。7月20目、バックデートされたストック・オプションを. 従業員に付与したとして、前CEOほか2名が一連の不正操作疑 感の中で起訴された。. 2006年4月、同社はストック・オプションの付与日について、. 会計上の日付と実際に付与した目付で異なっている事実を公. Comverse Techno1ogy. ○. ○. ○. ○. 表。5月4目、ニューヨーク東部地区検察局からストック・オ プジョン付与に関する捜査の召喚状を受けとたことを公表。8 月9日、元経営幹部3名が不正行為などの疑いで起訴された。 2006年6月29目、ストック・オプションの付与の承認目よりも. 前に行使価格が決定されている事実があること公表。報酬費. Home Depot. ○. 川への計上額が1,000万ドルに満たないことを理由に財務報 告の修正は行わないと公表。. 2006年7月3目には、ストック・オプションの不正操作を知っ. ていたとして取締役3名に対する民事訴訟手続きをSECが行. Mercury. ○. ○. ○. うことを支援するようSECから要請されたことを公表。同社. InteraCtiVe はHewle血一Packardが45億ドルで買収する方針を明らかにして いる。. 5.
(13) 1992年から1999年まで目付を変えながら毎月、株価が低いと. ころでストック・オプションを付与。現在はストック・オプ. Microso比. ション制度を廃止。. 出所)me肋〃∫炉ee〃。mmZ(h廿p:〃。n1ine.wsj.com/pub1ic/resources/documents/inわ。ptionsscore 06一制1.htm1)より作成。. 第3節 ストック・オプション制度の問題. 3−1 不正操作の背景 ストック・オプションの不正会計問題は、米国における税制、州会社法そして会計基準 等、ストック・オプションに関係する様々な制度が相互に関連して生じたものといえる。. 米国において、ストック・オプションが様々な業種の企業で利用されているのは、スト ック・オプションが現金などの会社財産の流出を伴わない報酬制度であるとのストック・ オプション制度が持つ利点に加えて、ストック・オプションを幅広く普及させたといわれ る内国歳入法(Intemal RevenueCode)162条(m)が影響していると考えられる11,. 162条(m)は、役員報酬の急激な上昇を抑制することを目的として導入されたものであ. り、具体的には、上場企業のCE0およびCEOを除く報酬額の上位4名に対する年間の報酬額 についての経費控除の上限を100万ドルと定めている。同時に、162条(m)は、報酬対象者 の個人的な能力に直接依存する報酬に対しては、100万ドルの上限の適用を免除することを. 規定しており、この適用除外の対象にアット・ザ・マネーの状態で付与されたストック・ オプションが該当するとされている12。このため、162条(m)は、経営者の報酬に関する経 費控除の上限100万ドルにかからないようにするために、米国企業が報酬の一部としてスト ック・オプションを積極的に利用することを後押ししてきたと考えられる。. そして、ストック・オプションの会計基準のあり方そのものが不正な処理を行うインセ ンティブを与える要因となっていたことが指摘できる。1972年に公表された会計原貝1」審議 会意見書第25号「従業員に発行した株式の会計」(A㏄ounting Princip1es Board Opinion No.25,λ㏄ou刀肋8危r跣。c女ム舳θゴ6o物ノψθθ8:以下、APB025)では、ストック・. オプションに関する会計処理は、株価が権利行使価格を上回る部分のみを会計上費用とし て認識する本源的価値法が採用されていた。ただこの本源的価値法を用いれば、ストック・. オプションが付与された時点で行使価格がその時点の株価と等しいアット・ザ・マネーの ストック・オプションについては本源的価値がゼロとなるので、報酬費用を計上する必要 11. 12. L泉・山岸[19981,18頁。 レしくは有泉・山岸[19981を参照。 6.
(14) がない。そこで、ストック・オプションは会社財産の流出を伴わないことに加え、損益に 影響を与えることなく従業員等に報酬を与えることができるということが大きな利点とと らえられるようになった。つまり本源的価値法では、イン・ザ・マネーのストック・オプ ションについては、本源的価値がプラスの部分を報酬として費用計上しなければならない ので、イン・ザ・マネーであるかどうかにより、損益に与える影響が大きく異なることが、. イン・ザ・マネーのストック・オプションの付与目をバックデートさせ、アット・ザ・マ ネーのストック・オプションに見せかける不正操作を生む土壌となったと考えられる。. このような環境において、米国企業のストック・オプションは、企業の成長や業績向上 への中長期的なコミットメントを得るための役員や従業員に対するインセンティブを与え るというよりは、経常的な報酬の一形態として考えられていたのではないだろうか。経費 控除の額に上限がある給与を補う報酬として、イン・ザ・マネーのストック・オプション の付与が行われ、一方、費用計上を回避する手段として、アット・ザ・マネーのストック・. オプションに見せかけるために、付与目の不正操作が広く行われる結果となったといえる であろう。. 3−2 S肌b㎜es−OxleyAct(以下、SOX法)以降の規制強化13 ユンロンやワールドコムの不正会計事件を受けて、ストック・オプションに関する証券 取引所の上場合杜規則の厳格化や会計上の費用認識の義務付け、株主への適切な開示など の議論が活発となり、ストック・オプション制度見直しの動きにつながった14。問題視され. ていたのは、ストック・オプションを大量に付与することに伴う株主持分の希薄化、ある いはストック・オプションを利用することによる費用の圧迫や利益の水増しなどである。. まず、2002年7月に成立したSOX法では、それまでの会計年度の終了から45日以内とされ ていたストック・オプション付与に関する開示について、ストック・オプションの付与後、. 直ちにその内容について開示を行うことが求められることになった。これを受けて、SEC は2002年8月、新たな開示規制を導入し、ストック・オプションが付与された日から2営業 日以内にその内容を開示しなければならないとした15。. これに関し、2006年に発表されたしie教授とHeron教授の共同研究によると、開示が強化さ. れた2002年8月以降、バックデート等の疑いのあるストック・オプションがそれ以前に比べ て減少していることが指摘されている。具体的には、付与目が事前に決まっていないスト ック・オプションのうち、付与目のバックデートが行われたと考えるものの書11合が、2002 年8月以前は23.0%16であったが、それ以降は10.0%に減少しており17、この新たな開示規制 13. ネ下に述べる規制強化の他にもSECによる開示規則の強化や上場合杜規則の強化もなさ. れた。詳しくは岩谷[2002]を参照されたい。 14 15. レしくは岩谷[20021を参照されたい。 竰J[20021,5頁。. 16. kie,E.,andR.A.Heron,[2006],p.13.. 17. kie,E.,and R.A.Heron,[2006],p.13.. 7.
(15) は大きな効果があったといえよう(図表2)。. 図表2 バックデートされた可能性のあるストック・オプション割合 付与目が事前に定まっていない. スと推定される割合. Xトック・オプション件数. SOX法成立以前の付与分(合計). そのうち付与目がバックデートされ. 13,828. 23.O%. 非ハイテク産業. 10,410. 20.1%. ハイテク産業. 3,418. 32.0%. 中小企業. 4,113. 23.1%. 中堅企業. 6,407. 27.0%. 大企業. 3,308. 15.4%. 6,494. 10.O%. 提出が2営業目以内. 5,002. 7.0%. 提出が2営業目以上. 1,,492. 19.9%. SOX成立以降の付与分(合計). (出所)Lie,E.,andR.A.Heron.,[2006],p.32,Tab1e5.. この共同研究の結果をみると、バックデートされた可能性があるストック・オプション は非ハイテク産業よりもハイテク産業で割合が高く、また、大企業よりも中小・中堅企業 で割合が高い。つまり、lT関連の新興企業を中心に付与目に関する不正操作が行われたこと がうかがわれる。. そして、ストック・オプションに関する会計上の取扱い、つまり、費用認識問題につい. ては、2004年12月に財務会計基準審議会(Financia1A㏄ountingStandardsBoara:以下、. FASB)から新たに改訂財務会計基準書第123号(Statement ofFinancia1A㏄ounting Stand−ard−s No.123(R):λcoou〃血〃8危r肋〃θ丑28θゴCb㎜ρθ〃脳血。〃6θ㎡8θゴ2004:以. 下、SFAS123(R))を公表した。これにより、2005年6月16目以降開始する会計年度以降、. 上場企業は役員や従業員に付与するストック・オプションについて、二項モデルやブラッ ク=ショールズ・モデノレを用いて公正価値を測定して費用認識し、報酬費用として計上す ることが義務付けられた。. これにより、アット・ザ・マネーのストック・オプションに与えられていた事実上の優. 遇措置がなくなり、損益に影響を与えることなく従業員等に報酬を与えるというストッ ク・オプションの利点が失われることとなった。 8.
(16) また、ストック・オプションの利用を促進することとなった内国歳入法の162条(m)に ついては2008年10月に金融安定化法(EmergencyEconomicStabilizationAct)が成立したこと. により、CEO,CFO、および、報酬額で上位3人の役員報酬に対する内国歳入法第162条(m). における損金算入の上限額を100万ドルから50万ドルに減額することとなった。また、従 来、162条(m)の対象外だったストック・オプション等の業績べ一スの報酬もこの制限の 対象となったのである。これにより、ストック・オプションの付与日に関する不正操作は 解消されることとなるであろう。. 3−3 SOX法以降の不正操作の可能性 以上のように、ストック・オプションに関連する制度の見直しが行われた結果、今後米 国企業がストック・オプションの付与日に関する不正操作を行う余地があるとは考えにく く、またそうした不正を行うインセンティブも働かないであろう。そもそもストック・オ プションの費用処理が義務付けられたことにより、会計上の利点がなくなり、ストック・ オプションの利用そのものを取りやめる企業が出てきている。例えば、Microso冊は2003年 7月に従業員に対するストック・オプションを廃止し、現物株式の支給に変更した18。また、. Inte1も2006年1月にストック・オプションから現物株式の支給に変更している19。 しかし、SFAS123(R)の公表により、公正価値の測定方法など処理面での問題、さらに、. 国際的統一を含めた問題が生じ、ストック・オプション制度は新たな局面を迎えることに なるであろう。. 第4節 日本における不正操作の可能性. 4−1 ストック・オプションの導入 日本では、1997年の商法改正により新株引受権または自己株式の方式を用いて、役員や 従業員に対しストック・オプションの付与が可能となった。その後、2001年の商法改正に より新株予約権制度が導入され、ストック・オプションは新株予約権の無償発行として、. 有利発行と捉えられた。この改正以降、ストック・オプションはより一般的に次第に利用 されるようになった。さらに、2006年に施行された会社法では、ストック・オプションの 新株予約権の無償発行に加え、付与対象者に新株予約権の払込価額相当額の金銭を報酬と して支給し、権利行使時までにその報酬債権と払込価額を相殺する方法による有償発行に よることも可能とされ、ストック・オプションの付与に関して複数の方法が認められるこ ととなった。. 18. 19. 坙{経済新聞、2004年3月3目。 坙{経済新聞、2006年1月31目。 9.
(17) 4−2 不正操作の可能性 日本においても既述した米国で行われたようなストック・オプションに関する不正操作 が行われる可能性はあるのであろうか。. 会社法施行前商法では、ストック・オプションは常に無償で付与するものとされていた ので、有利発行として株主総会の特別決議が必要とされており、厳格な手続きが要求され ていた。また、新株予約権の発行日以降には遅滞なく新株予約権原簿を作成しなければな らず、新株予約権の内容も登記事項とされていた。これは、会社法でも同様である。. これに対し、会社法では、ストック・オプションの付与について、株主総会決議が必要 でない場合がある20。公開会社では、特に有利な発行に当たらない場合には、取締役会決議. によりストック・オプションを発行することができる。それが取締役に対するストック・ オプションの付与であれば、取締役の報酬等の決定手続きとして総会決議が必要になると 解されているが、従業員への付与の場合にはそのような手続きが不要であり、取締役会決 議のみで付与できる21。. 会社法では、新株予約権として募集の前に募集事項を定めなければならず22、この募集事 項に記載すべき事項として、新株予約権の内容、数などに加え、「割当目」が規定されてお り、ストック・オプションの付与日は割当目に該当するとされている23。公開会社以外は募. 集事項の決定について株主総会における決議が必要とされているが、公開会杜の場合、募 集事項の決定は取締役会決議でたりるとされ、さらに、取締役会決議で決定された募集事. 項は割当目の2週間前までに株主に対して通知または公告しなければならないとされてい る24。. つまり、会社法のもとでは、公開会社がストック・オプションを発行する場合、有利発 行でなければ、必ずしも株主総会決議を経る必要はないが、取締役に対してストック・オ プションを付与する場合には、取締役の報酬等に関する総会決議が必要となり、付与目の 前には募集事項を株主に明らかにしなければならず、これらにより株主に監視される仕組 みとなっている。. また、ストック・オプションに関する会計上の取扱いであるが、かつてはアット・ザ・. 20. ?ミ法239条。会社法施行前商法においては、無償発行のストック・オプションは、特 に有利な条件で発行する新株予約権として位置づけられ、株主総会の特別決議が必要とさ れていた。しかし、会社法では、無償で発行する新株予約権が有利な発行であるという考 え方を採用せず、労働の対価として新株予約権を発行する限り、ストック・オプションは 労働の対価として公正な条件で発行する新株予約権であると解釈することとなり、取締役 会決議のみで発行するものと解釈されている。 21 レしくは相澤・豊岡[20051を参照されたい。 22. ?ミ法238条。. 23. 驪ニ会計基準委員会[2005a1,2項(6)。. 24. ?ミ法240条。 10.
(18) マネーのストック・オプションであろうとイン・ザ・マネーのストック・オプションであ ろうとストック・オプションを会計上の費用として認識する必要はなかった。しかし、2005. 年に企業会計基準委員会から、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会 計基準」、企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適. 用指針」が公表され、日本でもSFAS123(R)や国際会計基準におけるストック・オプシ. ョンの費用計上を義務付けている国際財務報告基準第2号(Intemationa1Financia1 ReportingStandardsNo.2:跳〃θ加8θa地ア㎜θ〃)と同様、費用計上が義務付けられた。. これにより、会社法の施行と歩調を合わせるかたちで、2006年5月1目以降に付与される ストック・オプションについては、付与目における公正な評価額について付与日から権利 確定目までの期間にわたり費用として計上しなければならないこととなった。公正な評価 額を測定する新たな会計基準では、アット・ザ・マネーのストック・オプションについて も、イン・ザ・マネーのストック・オプションについてもすべて費用計上が求められるこ ととなったのである。. 以上より、日本においては、制度上は米国よりもストック・オプションの付与に対して 株主の関与の度合いが強く、株主が監視しやすい仕組みとなっており、米国で多発した付. 与目のバックデートによる不正操作を行う余地はほぼないと思われる。しかし、SOX法施 行後の米国同様、公正価値測定に絡んだ不正や国際的統一の方向に向かう中、どのように 歩調を合わせるかが問題となってくるであろう。. 第5節おわりに 米国におけるストック・オプションの不正会計問題において、注目すべきはSECが調査 を行い、その結果、不適切な処理が行われていたことがわかれば、その企業は大きな問題 を抱えることとなるということである。ストック・オプションに関して適切な費用計上を 行っていなかった企業は、会計処理の適正化により過去の利益を下方修正する可能性が大 きい。その際には、過年度の財務諸表を精査しなければならず、財務報告の提出が遅れる こともありうるのである。不正操作の疑いのある企業は上場企業が多く、この財務報告の 提出の遅れにより上場廃止の処置がとられることがあり、このリスクを背負うこととなる。. また、不正操作に経営者が加担していれば、責任としての辞任や解任といった事態も想定 できる。. これまで述べてきたように、以前より米国のみならず、国際的にストック・オプション の不正操作は行われにくい環境が整いつつある。しかし、新たな規制、基準が公表される に伴い、いままでとは違う新たな問題が生じている。 今後、今までよりストック・オプションに関する不正は減少すると思われるが、万が一、. 新たな不正操作が明らかとなれば、資本市場を揺るがす問題に発展する可能性は否定でき ない。今後もストック・オプションに関する不正操作に関する進展を十分に見極める必要 11.
(19) があるであろう。. 12.
(20) 第1都 ストック・オプション会計基準の国際的動向. 13.
(21) 第1章 米国におけるストック・オプション会計基準の変遷. 第1節はじめに ストック・オプション制度は、米国において1920年代に誕生し、1950年代から広く利 用されるようになった。当時、ストック・オプション制度は企業に資金負担を生じさせな いという特徴をもつことから、損益計算において認識対象とはされなかった。. しかし、ストック・オプション制度が企業において重要な報酬制度であるとの認識が高 まり、その後、ストック・オプション制度も会計上認識すべきであると考えられるように なった。そして、1948年に会計手続委員会(CommitteeonA㏄ountingProcedures:以下、 CAP)より会計調査公報第37号(A㏄ounting Research Bu11etin No.37,ノ㏄om伽g伽 Comρeη∫α〃。〃肋肋eFormψ∫cooたqρ〃。n∫:以下、ARB37)「ストック・オプションの形態に. よる報酬の会計処理」が公表された。これは、米国におけるストック・オプションに関す. る最初の会計基準である。ARB37では、「権利確定目」に当該株式時価と行使価格との差 額を報酬総額として認識する本源的価値法が採用されていた25。しかし、ARB37において、 本源的価値法による費用計上に関する会計処理とその理論的根拠は示されていなかった26。. そこで、1953年にARB37が改訂され、会計調査公報第43号(A㏄ounting Research Bu11etinNo.43,ノ㏄om加g力γCom舳。〃。ηゴn伽ハ。κmヴ∫cooたqρ〃。〃8伽舳e〃95V:以下、. ARB43)第13章B「ストック・オプションおよび株式購入プランに含まれる報償額」が公 表された。ARB43において、ストック・オプション制度も会計上認識すべき対象であるこ とが明確にされ、また、このような報酬費用を認識しないと利益の過大計上につながる可 能性があると指摘され、認識時点として「権禾1」付与目」が重要性を持つとされた27。つまり、. ARB37の権利確定日よりも、ARB43の権利付与目の方が、早い時点に測定されることに なる。そして、ARB43での測定については、株価変動を予測することが困難であることか ら、測定目時点の株価と行使価格との差額をストック・オプションの価値とする本源的価 値法の採用を促した。しかし、すべてのストック・オプションについて、費用計上が求め られるのではなく、報酬の性質を持つストック・オプションについてのみ費用計上するこ とが規定されていた。逆に、報酬の性質を持たないストック・オプションは単なる資木取 引とされ、労働が提供された取引とはみなさず、増資の手段あるいは取締役や従業員の自 社株保有を促進するための手段と位置づけられていた。. なお、ARB43では、報酬の性質を持つか持たないかについては、具体的な基準が設けら れておらず、付与の際に報酬の意図があるか否か、さらに付与の際になんらかの具体的な 25. サ三野[2002]、161頁。「本源的価値とは、いま行使した場合のオプションがもつ価値と ゼロのうち大きいほう、と定義される。」. 26. │口[2001]、99頁。ARB37では、ストック・オプションをどの時点で認識し、どのよう に測定するかについての意見しか述べられていなかった。. 27. `ICPA[1953],Chapter13,Section B,par孔1.. 14.
(22) 義務があるか否かにより判定されるとされており28,ARB43においても、ARB37と同様、 具体的な会計処理とその理論的根拠が示されることはなかった29。. さらに、ARB43を補強するものとして、1972年に会計原則審議会意見書第25号「従業 員に発行した株式の会計」(A㏄ounti㎎Princip1es Boara Opinion No.25,ん。oαM刀8伽. 跳。o左お舳θゴ6o亙㎜μψθθ8:以下、APB025)、およびその解釈指針として、1978年に. FASB解釈第28号「株式値上がり受益権及び変動型ストック・オプションや報酬計画の会 計」 (An Interpretation of APB Opinions No.15and−25:λocoα〃血〃8危r跳。〇五. λ〃〃。出血。〃励ψね舳ゴα力θr脆h泌加&oo左φ血。〃。rλ〃aガ肋〃:以下、FIN28). が公表され、ストック・オプション会計についてさらなる整備がなされた。このAPB025 とFIN28が、米国における会計基準として機能していた。. APB025においては、ARB43を踏まえ、報酬の性質を持つか否かについて区別する基準 が示された。具体的には、以下の4つの条件をすべて満たす場合、非報酬プランとされて いる30。. ①一定の雇用条件に当てはまる、実質上すべてのフルタイムの従業員に付与されているこ と(ただし、社外流出株式の一定割合を所有する従業員と取締役は除外されてよいとさ れている)。. ②均等に、あるいは、給料・賃金の一定割合を基準にして付与されていること(ただし、 従業員がストック・オプションを通して購入できる株式数を制限してもよいとされてい る)。. ③ストック・オプションの権利行使期間が合理的な期間に制限されていること。 ④株価からの割引額が、株主またはその他の人々に対して、発行する場合よりも大きくは ないこと。. 上記の条件をすべてみたすようなプランは、企業が単に新株発行による増資を行ったり、. オーナーシップの集中を避けるために従業員や役員に企業の株式を市場よりも低い価格で 提供するためのものとみられる。そのため、従業員等に労働の対価としてストック・オプ ションの付与がなされているわけではなく、またそれが報酬として認識すべきほど書11引発 行になっているわけではないと考えられたのである。. APB025において報酬プランについて費用認識する場合、オプションの権利行使価格が オプションの測定目の株価より低い場合は、その差額をストック・オプションの価値とし て算定する(図表2−1ケース①)。逆に、高い場合にはストック・オプションの価値はゼ ロとするとされている(図表1−1ケース②)。. 28. `IcPA[19531,chapter13,secrion B,Paras.3−5.. 29. │口[2001]、100頁。. 30. AIcPA[19721,Para.7.. 15.
(23) 図表1−1 APB025におけるオプションの価値 〈ケース①> 〈ケース②> オプションの 価値はゼロ オプションの オプションの. 測定日の株価. 測定目の株価. (出所)AICPA[1972】,para.11より作成。. なお、オプション付与目にオプションの条件が固定されている条件固定型オプション・ プランの場合、オプション付与目が測定目となるが、権利行使価格が後目変動するなどの 規定が盛り込まれた条件変動型オプション・プランの場合は、具体的条件が確定した日が 測定目となる。そのため、その時点の株価と権利行使価格の差額がストック・オプション の価値になる31.. APB025において、ストック・オプションの価値がゼロより大きい場合、報酬費用とし て認識した測定日現在のストック・オプションの価値は、雇用主が従業員から対価として 受け取るサービス提供期間にわたり損益に計上されることになる32。したがって、測定日に. 繰延費用が貸借対照表に計上され、サービス提供期間にわたり均等に報酬費用が損益計算 書上で認識されることになる。このサービス提供期間はプランにより異なるが、オプショ ン付与日からオプション権利確定目までの期間であるケースが多い。. このようにAPB025は、ストック・オプションが企業からの資金流出を伴わないとの特 徴から費用計上を行わないという考えは不適切であるとの立場をとっているのである。し. かし、APB025において、すべてのストック・オプションについての費用計上が求められ ているのではなく、APB025で費用が認識されるのは、業績達成度に応じて数量と行使価 格が確定する条件変動型オプション・プランに限られていたといえる。. 第2節 APB025からFASB公開草案公表への経緯 APB025によりストック・オプションの会計処理が明らかとなり、付与したオプション の価値を算定時点の株価と権利行使価格との差額により測定することとなった。この方法 は、オプションの価値を本源的価値と時間的価値33に分けた場合に、本源的価値でのみ評価. 31. AICPA[1972],para.11. 32. AICPA[1972],paras−12−15.. 33. サ三野[2002]、162頁。「将来満期日までに株価が上昇すると、さらなる利得を手にする. 16.
(24) するものであるといえ、時間的価値を考慮しない方法である34。. しかしながら、APB025における方法は、首尾一貫しないとして様々な批判を受けた。 特に条件変動型オプションでは報酬費用が認識されるのに対し、条件固定型オプションに. 関する費用計上が実質的に行われないのは不合理であるという批判が相次いだ。この APB025の一貫性にかける会計処理は、多くの企業に条件固定型ストック・オプション制 度の採用を促す結果となった。つまり、APB025は以下のような重要な問題を抱えていた といえる35。. ①役員・従業員に付与されたストック・オプションには、通常、譲渡不可能、あるいは 譲渡する市場が存在せず、また、退職、業績水準の未達成等により権利喪失の可能性があ るという制限が付くが、価値ある金融商品であることにはかわりがない。しかし、条件固 定型ストック・オプションの場合において権利付与日時点で株価以上の権利行使価格が設 定されている場合、ストック・オプションを付与したという経済的事実が会計上認識され ないことになる。. ②条件固定型ストック・オプションは権利付与日時点における本源的価値による費用処 理が、そして条件変動型ストック・オプションは権利内容が確定した目における本源的価 値による費用処理が規定されていた。これにより、権利付与目時点で株価以上の権利行使 価格が設定されていた場合、将来において株価が上昇すれば、前者は費用計上がなされず、 後者は費用計上がなされることとなる。. ③条件変動型ストック・オプションは権利付与目以降の測定となるので、権利付与日時 点で株価以上の権利行使価格が設定されていても、将来において株価が上昇によって費用 計上されることとなる。よって、インセンティブ効果がより期待できる条件変動型ストッ ク・オプションよりも条件固定型ストック・オプションが好まれ、会計基準が経済取引を ゆがめてしまっている。. 以上のような問題により、財務諸表の信頼性は低下し、条件固定型ストック・オプショ ン制度採用企業と条件変動型ストック・オプション制度採用企業との間の比較可能性が損 なわれていた。さらに、当時ストック・オプションの行使により経営者が莫大な利益を得 ているという事が報じられたことで、ストック・オプションに対する社会的関心も高まっ た。. そして、これらの批判と、1980年代初頭における条件固定型ストック・オプションの劇 的な増加36により、米国公認会計士協会(American Institute of Certi丘ed Pub1ic A㏄ountants:以下、AICPA)、証券取引委員会(Securitiesana Exchange Commission:. 以下、SEC)およびビック8の会計事務所等は、APBを引き継いだ財務会計基準審議会 (Financia1A㏄ounting Standaras Board:以下、FASB)にAPB025を再考するように ことができるが、その時間的余裕による経済価値を評価したものを時間的価値と呼ぶ。」 34. AICPA[19721,para.1O. o三野[2002]、15−16頁。. 35. 36. cechow;Hutton and S1oan[1996],p.3.. 17.
(25) 促すこととなった。. また、1991年以降、Levin上院議員がSECとFASBに圧力をかけてきたこともAPB025 再考に大きく影響した。Levinは、当時の従業員ストック・オプションを隠匿された報酬 (stea1th compensation)と考え、SECとFASBは、公開企業に、従業員ストック・オプ ションの公正価値を控除することにより利益を減少させるよう要求すべきである、という. 法案を1993年1月28目付けで提示した37。この法案は、会社役員ストック・オプション 説明責任法(Co叩。rate Executive Stock OptionA㏄ountabi1ityAct)と呼ばれ、その根拠. は次のようなものであった。それは、一つ目に米国企業の役員報酬が相当に高いこと、二 つ目に役員報酬の高い原因がストック・オプションにあること、そして三つ目に、ストッ ク・オプションが会計処理上では費用計上されないのに、納税申告書上では損金算入され る唯一の役員報酬であることであった38.. 1991年以降のこのような議会の圧力により、FASBは1993年4月8目に、従業員スト ック・オプションは費用として認識されるべきことを決定し、1993年6月30日に公開草 案第2号「株式を基礎とした報酬の会計」(ExposureDra冊2,ん。oαM刀8加跳。c女加8θ♂ α㎜ρθ〃8a6ゴ。〃:以下、ED2)を公表した39。. このように、公開草案の公表の主な契機は、1980年代初頭のAICPA,SEC、およびビッ. ク8の会計事務所等がAPB025の再検討を要請したことと、Levin上院議員による法案の 提示と考えられる。. 第3節 公開草案からSFAS123へ 3−1 公開草案への反対とSFAS123の公表 さて、1993年に公表された公開草案の内容は、以下のようなものであった。. 公開草案の規定は、株式による報酬制度のすべての型に適用され、それによりAPB025 の首尾一貫性の欠如は取り除かれるとしている。公開草案では、二項モデルやブラック= ショールズ・モデノレ等のオプション価格算定モデルを利用して、ストック・オプションの. 付与目に公正価値で報酬コストを前払報酬として資産認識し、従業員の役務提供期間にわ たって報酬費用として費用を期間配分するとしている。仕訳では以下のようになる。. (付与日) (期 末). 前払報酬 ××× 報酬費用 ×X X. 未行使ストック・オプション ×X X 前. 払. 報. 酬 X X X. この繰延報酬の資産認識はFASBにおける、財務会計概念書第6号(Statement of. 37. 38 39. qouseand Barton[19931,P.67.. ?禔m19941,68頁。 cechow;Hutton and S1oan[1996],p.3.. 18.
(26) Financia1A㏄ountingConceptsNo.6,〃θ血θ〃80f乃h伽曲ノ8佃Cθ㎜θ比8:以下、SFAC6). の資産の定義40と合致させている。ストック・オプション契約において、従業員等はストッ. ク・オプションを保有、行使する権利を得るためには将来機関に労働役務の提供等を行う 必要がある。この点から公開草案では、権利付与目において企業が将来期間の従業員等の 労働役務等から経済的便益に対する排他的な権利を有し、当該便益に他の実体が接近する のを支配することができる、と考え、ストック・オプション契約に基づいた将来期間にわ たる労働役務等の提供を受け取る権利を表す前払報酬は「発生可能性の高い将来の経済的 便益」を表すと考えたのである41。さらに、前払報酬は貸借対照表で、報酬費用は損益計算. 書で認識し、単なる脚注によるディスクロージャーではない点についても概念フレームワ ークの規定と合致している。つまり、ディスクロージャーは、ある項目に対する財務諸表. 上での認識を代替しうるものではないというFASBにおける財務会計概念書第5号 (Statement ofFinancia1A㏄ounting Concepts No.5,五θoo騨〃。〃∂〃♂M6∂舳”θ血θ〃血. ”刀mo〃8鮒θ〃θ比80fβu曲θ醐励6θη必θ8:以下、SFAC5)の規定42に基づいている のである。. このような公開草案に対してどのような反応があったのであろうか。これは、会計の政 治化の過程ともよべるものであった43。権利付与目時点で株価以上の権利行使価格が設定さ. れている場合であっても費用計上を要求するこの公開草案の方法に対して、産業界等から 激烈な反対運動が起こった44。経営者たちが、利益の減少によってストック・オプション報. 酬が縮小することを危惧したことから起こった運動である。この反対運動はついには議会 をも巻き込む政治問題へと発展し、FASBは公開草案の改訂を余儀なくされた。. 以下、FASBが公開草案を改言下し財務会計基準書第123号「株式を基礎とした報酬の会 計」(StatementofFinancia1A㏄ounting Standards No.123:ん。o〃〃痂8危r跳。o女丑郷θ♂. α理θ〃醐6ゴ。〃:以下、SFAS123)が採択されるまでの背景を述べる。. 前述した公開草案を公表する契機となったLevinの法案は、報酬コストの認識を支持し. たものであったが、1993年6月29目にこの法案とは正反対の法案がLieberman上院議員. により提示された。これは1993年持分拡大法(TheEquityExpansionActof1993)と呼 40. eASB[1985]、平松・広瀬訳[2002]、297頁。「資産とは、過去の取引または事象の結果と. して、ある特定の実体により取得または支配されている、発生の可能性の高い将来の経済 的便益である。」 41. eASB[19931,paras.63,102,125,129.. 42. eASB[1984]、平松・広瀬訳[20021,215頁。r認識とは、ある項目を文字と数値の両方を 用いて表現し、かつ、その項目の数値が財務諸表の合計数値の一部に含められることをい うので、財務諸表以外の他の財務報告の手段によって開示される情報は、認識とはいわな い。したがって、注記もしくは財務諸表に挿入する方法、補足情報またはその他の財務報 告の手段によって提供されることがある財務諸表項目およびそれらの測定値に関する情報 が開示されても、それは認識基準を満足する諸項目として財務諸表において認識すること. の代わりにはならない。」 43これについては、今福[1992]を参照されたい。 44. FASB[19951,paras.57−58−. 19.
(27) ばれた。この法案は報酬費用を全く計上しないというものであり、その根拠は次のような ものである。. まず、米国において活力があり、雇用機会を創出しているのは規模の小さい新興企業で あって、またそのような企業にとり、ストック・オプションは少ない資金で従業員を確保 できる報酬制度として不可欠である、と指摘し、そして米国の成長産業を保護し、従業員 の持株を増やすために、ストック・オプションによる報酬制度を維持発展させることが重. 要であるとの内容である45。この法案は、SFAS123公表の一つの契機になったと考えられ る。ここで注意しなければならないのは、2つの法案の対象の違いである。Levinの法案で は、高額の報酬を受け取る大企業の最高経営責任者を含む役員の報酬を対象としている。. これに対して、Liebermanの法案では、中小の新興企業(特にハイテク産業)における従 業員を対象としており、これは従業員一般を意味するものである。つまり、両方案の対象 は同レベルの地位にある人々ではなかったのである。. 議会は、前述しだしevin法案(報酬コスト計上支持)とLieberman法案(報酬コスト計. 上反対)が提出された後、1994年に次の2つの決議を上院で採択した。1つ目は、FASB はストック・オプション制度に関する現在の一般に認められた会計基準を変更すべきでは ない、とするものである。そして2つ目は、議会は会計基準を立法化することにより、FASB の意思決定過程の客観性や高潔さを失うべきではない、とするものである46。さらに、議会 の圧力はこれだけではなかった。数名の議員は「1994年会計基準改革法」案を提示し、FASB. にさらなる圧力をかけてきた。この法案によれば、財務諸表を作成する場合に使用する現 在の会計基準の改言下や新しい会計基準の設定は、SECのメンバーの大多数の賛成投票があ. ったときにのみ有効となり、また、この法案は、FASB,AICPAの会計基準常任委員会、 FASBの緊急間題専門委員会(Emerging Issues Task Force:EITF)およびSECの承認 を要求するというものであった。さらに、現在のGん肥階層化における各階層の内容につ いても、SECの承認が要求される。これに関連して、当時のクリントン大統領も、ストッ ク・オプションの会計問題を立法化するのは回避すべきであるとの見解を出しながらも、. もし公開草案が米国における大部分のハイテク産業の競争力を弱めるのであるならば遺憾. である、との意見表明をした。これらの会計基準立法化の意見に対して、米国会計学会 (American A㏄ounting Association:ん蛆)、刈CPA、財務担当経営者協会(Financia1. ExecutivesInstitute:FEI)およびSECのチーフ・アカウソタント等は公式に反対の意見 表明をした47。. さらに、公開草案に対する主な批判は以下のようなものであった48。. ①ストック・オプション取引は、概念的にも資本取引であり負債取引でないので、費用認 識すべきではない。 45. ?禔m1994]、68−69頁。. 46. FASB[1995],para.376.. 47. 葬ャ2001]、230−231頁。. 48. 蒼c[2001]、232頁。. 20.
(28) ②ストック・オプション価値の見積もりは実務上困難であり、その数値に信頼性を見出す ことは出来ない。. ③会計基準の変更による利益の不必要な減少は、米国企業、特にハイテク産業の国際的競 争力を一層弱めることになる。そしてこの不利益によって、多くのストック・オプショ ン制度そのものの減少を促すことになるであろう。. ④公開草案の会計基準が財務報告を改善するものであるかどうかは明らかでない。. このような背景のもと、1995年10月、FASBはSFAS123を公表した。反対運動の影響 もあり、SFAS123では権利が確定したオプション数についても権利付与目の公正価値を費. 用計上することを推奨するが、従来のAPB025による会計処理を適用し、権利が確定した オプション数について権利付与目の公正価値を費用処理した場合の影響額を注記するとい. う方法も認められた。つまり、FASBは政治的解決を図って、SFAS123を公表することと なったのである。. 3−2 SFAS123の特徴 SFAS123では、本源的価値に時間的価値の要素を加えた公正価値でオプション付与目に 付与されたオプションの価値が算定され49、算定された価値は、報酬費用としてサービス期. 間にわたり認識され50,APB025で行われた報酬プランと非報酬プランとの区別は行わず、 すべての従業員株式報酬制度(従業員持株制度を除く)に対して公正価値法を適用するこ とを奨励していた。. SFAS123では、公開企業において付与されたストック・オプション等の公正価値は、オ プションの行使価格、オプション付与目現在の株価のほか、以下の仮定を考慮したオプシ ョン価格算定モデルを使用して見積もらなければならないとされていた。なお、オプショ ン価格算定モデノレについては、二項モデル、ブラック=ショールズ・モデルが例示されて いる51。. ①ストック・オプションの予想残存期間 ストック・オプションの予想残存期間とは、オプションが行使されるまでの期間であり、. 通常、加重平均期間が用いられる。ストック・オプションの予想残存期間を決定する際に は、少なくとも権利確定までの期間を含める必要がある。また、その他、考慮に入れるべ き要素としては、類似する過去の権利付与が未行使であった期間および基礎にある株式の 期待ボラティリティがあげられる。一般に従業員はボラティリティの高い株式ほど早く行 使する傾向があるといわれている52。. ②予想ボラティリティ 予想ボラティリティは、ストック・オプションの予想残存期間における株価の変動値で ある。株価のボラティリティは、一定期間の株式の連続複利利回りの年換算標準偏差とし 49. FASB[1995],paras.8−12.. 50. FASB[19951,para.30. eASB[19951,para.19. 52FASB[1995],par孔279.. 51. 21.
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