Clinical Question
推 奨
高度架橋ポリエチレンを使用した THA は,従来型ポリエチレンを使用した THA と比較して同等の臨床成績と,優れた X 線学的低摩耗を示し,インプラン ト周囲の骨溶解や再置換率の減少につながる可能性がある(Grade B:合意率
100%).
解 説
現在,種々の highly cross-linked polyethylene(高度架橋ポリエチレン)が臨床 上使用されている.工程として①γ線あるいは電子線(e-beam)を照射すること,
②熱処理を加えること,の 2 つの特徴を有する(表 1).
本ガイドライン初版では,高度架橋ポリエチレンを使用した人工股関節全置換 術(THA)の 5 年前後の中期臨床成績が従来型ポリエチレンを使用した THA と同 等であり,X 線学的検討で有意に摩耗が少ないとする中等度のエビデンスが示さ れた.最近では,高度架橋ポリエチレンを使用した THA の 10 年前後の臨床成績 は,臨床評価基準などで表現される機能面や疼痛面では従来型ポリエチレンを使 用した THA と同等であるが1, 2, 8),X 線学的検討では高度架橋ポリエチレンを使 用した THA は従来型ポリエチレンを使用した THA と比較して有意に摩耗が少な いとする質の高いエビデンスがある1-3, 8).インプラント周囲の骨溶解や再置換率 に関しても,高度架橋ポリエチレンを使用することで従来型ポリエチレンと比較 して改善しているという報告があり2, 3, 5, 6),再置換率に関してはオーストラリア などの海外のレジストリデータを参照しても同様である.しかし,再置換率に関 してはポリエチレン摩耗以外にもさまざまな要因が存在するため,ポリエチレン 摩耗との因果関係は今後のさらなる検討が期待される.なお,一部の高度架橋ポ リエチレンに関しては,米国食品医薬品局(FDA)において比較的多くの破損報 告があるが7),ケースレポートがほとんどで,エビデンスレベルは高くない.
表 1 各種高度架橋ポリエチレンの製造方法
照射温度 照射量(γ) 照射線 熱処理 滅菌 総照射量(γ)
Longevity 〜 40℃ 10 e-beam Melted GP 10
Durasul 〜 125℃ 9.5 e-beam Melted EOG 9.5
Marathon RM 5 γ Melted GP 5
Crossfire RM 7.5 γ Annealed γ 10.5
XLPE RM 10 γ Melted EOG 10
Aeonian RM 4 γ Annealed γ 6.5
RM;room temperature,GP;gas plasma,EOG;ethylene oxide gas
果的に除去した製品や,ビタミン E など抗酸化剤を混入する製品などが導入され ている.しかし,それらに関しての中長期成績の報告はまだないため,その是非に ついては本項では取り上げていない.
サイエンティフィックステートメント
●高度架橋ポリエチレンは術後経過観察期間 3.8 ~ 10 年で,従来型ポリエチレンに 比べて有意に低摩耗性と骨溶解の低発生率を示した1, 3-6, 8).
①摩耗に関して
●摩耗量に関するメタ解析では,高度架橋ポリエチレン使用例は従来型ポリエチレ ン使用例に対して有意に摩耗量が小さかった(mean difference − 0.09,95% CI
− 0.13 ~− 0.04,p = 0.0002)[図 1].
②骨溶解に関して
●骨溶解に関するメタ解析では,高度架橋ポリエチレン使用例は従来型ポリエチレ ン使用例に対して,骨溶解発生頻度が有意に低かった(オッズ比 0.06,95% CI 0.00
~ 0.86,p = 0.04)[図 2].
③再置換に関して
●再置換頻度に関するメタ解析では,高度架橋ポリエチレン使用例と従来型ポリエ
摩耗量に関するメタ解析:従来型ポリエチレンと高度架橋ポリエチレン使用例の比較 図 1
Favours
[HXLPE] Favours
[Conventional PE]
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
Study or
Subgroup Weight Mean Difference
IV, Random, 95% CI HXLPE Conventional PE
Mean SD Total Mean SD Total
Calvert et al4) 0.0239 0.122 59 0.1276 0.214 60 18.4% -0.10 [-0.17, 0.04]
Engh et al3) 0.04 0.06 90 0.22 0.13 72 25.0% -0.18 [-0.21, 0.15]
Garcia-Ray et al1) 0.02 0.016 42 0.05 0.035 41 28.2% -0.03 [-0.04, 0.02]
McCalden et al8) 0.003 0.027 50 0.051 0.022 50 28.4% -0.05 [-0.06, 0.04]
Total (95% CI) 241 223 100.0% -0.09 [-0.13, -0.04]
Heterogeneity: Tau2 = 0.00; Chi2 = 75.47; df = 3 (p < 0.00001); I2 = 96%
Test for overall effect: z = 3.77 (p = 0.0002)
Mean Difference IV, Random, 95% CI
骨溶解に関するメタ解析:従来型ポリエチレンと高度架橋ポリエチレン使用例の比較 図 2
Favours
[HXLPE] Favours
[Conventional PE]
0.001 0.1 1 10 1000
Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Study or Subgroup
HXLPE Conventional PE
Weight Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Events Total Events Total
Calvert et al4) 0 59 0 60 Not estimable
Engh et al3) 1 79 26 68 60.7% 0.02 [0.00, 0.16]
Garcia-Ray et al1) 0 42 1 41 39.3% 0.32 [0.01, 8.03]
McCalden et al8) 0 50 0 50 Not estimable
Total (95% CI) 230 219 100.0% 0.06 [0.00, 0.86]
Total events 1 27
Heterogeneity: Tau2 = 1.95; Chi2 = 2.03; df = 1 (p = 0.15); I2 = 51%
Test for overall effect: z = 2.07 (p = 0.04)
チレン使用例間に明らかな差はなかった(p = 0.60)[図 3].再置換の要因はポリ エチレン摩耗以外にも多く存在するため,その関連性については今後のさらなる 検討が必要である.
エビデンス
●セメント非使用の THA 83 関節を,無作為に高度架橋ポリエチレン(Durasul)使 用 42 関節と従来型ポリエチレン(Sulene)使用 41 関節の 2 群に割り付け,摩耗の 計測と臨床機能評価を行った.骨頭径はすべて 28 mm であり,経過観察期間は 10 年以上であった.臨床機能評価(MDP スコア)では両群間に有意差はなかったが,
高度架橋ポリエチレン使用群(0.02 ± 0.016 mm/年)では,従来型ポリエチレン使 用群(0.05 ± 0.035 mm/年)と比較して有意に摩耗量が少なかった(H2C00040,
EV level Ib).
●セメント非使用の THA 131 関節を後ろ向きに調査し,高度架橋ポリエチレン
(Aeonian)使用 69 関節と従来型ポリエチレン使用 62 関節の 2 群の摩耗の計測を 行った.経過観察期間は 10 年以上であり,高度架橋ポリエチレン使用群(0.007 ± 0.01 mm/年)は,従来型ポリエチレン群(0.12 ± 0.07 mm/年)に比較して有意に摩 耗が少なく,再置換率(オッズ比 4.26)を減少させた.JOA hip スコアに関しては 術前,術後とも両群間に有意差は認めなかった(H2F00666,
EV level Ⅱ).
●セメント非使用 THA において,9 年以上経過観察を行うことができた患者を対象 とした前向き無作為比較試験.高度架橋ポリエチレンを使用した 90 関節と従来型 ポリエチレンを使用した 72 関節を比較したところ,再置換をエンドポイントとし た 10 年生存率では 100%と 94.7 ± 4.6%であり,高度架橋ポリエチレンで有意に再 置換率が減少した.摩耗量に関しては 0.04 ± 0.06 mm/年と 0.22 ± 0.13 mm/年であ り,高度架橋ポリエチレンの摩耗量が有意に少なかった.また,臨床的に問題と なった骨溶解の発生に関しては 0%と 22%で,高度架橋ポリエチレン使用 THA で 少なかった(H2F00895,
EV level Ib).
●平均 4 年の経過観察を行った高度架橋ポリエチレン(Marathon)使用 THA 59 関 節と従来型ポリエチレン(Enduron)使用 THA 60 関節を比較した二重盲検前向 き無作為比較試験.臨床機能評価(HHS,UCLA スコア)は両群に差を認めなかっ た.摩耗に関しては 0.024 ± 0.056 mm/年と 0.128 ± 0.183 mm/年で,高度架橋ポリ 再置換に関するメタ解析:従来型ポリエチレンと高度架橋ポリエチレン使用例の比較 図 3
Favours
[HXLPE] Favours
[Conventional PE]
0.005 0.1 1 10 200
Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Study or Subgroup
HXLPE Conventional PE
Weight Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Events Total Events Total
Calvert et al4) 0 59 0 60 Not estimable
Engh et al3) 2 90 11 72 60.4% 0.13 [0.00, 0.16]
Garcia-Ray et al1) 1 42 0 41 39.6% 3.00 [0.12, 75.79]
McCalden et al8) 0 50 0 50 Not estimable
Total (95% CI) 241 223 100.0% 0.44 [0.02, 9.25]
Total events 1 27
Heterogeneity: Tau2 = 3.37; Chi2 = 3.02; df = 1 (p = 0.08); I2 = 67%
Test for overall effect: z = 0.53 (p = 0.60)