1 青・壮年期の前股関節症・初期変形性股関節症
●Chiari 骨盤骨切り術:病期進行をエンドポイントとした Chiari 骨盤骨切り術の術 後 15 ~ 22 年における関節生存率は 37 ~ 69%と報告により差が大きい.同じ術後 期間で,JOA hip スコアは平均 75 ~ 95 点,THA への移行をエンドポイントとし た生存率は 92 ~ 100%である(表 2).
●臼蓋形成術:病期進行をエンドポイントとした臼蓋形成術の関節生存率は術後 10
~ 23 年で 63 ~ 77%,THA への移行をエンドポイントとした生存率は術後 10 ~ 22 年で 75 ~ 97%である(表 3).
②術前の病期が進行していないほど術後成績は良好である.
●寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術:病期の進行をエンドポイントとして,進行 期股関節症と比較したメタ解析では,前・初期股関節症例は進行期股関節症例に 対しオッズ比0.40(95% CI 0.21 ~ 0.75,p=0.005)と有意に進行が少なかった(図1).
●寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術:THA への移行をエンドポイントとした場合,
前・初期股関節症例は進行期股関節症例よりもオッズ比 0.11(95% CI 0.04 ~ 0.28,
p < 0.00001)と THA への移行が少なかった(図 2).
③年齢は術後成績に影響を与える.
●寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術:青・壮年期の前・初期股関節症に対して施 行された寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術の Harris hip スコア(HHS)を中年期 以降の前・初期股関節症と比較したメタ解析では,青・壮年期は中年期以降に対 し有意に平均 HHS が高いという結果であった(mean difference 3.36,95% CI 0.38
~ 6.33,p = 0.03)[図 3].
●寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術:病期の進行をエンドポイントとして青・壮 年期の前・初期股関節症に対する治療成績を中年期以降の前・初期股関節症と比 表 2 Chiari 骨盤骨切り術の臨床成績
著 者 手術時平均年齢
(歳) 観察期間
(年) 臨床成績
(点) 関節生存率(%)
病期の進行* 関節生存率(%)
THA へ移行*
Ito et al
5)29(9 〜 54) 20.3(10 〜 32.5) HHS 82 69 95 大橋ら
6)19.5(6 〜 45) 17.3(4 〜 37) JOA 90.1 62.3 NA 藤田ら
7)33.7(7 〜 61) 15.3(10 〜 29) JOA 95.1 NA 100 須田ら
8)25.8(12 〜 51) 22(14 〜 31) JOA 87.2 37 92 内山ら
9)36(13 〜 52) 17.5(10 〜 28) JOA 74.7 NA NA
*:病期の進行または THA への移行をエンドポイントとした関節生存率,HHS:Harris hip スコア,
JOA:JOA hip スコア,NA:not available
表 3 臼蓋形成術の臨床成績 著 者 手術時平均年齢
(歳) 観察期間
(年) 臨床成績
(点) 関節生存率(%)
病期の進行* 関節生存率(%)
THA へ移行*
西松ら
10)25(1 〜 56) 23.7(15 〜 41) JOA 80.3 77 NA 廣瀬ら
11)35(17 〜 54) 22(16 〜 30) JOA 72 68 84 橋本ら
12)29(6 〜 54) 17(10 〜 30) NA 63.4 97 Fawzy et al
13)30(17 〜 60) 11(6 〜 14) NA NA 75
*:病期の進行または THA への移行をエンドポイントとした関節生存率,JOA:JOA hip スコア,NA:
not available
較したメタ解析では,青・壮年期は中年期以降に対し有意に病期が進行しにくい という結果であった(オッズ比 0.33,95% CI 0.15 ~ 0.73,p = 0.006)[図 4].
●寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術:THA への移行または末期股関節症への進 行をエンドポイントとして青・壮年期の前・初期股関節症に対する治療成績を 中年期以降の前・初期股関節症と比較したメタ解析では,青・壮年期は中年期以 降に対し THA に移行しにくいという傾向がみられたものの,有意ではなかった
(オッズ比 0.37,95% CI 0.14 ~ 1.00,p = 0.05)[図 5].
●青・壮年期の前・初期股関節症に対する臼蓋形成術単独施行例では 25 ~ 30 歳以 下に施行したほうが,それ以上の年齢よりも術後成績が良かった23).
④関節温存術では,片側罹患例は両側罹患例に比較して術後成績が良好である10, 14, 20). 病期進行をエンドポイントとした寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術のメタ解析:前・初期 股関節症と進行期・末期股関節症の比較
図 1
THA への移行をエンドポイントとした寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術のメタ解析:前・
初期股関節症と進行期・末期股関節症の比較 図 2
臨床スコア(HHS)を用いた寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術のメタ解析:前・初期股関節 症症例における青・壮年期と中年期股関節症の比較
図 3
前・初期 進行期・末期
0.01 0.1 1 10 100
前・初期 進行期・末期
0.01 0.1 1 10 100
Odds Ratio M-H, Random, 95% CI
武石ら15) 10 77 23 69 19.0% 0.30 [0.13, 0.69]
田中ら16) 14 51 5 11 12.5% 0.45 [0.12, 1.73]
久保ら17) 14 46 10 24 16.2% 0.61 [0.22, 1.71]
長谷川18) 12 66 10 40 17.3% 0.67 [0.26, 1.72]
Kaneuji et al 4) 16 52 15 41 18.5% 0.77 [0.32, 1.83]
Total (95% CI) 367 214 100.0% 0.40 [0.21, 0.75]
Total events 76 81
Heterogeneity: Tau2 = 0.37; Chi2 = 12.49; df = 5 (p = 0.03); I2 = 60%
Test for overall effect: z = 2.83 (p = 0.005)
Study or Subgroup
前・初期 進行期・末期
Weight Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Events Total Events Total
中村ら14) 0 75 6 29 10.3% 0.02 [0.00, 0.44]
長谷川18) 0 66 6 40 10.3% 0.04 [0.00, 0.73]
Kaneuji et al 4) 6 52 19 41 79.4% 0.15 [0.05, 0.43]
Total (95% CI) 193 110 100.0% 0.11 [0.04, 0.28]
Total events 6 31
Heterogeneity: Tau2 = 0.00; Chi2 = 1.97; df = 2 (p = 0.37); I2 = 0%
Test for overall effect: z = 4.65 (p < 0.00001)
青・壮年期 中年期以降
-100 -50 0 50 100
Study or
Subgroup Weight Mean Difference
IV, Random, 95% CI
青・壮年期 中年期以降
Mean SD Total Mean SD Total
Ito et al19) 91.4 9.6 117 88 11.7 41 55.9% 3.40 [-0.58, 7.38]
Yamaguchi et al20) 92 11.7 123 88.7 13 41 44.1% 3.30 [-1.18, 7.78]
Total (95% CI) 240 82 100.0% 3.36 [0.38, 6.33]
Heterogeneity: Tau2 = 0.00; Chi2 = 0.00; df = 1 (p = 0.97); I2 = 0%
Test for overall effect: z = 2.21 (p = 0.03)
Mean Difference IV, Random, 95% CI
⑤寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術において,外転位の関節適合性は術後成績に影 響する1, 14, 16).
⑥ Chiari 骨盤骨切り術での適切な骨頭被覆度または骨頭内方化は術後成績を向上させ る5-9).また,扁平骨頭を有する例は球形骨頭例に比較し術後成績が良好である6, 7). エビデンス
●前・初期股関節症に対して寛骨臼回転骨切り術を行い 10 年以上経過が追跡できた 92 例 102 関節中,骨頭変形のある 55 関節では,骨頭変形がない 47 関節に比較して 臨床的,X 線学的成績が有意に不良であった(HJ10142,
EV level Ⅳ).
●寛骨臼回転骨切り術を施行し,15 年以上経過観察し得た 190 関節を調査.JOA hip スコアは,病期が前・初期において術前 75 点から術後 91 点,進行前期において 65 点から 80 点,進行後期において 57 点から 70 点,末期において 56 点から 62 点に改 善した.病期の進行をエンドポイントとした生存率は,前・初期 97.5%,進行前期 77.1%,進行後期 42.3%,末期 33.3%であった(H2J00253,
EV level Ⅴ).
●5 年以上経過観察可能であった寛骨臼移動術施行症例 114 例 127 関節を調査.JOA hip スコアは術前 66.9 点から術後 87.5 点に改善,15 関節(11.8%)で病期の進行[前 股関節症 2(6.3%),初期 9(14.2%),進行期 4(12.9%)]を認め,進行期の 2 例で THA 移行がなされていた.THA および末期への進行をエンドポイントとした生 存率は 10 年で 98.5%,15 年で 95%であり,病期進行の影響因子として年齢と術前 病期が挙げられた(H2J00259,
EV level Ⅳ).
●寛骨臼回転骨切り術を施行し,20 年以上経過観察した 91 例 93 関節を調査.HHS 病期の進行をエンドポイントとした寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術のメタ解析:青・壮 年期股関節症と中年期股関節症の比較
図 4
THA への移行または末期股関節症への進行をエンドポイントとした寛骨臼回転骨切り術・寛 骨臼移動術のメタ解析:青・壮年期股関節症と中年期股関節症の比較
図 5
青・壮年期 中年期以降
0.01 0.1 1 10 100
青・壮年期 中年期以降
0.01 0.1 1 10 100
Odds Ratio M-H, Random, 95% CI
Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Study or Subgroup
青・壮年期 中年期以降
Weight Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Events Total Events Total
Yasunaga et al21) 4 63 5 26 31.3% 0.28 [0.07, 1.16]
Ito et al19) 9 117 8 41 58.4% 0.34 [0.12, 0.96]
Teratani et al 22) 1 39 2 37 10.3% 0.46 [0.04, 5.30]
Total (95% CI) 219 104 100.0% 0.33 [0.15, 0.73]
Total events 14 15
Heterogeneity: Tau2 = 0.00; Chi2 = 0.12; df = 2 (p = 0.94); I2 = 0%
Test for overall effect: z = 2.73 (p = 0.006)
Study or Subgroup 青・壮年期 中年期以降
Weight Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Events Total Events Total
Yamaguchi et al20) 4 123 4 41 47.0% 0.31 [0.07, 1.30]
Yasunaga et al21) 1 63 1 26 12.2% 0.40 [0.02, 6.70]
Ito et al19) 4 117 3 41 40.7% 0.45 [0.10, 2.09]
Total (95% CI) 303 108 100.0% 0.37 [0.14, 1.00]
Total events 9 8
Heterogeneity: Tau2 = 0.00; Chi2 = 0.12; df = 2 (p = 0.94); I2 = 0%
Test for overall effect: z = 1.97 (p = 0.05)
初期19股(66%),進行期26股(63%)であり,THA移行率は前股関節症1股(4%),
初期 2 股(8%),進行期 14 股(34%)と進行期は有意に THA へ移行しやすい結果 となった(H2H00075,
EV level Ⅳ).
●関節適合不良な寛骨臼形成不全に対する Chiari 骨盤骨切り術の長期治療成績(平 均 20.3 年).対象は 10 年以上経過観察し得た 169 例 173 関節(男性 24 例,女性 145 例),手術時平均年齢 29 歳(9 ~ 54 歳),追跡率 74%.前・初期股関節症(Tönnis グレード 0 ~ 2)は 134 関節,進行期股関節症(Tönnis グレード 3)は 39 関節.術 後平均 20 年で,72%の症例で HHS 80 点以上であった(前・初期 78%,進行期 49%).全体の 9%(前・初期 5%,進行期 21%)が平均 16.4 年で THA へ移行した
(H2F00440,
EV level Ⅳ).
●前・初期股関節症に対して Chiari 骨盤骨切り術を施行した 59 例 62 関節(平均経過 観察期間 17.3 年)において,骨頭の形状および外方移動量と股関節症の進行の関 連を調べた.前股関節症のほうが初期股関節症に比べて JOA hip スコアが高く,
骨頭は角状のものが卵形と比較して JOA hip スコアが高かった.股関節症進行群 では骨頭の外方移動量が有意に大きかった(HJ10303,
EV level Ⅳ).
●Chiari 骨盤骨切り術を施行した 107 例の長期治療成績の検討(術後平均 15.3 年).
単独 75 例,大腿骨外反骨切り併用 15 例,大腿骨内反骨切り術併用 15 例,大転子下 降術併用 2 例であった.最終 JOA hip スコアは,初期股関節症 95.1 点,進行期 78.4 点,末期 77.8 点であった.また,扁平骨頭例の JOA hip スコアは,球形骨頭例より も良好であった.JOA hip スコア 60 点未満の内訳は,初期 0%,進行期 66.6%,末 期 33.3%であった.THA に至った症例は,前・初期なし,進行期 5 例,末期 1 例で あった(H2J00261,
EV level Ⅳ).
●大腿骨内反骨切り術併用 Chiari 骨盤骨切り術を施行した 38 関節の長期治療成績
(平均 22 年).術前病期は前 21 関節,初期 17 関節,進行期 0 関節であり,最終観察 時では前 5 関節,初期 18 関節,進行期 15 関節であった.CE 角,Sharp 角,関節適 合性は病期進行と相関を認めなかった.最終調査時の JOA hip スコアは 87.2 点で あった.最終 JOA hip スコア 70 点未満は 2 関節であり,THA へ移行したものは 3 関節(8%)であった(H2J00254,
EV level Ⅳ).
●単独 Chiari 骨盤骨切り術を施行した 22 例 25 関節を対象とした長期治療成績(平均 17 年)の検討.術前 JOA hip スコア 68.8 点は術後 1 年で 88.4 点と改善し,術後 10 年にも 88.6 点と保たれていたが,最終観察時 74.7 点へ低下.THA をエンドポイン トとした生存率は,術後 15 年で 88%,20 年で 75%であった.関節症進行のある不 良群(44%)と良好群(56%)を比較したところ,術後上方・外方移行距離および BMI に有意差を認めた(H2J00290,
EV level Ⅳ).
●臼蓋形成術を施行した 119 関節(平均追跡期間 23 年 9 ヵ月,併用手術 29 関節)の 成績.前・初期股関節症の 61 関節のうち,術後 20 年で 53 関節が良好な成績を維持 していた.進行期 58 関節のうち,術後 20 年で 32 関節が良好な成績を維持してい た.X 線評価では CE 角,Sharp 角,AHI,臼蓋形成の高さ,roof 角のいずれも成績 への影響はなかった.併用手術を行った 29 関節のうち 75%は成績良好であった.
手術時年齢 25 歳以下は成績が良好であったが,両側例は不良であった(HJ10228,