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2 青・壮年期の進行期・末期変形性股関節症に対して 関節温存術は有用か

Clinical Question

推 奨

関節温存術は,青・壮年期の進行期・末期変形性股関節症の症状緩和に対して 効果があり,まず考慮すべき手術療法である.しかし,その術後成績は前・初期 股関節症に比べて劣る(Grade C:合意率 98%).

解 説

青・壮年期では,進行期・末期変形性股関節症(股関節症)であっても関節適合 性を考慮して寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術,Chiari 骨盤骨切り術,大腿骨外 反骨切り術など適切な術式を選択すれば,良好な症状緩和が期待できる.しかし,

病期が進行するほど術後成績は低下する傾向があり,長期的には人工股関節全置 換術(THA)に移行する例が増加する.すなわち,time saving としての治療の意 義が大きい.術式間を前向きに比較した研究は少なく,本ガイドラインの推奨度 は多くの case series の報告をもとにしている.

サイエンティフィックステートメント

①青・壮年期の進行期・末期股関節症に対する関節温存術の術後成績は概ね良好であ るが,病期が進行するほどその成績は低下する傾向がある.

●青・壮年期の進行期・末期股関節症における寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術 の術後成績は,日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA hip スコア)では術後 13 ~ 20 年で 77 ~ 87 点,Harris hip スコア(HHS)では術後 18 ~ 20 年で 84 ~ 88 点と概ね良好である.病期の進行をエンドポイントとした関節生存率は術後 13 ~ 20 年で 38 ~ 75%であり,THA への移行をエンドポイントとした関節生存率は 54

~ 85%と概ね良好であるものの,経過とともに生存率は低下する(表 1).これら

表 1 進行期・末期股関節症における寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術の臨床成績 著 者 手術時平均年齢

(歳) 観察期間

(年) 臨床成績

(点) 関節生存率(%)

病期の進行 関節生存率(%)

THA へ移行

中村ら

14)

31.3(11 〜 61)

12.8

NA 37.9 79.3 武石ら

24)

36.1(17 〜 50) 20.7 JOA 77 51.4 NA 田中ら

16)

37.6(16 〜 54) 13.7 JOA 86.9

54.5 NA 久保ら

17)

32.4(11 〜 61)

16.9

NA 58.3 NA 長谷川ら

18)

44.6(26 〜 59) 18.1 HHS 88.3 75.0 85.0 Kaneuji et al

4)

36.8(19 〜 49) 20 HHS 84.1 63.4 53.7

*:病期の進行または THA への移行をエンドポイントとした関節生存率,#:全病期における数値,

NA:not available, JOA:JOA hip スコア,HHS:Harris hip スコア

の成績は前股関節症・初期股関節症(前・初期股関節症)よりも劣る傾向がある(本 章 CQ1 参照).

●青・壮年期の進行期・末期股関節症に対する Chiari 骨盤骨切り術の術後 11 ~ 27 年における JOA hip スコアは 75 ~ 84 点と概ね良好である.病期の進行をエンド ポイントとした関節生存率は術後 27 年では 44%で,THA への移行をエンドポイ ントとした関節生存率は術後 11 ~ 27 年で 25 ~ 91%である(表 2).寛骨臼回転骨 切り術・寛骨臼移動術と同様,これらの成績は前・初期よりも低い傾向があり,

経過とともに生存率は低下する.

②前・初期股関節症に比べると,進行期・末期股関節症では病期が進行する割合も,

THA への移行率も高い.

●寛骨臼回転骨切り術において,病期の進行をエンドポイントとして進行期・末期 股関節症を前・初期股関節症と比較したメタ解析を行うと,病期進行のオッズ比 は 2.50(95% CI 1.33 ~ 4.72,p = 0.005)であった.また,THA への移行をエンドポ イントとして比較すると,THA への移行のオッズ比は 9.18(95% CI 3.61 ~ 23.38,

p < 0.00001)であった(本章 CQ1 の図 1,2参照).

③手術時年齢は術後成績悪化の危険因子となる可能性がある.

●手術時年齢が術後成績への有意な影響因子であることが報告されている(表 3).

④ Chiari 骨盤骨切り術においては,扁平骨頭が球形骨頭より成績が良い.

●扁平骨頭に比べて球形骨頭の成績が悪いとする報告が複数ある.また,その他の 因子として,術前病期,術前 CE 角,骨切りレベル,骨頭上方・側方移動などが挙 げられている(表 4).

⑤寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術の成績不良因子として,術後の関節適合性不良,

著 者 (歳) (年) (点) 病期の進行 THA へ移行

藤田ら

25)

39.6(16 〜 49) 16.1 JOA 78.6 NA 82.9 Sakai et al

26)

29(14 〜 48)

27.5

JOA 74.5

43.8 25.0 Ohashi et al

27)

36.8(11 〜 54) 16.2 JOA 84.0 NA 76.5 Ito et al

28)

35.2(16 〜 50) 11.2 HHS 77 NA 90.6

*:病期の進行または THA への移行をエンドポイントとした関節生存率,#:全病期における数値,

NA:not available, JOA:JOA hip スコア,HHS:Harris hip スコア

表 3 進行期・末期股関節症における成績不良の危険因子 著 者 手術時平均

年齢(歳) 観察期間

(年) 術 式 危険因子

上田ら

29)

38.6(15 〜 54) 13.9 RAO 関節適合性,両側罹患,年齢(40 歳以上)

兼氏ら

30)

36.8(19 〜 49) 13.8 RAO 年齢(40 歳以上)

長谷川ら

18)

44.6(26 〜 59) 18.1 RAO 年齢影響なし,術前の関節裂隙

Sakai et al

26)

29(14 〜 48) 27.5 Chiari 年齢,術前の Trendelenburg sign,病期, 術後 AHI

*: RAO:寛骨臼回転骨切り術,Chiari:Chiari 骨盤骨切り術

関節裂隙幅の狭小が挙げられる(表 5).

⑥外反骨切り術は,術後 10 年の成績は良好で,以後経年的に低下する.臼蓋形成術な どと併用されることが多い.

●青・壮年期の進行期・末期股関節症に対する外反骨切り術の長期成績は,THA も しくは追加手術をエンドポイントとする生存率は術後 14 ~ 15 年で 72 ~ 75%で

ある34, 35).手術時年齢が青・壮年期の場合の成績は,中年期以降に対する術後成

績よりも良好,寛骨臼の被覆が悪い症例では臼蓋形成併用例は単独手術より良好,

hinge-abduction を認めるタイプでは成績良好などの報告36)がある.

エビデンス

●進行期股関節症に対する寛骨臼回転骨切り術の成績を検討.対象は 111 関節(男性 5,女性 106),平均手術時年齢 36.1 歳(17 ~ 50 歳).進行前期 71 股,進行後期 40 関 節.JOA hip スコアは,進行前期が術前 66 点から最終観察時 81 点,進行後期は術 前 58 点から最終観察時 71 点に改善した.15 年生存率は進行前期 81.8%,進行後期 58.5%であった(H2J00257,

EV level Ⅳ).

●50 歳以下(平均 39.6 歳)の進行期・末期股関節症 40 例 41 関節に対する Chiari 骨盤 骨切りの成績.平均経過観察期間は 16.1 年(10 ~ 24 年),術前病期は進行期 31 例,

末期 9 例.JOA hip スコアは全体で 65.9 点が 78.6 点に改善した.扁平骨頭 63.2 点が 83.9 点に改善したが,球形は 69.2 点が 70.3 点と不良であった.THA 移行は進行期 16.1%,末期 22.2%で,術後平均 15.9 年で施行していた.球形骨頭で関節症性変化 はより進行した(H2J00267,

EV level Ⅳ).

●青・壮年期[平均 29 歳(14 ~ 48 歳)]の 59 関節に Chiari 骨盤骨切り術を施行.

追跡期間は平均 27.5 年(25 ~ 32 年).術前病期は前 18 関節,初期 25 関節,進行 期 16 関節.最終観察時の疼痛,歩行能力,AHI は改善していた.THA への移行 率は前股関節症 6%,初期 32%,進行期 75%であり,影響因子は,年齢,術前の 表 4 Chiari 骨盤骨切り術における成績不良の危険因子

著 者 手術時平均年齢

(歳) 観察期間

(年) 危険因子

藤田ら

25)

39.6(16 〜 49) 16.1 球形骨頭

Ohashi et al

27)

36.8(11 〜 54) 16.2 術前病期,骨頭形状,骨切り高位 Yanagimoto et al

31)

32(6 〜 64) 13 球形骨頭

Ito et al

28)

35.2(16 〜 55) 11.2 術前 CE 角,骨切りレベル,骨頭上方・側方移動

表 5 寛骨臼回転骨切り術における病期進行の危険因子 著 者 手術時平均年齢

(歳) 観察期間

(年) 危険因子

上田ら

29)

38.6(15 〜 54) 13.9 関節適合性,両側罹患,40 歳以上

Yasunaga et al

32)

43.8(21 〜 57) 8.5 関節適合性,関節裂隙(術前 2.2 mm 以下)

兼氏ら

33)

35.8(19 〜 49) 20 関節適合性

長谷川ら

18)

44.6(26 〜 59) 18.1 関節裂隙(2.1 mm 以下)

成績.前・初期 78 例 86 関節(前 51 関節,初期 35 関節,平均観察期間 17.1 年,手術 時年齢 18.2 歳,Chiari 単独 62 関節)の成績は,JOA hip スコア術前 78.6 点が最終時 89.4 点と改善し,CE 角は術前平均− 4.4°が 29.4°に改善していた.進行期股関節症 15 例 17 関節(平均観察期間 16.2 年,手術時年齢 36.8 歳,Chiari 単独 12 関節)の成 績では,JOA hip スコアは術前 63.2 点が最終時 84.0 点に改善した.THA への移行 は 4 関節(うち 2 関節は 16 年後)で,THA 移行をエンドポイントとした生存率は 10 年で 88.2%,20 年で 72.2%であった(

HF11066, EV level Ⅳ).

●進行期股関節症に対して Chiari 骨盤骨切り術を施行した 31 例 32 関節(手術時年 齢 35.2 歳,追跡期間 11.2 年,3 例に外反骨切り術併用)の報告.HHS は,術前 52 点 が最終時 77 点に改善していた.HHS 70 点以下の 3 関節が THA へ移行していた.

HHS 70 点以下をエンドポイントとした生存率は 10 年で 72%.臨床成績への影響 因子は術前 CE 角,骨切りレベル,骨頭上方・側方移動であった.関節裂隙が残存 かつ CE 角− 10°以上が良い適応といえた(HF10987,

EV level Ⅳ).

●進行期股関節症に寛骨臼回転骨切り術を施行し術後 10 年以上経過した 48 例 50 関 節において,術前病期分類が進行前期例の 36 関節中 11 関節(31%),進行後期例の 14 関節中 13 関節(93%)で股関節症が進行していた.関節適合性不良,両側進行 期罹患,40 歳以上の患者が股関節症進行の因子として認められた(HJ10506,

EV level Ⅳ).

●青・壮年期(平均 36.8 歳)の進行期股関節症に寛骨臼回転骨切り術を施行した平均 13 年 9 ヵ月後の調査で,42 股中 10 股が THA に移行しており,THA 移行をエンド ポイントとした生存率は 83.9%であった.40 歳未満が 41 ~ 49 歳と比較して臨床 成績・生存率ともに良好な成績であった(H2J00276,

EV level Ⅳ).

●Chiari 骨盤骨切り術を施行した 69 例 74 関節に対する平均経過観察期間 13 年の長 期成績.JOA hip スコア術前平均 72 点は最終観察時 87 点に改善した.進行期で骨 頭形状が球形の症例は予後が悪く,関節裂隙狭小化をきたした.Chiari 骨盤骨切 り術は初期の股関節症に対して 10 年以上にわたり良好な成績が得られていた.進 行期症例でも骨頭形状が平坦であれば予後は良く,球形の骨頭症例では関節症が 進行する可能性がある(HF11205,

EV level Ⅳ).

●進行期の 43 例 43 関節に対して寛骨臼回転骨切り術を施行後,平均 8.5 年の経過観 察において関節裂隙は術前が平均 2.2 mm,術後で 2.5 mm であった.骨嚢胞は術前 23 関節に認めたが 6 関節は消失した.逆に 20 関節は術前に骨嚢胞がなかったが,

最終観察時には 4 関節に骨嚢胞が存在した.股関節症進行に関連する因子として,

術後の適合性,術前の 2.2 mm 以下の関節裂隙,術後の 2.5 mm 以下の関節裂隙に有 意差を認めた.股関節症の進行をエンドポイントとした生存率は 10 年で 72.2%で あった(HF11882,

EV level Ⅳ).

●寛骨臼回転骨切り術後平均 20 年経過例で各病期における病期進行率を調べた.対 象は 54 関節(前股関節症 15,初期 13,進行期 24,末期 2),追跡率は 50.5%.病期の 進行率は,前股関節症 7%,初期 31%,進行期 25%.前股関節症は,初期・進行期 より関節裂隙狭小化が有意に少なかった.THA 移行率は,前股関節症 7%,初期 8%,進行期 38%,末期 100%であった.術後 20 年における THA をエンドポイン

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