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推 奨

歩行補助具(杖・歩行器)は,疼痛の緩和に有用である(Grade B:合意率

78%)が,長期的な病期進行予防に関しては不明である.

股関節装具による歩行時の疼痛の緩和効果は不明である(Grade I:合意率

70%).

解 説

歩行補助具の使用によって,疼痛,バランス,歩行能力が改善することにはコン センサスが得られている2-6)

股関節装具は,大転子部を圧迫し,骨盤帯と大腿部を金属フレームで連結して 股関節への荷重を軽減する機構が用いられている.股関節装具によって,荷重の 軽減,関節不安定性の改善が期待できる1, 7, 8).手術時期を先に延ばしたい場合や,

合併症で手術ができない患者での疼痛と機能の改善を目的として用いられる.

サイエンティフィックステートメント

●T 字杖4)やクラッチ6)を使用することで,股関節にかかる力を減少させることが でき,疼痛の軽減に有効である.また杖の使用によって,両足と杖からなる基底面 が広がるため,体重心の動揺が大きくてもバランスを維持できる5)

●股関節装具の使用によって即時性の高い歩行時の疼痛軽減効果が得られ1, 8),長期 的な病期進行予防効果が得られるとの報告7)があるが,質の高いエビデンスはな く,股関節装具の効果は不明である.

エビデンス

●股関節症患者 14 例(Crowe 分類 group Ⅰ:10,Ⅱ:3,Ⅲ:1,平均年齢 52 歳)に対 して装具療法を用いた歩行訓練(毎日 30 分以上)を行ったところ,全例で早期か ら歩行時疼痛の改善が得られた.4 分の 3 の患者で鎮痛薬が不要となった.1 年後 の Harris hip スコアおよび JOA hip スコアの有意な改善が得られた.両側罹患例 と毎日の歩行訓練ができなかった患者では成績が不良であった(H2F00078,

EV level Ⅴ).

●T 字杖を使用した場合,杖にかかる力が大きくなるほど対側の股関節にかかる力 を軽減することができた(H2H00028,

EV level Ⅴ).

●圧トランスデューサーを埋め込んだ Moore 型人工骨頭を挿入し,杖なし歩行,杖 を使用した歩行,荷物を持った際の歩行において股関節の接触圧を測定した.荷 物を持たないときに比べて,人工骨頭と同側に荷物を持って歩行すると股関節 の接触圧が有意に増加した.反対側に杖を持って荷物を運ぶと,同側の骨頭後上

方の接触圧が減少したが,荷物と反対側の股関節では有意な圧上昇がみられた

(H2H00023,

EV level Ⅵ).

●股関節症に対して人工骨頭置換術を行った患者(片側罹患例)24 例において,T 字 杖を健側および患側に持って歩行した際の,中殿筋,下腿三頭筋の筋電図による 筋活動の評価と杖にかかる力の分析を行った.その結果,杖を健側に持ち軽くつ いて歩行した場合,中殿筋の筋活動は 31.1%減少し,さらに杖を強くついた場合に は 42.3%減少した(H2H00024,

EV level Ⅴ).

●杖・歩行補助具の利点と欠点に関する情報のレビュー.杖と歩行器は高齢者や障 害を有する患者のバランスと歩行能力を改善できるが,その使用に困難を伴う利 用者も存在しており,転倒の原因になることもある(H2H00023,

EV level Ⅴ).

●圧トランスデューサーが組み込まれた股関節インプラントを挿入した股関節症患 者 7 例において,通常の支持なし歩行,圧トランスデューサーが組み込まれた前 腕クラッチを使用した 4 点,3 点,2 点歩行を行った際の前腕クラッチと股関節の 接触圧を測定した.さらに,インプラントのネックの曲げモーメント,ステム周囲 の捻り力を測定した.その結果,3 点,4 点,2 点歩行時の関節にかかる力はクラッ チを使用しない場合と比較してそれぞれ 17,12,13%低下し,曲げモーメントの 減少はそれぞれ 16,11,12%減少し,ステム周囲の最大トルクはそれぞれ 19,21,

10%減少していた(H2H00057,

EV level Ⅴ).

●装具療法に,必要に応じて温熱療法,理学療法,薬物療法を併用し,10 年以上経過 観察できた 20 ~ 70 歳代の股関節症患者 42 例 62 関節(前股関節症 12 関節,初期 28 関節,進行期 22 関節)を検討した.前股関節症では症状緩和が全例で認められた.

全体で症状の改善が 71%に認められた.X 線所見での改善(骨嚢腫の縮小)がみら れたものが 3%,X 線所見および病期分類が不変であったものが 66%であった.病 期は不変であるが X 線所見が悪化したものが 29%あった.全体で 69%の関節で病 期進行予防効果がみられた.10 年以上股関節装具を使用した症例では,症状緩和,

病期の進行予防が得られた(H2H00076,

EV level Ⅴ).

●股関節症患者 40 例(初期 9,進行期 25,末期 6)に対して股関節装具を用いた歩行 訓練を毎日 30 分実施した(12 ~ 108 ヵ月).JOA スコアは装具装着後 1 ヵ月で有 意に改善した.1年後のJOAスコアで33例(82.5%)に改善が得られた(疼痛,歩行,

ADL での改善).WOMAC スコアでは痛み,こわばり,ADL が 1 ヵ月後に有意に 改善した.SF-36 の身体機能,日常役割機能(身体),体の痛み,活力,社会生活機 能,日常役割機能(精神),心の健康が 1 ヵ月後に有意に改善し,6 ヵ月後に全体的 健康観も有意に改善した(H2H00088,

EV level Ⅵ).

文 献

1)

H2F00078

Sato T, Yamaji T, Inose H et al:Effect of a modified S-form hip brace, WISH type, for patients with painful osteoarthritis of the hip:a role in daily walking as a hip muscle exercise. Rheumatol Int 2008;28:419-28

2)

H2H00028

Blount WP:Don’t throw away the cane. J Bone Joint Surg Am 1956;38:

695-708

3)

H2H00023

McGibbon CA, Krebs DE, Mann RW:In vivo hip pressures during cane and load-carrying gait. Arthritis Care Res 1997;10:300-7

4)

H2H00024

Neumann DA:Hip abductor muscle activity as subjects with hip prostheses

demands, and adverse consequences. Arch Phys Med Rehabil 2005;86:134-45

6)

H2H00057

Damn P, Schwachmeyer V, Dymke J et al:In vivo hip joint loads during three methods of walking with forearm crutches. Clin Biomech 2013;28:

530-5

7)

H2H00076

上好昭孝,壇上茂人,江川弘光:変形性股関節症の保存療法(和医大式股関節

用 S 字型装具を中心とした治療体系).Hip Joint 1987;13:35-40

8)

H2H00088

佐藤貴久,小林敏彦,割田敏朗ほか:変形性股関節症における WISH 型股関節

用 S 字型装具の効果.Hip Joint 2014;40:79-85

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