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3 中年期以降の前股関節症・初期変形性股関節症 に対して関節温存術は有用か

推 奨

中年期以降の前股関節症・初期変形性股関節症に対して関節温存術は症状緩和 および病期進行の予防に効果がある.しかし,青・壮年期股関節症に比べて術後 に病期が進行しやすい(Grade C:合意率 97%).

解 説

青・壮年期と同様に,股関節外転位で適合性が良好な場合には寛骨臼回転骨切 り術・寛骨臼移動術が,骨頭変形・関節不適合がある場合には Chiari 骨盤骨切り 術が主に行われている.中年期以降であっても,前股関節症・初期変形性股関節 症(前・初期股関節症)に対するこれらの術式は,臨床成績の改善や病期進行予防 ともに良好な成績である.しかしながら青・壮年期の同病期とのメタ解析では,

中年期以降では臨床成績が劣るといった手術時年齢の影響は存在する.関節温存 術の適応には,待機的な人工股関節全置換術(THA)という選択肢を念頭に置い て慎重に判断する必要がある.術式間を前向きに比較した研究は少なく,本ガイ ドラインの推奨度は多くの case series の報告をもとにしている.

サイエンティフィックステートメント

①中年期以降の前・初期股関節症に対する関節温存術の臨床成績は概ね良好である.

●寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術:病期の進行をエンドポイントとした生存 率は術後 5 年で 94%,術後 10 年で 70 ~ 81%,術後 15 年で 71%との報告がある.

表 1 中年期以降の前・初期股関節症に対する寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術の臨床成績 著 者 手術時平均年齢

(歳) 観察期間

(年) 臨床成績

(点) 関節生存率(%)

病期の進行 関節生存率(%)

THA へ移行

Yasunaga

et al

21)

50.9(46 〜 58) 8.2(5 〜 14) MDP 16.6 80.8

(21/26 関節) 100

(26/26 関節)

春藤ら

37)

53.3(50 〜 62) 5(1 〜 10) JOA 85.4 97.5

(39/40 関節) 97.5

(39/40 関節)

Yamaguchi

et al

20)

53(50 〜 59) 9.2(5 〜 15) HHS 88.7 NA 90.2

(37/41 関節)

Teratani et

al

22)

54.6(50 〜 65) 4.6(2 〜 11.4) HHS 90.9 94.6

(35/37 関節) 100

(37/37 関節)

Ito et al

19)

47.2(40 〜 56) 10.8(5 〜 18.5) HHS 88.0 80.5

(33/41 関節) 92.7

(38/41 関節)

*:病期の進行または THA への移行をエンドポイントとした関節生存率,HHS:Harris hip スコア,

NA:not available,JOA:JOA hip スコア,MDP:Merle d’Aubigné-Postel スコア

THA への移行率は術後平均 5 ~ 11 年で 0 ~ 10%と報告されている.臨床スコア

(Harris hip スコア:HHS)は,術後平均 5 ~ 11 年で平均 88 ~ 91 点と維持されて いる(表 1).

●Chiari 骨盤骨切り術:中年期以降に限った報告はないが,Chiari 骨盤骨切り術例 において,病期進行をエンドポイントとした術後 15 ~ 22 年における関節生存率 は 37 ~ 69%と報告により差が大きい.同じ術後期間で,日本整形外科学会股関節 機能判定基準(JOA hip スコア)は平均 75 ~ 95 点,THA への移行をエンドポイン トとした生存率は 92 ~ 100%である(本章 CQ1 の表 2参照).

②手術時年齢は術後成績に影響を与える.

●中年期以降の前・初期股関節症に対して施行された寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼 移動術の臨床スコア(HHS)を青・壮年期の前・初期股関節症と比較したメタ解 析では,中年期以降は青・壮年期に対し,有意に平均臨床スコアが低いという結 果であった(mean difference − 3.36,95% CI − 6.33 ~− 0.38,p = 0.03)[図 1].

●病期の進行をエンドポイントとして中年期以降の前・初期股関節症に対する治療 成績を青・壮年期の前・初期股関節症と比較したメタ解析では,中年期以降は青・

壮年期に対し有意に病期進行しやすいという結果であった(オッズ比 2.99,95%

CI 1.36 ~ 6.57,p = 0.006)[図 2].

●THA への移行(または末期股関節症)をエンドポイントとして中年期以降の前・

初期股関節症に対する治療成績を,青・壮年期の前・初期股関節症と比較したメ タ解析では,有意ではないが中年期以降は青・壮年期に対し THA に移行しやす いという傾向がみられた(オッズ比 2.68,95% CI 1.00 ~ 7.18,p = 0.05)[図 3].

臨床スコア(HHS)を用いた寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術のメタ解析:中年期以降と青・

壮年期の比較 図 1

中年期以降 青・壮年期

-100 -50 0 50 100

Study or

Subgroup Weight Mean Difference

IV, Random, 95% CI

中年期以降 青・壮年期

Mean SD Total Mean SD Total

Ito et al19) 88 11.7 41 91.4 9.6 117 55.9% -3.40 [-7.38, 0.58]

Yamaguchi et al20) 88.7 13 41 92 11.7 123 44.1% -3.30 [-7.78, 1.18]

Total (95% CI) 82 240 100.0% -3.36 [-6.33, -0.38]

Heterogeneity: Tau2 = 0.00; Chi2 = 0.00; df = 1 (p = 0.97); I2 = 0%

Test for overall effect: z = 2.21 (p = 0.03)

Mean Difference IV, Random, 95% CI

病期進行をエンドポイントとした寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術のメタ解析:中年期以 降と青・壮年期の比較

図 2

中年期以降 青・壮年期

0.01 0.1 1 10 100

Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Study or Subgroup

中年期以降 青・壮年期

Weight Odds Ratio M-H, Random, 95% CI Events Total Events Total

Teratani et al 22) 2 37 1 39 10.3% 2.17 [0.19, 25.01]

Ito et al19) 8 41 9 117 58.4% 2.91 [1.04, 8.14]

Yasunaga et al21) 5 26 4 63 31.3% 3.51 [0.86, 14.33]

Total (95% CI) 104 219 100.0% 2.99 [1.36, 6.57]

Total events 15 14

Heterogeneity: Tau2 = 0.00; Chi2 = 0.12; df = 2 (p = 0.94); I2 = 0%

Test for overall effect: z = 2.73 (p = 0.006)

エビデンス

●寛骨臼回転骨切り術を施行し,術後 1 年以上経過観察(平均追跡期間 5 年)し得た 419 関節のうち,手術時年齢が 50 歳以上(平均 53 歳)であった 45 関節の治療成績 の検討.術前病期は初期 40 関節,進行期 5 関節であった.JOA hip スコアは術前 67.4 点が術後 85.4 点へ改善した.3 関節に術後股関節症の進行を認め,1 例は THA を余儀なくされた(HJ10578,

EV level Ⅳ).

文 献

146 ページ参照.

THA への移行または末期股関節症への進行をエンドポイントとした寛骨臼回転骨切り術・寛 骨臼移動術のメタ解析:中年期以降と青・壮年期の比較

図 3

中年期以降 青・壮年期

0.01 0.1 1 10 100

Yasunaga et al21) 1 26 1 63 12.2% 2.48 [0.15, 41.21]

Ito et al19) 4 41 4 123 47.0% 3.22 [0.77, 13.50]

Total (95% CI) 108 303 100.0% 2.68 [1.00, 7.18]

Total events 8 9

Heterogeneity: Tau2 = 0.00; Chi2 = 0.12; df = 2 (p = 0.94); I2 = 0%

Test for overall effect: z = 1.97 (p = 0.05)

4 中年期以降の進行期・末期変形性股関節症に対して

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