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IIRC 設立以降の流れ

ドキュメント内 非財務情報の企業価値 (ページ 36-40)

第 2 章 統合報告の方向性とその変遷

2.2 IIRC 設立以降の流れ

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GRIガイドラインが求める開示内容を,「長期にわたる価値創造に関する情報提供」および「多 様なステークホルダーに関する情報提供」という二つの軸を用いて整理すると,図表2-1のよう になる.また,情報提供の主たる対象者が,財務資本提供者ではなく,むしろその他のステーク ホルダーであることを確認しておきたい.

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なお,A4S報告書やGRIガイドラインとは異なり,主たる情報提供の対象者として財務資本 提供者をターゲットにしている(p. 8)点は重要である.すなわち,これまでは,「財務資本提供 者に対して,財務資本の状況を報告する」伝統的な財務報告と,「財務資本以外のステークホル ダーに対して,財務資本以外の資本の状況を報告する」社会・環境関連報告(A4SやGRIガイ ドライン)という形で,提供する資本の種類と報告を受ける資本の種類が対応していたが,「財 務資本提供者に対して,財務資本以外の資本の状況も報告する」という仕組みが提唱されたこと になる.

出典:筆者作成

図表2-2 IIRC (2011)の提案内容

その後,IRフレームワーク(IIRC 2013)では,「価値」という用語に持たせる意味に変化が

生じた.IIRC (2011)における「価値」の定義が曖昧であるという指摘を受け,IIRC (2013)では,

「組織に対する価値」と「他者に対する価値」という二つの価値に分解したうえで,前者を財務 資本提供者に対する価値,後者をその他のステークホルダーに対する価値,として説明している

(FW 2.4).また,両者が相互作用を有することが指摘されている(FW 2.5-2.9).IIRC (2013)の

↑ 長期的

短期的

開示内容の時間軸

財務資本 多様な 提供者のみ ステークホルダー

開示内容に含める対象 IIRC (2011)

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Figure 1では,2種類の価値の関係性が図示されており,「組織に対する価値」が「他者に対す

る価値」を包含していること,そして,両者の間に相互作用や関係性が存在することを示してい る.この変化は,ディスカッション・ペーパーに対する回答において,ディスカッション・ペー パーにおける「価値」の定義が曖昧であるという指摘がなされたことと,その後の検討の結果と 考えられる.

IIRC (2013)が,企業の価値をステークホルダーごとに分解し,かつそれぞれが相互作用を有

するとする関係性を示したことで,A4S の 2006 年報告書に記されていた,環境関連情報は短 期・中期の財政状態に影響を与えないので財務資本提供者は興味を持たない,という状況から脱 却するための報告様式としての統合報告を作成する基礎を作ったと言える.すなわち,これによ り,財務資本提供者に対して,その意思決定に有用な情報として,その他のステークホルダーに 関する情報を提供する根拠が示されている.さらに,主たる情報提供対象として財務資本提供者 を想定する者の,財務資本提供者以外のステークホルダーに対して,その他の(財務資本提供者 以外の)ステークホルダーに関する情報を提供する,という,A4S報告書やGRIガイドライン が培ってきた考え方も維持される仕組みを提示している(FW 1.8).IIRC (2013)の開示内容を図 示すると図表2-3のようになる.

31 出典:筆者作成

図表2-3 IIRC (2013)の開示内容

開示内容および情報利用者の変遷をまとめると以下のようになる.まず,A4S 報告書や GRI ガイドラインは,財務資本提供者以外のステークホルダーに関する情報,とりわけ環境や社会に 関連する情報を,財務資本提供者以外のステークホルダーに対して提供しようとしていたことが 分かった.すなわち,伝統的な財務報告とは,開示内容も情報利用者も異なっていたことになる.

また,持続可能性(サステナビリティ)という観点からの報告を志向していたため,財務資本提 供者以外のステークホルダーに関する情報については,長期的な持続可能性の判断に資する情報 の提供を目指していた.

その後,IIRC 設立に際し,「(財務資本提供者を含む)多様なステークホルダーに関する情報 を,財務資本提供者に対して開示する」という方向性が確立された.ただし,その時点では,(財

↑ 長期的

短期的

開示内容の時間軸

財務資本 多様な 提供者のみ ステークホルダー

開示内容に含める対象 IIRC (2013)

のうち「組 織に対する

価値」

IIRC (2013) のうち「他 者に対する

価値」

相互作用

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務資本提供者を含む)多様なステークホルダー同士の扱いはフラットであり,結果として「価値」

という用語の定義が曖昧であるという批判を受けることになった.これを受けて,最終的に提案 されたIRフレームワークでは,「(財務資本提供者を含む)多様なステークホルダーに関する情 報を,財務資本提供者に対して開示する」という方向性に変化はないものの,開示内容である「価 値」を,「組織に対する価値」と「他者に対する価値」に分けることで,財務資本提供者への情 報開示という姿勢がより強まったと言える.ただし,その他の情報利用者を排除しないことで,

A4S報告書やGRIガイドラインが担ってきた役割をも継承しようとしていることがわかる.以 上をまとめると図表2-4のとおりである.

図表2-4 開示内容および想定する情報利用者の変遷 財務資本提供者に

関する情報

財務資本提供者以外 のステークホルダー

に関する情報

想定する情報利用者

伝統的な財務報告 短期 なし 財務資本提供者

A4S報告書および GRIガイドライン

なし 長期 財務資本提供者以外

のステークホルダー

IIRC (2011) 長期 長期 財務資本提供者

IIRC (2013) 長期 長期 財務資本提供者

IIRC (2011)では,財務資本提供者に関する情報と財務資本提供者以外のステークホルダーに関する情報をフラッ

トに扱っているが,IIRC (2013)では,前者を「組織に対する価値」,後者を「他者に対する価値」として分けて扱 うとともに,相互作用を有するとされている.

出典:筆者作成

ドキュメント内 非財務情報の企業価値 (ページ 36-40)