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実証分析の結果

ドキュメント内 非財務情報の企業価値 (ページ 105-110)

第 7 章 定時株主総会の活性化と裁量的発生項目額

7.4 実証分析の結果

7.4.1 会計発生項目の総額に関する分析

まず,会計発生項目総額について,株主総会活性化企業とその他の企業の比較をおこなう.会 計発生項目総額は,経常利益と営業キャッシュフローの差額として計算している.会計発生項目 総額は(減価償却費の影響で)負になることが予想される.なお,規模の調整をおこなうため,

各変数は期首総資産額でデフレートしている.

図表7-2は,活性化企業とその他の企業のそれぞれのグループについて,会計発生項目総額の 中央値を示している.両者の分布の違いを明らかにするため,Wilcoxon の順位和検定を実施し た.その結果,すべての年度において,活性化企業のほうがより小さな(絶対値が大きい負の)

会計発生項目総額を計上していることが観察され,2003年度を除くすべての年度において,5%

水準で有意な差が認められた.もちろん,会計発生項目の計上自体は中立な行為であり,先行研 究で指摘された会計発生項目の情報有用性を考えれば,むしろ情報利用者にとっては望ましい現

年度 活性化企業 その他の企業 合計

2001 94 951 1,045

2002 105 943 1,048

2003 125 926 1,051

2004 111 938 1,049

2005 175 878 1,053

合計 610 4,636 5,246

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象かもしれない.また,Dechow (1994)において営業キャッシュフローと会計発生項目総額との 負の相関が報告されていることを所与とすれば,株主総会活性化企業において相対的に小さな会 計発生項目総額が観察されたことは,単に活性化企業における業績の良さ(営業キャッシュフロ ーの額が大きいこと)の反映かもしれない.本論文でも,第5章において,定時株主総会の活性 化が,翌年の収益性の高さと正の関係を有していることを観察しており,そのこととも整合的で ある.そこで,この分析結果の含意については後で再検討する.

図表7-2 会計発生項目総額の比較

7.4.2 裁量的発生項目額の推定モデルの説明力

本項では,経営者による裁量行動の有無を明らかにする,裁量的発生項目額の推定モデルの説 明力について検討する.本論文では,裁量的発生項目額の推定モデルとして,Jonesモデル,修

正Jonesモデル,CFO修正Jonesモデル,そして成長モデルの4つのモデルを用いた.それぞ

れの推定にあたっては,日経業種分類(中分類)を利用し,同じ業種に属する企業でポートフォ リオを形成し,業種・年度ごとのクロスセクショナルによる推定をおこなった.各ポートフォリ オに属する企業数が6社未満(成長モデルについては7社未満)の業種・年度については分析か ら除外している.

図表7-3は,各モデルの決定係数(自由度調整済みR2)に関する,すべての業種・年度ポート

年度 活性化企業 その他の企業

2001 -0.0174 -0.0068 -2.3567 *

2002 -0.0233 -0.0168 -2.0979 *

2003 -0.0269 -0.0229 -0.8895

2004 -0.0230 -0.0167 -2.3369 *

2005 -0.0143 -0.0055 -2.4525 *

全体 -0.0210 -0.0138 -4.1212 **

※ Wilcoxonの順位和検定によるZ統計量を示している.

※ 1%水準,5%水準で有意な値(片側検定)に,それぞれ**,*を付している.

※ 会計発生項目総額は,経常利益と営業キャッシュフローとの差額として   計算している.

Z統計量

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フォリオにおける記述統計量を示している.Jones モデルや修正 Jones モデルと比較すると,

CFO修正Jonesモデルの説明力が高いこと,さらに日本のデータを用いた分析ではJonesモデ

ルと修正 Jones モデルの説明力が米国の先行研究(Jones (1991)や DeFond and Jiambalvo

(1994)など)における説明力よりも低いことが観察されており,これらについては先行研究75

一致している.

図表7-3 裁量的発生項目額の推定モデルの決定係数に関する記述統計量

7.4.3 株主総会活性化企業における裁量的発生項目額

図表7-4は,4つのモデルによって推定された裁量的発生項目額を基に,その絶対値に関する 平均値,中央値,およびWilcoxonの順位和検定のZ統計量について,株主総会活性化企業とそ の他の企業との比較結果をまとめたものである.いずれのモデルを用いた推定値についても,5 年間全体では株主総会活性化企業の計上する裁量的発生項目額の絶対値のほうが大きくないこ とが確認された.年度ごとに見ても,2003年における,Jonesモデル,修正Jonesモデル,お よび成長モデルによる推定値を用いた比較以外では,株主総会活性化企業の計上する裁量的発生 項目額の絶対値のほうが大きくないことが確認されている.ただし,統計的有意性という観点か らは,分析期間全体での修正Jonesモデルと成長モデルの差異が統計的に有意であったものの,

JonesモデルとCFO修正Jonesモデルでは有意な差が観察されなかった.また,年度ごとにお

ける分析の多くの年度でも有意な差が観察されなかった.以上から,仮説7-1と概ね整合的な分

75 裁量的発生項目額の推定モデルの,企業特性と検定力の関係については薄井(2014)を参 照.

モデル 観測数 平均 標準偏差 第1

四分位 中央値 第3 四分位 Jonesモデル 149 0.179 0.312 0.016 0.144 0.324 修正Jonesモデル 149 0.170 0.341 0.030 0.147 0.327 CFO修正Jonesモデル 147 0.459 0.462 0.355 0.494 0.685 成長モデル 129 0.219 0.328 0.075 0.202 0.366

※ それぞれのモデルの業種・年度ごとのポートフォリオにおける決定係数に   関する記述統計量を示している.

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析結果であるものの,より強固な結論を得るためには,追加的な検証も必要であることが判明し た.

また,Jones モデルおよび修正 Jones モデルによって推定された裁量的発生項目額の絶対値

は,CFO修正Jonesモデルおよび成長モデルによって推定された裁量的発生項目額の絶対値よ

りも一般的に大きな値を示している.このことは,Jonesモデルおよび修正Jonesモデルにおい て,欠落変数の影響により非裁量的発生項目額が十分に説明しきれていない現象が生じているこ とを示唆している.

図表7-4 株主総会活性化企業における裁量的発生項目額 パネルA Jonesモデル

年度 標本数 平均 中央値

活性化企業 82 0.022 0.018 その他の企業 885 0.025 0.021 活性化企業 93 0.019 0.015 その他の企業 871 0.023 0.019 活性化企業 112 0.024 0.021 その他の企業 850 0.024 0.019 活性化企業 95 0.022 0.017 その他の企業 869 0.023 0.018 活性化企業 153 0.023 0.018 その他の企業 811 0.023 0.020

活性化企業 535 0.022 0.018 その他の企業 4,286 0.024 0.019

※ Wilcoxonの順位和検定によるZ統計量を示している.

※ 1%水準,5%水準で有意な値(片側検定)に,それぞれ**,*を付している.

2004 -0.158

2001 -1.487

2002 -2.076 *

2005

Z統計量

-0.188

全体 -1.499

2003 0.464

101 パネルB 修正Jonesモデル

年度 標本数 平均 中央値

活性化企業 81 0.023 0.018 その他の企業 884 0.025 0.021 活性化企業 91 0.019 0.016 その他の企業 871 0.023 0.019 活性化企業 113 0.024 0.021 その他の企業 847 0.024 0.019 活性化企業 100 0.021 0.018 その他の企業 862 0.023 0.018 活性化企業 151 0.022 0.016 その他の企業 810 0.023 0.020

活性化企業 536 0.022 0.018 その他の企業 4,274 0.024 0.019

※ Wilcoxonの順位和検定によるZ統計量を示している.

※ 1%水準,5%水準で有意な値(片側検定)に,それぞれ**,*を付している.

2005 -1.070

全体 -1.886 *

2003 0.535

2004 -0.916

Z統計量

2001 -0.987

2002 -1.707 *

パネルC CFO修正Jonesモデル

年度 標本数 平均 中央値

活性化企業 81 0.019 0.016 その他の企業 884 0.020 0.017 活性化企業 90 0.017 0.014 その他の企業 872 0.018 0.015 活性化企業 108 0.017 0.015 その他の企業 852 0.018 0.015 活性化企業 94 0.017 0.015 その他の企業 868 0.019 0.016 活性化企業 150 0.019 0.015 その他の企業 811 0.019 0.016

活性化企業 523 0.018 0.015 その他の企業 4,287 0.019 0.016

※ Wilcoxonの順位和検定によるZ統計量を示している.

※ 1%水準,5%水準で有意な値(片側検定)に,それぞれ**,*を付している.

2005 -0.183

全体 -1.252

2003 -0.417

2004 -0.635

Z統計量

2001 -0.902

2002 -0.621

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