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企業の環境パフォーマンスと財務パフォーマンス

ドキュメント内 非財務情報の企業価値 (ページ 167-172)

第 9 章 企業の環境対策活動と企業価値

11.1 企業の環境パフォーマンスと財務パフォーマンス

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第 11 章 企業の環境対策活動に関する SBSC マップ

第9章では,企業のCO2排出量と企業価値の関係について実証分析をおこない,CO2排出量 と企業価値との間には負の関係(CO2排出量の多い企業の企業価値は低い)が観察された.近年 の先行研究においても,環境負荷の低い企業の企業価値が高いことを確認するものが多い. し かし,環境負荷を低くするためには,設備投資をおこなったり,割高な原材料を購入したりする 必要があり,少なくとも短期的には企業の業績(利益やキャッシュフロー)を悪化させる可能性 が高いと考えられる.

本章では,Oshika et al. (2013)の提示したSBSC (sustainability balanced scorecard)マップ に基づく実証分析をおこない,CO2排出量の低さが企業価値の高さに結びつくまでの経路につい て,企業の環境対策活動同士の関連性と,環境対策活動と環境パフォーマンスや財務パフォーマ ンスとの関連性を明らかにする.

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は,「財務の視点」という財務指標だけではなく,「顧客の視点」,「業務プロセスの視点」,そし て「成長と学習の視点」という非財務指標にも着目すべきであると主張している.また,これら の非財務指標の改善をすることで,最終的には財務指標の改善につながるという因果連鎖を示し,

戦略マネジメント・システムとして機能する可能性を示したことがBSCの大きな特徴である.

その後,BSC は研究者および実務において様々な変更が加えられた.その一つの大きな潮流 が,環境問題への意識の高まりを反映したSBSCである.SBSCでは,環境および社会の視点を 含むようBSCが変更された.SBSCは,大きく分類すると,伝統的BSCの4つの視点の一部 を変更したサブサンプション型,伝統的BSCに5つ目の視点を追加した追加型,そして,伝統 的BSCの特徴であった非財務指標と財務指標の因果関係を示すという大きな枠組みは維持する ものの各視点を大きく変更した統合型,の3種類に分類される(Figge et al. 2002; 岡 2010).

Oshika et al. (2013) では,サブサンプション型のSBSCを用いて,企業の環境対策活動とROC

(return on carbon) の改善との因果関係を示すSBSC戦略マップを提唱した.

Oshika et al. (2013) でのSBSCは,CO2排出量を削減しつつ企業価値を向上させるための方

策を考えるマネジメント・ツールを目指している.そのため,最終的な目標としてはROCが設 定された.ROCは利益をCO2排出量で除して求められ,CO2排出量の利益創出効果を表してお

り,IIRC (2013) にいうアウトカムの指標である.環境負荷(CO2排出量)を減らしながら企業

価値を向上させるため,すなわち環境パフォーマンスと財務パフォーマンスを同時に達成するに は,ROCの改善が不可欠といえる.このROCを向上させるための因果関係を順に遡ることで,

企業の環境対策活動がROCに至るまでの因果関係を示している.

Oshika et al. (2013)において,SBSC 戦略マップは以下のような検討を経て作成された.ま

ず,ROCは,その分母であるCO2排出量を減らすか,分子である利益を増やすことで改善する ことができる.Oshika et al. (2013)では,前者を環境戦略,後者を経済戦略と呼んでいる.利益 は,収益(売上高)を増やすか費用(エネルギー関連費用)を減らすことによって改善させるこ とができる.売上高の増加には,環境負荷が低い企業であることを広く知らしめることが大切で あり,そのためには投資家,得意先,顧客,そして政府や社会という,企業の外部利害関係者か らの評価を高めることが必要である.また,エネルギー関連費用の削減にはそもそものエネルギ ー投入量を減らすことが効果的である.ここまでが,企業外部とのつながりに関する視点として 検討された.

さらに,投資家等からの評価を高めるため,そしてエネルギー投入量を減らすために企業内部 で実施すべき活動を明らかにした.企業外部の利害関係者からの評価を高めるためには,消耗品

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や原材料のグリーン,原材料の購入や製品デザインにおいて環境に配慮する必要がある.また,

これらの活動は,リサイクルの実施や廃棄物の削減等を通じてエネルギー投入量の削減にも有効 であるが,それを効率よく機能させるためには,環境マネジメント・システム(environmental

management system: EMS),環境会計・環境監査の仕組みを業務プロセスとして有することが

不可欠であるし,その前提として,企業が CO2排出量削減のための中期計画を策定しているこ とも必要である.さらに,このような対策を立てるうえでは,相応の担当者や担当部署が必要で あるし,企業としての環境に対する姿勢を全社的に浸透させるための教育も不可欠であることを 示した.最終的に作成されたSBSC戦略マップは以下の図表11-1のようになった.

Oshika et al. (2013)では,この図表11-1を基に,実証分析のためのデータ入手可能性を考慮

し,簡略版SBSC戦略マップ(図表11-2)を提示している.簡略化マップでは,4つあった視点 を企業内部の視点と企業外部の視点の2つに統合した.両者はそれぞれ,企業の環境対策活動と その効果,と見ることができる.これにより,環境対策活動が引き起こす因果関係をより明確に した.さらに,従業員や教育に関連する項目を中心に,データの入手が困難な項目を分析対象か ら除外している.次節以降では,この簡略化マップに基づいた実証分析を展開する.なお,実証 分析において,項目間の関連性の説明を容易にするため,各項目には 3 ケタの番号を付してい る.さらに,類似の項目をまとめたグループも設定し,グループ間の関連性も検討できるように している.

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図表11-1 Carbon SBSC戦略マップ

※1 EMSは環境マネジメント・システム(environmental management system)のことである.

出典:Oshika et al. (2013) Figure 1

企業外部の 視点

サステナビリティの 視点

外部利害関係者の 視点

企業内部の 視点

内部業務プロセスの 視点

学習と成長の 視点

ROC (Return on Carbon) の向上

売上高の成長

CO2排出量の削減

経済戦略 環境戦略

グリーン調達

(消耗品)

グリーン調達

(原材料)

エコラベル取得

(顧客関連)

環境関連法令の遵守

(政府・社会関連)

研究開発スタッフ数

環境保全費用の低下

環境教育 ISO14001認証取得

(得意先関連)

エネルギー 投入量の削減

リサイクル実施

環境負荷の低減

エコデザイン エネルギー費用の削減 営業利益率の向上

環境担当役員 環境対策方針

SRI銘柄への採択

(投資家関連)

環境配慮ランキングの向上

貨幣単位 物量単位

廃棄物削減

CO2排出量削減のための中期計画

EMS(※1) 環境監査 環境会計システム

環境保全活動からの経済的便益

生物多様性 の保全

環境担当部署

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図表11-2 簡略版Carbon SBSC戦略マップ

※1 EMSは環境マネジメント・システム(environmental management system)のことである.

出典:Oshika et al. (2013) Figure 2 をもとに一部修正(エネルギー費用の削減,という項目を削除)

企業外部の視点

(サステナビリティの視 点,外部利害関係者の

視点)

企業内部の視点

(内部業務プロセスの 視点,学習と成長の

視点)

311 グリーン調達

(消耗品)

312 グリーン調達

(原材料)

310

110

321 EMS

(※1 411 廃棄物削減

322 環境監査 323 環境会計

320 システム

211 CO2排出量削減のための中期計画

111 環境担当役員 113 環境対策方針

412 環境保全費用 410 の低下

112 環境担当部署 811 ROC (Return on

Carbon) の向上

611 売上高の成長

712 CO2排出量の削減 711 営業利益率の向上

512 エネルギー投入量の削減 511 エコラベル取得

経済戦略 環境戦略

313 生物多様性 の保全

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