• 検索結果がありません。

第 9 章  主要投資インセンティブ(奨励ゾー

2.  現地調達比率規制

  現地調達比率についての一般的な規制はないが、次の様な措置を講じることにより、現 地調達比率の向上に努めている。

図表  10‑2  現地調達比率の向上のための措置 

1 原材料・部品・完成品別に輸入関税率に差を設けて誘導。

2 投資奨励業種の認可要件として、付加価値率20%が求められる。

(ただし、電子・同部品産業、農産品加工産業、BOIが特別に同意を与えた事業は除外)

3 BOIは、国内産業保護の目的で、輸入課徴金の設定または輸入制限ができる。

4 BOI は、投資奨励恩典を付与するに際し、原材料および部品等の可能な限りの国産品使用

を求める。

5 政府の行政指導ベースで、現地調達比率の達成状況によって特典が区分されている。

(例えば、繊維では国産原料の使用比率を考慮して輸出枠を定めている) 6 政府調達に当たって国産品の調達を促進。

(出所)BOI資料より作成

ひとくちメモ (8):  中小企業向け賃貸工場 

  主要工業団地内には賃貸工場(レンタル工場とも言う)が大抵あり、直ぐに生産を開始したい、あまり 大きな工場はいらないといった中小企業には便利。タイの専業会社が工業団地内の土地を買って賃貸工場 を建てているケースと、工業団地運営会社が自ら手掛けているケースがある。いずれも工業団地管理事務 所で紹介してくれる。工場内には、事務所、駐車場のほか、シンプルなものであるが販売用店舗、住居ス ペース、食堂等が整備されているものもある。利用にあたっては権利の範囲、ユーティリティ負担の要否、

追加コストの要否などを確認することが大切。増設に対応しにくいこと、5 年以上操業した場合にコスト 的に割高になることもある点に注意が必要。買取特約を付けることも出来る。 

  なお、工業団地運営会社から、法改正・運用方法等の変更に関する有益な情報が提供されることはあま り期待できない。日本企業は、タイ人労働者を通じて、法改正に関する不確かな情報を得ることが多いが、

工業団地運営会社に問い合わせても適切な情報を確認できるとは限らない。そのため、法令改正等の情報 に関しては、操業後も引き続き自分でアンテナを張る必要がある。 

                             

レンタル工場の並ぶ工業団地の一角   

第11章 許認可・進出手続き 

  以下では、BOI への投資奨励申請手続き、非公開株式会社の設立手続き、工場設立に関 する手続き、その他の奨励証書受領後の手続きの概要を見てみる。また、各手続き段階で の必要書類、添付書類等についても記載する。

1.BOI への投資奨励申請手続きとその際の必要書類  (1) 申請書の提出 

  事前調査が終了し、事業計画が出来上がっていれば、それを申請書に書き込む。まだ現 地法人ができていない段階では、個人名で申請することが通常であり、また、タイの居住 者を連絡人として記載する。申請書の提出先は、東京にあるBOIの事務所でも、バンコク の本部の総務部でも、地方事務所でもよい。

  申請書には、製造品目のカタログ、会社概要、工程表などを添付する必要がある。工程 表は投資奨励を受けた後に遵守する義務があり、材料の入荷、検査から製品の検査、出荷 までもらさず記入する必要がある。また、機械・設備の導入はこの工程表に必要なものが 許可されるので、工程表と機械・設備の整合性に注意を要する(工程表で必要とされない機 械・設備の減免輸入は認められない)。なお、環境を汚染するおそれのある事業については、

「初期の環境負担調査結果報告書」を申請書と同時に提出しなければならない。また、10 年を超える中古機械・設備は原則認められないが、審査により認められることもあるため、

その場合には、機械・設備の能力証明書も同時に提出しなければならない。

(2) BOI 審査担当官によるインタビュー 

  申請書が受理されたあと、直ちにBOIの審査担当官の面談(インタビュー)の通知書が、

申請書の提出者に手交されるか、申請書に連絡人として記載されたタイの居住者に送付さ れる。申請者は、当該通知書に記載されている部署に連絡し、審査担当官とアポイントを とり、申請書受理から原則として 2 週間以内にインタビューを受けなければならない。イ ンタビューの目的は、委員会へ案件を上げるための追加的な情報の入手であり、具体的に は、製品の詳細、製造工程など技術的なことや申請者(会社)の現在の事業内容を 2 時間 程ヒアリングされる。技術者の同行も可能である。

(3) 委員会による案件審査 

  審査担当官による案件の詳細レポートができあがると、委員会に提案され、審議される。

この場合、投資額により次のように取り扱う委員会などが異なる。

①  投資額8,000万バーツ以下(土地代と運転資金を除く)の場合

:BOI事務局(OBOI)の内部委員会

②  投資額8,000万バーツ超で、7億5,000万バーツ以下の場合 :BOIの小委員会

③  投資額7億5,000万バーツ超で、輸出80%以上の場合 :BOIの小委員会

④  投資額7億5,000万バーツ超で、輸出80%未満の場合 :BOIの本委員会

  上記の内部委員会と小委員会は毎週開催、本委員会は原則毎月1回開催される。

  申請書受理から審査認可までの期間は、①の場合は 40 営業日以内、②、③の場合は 60 営業日以内、④の場合は90営業日以内と定められている(BOIの組織については第6章「外 資導入政策と管轄官庁」を参照)。

(4) 認可通知とそれに対する回答 

  委員会で認可されると、その旨文書により、連絡人に通知される。認可通知書には BOI の政策による特典と条件がタイ語で記載されている。この通知を受け取ってから 1 ヵ月以 内に通知書の内容に同意するか、否かの回答を行なう必要がある(様式があり、回答期限 の延長も可能である。また、不明な点等があれば、通知書の内容について文書で問い合わ せることが可能である)。

  なお、認可通知書には以下の書類が添付される。

1 認可受諾の回答フォーム

2 認可受諾の回答期限延長の申請フォーム

3 奨励証書 (Promotion Certificate) 発給申請フォーム

4 輸入品梱包に輸入税等減免特典を受けることを表示する荷印の通知 5 機械・設備輸入に関する告示(46/2534(1991年)、Por.3/2545(2002年))

およびタイで製造できる機械・設備リスト

6 法人所得税免税の特典を使用する前の事業実績の報告方法について

(OBOI告示Por.4/2544(2001年))

7 電子システム(MCTS)による機械・設備品目表承認の基準と方法

(OBOI告示 Por.4/2544(2001年))

8 必要インフラ、人材に関する調査表

(5) 奨励証書の発給 

  通知書に対し回答すると、次に正式な奨励証書の発給申請を行なう。当初の奨励申請は 個人名でも可能であったが、BOI の奨励事業は法人により営まれることが条件になってい るので、奨励証書発給申請は現地法人の責任者名義で行なう必要がある。従って、当初の BOI への奨励申請と並行して、現地法人設立事務を進めておけば、時間の節約となる(こ の段階では、資本金の払込みは会社法により各株式の額面の4分の1以上で足りるが、BOI 認可企業の場合、操業開始までに各株式を全額払い込むことが要求される点に留意が必要 である)。

  奨励証書発給申請は、奨励認可の受諾回答日より 180 日以内に行なう必要があり、奨励

証書は、通常、発給申請から10営業日以内に発給される。

  奨励証書発給申請書に必要な書類は以下の通り。

1 奨励証書発給申請書(BOI様式FOS・CT・21)

2 法人登記簿謄本(登記事務所が証明した定款、株主リストを含む) 3 法人登記証明書(上記登記簿と対になっている)

4 増資の場合の法人登記簿謄本(もしある場合) 5 会社株式登記事務の保証書(タイ商務省発行)

6 海外からの資金送金を証明する書類(外国からの資本がある場合) 7 合弁事業契約、技術援助契約、その他の援助契約(もしある場合) 8 記入済み必要インフラ、人材調査票

  なお、奨励証書の見本は、巻末付録5.「奨励証書見本」を参照されたい。