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第 9 章  主要投資インセンティブ(奨励ゾー

2.  コンピューター機器(HDD)産業

(1) タイのハードディスク(HDD)生産メーカー 

「コンピューター機器類」を構成する内訳は不明だが、通関統計の輸出(HSコード8471: PC等のIT機器類)の9割超がHDD関連製品であることや、コンピューター機器に対す るタイ国内の需要規模を勘案すると、「コンピューター機器類」の主役は、輸出向けのHDD 関連セクターであると考えられる。

2009年の世界のHDD生産シェアからは、大手生産メーカーが5社あることが窺える。

とする)が1983年に、2位のWestern Digitalが2001年に、3位の日立グローバルストレ ージテクノロジー(以下、日立GST、とする)が2003年に、4位の東芝ストレージデバイ ス(以下、東芝SD、とする)が2008年に富士通タイランドより買収してそれぞれ進出し、

現在、大手メーカー4社が事業を営んでいる。

 

図表  22‑3  HDD メーカーの世界シェア 

Seagate 31%

Western Digital 30%

日立GST 16%

東芝SD 13%

サムスン 9%

その他 1%

生産シェア 2009年

(出所)SMBC資料より作成

図表  22‑4  タイのハードディスク生産メーカーと生産能力 

会社名 進出年 総生産能力

(100万ユニット)

Seagate Technology (Thailand) 1983 66

Western Digital (Thailand) 2001 60

日立グローバルストレージテクノロジー(タイランド) 2003 60

東芝ストレージデバイス・タイ 1988 69.86

合計 255.86

(注)  東芝ストレージデバイス・タイは、富士通(タイランド)から買収により変更

(出所)SMBC資料より作成

これら4社によるタイでのHDDの設備投資動向をみると、生産量が劇的に増えた2005 年の前年(2004年)に、Seagateや日立GST、Western Digitalが投資計画を発表してい ることが分かる。その後もWestern Digitalが2005年と2008年に、Seagateが2007年に それぞれ 150 億バーツ前後の設備計画をタイ国政府より認可されている。これらの設備投 資により、タイのHDD生産量は2003年の5,000万ユニット超から2009年には2億5,000 万ユニット超と約5倍増えている。

図表  22‑5  タイのハードディスクドライブ生産量 

(出所)日本アセアンセンター「タイにおける電気電子産業の概要および現況」セミナー資料より抜粋

図表  22‑6  コンピューター機器類の実質 GDP 構成比と主要 HDD メーカーの設備投資動向 

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10

(暦年)

Seagate:216億THB 日立GST: 80億THB Western Digital:40億THB Western Digital:143億THB

Seagate:34億THB

Seagate:187億THB Western Digital:152億THB

Seagate:150億THB 日立GST: 155億THB 東芝SD:102億THB

(2) 政府の後押しもあって発展したタイの HDD 産業 

タイでHDD産業が発達した背景には、低コスト、高い労働の質、空港等のインフラの充 実があるが、この他に政府がHDD産業を育成しようとする姿勢が大きかった。BOIは2000 年 8 月から運用された投資奨励策において、奨励業種や各奨励ゾーンにおける特典の見直 し等を行って、7分野129業種を投資奨励業種として指定したが、HDDおよびHDD部品 の製造については特別重要対象業種に指定されている。この結果、HDD 生産メーカーは、

投資地域に関係なく 8 年間の法人所得税の免除(免除額の上限なし)や機械輸入税の免除 等の恩典を享受できるようになった。

また、政府は持続的発展のための投資奨励策として、HDDをはじめとしたハイテク産業 に対して、2012 年12 月末までに申請を行えば、バンコクを除く全ての地域の事業を対象 に、①法人所得税免除期間終了後さらに5年間の 50%減税、②輸送、光熱費の2 倍を10 年間控除、③通常の資本償却に加えてインフラの設置、建設費の25%を純利益から10年間 控除等の恩典を付与している。

(3) HDD 市場での主役の交代 

国を挙げての支援の効果もあり、タイはHDDの主要輸出国になり、2009年には世界の HDD輸出全体の4割超を占めている。

図表  22‑7  タイ製 HDD の世界市場におけるシェア 

19.8% 24.2%

31.5% 34.8% 39.8% 45.7% 43.8%

80.2% 75.8%

68.5% 65.2% 60.2% 54.3% 56.2%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

03 04 05 06 07 08 09

 タイ  その他 (暦年)

(注)  2009年の輸出シェアは速報値ベース

(出所)SMBC資料より作成

以前はシンガポールが HDD の主要輸出国だったが、米ドル建てでみた同国の輸出額は 2003年を境に減少に転じており、2007年にはタイの輸出額がシンガポールを初めて上回っ た。さらに2009年8月には、SeagateがシンガポールからのHDD事業の撤退を表明して おり、今後は一層、タイの存在感が高まると予想される。

図表  22‑8  HDD 輸出入統計(上図:シンガポール、下図:タイ) 

-2 0 2 4 6 8 10 12 14

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10

(暦年)

(10億米ドル)

 輸出  輸入  収支

シンガポール

-2 0 2 4 6 8 10 12 14

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10

(暦年)

(10億米ドル)

 輸出  輸入  収支

タイ

(注)  シンガポールは貿易統計の「Disk Drive、タイはHSコード「8471」を採用している

(出所)Yearbook of Statistics SingaporeThe Custom Department (Thailand)より作成

シンガポールに代わって主要輸出国になったタイではあるが、HDD製品の多くは、中国

(香港含む)に輸出されている。2002年には中国向け輸出はHDD全体の11%だったが、

2010年には過去最高となる46%にまで比率が高まっている。HDDが主に使われるPCの アセンブラーは台湾メーカーが主だが、協力工場のほとんどが中国にあることが背景にあ ると考えられる。

図表  22‑9  中国向け輸出が伸びている HDD 製品 

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10

(暦年)

(出所)The Custom Departmentより作成