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第 9 章  主要投資インセンティブ(奨励ゾー

8.  労働裁判所における労使紛争の解決 127

タイにおいては、1979年に制定された労働裁判所及び労働事件訴訟法に基づき、労使間 の紛争を専門に審理するための第 1 審裁判所として労働裁判所が設けられている。労働裁 判所の裁判官は、労働問題に関する専門的知識のある裁判官のほかに、労働者側を代表す る者と使用者側を代表する者が、陪席裁判官として裁判に加わることになっている。ただ し、陪席裁判官は、裁判長に対して、労働者側にも使用者側にもつかず、公平に職務を全 うすることの宣誓を求められる。裁判の迅速性を重視し、控訴は第 2 審の控訴裁判所を飛 び越えて、最高裁判所に対して行うことになっている。ただし、控訴理由は法律事項に限 られる。

 

9.外国人就労規制と労働許可の取得 

外国人職業規制に関しては、従前の 1978 年法が廃止され、2008 年に制定された外国人 就労法25が規定している。同法では、外国人が、タイ国内で、商行為または収入を目的とし て、理容師、美容師、絹手芸品製造等を始め、図表 19‑18に掲げた39の職業に就労するこ とを地域を問わず禁止している。なお、BOI の投資奨励を受けている企業、または IEAT 管轄の工業団地に工場を所有している会社についても例外なく一律に禁止している。

また、禁止されていない職業に従事する場合にも、外国人が就労するに当たっては、労働 省雇用局からの労働許可証(ワークパーミット)の取得が必要である。労働許可証の有効 期限は原則として1年間で、延長申請は1回につき2年までの延長が検討される。

これまで、後述するBOIの投資奨励を受けている企業、またはIEAT管轄の工業団地に 工場を所有している会社以外の場合は、労働許可を取得するのは容易ではなく、その取得 に当たって図表 19‑19 のような様々な条件が課せられ、外国人本人に対しても一定の就労 条件が付される場合が少なくない。これは法律上就労許可審査に関して労働省雇用局長に 大幅に権限委譲されており、その審査のガイドライン(2004年9月30 日付け雇用局長基 準)では明確な基準となっておらず、同雇用局長の裁量に委ねられている点が多いことに 起因する。このため、会社の設立に当たってはあらかじめ労働許可証取得のための配慮が 必要になる。もっとも、2007年11月1日に発行された日・タイ経済連携協定によりその 取得基準が緩和された。

図表  19‑18  外国人就労禁止職業(39 職業) 

1 2

3 4 5

6 7 8

9 10 11 12

13 14 15 16 17 18 19 20

肉体労働

農業、畜産業、林業、漁業

(ただし、特殊技能業種、農業管理、海 洋漁業船舶における単純肉体労働を除 く)

レンガ職人、大工等の建設業者 木彫品製造

自動車等の運転や運搬具の操縦 (ただし、国際線のパイロットを除く) 店員

競売業

会計業としての監督役務の提供 (ただし、臨時的な内部監査を除く) 貴石類の切削や研磨

理容師、美容師 織物製造

アシ、藤、麻、竹を原料とするマット 等の製品製造

手すき紙製造 漆器製造

タイ特産楽器製造 黒象眼細工

金、銀等の貴金属製品製造 ロンヒン真ちゅう工芸品 タイ特産玩具の製造

マットレス、上掛け毛布類の製造

21 22 23 24 25 26 27 28

29

30

31 32 33 34 35 36 37 38 39

托鉢用鉢の製造 絹手芸品製造 仏像製造 ナイフ製造

紙製、布製の傘製造 靴製造

帽子製造

仲介業、代理店業(ただし、国際貿易業 務を除く)

建設、木工に関し、企画、計算、組織、

分析、計画、検査、監督助言をする職 業(ただし、特殊技能を必要とする業務 は除く)

建設業における設計、図面引き、コス ト計算、助言をする職業

服仕立

陶磁器類の製造 手巻きタバコ

観光案内人および観光案内業 行商・露店業

タイ字のタイプ・写植 絹を手で紡ぐ業務 事務員、秘書

法律、訴訟に関する業務(ただし、仲 裁人の業務を除く)

(出所)BOI資料より作成

なお、BOI の投資奨励を受けている企業、またはIEAT 管轄の工業団地に工場を所有し ている会社は、それぞれ図表 19‑19 とは別の基準により比較的容易に労働許可を取得する ことができるようになっている。特に、BOI の事務所や各 IEAT内の事務所にあるワンス トップサービスセンターで、滞在許可証の発給と併せ、一括して手続きができるようにな ってからはこの傾向が強まっている。BOI は、投資奨励法に基づき、労働許可証等の発給 を、関係官庁に指示し、行わせることができるが、逆にBOIなどの行政指導ベースで、タ イ人の経営者および技術者の採用を要求される場合もあるので留意する必要がある。

図表  19‑19  外国人の労働許可取得の難しさ 

1 外国人1人の労働許可を取得するためには、原則的にその会社の資本金の払込額が最低 200万バーツ必要。ただし、当該外国人がタイ人配偶者と同居している場合には、上記 最低資本金額は50%削減される。

認可される人数は10人に限定される。ただし、300万バーツ以上の法人税を納付して いる場合、前年度輸出実績が3,000万バーツ以上外貨を獲得するものであった場合、既 にタイ人を100人以上雇用している場合等、特定の場合は除かれる。

2 タイで事業を行っている外国で設立された企業の場合には、外国人1人の労働許可を取 得するためには、原則的にその会社の資本金の払込額が最低300万バーツ以上の規模お よび資本金の持ち込みが必要。ただし、当該外国人がタイ人配偶者と同居している場合 には、最低資本金額は50%削減される。

300万バーツ以上の法人税を納付している場合、前年度輸出実績が3,000万バーツ以上 外貨を獲得するものであった場合、既にタイ人を100人以上雇用している場合等、特定 の場合を除き、10人に限定。

3 外国で設立された企業の駐在員事務所の場合、外国人は2人まで認可。

4 本社の代表としてタイで商品やサービスの資源の調達に、品質の検査・管理のために入 国する外国人は5人まで認可。

5 雇用者がタイ人従業員を雇っている場合、タイ人従業員4名につき外国人の就労を1名 認可。

6 投資奨励を受けている事業でも、強制送還された外国人等を雇うことはできない。

7 雇用主が個人の場合には、外国人1名の労働許可を取得するためには、原則として、次 のいずれかの条件を満たしていることが必要。

  ①雇用主の所得が70万バーツ以上

  ②雇用主の所得税納付額が5万バーツ以上(最高外国人3名まで可)

  ③雇用主がタイ人の従業員を最低4名(ビザ延長の条件)雇用していること(最高外 国人3名まで可)

ただし、当該外国人がタイ人配偶者と同居している場合には、上記条件は50%削減

(出所)BOI資料より作成

また、当該外国人が、社会貢献を目的とする非営利団体や地域統括事務所、駐在員事務 所に就労する場合、タイにはない高度な技術を有していて一定期間内に 2 名以上のタイ人 への技術指導を行う場合、特定のプロジェクトの遂行に必要な専門的知識・技術を有してい る場合、一定期間内に芸能、娯楽、音楽活動を行う場合なども、比較的容易に労働許可を 取得することができる。

なお、労働許可所有者は常に許可証を携帯するか、事務所内に保管し、検査に備える義 務があること、許可証記載の事項に変化がある場合には改めて許可を要すること、企業側 が労働許可を得ていない外国人を雇用することや許可証の条件と異なる条件で働かせるこ とは禁止されていること等に留意する必要がある。

図表  19‑20  労働許可が比較的容易に取得できるケース 

1 BOIの投資奨励を受けている企業で就労する場合

2 IEAT管轄の工業団地に工場を所有している企業で就労する場合

3 タイ国内市場に無い高度な技術を有していて、一定期間内に2名以上のタイ人への技術 指導を行う場合

4 特定のプロジェクトの遂行に必要な専門的知識・技術を有している場合 5 一定期間内に芸能、娯楽、音楽活動を行う場合

6 財団、協会、その他社会貢献を目的とする非営利団体で就労する場合 7 地域統括事務所、駐在員事務所で就労する場合

(出所)社会福祉省雇用局の規則(2004108日)より作成

第20章 物流・インフラ 

  この章では物流(港湾、空港、道路、鉄道)とインフラ(電力、通信)を紹介する。

1.主要な国際空港と港湾の位置 

図表 20‑1では、タイの主要な7つの国際空港と4つの主要港湾の位置を表している。

図表  20‑1  タイの主要港湾と国際空港 

(出所)各種資料より作成

●国際空港   

①新バンコク(スワンナプーム)

②バンコク(ドンムアン)

③チェンマイ

④チェンライ

⑤ハジャイ

⑥プーケット

⑦サムイ

●主要港湾   

Ⓐ レムチャバン港

Ⓑ クロントイ港

Ⓒ マプタプット港

Ⓓ ソンクラー港

   空港 港湾

④チェンライ

③チェンマイ

①スワンナプーム

②ドンムアン

⑥プーケット

⑦サムイ

⑤ハジャイ

Ⓐレムチャバン

Ⓒマプタプット

Ⓑクロントイ

Ⓓソンクラー