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第 9 章  主要投資インセンティブ(奨励ゾー

6.  環境が問題となった事例

  近年タイで問題となった環境事例として、マプタプット周辺工業団地における公害訴訟 が挙げられる。マプタプット周辺工業団地は、ラヨン県マプタプット地区に建設された石 油化学、鉄鋼業を中心とする工業団地である。

  2009年12月12日、タイ最高行政裁判所は、環境問題を理由に中部ラヨン県のマプタプ ット地区における65プロジェクトの一時差し止めの命令を下した19。同地域は、シャム湾 の豊富な天然ガスを利用した石油化学産業が集積する地域であり、旭化成ケミカルズ、宇 部興産、三井化学をはじめとする日系企業の他、タイ、欧米企業により新規プラント建設 等の投資活動が積極的に行われている。十数年前から大気・水質汚染による環境・健康侵 害がはじまり、1990年代には異臭騒ぎにより学校が休校する問題が発生していた。

  最高行政裁判所の判決のきっかけとなったのは、2009年6月にマプタプット地域住民お よび環境NGOが8つの行政機関20を相手取って起こした訴訟である。タイ王国憲法(2007 年改訂)第67条第2項には、コミュニティーにおける環境の質、健康面に影響を与える事 業を実施する際には、①健康影響評価(Health Impact Assesment:HIA)及び環境影響評 価(EIA)の実施、②地域住民への公聴会の実施、③独立機関による審査が必要とされてい るが、この条項が十分に実施されていないことを不服として中央行政裁判所に提訴したも のだ。

  上記の判決後、関係政府機関は、環境や住民の健康に影響を与える事業を審査する独立

19 その後2007年以前に承認を得た事業の差し止めが解除され、2010年3月時点で50件弱に 絞られた。

委員会の設置、未整備であったHIA、公聴会実行のための環境関連法(2010年8月31日 承認)の整備の策定を行い、投資規制対象となる11事業を発表した(図表 15‑3参照)。こ れを受け、中央裁判所は同年9月、先に停止命令を受けたものののうち11事業に該当しな い事業の再開を認めた。日系企業については8社全てが事業を再開している。

憲法第67条に基づくEIA義務付けは、マプタプットのみならず全国に適用されるもので あるが、2011年1月に実施したラヨンを含めた進出日系企業(約30 社)へのインタビュ ーでは、本件に関する行政指導を受けている企業はなく、マプタプット周辺地域であって も規制業種に該当しない企業については、対応に大きな変化はないことが分かった。しか しながら、環境問題に関する地域住民の関心が高まっていることは事実であり、今後の規 制強化を念頭に、タイの環境基準を遵守することにとどまらず、自ら率先した環境配慮の 取り組みを実施している企業が多かった。直接の影響はないながらも、憲法に基づく法整 備が遅れたことによる事業中止について、戸惑う企業も多いであろう。

なお、訴えを起こした地域住民らは中央裁判所の判決を不服として最高行政裁判所に上 訴している。今後への影響は未知数だが、投資を計画する際には動向に注意する必要があ りそうだ。

図表  15‑3  憲法第 67 条に基づく EIA の作成を義務付ける 11 事業    1 海・湖の埋め立て 面積300ライ以上

2 鉱業法に基づく鉱物資源の採掘業 全ての規模 3 工業団地法に基づく工業団地または、

工業団地に類似する事業

石油化学工業、鉱物製錬工場を一ヵ所以上有する工業団地、

及びこれらの工場に対応するため拡張する工業団地。

4 石油化学工業 35%以上の設備増強の川上事業、日量 100トン/日以上の川 中事業等

5 鉱物製錬又は金属溶解 溶鉱炉、銅・金等の製錬等 6 放射性物質の製造、除去、調整 全ての規模

7 廃棄物の改質工場または廃棄物の埋 め立てまたは焼却所(セメント焼成炉 での燃焼使用を除く)

全ての規模

8 滑走路を持つ空港 3,000メートル以上

9 港湾・船着場 埠頭の全長が300メートル以上または面積が1万㎡以上 10 貯水ダム・池 1億㎡以上または面積15平方キロメートル以上

11 火力発電所 石炭:>100MW、バイオマス:>150MW、コジェネ天然 ガス:>3,000MW、全ての規模の原子力発電所

(出所)JETRO、SIAM TINPLATE CO.LTD資料より作成

第16章 貿易管理・為替管理 

1.輸出入規制 

  タイでは、財務省所管の関税法に基づき、輸入品に対して品目ごとに定められた税率に 従って輸入税が徴収される。また、商務省所管の輸出入管理法等に基づいて一部の品目の 輸出入が規制されている。

(1) 輸入規制 

輸入規制の対象となる品目は次の3タイプに分けられる。

①商務省輸入規制

国内産業保護、外貨流出防止等の観点から、輸出入管理法に基づいて、輸入規制対象品目 として指定され、商務省外国貿易局の輸入許可認証取得、課徴金賦課などにより輸入規制 を行っている。この規制には、「輸入許可取得必要品目(19 品目)」、「WTO協定による市 場開放のための産品(22品目)」、「輸入課徴金が課せられる品目(3品目)」がある。

②その他の輸入規制

工業省による危険品の指定、国家通信委員会(NTC)による通信機器の輸入規制、タイ 工業規格(TISI)による鉄鋼製品の規格制限等の形で事実上輸入が制約されている。

③輸入禁止

他人の商標権を侵害するものや偽ブランド品などの輸入の他、国連安全保障理事会決議 に則して輸入禁止対象の地域規制等が含まれる。

図表  16‑1  商務省輸入規制品目と輸入禁止品目のリスト 

○ 輸入許可取得必要品目(19品目) ○ WTO協定による市場開放のための産品(22品目) ○ 輸入課徴金が課せられる品目(3品目)

 1. 薬品および製薬製品  1. 粉ミルク  1. 魚粉(60%を超えるタンパク質含有量の魚肉)

 2. クレンブテロール化合物  2. 生乳  2. トウモロコシ

 3. アルブテロールおよびサルブタモール  3. ジャガイモ  3. 大豆油かす

 4. 衣類の一部  4. たまねぎ

 5. 石碑用または建築用の石の一部  5. にんにく

 6. 中古車  6. ココナッツ

 7. 中古二輪車  7. 乾燥竜眼 ○輸入禁止品目(12品目)

 8. 中古の輸送用自動車(30人以上の乗客用)  8. コーヒー

 9. 中古ディーゼルエンジン  9. 茶  1. 他人の商標権を侵害する製品

10. 金 10. 胡椒  2. 偽ブランド名製品

11. コイン 11. トウモロコシ  3. ゲーム機

12. 骨董品 12. 米(調理済みのものおよび米製品を除く)  4. モーターバイクの中古エンジン、部品および備品

13. 違法コピー品製造用機械 13. 大豆  5. CFCが使われた冷蔵庫

14. 凸版印刷機およびカラーコピー機 14. ココナッツの果実  6. 中古タイヤ

15. プラスチックのくず 15. たまねぎの種  7. シエラレオネ共和国に対する制裁措置

16. チェーンソー 16. 大豆油  8. リベリア共和国に対する制裁措置

17. 魚粉(60%未満のタンパク室含有量の魚肉) 17. パーム油  9. タークおよびカンチャナブリ県境を

18. カフェイン 18. ココナッツ油     通過するチーク、丸太およびチーク製品

19. 過マンガン酸カリウム 19. 砂糖 10. 朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁措置

20. コーヒー製品 11. イラン・イスラム共和国に対する制裁措置

21. 大豆油かす 12. 陶器のコンテナ、銀で表面加工されたコンテナ

22. 生糸

(注)商務省にて詳細リスト入手可能

(出所)商務省、JETRO等の資料より作成

(2) 輸出規制 

  一方、輸出規制の対象となる品目は、次の3タイプに分けられる。

①輸出規制品目

国内産業保護、輸出管理等の観点から、輸入と同様、輸出入管理法に基づいて、輸出規 制対象品目が指定されている。この規制には、「商務省外国貿易局の輸出許可認証取得が 必要な品目(20品目)」、「特定の果実及び野菜など一定の条件(例えば品質証明や原産地 証明書等の提出、業者名の表示、業界団体の会員登録等)の下でのみ輸出が認められる 品目(10品目)」がある。

②輸出禁止品目

他人の商標権を侵害するものや偽ブランド品などの輸出は禁止されると同時に、国連安 全保障理事会決議に則して輸出禁止対象の地域規制がある。

③輸出業者登録義務品目

タピオカ製品、トウモロコシ、チーク加工品など一部の品目の輸出業者は、輸出品の品 質確保の観点から、一定の条件を満たした上で、商務省への登録が必要になる。

図表  16‑2  輸出規制品目と輸出禁止品目のリスト 

○ 輸出許可取得必要品目(20品目) ○ 一定の条件下で輸出が認められる品目(10品目) ○輸出禁止品目(10品目)

 1. 籾、玄米および餅米  1. 12種の果実および野菜:シンガポール、マレーシア、  1. 他人の商標権を侵害する製品  2. 米(EUの関税クオータ対象となるもの)   日本およびEUに輸出  2. 偽ブランド名製品

 3. キャッサバ製品  2. 蘭の花:輸出登録が必要。  3. 砂

 4. コーヒー   EU向けには品質証明を税関に提出義務あり  4. シエラレオネ共和国に対する制裁措置  5. 大豆かす  3. 竜眼(ラムヤイ):外国貿易局へ登録、税関へ報告、  5. エチオピア連邦民主共和国および  6. 木材および木材製品   輸出業者名・品質表示、輸出後の状態報告義務あり     エリトリアに対する制裁措置  7. 木炭  4. ドリアン:輸出業者名・種類・賞味期限の表示義務あり  6. リベリア共和国に対する制裁措置  8. 生きている象  5. 冷凍・冷蔵・生のエビ・イカ、米国またはEU向け  7. ソマリア民主共和国に対する制裁措置  9. 生きているブラックタイガーエビ   エビ調製済食料品(10%以上のエビを含む):業界団体の  8. コンゴ民主共和国に対する制裁措置 10. 絶滅品種の水生動物(258種)   会員であること。商務省発行の品質証明書の税関事前  9. 朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁措置 11. 生きている真珠貝(一部および製品含む)   提出義務あり 10. イラン・イスラム共和国に対する制裁措置

12. 砂糖  6. ツナ缶詰:業界団体の会員であること

13. 石炭  7. パイナップル缶詰およびジュース:業界団体の会員

14. 金   またはタイのパイナップル産業業者であること。 ○輸出業者登録義務品目(10品目)

15. 神聖な彫像  8. 衣料、毛糸織物その他織物素材:EU向けは原産地証明

16. 仏像   (EUからの品目リストによる)が必要  1. タイマームマリ米  6. 魚粉

17. 自然の砂で組成される鉱物  9. 台湾向け自動車:タイ‑台湾協定に基づき輸出される  2. タピオカ製品  7. ヤエナリ

18. 再輸出用製品   (台湾からの品目リストによる)  3. タピオカ澱粉  8. 黒ヤエナリ

19. カフェイン 10. ダイヤモンド原石:外国貿易局へ登録、税関へ報告、  4. トウモロコシ  9. カポック 20. 過マンガン酸カリウム   キンバリー加工合意下でのダイヤモンド原石輸出業者  5. サトウモロコシ 10. チーク加工品

  であること

(注)商務省にて詳細リスト入手可能

(出所)商務省、JETRO等の資料より作成