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第 9 章  主要投資インセンティブ(奨励ゾー

5.  労働条件

  タイ人従業員の労働条件は、労働者保護法及び関係労働省令で、労働者保護の観点から、

詳細に規定されている。

 

図表  19‑10  就業規則の内容  (1) 就業規則 

  10 人以上の従業員を雇用する使用者は、図表 19‑10の内容等に関するタイ語の就業規則を作成し、

従業員に公示するとともに、その写しを労働局に提 出しなければならないこととなっている。労働局は 法に抵触する就業規則を一定期限内に修正するよう 命令することができる。

(2) 労働報酬 

  賃金は、図表 19‑11 のルールに従って、原則としてタイの通貨バーツで支払わなければ ならない。基本給の他に、残業手当、通勤手当、特別手当等が支払われる。

 

図表  19‑11  賃金支払いのルール 

1 男女を問わず同一労働、同一賃金でなければならない。

支払い場所は原則として労働の場所であること。

ただし、銀行振り込みも可能であるが、その場合は事前に了解を取ること。

3 支払期間は少なくとも1月に1回であること、又は、労使合意によることも可能。

4 不可抗力でない休業の場合、75%以上の賃金を支払わなければならない。

5 賃金遅配の場合、年利15%の利息を支払わなければならない。

次のものは賃金から差し引くことができる。

   個人所得税、労働組合費、貯蓄協同組合費、積立金、

   使用者への損害賠償金(労働者の承諾を要する)等 2

6

(出所)BOI資料より作成

(3) 最低賃金制度 

  タイでは、1972年労働法に基づく内務省令により、1973年以来、地域ごとに最低賃金(日 額)が設定されてきた。最低賃金は幾度となく改訂され、2012年4月の引き上げが実施さ れる前までは、プーケットの日額221バーツを最高に、北部パヤオ県の日額159バーツま で、32 段階に分かれていた。タイ貢献党は、選挙活動において、内需の拡大を目指し最低 賃金を引き上げる政策を選挙公約に掲げてきた。2011年8月の発足に伴い、最低賃金は2012 年4月より全国で40%引き上げられ、バンコクと近隣6県(サムットプラカーン、パトム

(出所)BOI資料より作成

1 労働日、通常の労働時間および休憩時間 2 休日および休日に関する規則

3 超過勤務および休日勤務に関する規則 賃金、時間外賃金、休日賃金に関する 規則、支払日、支払場所

5 休暇に関する規則 6 規律および罰則 7 苦情申立

8 解雇、解雇補償金および特別補償金 4

タニ、サムットサーコーン、ナコンパトム、ノンタブリ)においては、日給 300 バーツと なった。さらに、2013年1月には、先の引き上げにより300バーツに届かない県について も、300バーツまで引き上げることとしている。

これに加え、2008 年労働者保護法の改正により、職能ごとの最低賃金が最低賃金委員会 により定められることとなった。最低賃金は上昇傾向にあるが、これに加え、同委員会は 2011年2月8日、11種の職能に関して3段階の技能レベルに応じた賃金水準を設定してい る。 

   

図表  19‑12  タイの最低賃金制度 

(2012年4月、単位:バーツ/日)

賃金 バンコク周辺 中部 東部 東北部 北部 南部 西部

バンコク プーケット

サムットプラカーン パトムタニ サムットサーコーン ナコンパトム ノンタブリ

273 チョンブリ

269 サラブリ チャチェンサオ

265 アユタヤ

264 ラヨン

259 パンガー

258 ラノーン

257 クラビー

255 プラチンブリ ナコンラチャシマ

254 ロッブリ

252 カンチャナブリ

251 チェンマイ ラチャブリ

250 チャンタブリ ペチャブリ

246 シンブリ ソンクラー

244 タラン

243 アントーン ナコンシータマラート

サケーオ ローイ チュムポン

サトゥーン パタルン

スラタニ サムットソンクラーム

ヤラー プラチュアプキリカン

ウボンラチャタニー ナラティワート ウドンタニー

237 ナコンナーヨック パタニ

タラート ノンカーイ ランプーン

ブンカーン

カンペンペット ウタイタニ

チャイナート コンケン スパンブリ

ガラシン

ヤソトン チェンライ

ローイエット ナコンサワン サコンナコン ペチャブーン ブリラム

チャイヤプーム ランパーン ムクダハン スコタイ ノーンブアランプー

229 ナコンパノム

マハーサラカム ピサヌローク アムナートジャラーン ピチット

プレー メーホンソン ウタラディット

226 スリン ターク

225 ナーン

223 シーサケート

222 パヤオ

234 236

227 233

232

230 300

241

240

239

(出所)労働省より作成

(4) 勤務時間と有給休暇 

  就業時間は、原則として1日9時間、

週48時間以内と定められている。また、

5時間連続の就労後は、1時間以上の休 憩を与えなければならない。時間外労 働は、その都度事前に労働者の承諾が 必要であり、仮に2時間以上になる場 合には、事前に20分以上の休憩を与え なければならない。

  休日は、週休日1日(以上)のほか、

元旦、国王誕生日等の祝祭休日を少な くとも年間 13 日以上定める必要があ り、いずれも有給である。ただし、日 給制および出来高制の場合には、週休 日は無給である。

1年間継続して勤務した労働者に対しては、1年当たり6日以上の年次有給休暇を与えな ければならないが、使用者と労働者の合意によりこれを翌年に持ち越すことは可能である。

勤務期間が 1 年に満たない労働者に対しても、勤務日数に応じて按分した有給休暇を与え なければならないとされている。

有給休暇としては、この他に、病気休暇(年間30 日間は有給。3日以上の場合には使用 者は医者の証明書の提出を求めることができる)、避妊手術休暇(医者が定めた期間は有給)、

出産休暇(休日を含めた90日間で、45日まで有給)、軍務・軍事訓練休暇(年間60日間 は有給)、等がある。なお、2008年改正により、退職理由を問わず、使用者は退職者に対し て有給休暇分の賃金を支払う義務があることになった。

(5) 時間外労働と休日労働 

  時間外労働については、超過した時間につき、所定内労働時間の単価の1.5倍以上の、休 日労働については、所定労働日の賃金の 2 倍以上の時間外労働手当てを、それぞれ支払わ なければならない。詳細は、図表 19‑13 の通り。また、時間外労働時間数は、休日労働お よび休日時間外労働の時間数と合計して週36時間を超えてはならない。

出勤時に、工場の入り口でタイムカード打刻に  列をなす従業員

図表  19‑13  時間外労働と休日労働に対する手当ての基準 

1 時間当たり賃金の1.5倍以上

2 休日労働 休日が有給の場合 時間当たり賃金の1倍以上

3 休日が無給の場合 時間当たり賃金の2倍以上

4 休日に通常労働時間を越えた場合 時間当たり賃金の3倍以上 労働日の時間外労働

(出所)BOI資料より作成

(6) 管理職 

  労働保護法は、管理職を「雇用、賞与の支給または解雇について使用者を代理して行う 権限のある者」と定義している。従って、役職名にかかわらず、管理職の該当性には留意 する必要がある。管理職には時間外手当および休日時間外労働の手当を支給する必要はな い。

(7) 管轄当局との関係 

  従前、労働局による労働条件や雇用状況を対象とした立入検査を受けるのみであったが、

2008年改正により、毎年1月に所定の様式による報告と、変更がある場合にその内容を翌 月に報告する義務が使用者に課されることとなった。