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第 9 章  主要投資インセンティブ(奨励ゾー

3.  自動車産業

シンガポールに代わって主要輸出国になったタイではあるが、HDD製品の多くは、中国

(香港含む)に輸出されている。2002年には中国向け輸出はHDD全体の11%だったが、

2010年には過去最高となる46%にまで比率が高まっている。HDDが主に使われるPCの アセンブラーは台湾メーカーが主だが、協力工場のほとんどが中国にあることが背景にあ ると考えられる。

図表  22‑9  中国向け輸出が伸びている HDD 製品 

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10

(暦年)

(出所)The Custom Departmentより作成

図表  22‑10  タイの自動車産業の構成 

【組立業者】

(自動車12社、二輪車6社、労働者10万人)

【Tier 1 サプライヤー】

(合計635社、労働者25万人)

外資 タイ企業 タイ企業

構成比:47% 構成比:30% 構成比:23%

タイ資本比率 タイ資本比率 タイ資本比率

(50%以下) (50%超〜100%未満) (100%)

【Tier 2&3 サプライヤー】

(合計1,700社、労働者17.5万人)

合弁(外国企業)

地場サプライヤー

中小企業 大企業 発注

発注

納品 納品

(出所)日本アセアンセンター「タイの自動車産業」セミナー資料(20109月)を参考に作成

図表  22‑11  2009 年世界の自動車製造・販売ランキング 

製造 販売

順位 台数 順位 台数

中国 1 13,790,994 2 9,380,502 日本 2 7,934,516 3 5,082,235 米国 3 5,711,823 1 13,493,165 ドイツ 4 5,209,857 4 3,425,039 韓国 5 3,512,926 11 1,154,483 ブラジル 6 3,182,617 5 2,820,350 インド 7 2,632,694 8 1,980,166 スペイン 8 2,170,078 10 1,362,543 フランス 9 2,049,762 6 2,573,715 メキシコ 10 1,557,290 12 1,025,520 カナダ 11 1,489,651 9 1,673,522 英国 12 1,090,139 7 2,483,179 チェコ 13 974,569 15 254,312 タイ 14 968,305 13 614,078 ポーランド 15 879,186 14 401,388

(出所)日本自動車工業会より作成

(2) 生産台数・販売台数の推移と実質 GDP への影響 

自動車産業の実質GDPに占める比率は、タイの自動車生産台数とほぼ比例して推移して いる。アジア通貨危機の影響を受けた1998年の14.3万台をボトムに、生産台数は2008年

の139.1万台まで増加を続けた。2009年にはリーマン・ショックの影響で完成車メーカー

が1〜3月期に大幅減産に踏み切ったため、生産台数は 99.9万台に減少した。しかし、タ イの主要輸出先が ASEAN 諸国やオセアニア、中東と比較的景気悪化の影響を受けなかっ た地域だったことや、国内需要が同年 1〜3 月期をボトムに回復した流れを受け、翌 2010 年の生産台数は過去最高となる164.5万台にまで増加した(図表 22‑12)。

図表  22‑12  自動車産業の実質 GDP 構成比と自動車生産台数の推移 

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10

(暦年)

(構成比)

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

(万台)

 実質GDPに占める自動車の構成比(左軸)  生産台数(右軸)

(出所)NESDBThe Thai Automotive Industry Associationより作成

(3) 高い輸出比率 

タイの自動車産業の特徴の1つに、輸出比率が高いことが挙げられる。輸出台数は1995 年から 2008年まで、アジア通貨危機時を含め、前年水準を上回り続けていた。2009年に は全体の生産台数が落ち込んだこともあり、前年比 3 割減となったが、2010 年には 89.6 万台と過去最高の輸出台数を記録している(図表 22‑13)。

2010 年時点、生産台数に対する輸出台数の比率は 54.5%。2007 年以降はほぼ同水準で 推移している。アジア地域の他の自動車生産国と比較すると、タイの輸出比率が高いこと が窺える。国によっては輸出台数の統計がないため、近似的に生産台数が国内販売台数の 何倍かで測ってみると、タイ(2.27倍)は韓国(3.31倍)には及ばないものの、日本(2.28 倍)とほぼ同水準で、アジアの主要輸出国になっていることが分かる(図表 22‑14)。

図表  22‑13  自動車生産台数と輸出台数の推移 

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10

(暦年)

(万台)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

 輸出台数(左軸)  除く輸出台数(左軸)  輸出比率(右軸)

(出所)The Thai Automotive Industry Associationより作成

図表  22‑14  アジアの主要自動車生産国の輸出比率比較(2008 年) 

オーストラリア インド 韓国

日本

中国

タイ

マレーシア

インドネシア

10 100 1,000 10,000

10 100 1,000 10,000

生産台数(万台)

国内販売台数(万台)

国内需要を上回る生産量

(≒輸出国)

生産量以上に強い国内需要

(≒輸入国)

韓国 3.31

日本 2.28

タイ 2.27

インド 1.18

中国 0.99

インドネシア 0.99

マレーシア 0.97

オーストラリア 0.33 生産台数/国内販売台数

アジア主要国の中でも、タイは日本並みに輸出比率が高いが、日本の水準に達したのは 比較的最近のことである。既出の生産台数を国内販売台数で除した比率でみると、タイは 1990年代後半では1を若干下回り(生産台数よりも国内販売台数の方が多い≒輸出台数よ りも輸入台数の方が多い)、インドネシアと同じであったが、1999年以降を境に上昇してい る(図表 22‑15)。

図表  22‑15  輸出比率の推移 

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

65 70 75 80 85 90 95 00 05 10

(暦年)

 日本  韓国  タイ  インドネシア  マレーシア

生産台数/国内販売台数(倍)

(出所)各種資料より作成  

(4) 所得の増加に伴い今後期待される国内需要 

自動車生産台数の内訳をみると、2010年は全体の3分の2がトラック・バス(ピックア ップトラック含む)、3分の1が乗用車である(図表 22‑16)。10年前の2000年と比較する

と、10%ポイントがトラック・バスから乗用車にシフトし、中でも排気量が1500cc以下の

小型乗用車のウェイトが上昇している。これは 2009 年以降、日産の「MARCH」、マツダ の「Mazda2(日本名:マツダデミオ)」等の生産が開始されたことによる。

今後、タイの所得水準が上昇することで、乗用車の国内需要が高まることも期待される。

過去の例からみると、日本、韓国、マレーシア等では、1人あたり所得が年間5,000ドルに 近付くと、急速に乗用車の普及率(乗用車登録台数÷人口)が高まっている(図表 22‑17)。 2010年のタイの1人あたり所得は4,735ドルに達しており、また、既にタイの国内自動車 販売の内、乗用車の占める割合は2007年の27%から2010年には43%にまで上昇してい る。足下は乗用車の普及が加速する段階に近付いていると推察される。

図表  22‑16  自動車生産台数の内訳 

2000 2010 (変化幅)

乗用車 23.9% 33.7% (+9.8%)

<1200 cc. 0.0% 3.6% (+3.6%)

1201-1500 cc. 7.1% 15.9% (+8.8%) 1501-1800 cc. 11.0% 8.1% (-2.9%)

1801-2000 cc. 1.6% 3.1% (+1.5%)

2001-2400 cc. 3.6% 2.5% (-1.1%)

2401-3000 cc. 0.5% 0.2% (-0.3%)

> 3001 cc. 0.0% 0.2% (+0.2%)

トラック・バス 76.1% 66.3% (-9.8%)

合計 100.0% 100.0%

(出所)The Thai Automotive Industry Associationより作成

図表  22‑17  所得水準と乗用車普及率 

0%

5%

10%

15%

20%

25%

100 1,000 10,000 100,000

1人あたり所得(米ドル)

(乗用車普及率)

日本 タイ 韓国 マレーシア フィリピン インドネシア 中国

1人 あた り所得 : 5,000ド ルライ ン

(5) 新型自動車(エコカー等)の奨励策と完成車メーカーの動き 

タイ自動車研究所の資料によると、2010年時点のタイの自動車生産能力は年産208万台 である。実績が 164.5 万台であるから、台数ベースの稼働率はほぼ8 割の水準にある。生 産能力が最も高いのがトヨタの年産65万台、次いでFord・マツダの同25万台、ホンダの 24 万台が続く。また、最近の投資プロジェクトの申請状況から、トヨタ(同 10 万台)や

Ford・マツダ(同15万台)に加え、三菱自動車が同20万台、スズキが同13.8万台の生産

を増やすことが予想されている。2014年には年産266.7万台と、生産能力は2010年比で3 割弱増えると見込まれる(図表 22‑18)。

図表  22‑18  主要各社の生産能力予測 

単位:1,000台 2010年 最近の投資 プロジェクト

2014年 予測

Toyota 650 100 750

Ford & Mazda 250 150 400

Mitsubishi 200 200 400

Honda 240 - 240

Nissan 220 - 220

Isuzu 220 - 220

GM 160 - 160

Suzuki 0 138 138 Others 139 - 139

Total 2,079 588 2,667

(出所)日本アセアンセンター「タイの自動車産業」セミナー資料(20109月)より抜粋

完成車メーカー各社が生産能力を拡大させようとする背景には、自動車産業を取り巻く 環境が好転していることもあるが、BOIが2009年6月に「新型自動車」の奨励策を打ち出 したことも一因となっている。「新型自動車」とは、タイにとって新しいモデルの車の製造 であり、BOI が承認するハイテク技術(ハイブリッド・ドライブ等)を導入するものであ る。具体的な恩典としては、①投資地域に拘らず、機械輸入税を免除、②法人所得税の免 除(土地代と運転資金を除く投資額が少なくとも 100 億バーツのプロジェクトの場合は 5 年間、150億バーツ以上のプロジェクトの場合は6年間。ただし、免除額は土地代と運転資 金を除く投資額を上回らないものとする)、である。

また、政府は消費者に対しても、エコカーの取得に係る物品税を 17%と、通常の小型乗 用車(30%)より低く設定し、普及に努めている。

これらの政策変更を受け、完成車メーカーは2009年以降、エコカー生産に向けて工場の 建設や製造を開始している(図表 22‑19)。トヨタは2009年に中型セダン「カムリ」、また 2010年には「プリウス」とハイブリッドカーの生産を開始した。三菱自動車は、2010年に

タイで生産するエコカーを日本へ輸出することを発表し、また同年12月には小型車の新工 場を着工した。日産自動車は、2009年に主力車「マーチ」をタイに全面生産移管し、2010 年にはタイ初のエコカーとして「マーチ」を販売。同年中に日本向け輸出も開始した。ま た、スズキは、2009年にエコカーのための工場をラヨン県に着工し、2012年の稼働を予定 している。

図表  22‑19  タイの日系自動車メーカーの近年の動き 

トヨタ自動車 2003年: タイに研究開発拠点を設置(海外では欧米に次ぐ3番目)

2006年: アジア統括会社をタイに設立、アジア7ヵ国の開発・製造の支援機能をタイに集約 2007年: タイ第3工場を稼動

2008年4月: 「エコカー」事業にBOI認可取得(生産能力10万台、投資額46.4億バーツ)

2009年: 中型セダン「カムリ」のハイブリッドカーをタイで生産開始

2010年12月: ハイブリッド車「プリウス」をタイで生産開始、タイ国内販売の他アセアン諸国へ輸出 2010年12月: タイ第3工場の生産能力を12万台/年→22万台/年へ増強を発表(投資額80億バーツ)

いすゞ自動車 2003年: タイにピックアップトラックの研究開発センターを設置 2010年3月 ピックアップトラックの開発機能を日本からタイへ移管

ホンダ 2007年10月: 「エコカー」事業にBOI認可取得(初のBOI「エコカー」承認事業、投資額67億バーツ)

2008年: タイ第2工場稼働、生産能力12万台/年→24万台/年へ増強 2009年11月: タイに研究開発拠点を設置(海外では米欧中に次ぐ4番目)

三菱自動車 2008年: ピックアップトラックをベースとした新型SUVを生産開始

2008年4月: 「エコカー」事業にBOI認可取得(生産能力10.7万台、投資額47.1億バーツ)

2010年6月: タイで生産する「エコカー」を日本へ輸出することを発表

2010年12月: 小型車の新工場を着工(生産能力15万台、投資額100億バーツ、2012年初稼働)

日産自動車 2007年: タイからピックアップトラックの輸出を開始

2007年12月: 「エコカー」事業にBOI認可取得(生産能力12万台、投資額55.5億バーツ)

2009年1月: 主力車「マーチ」をエコカー計画の下タイに全面生産移管 2010年3月: タイ初のエコカー「マーチ」を販売開始

2010年7月: エコカー「マーチ」の日本向け輸出開始

マツダ 2009年11月: 小型車「マツダ2」(日本名:デミオ)を販売開始 2010年3月: 「マツダ2」ベースの小型セダンを販売開始

2010年8月: 米フォードとの合弁会社オートアライアンス・タイランドにて次世代小型ピックアップ 生産ラインに3億5千万ドル(約110億バーツ)の投資を発表

スズキ 2007年12月: 「エコカー」事業にBOI認可取得(生産能力13万8千台、投資額95億バーツ)

2009年11月: 「エコカー」工場をラヨーン県に着工(2012年3月稼働予定)

(出所)SMBC資料より抜粋