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第 9 章  主要投資インセンティブ(奨励ゾー

2.  労働市場と雇用情勢

タイの人口約6,785万人(2012年5月時点、国家統計局(NSO)統計、以下同様)のう ち、労働力人口(15歳以上)は3,863万人で、就業者は3,827万人(季節労働者を含む)

である。2012年5月時点の失業者数は36万人で、失業率は0.9%と歴史的にみても非常に 低い水準となっている。

図表  19‑1  タイの労働力構成 

一般就業者: 3,771 (98.5%) 季節労働者: 56 (1.5%) 15歳未満人口: 1,340(20%)

非労働力人口: 1,583 (29%)

失業者: 36 (0.9%) 就業者: 3,827 (99.1%)

労働力人口: 3,863 (71%) 15歳以上人口: 5,445 (80%) 総人口: 6,785

(注)20125月時点。末尾の桁四捨五入。単位:万人。

(出所)NSOより作成

(2) タイの就業構造 

一般就業者の就業構造を産業別にみると、農林水産業(1,636 万人)が 41%と依然とし て大きな割合を占めている。これまで、製造業(551 万人、14%)が 2 番目の割合を占め ていたが、最近では卸小売業(583万人、15%)がこれを抜き、建設業(236万人、6%)、

ホテル飲食業(215万人、5%)等が続いている。最近5年間はサービス業の割合が増加す る傾向にある。

 

図表  19‑2  一般就業者の産業別構成(2012 年 6 月) 

ホテル飲食業 5.4%

公務員 4.5%

教育 2.7%

運輸・倉庫業 2.3%

その他 9.0%

農林水産業 41.4%

卸小売業 14.8%

製造業 13.9%

建設業 6.0%

 

(注)小数点第2位を四捨五入     (出所)NSO資料より作成  

(3) タイの雇用情勢 

タイでは以前から、大学卒の中間管理職、経理担当者等のマネージャークラスや大学工学 部卒や工業専門学校卒のエンジニア等、専門分野の優秀な人材の不足が恒常化している。

近年は、高齢化や失業率の低下により、比較的採用し易いとされてきたワーカークラスの 採用も困難になりつつある。

ワーカーの採用難から、業界団体からは、政府に外国人労働者の雇用に関する規制緩和を 求める声等が出されている。マネージャークラスやエンジニアについては、業務を通じた 人材育成に取り組んだり、人文系の人材を技術系業務に配置したりして凌いでいる企業も ある。

また、タイにおいては、大学を卒業しなければマネージャークラスにはなれないと言われ ており、タイの雇用における学歴の影響は大きなものがある。NSOの統計によると、一般 就業者のうち大学・専門学校卒以上の就業者の割合は 17%に過ぎない(図表 19‑5)。教育 省による2009年時点の調査では、タイの大学は、国立大学78校、私立大学69校に過ぎな い。

バンコク日本人商工会議所(JCCB)の「2012 年上期タイ国日系企業景気動向調査」で は、「経営上の問題点」として、「総人件費の上昇」が第1位(回答企業数割合の56%、複 数回答可)と最も多く、マネージャーの人材不足が第3位(同48%)、ワーカー・スタッフ の人材不足が第5位(同40%)となっている。また、従業員のジョブホッピングは8位(同

22%)であった。「タイ政府への要望事項」の中でも、「教育・人材開発の向上」が3位(同

27%)に挙げられており、前回順位の 6 位から上昇している。現地日系企業にとって人材

の獲得が主要な問題となっていることがうかがえる。

     

図表  19‑3  タイの日本語教育機関の現状 

学校教育

初等中等教育 高等教育 小計

機関数(機関) 266 99 365 30 377

教師数(人) 418 395 813 343 1,240 学習者数(人) 43,934 23,707 67,641 11,161 78,802

学校教育以外 合計

(注)数値は重複が発生している場合があり、合算値と合計が合わない箇所がある

(出所)国際交流基金「2009年海外日本語教育機関調査」より作成

図表  19‑4  タイの代表的な大学 

1 ソンクラーナカリン大学 Prince of Songkla University 2 チュラロンコーン大学 Chulalongkorn University 3 カセサート大学 Kasetsart University 4 マヒドン大学 Mahidol University 5 チェンマイ大学 Chiang Mai University 6 タマサート大学 Thammasat University 7 コンケン大学 Khon Kaen University

8 キングモンクット工科大学(トンブリ) King Mongkut's University of Technology Thonburi

9 スラナリー工科大学 Suranaree University of Technology 10 スィーナカリンウイロート大学 Srinakharinwirot University

(出所)20111月時点のRanking web of World Universitiesより作成

図表  19‑5  一般就業者の学歴別構成(2012 年 6 月) 

なし 3.2% 不明 0.4%

その他 0.1%

大学・専門 学校卒 17.1%

高等卒 14.9%

中等卒 15.5%

初等卒 22.9%

初等卒未満 26.0%

(出所)NSO資料より作成  

 

ひとくちメモ (13):  現地幹部職員採用事情 

  タイにおいては大卒の技術者、マネージャークラス、ワーカー・スタッフ全てのレベルにおいて人 材不足が解消しない状態が続いている。また、JCCB による「2010 年秋期日系企業景気動向調査」では、

「総人件費の上昇」が「経営上の問題点」の第 7 位(回答企業数割合の 26%)に達している。 

  また、大卒の技術者、マネージャークラスといった高級人材のバンコク居住志向は極めて強く、日 本人の感覚以上に地方を下に見る傾向が強いため、なかなかバンコクから遠い工業団地には行きたが らない。例えばバンコクから車で 2 時間程のラヨン県は、自動車産業の集積地として発展しているが、

彼らにしてみれば東京から片田舎に赴任するような感覚だし、それならば就労先を変えるという。従 って場合によっては車の送迎を付けたり、アパートの家賃を補助したりといった相当の待遇を用意す ることも考えなければならない。さもなければ地元人材を時間をかけて自前で育てるしかないが、こ れもモノになるかどうかのリスクがある。 

  発想を変えてタイに住んでいる日本人を現地基準の待遇で現地採用する方法もある。タイでの仕事 経験が長く、タイに永住を希望するシニアな日本人、タイに赴任して同国が気に入りそのまま退職し て現地に住む日本人や、タイ人と結婚している若い日本人は沢山いる。こういう人達はタイ語も堪能 で長期勤務が可能。ただし、雇用してもすぐに辞めてしまう例もあるので、人物、適性はよく見極め る必要がある。期限付きの雇用契約にしたり、権限の分散をはかることも必要。