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は じ め に 本 資 料 は タイ 向 け 投 資 をはじめて 検 討 されている 企 業 の 方 々を 対 象 にタイの 投 資 環 境 について 整 理 し その 概 要 を 参 考 資 料 として 取 り 纏 めたものです 初 版 は 2005 年 12 月 に 発 行 しましたが 政 治

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は じ め に

本資料は、タイ向け投資をはじめて検討されている企業の方々を対象にタイの投資環 境について整理し、その概要を参考資料として取り纏めたものです。 初版は2005 年 12 月に発行しましたが、政治経済の大きな変化に伴い、2011 年 4 月 に改定を行い、2012 年 10 月に一部改定を行ったものです。主な今回の改定は、第 1 章 政権交代、第 3 章 主要経済指標、第 22 章 留意点等です。 2011 年末時点のアセアン 10 ヵ国の人口は約 6 億人であり、EU(27 ヵ国)、NAFTA より約1∼1.5 億人多く、また面積は EU とほぼ同等となっています。 一方で、名目GDP は、EU および NAFTA の約 10 分の 1、日本および中国の約 3 分 の1、インドと同程度で、いまだ成長の途上にあり、経済成長率はいずれの国もリーマ ンショックの危機を乗り越え順調に増加しています。 タイは、アセアン10 の中で、人口で第 4 位、名目 GDP で第 2 位の位置にあり、2012 年4 月の IMF の World Economic Outlook では、2017 年には 5.0%の経済成長を達成 する見通しです。特に海外の企業からは、中長期的にみて有望な投資国としての評価が 一層高まっています。 一方で、水害対策、治安・社会情勢の不安、他社との激しい競争、管理職クラスの人 材確保難等の課題が挙げられています。 本資料は、はじめにタイ全体の投資環境のポイントを理解して頂いたうえで、企業の 方々の関心の強い地域について、その特色等を説明する形式で構成されております。本 資料がタイ向け投資をはじめて検討されている企業の方々のご参考となれば幸いです。 本資料の作成に際しては現地調査を行い、投資誘致機関、関係官庁、JETRO、進出 日系企業・金融機関など多くの方々より貴重な情報をご提供頂き、参考にさせて頂きま した。また、日本国内でも有識者の方々にお話を伺ったほか、各種セミナーでの日本企 業の体験談も参考にさせて頂きました。 ご協力を頂きました各方面の皆様に深く感謝申し上げます。 なお、本資料は株式会社大和総研の協力により作成しました。 また、本資料はタイならびに各県・市に対する国際協力銀行としての評価や公式見解を 表明するものではありません。本資料の無断転用、公表等は固くお断りします。本資料の 利用に際して損害が発生しても、国際協力銀行は一切の責任を負いかねます。 2 0 1 2 年 1 0 月 国 際 協 力 銀 行 産業ファイナンス部門 中堅・中小企業担当

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目 次 タイ 県名の英語表記 ... i タイ 全体図...ii 関係機関等の略称...iii ひとくちメモ一覧... v 図表一覧...vii <総論> 第 1 章 概観(国土、民族、社会、歴史等) 1. 正式国名 ...2 2. 人 口 ...2 3. 国 土 ...2 4. 首 都 ...2 5. 気 候 ...2 6. 民 族 ...2 7. 王 室 ...3 8. 言 語 ...3 9. 宗 教 ...3 10. 教 育 ...4 11. 通 貨 ...4 12. 歴 史 ...4 第 2 章 政治、外交 1. 政 体 ...10 2. 元 首 ...10 3. 首 相 ...10 4. 内 閣 ...10 5. 行政組織 ...10 6. 地方行政制度 ...11 7. 国 会 ...11 8. 政 党 ...12 9. 司 法 ...13 10. 外 交 ...13 11. 国 防 ...15 第 3 章 経済概況 1. 経済概観 ...16 2. 産業構造 ...18 第 4 章 直接投資受入動向 1. 外国直接投資(FDI)受入動向... 28 2. 国別受入動向 ... 28 3. 業種別受入動向 ... 30 第 5 章 日タイ経済関係 1. 日タイ貿易 ... 31 2. 日本からタイへの直接投資... 32 3. タイにおける日系企業... 34 4. 日・タイ経済連携協定締結... 34 第 6 章 外資導入政策と管轄官庁 1. 管轄官庁 ... 36 2. 最近の動き ... 38 第 7 章 主要関連法規 1. 投資奨励法 ... 40 2. 外国人事業法 ... 40 3. 外国人就労法 ... 40 4. タイ工業団地公社法... 41 5. 工場法 ... 41 6. 土地法 ... 41 7. 公開株式会社法 ... 41 8. 労働者保護法 ... 41 9. 労働関係法 ... 42 10. 日・タイ経済連携協定... 42 第 8 章 投資形態 1. 4 つの進出形態 ... 43 2. 企業進出の 3 つの方法... 44 3. タイの会社形態 ... 44 4. BOI の特典を受けるための資格、基準お よび業種に共通な条件 ... 45 第 9 章 主要投資インセンティブ(奨励ゾー ン、奨励業種等) 1. 投資奨励ゾーン ... 48 2. 奨励業種 ... 50

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5. BOI の認可に当たっての基準 ...58 6. タイ工業団地公社の工業団地の特典 .59 第 10 章 外資規制業種 1. 規制 43 業種 ...62 2. 現地調達比率規制 ...63 第 11 章 許認可・進出手続き 1. BOI への投資奨励申請手続きとその際の 必要書類 ...65 2. 非公開株式会社の設立手続きとその際の 必要書類 ...67 3. 奨励証書受領後の手続きとその際の必要 書類 ...71 第 12 章 税制 1. 法人所得税 ...73 2. 付加価値税 ...75 3. 特定事業税 ...76 4. 個人所得税 ...76 5. 海外送金に対する源泉徴収課税 ...77 6. 石油収入税 ...78 7. 物品税 ...78 8. 印紙税 ...78 9. 土地建物税・土地開発税 ...79 10. 看板税 ...79 11. 二重課税防止条約 ...79 第 13 章 用地取得... 81 第 14 章 知的財産権 1. 知的財産権の保護 ...82 2. 技術援助契約締結に当たっての留意点84 第 15 章 環境規制 1. タイの環境問題 ...85 2. 環境保護の体制 ...86 3. 環境保護の法体系 ...86 4. 環境基準 ...87 5. 環境アセスメント ...88 6. 環境が問題となった事例 ...89 第 16 章 貿易管理・為替管理 1. 輸出入規制 ... 91 2. 関税制度 ... 92 3. 通関手続 ... 93 4. 為替相場 ... 94 5. 外国為替管理と外貨交換制度... 95 第 17 章 金融制度 1. 金融機関 ... 97 2. タイの金融市場 ... 102 3. 資本市場 ... 103 第 18 章 資金調達 1. 商業銀行からの借入... 106 2. 証券・債券市場からの資金調達... 108 第 19 章 労働事情 1. 労働法の体系 ... 109 2. 労働市場と雇用情勢... 109 3. 賃 金 ... 113 4. 雇用関係 ... 115 5. 労働条件 ... 118 6. 社会保険(健康保険、失業保険等) 122 7. 労使関係 ... 124 8. 労働裁判所における労使紛争の解決 127 9. 外国人就労規制と労働許可の取得.. 127 第 20 章 物流・インフラ 1. 主要な国際空港と港湾の位置... 131 2. 港 湾 ... 132 3. 空 港 ... 133 4. チャネル別物流量(国内)... 135 5. 道 路 ... 136 6. 鉄 道 ... 138 7. 高架鉄道(BTS)・地下鉄... 139 8. 電 力 ... 142 9. 通 信 ... 143

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第 21 章 タイ投資環境の優位性と留意点 1. 投資先としてのタイの優位性 ...146 2. タイへの投資に当たっての留意点 ..148 3. 進出先としてのタイに関する企業の見方 ...151 4. 2011 年の洪水の影響 ...153 第 22 章 主要産業の動向と AFTA および FTA の影響 1. 主要産業の変遷 ...164 2. コンピューター機器(HDD)産業 ...165 3. 自動車産業 ...170 4. FTA の進捗状況と産業へのインパクト180 <各論> 第 23 章 地域別の概要 1. タイの地域分類 ...184 2. 地域別の経済動向 ...185 3. 地域別の労働人口と所得水準 ...189 4. 賃金水準 ...191 5. 外資の関心が高い地域(ゾーン)と工業 団地の分布 ...192 【参考】地域別気候 ...195 第 24 章 工業団地概要:バンコク周辺 1. 地域概要 ...196 2. 主要工業団地 ...201 第 25 章 工業団地概要:中部(アユタヤ) 1. 地域概要 ...207 2. 主要工業団地 ...209 第 26 章 工業団地概要:東部その 1 1. 地域概要 ... 214 2. 主要工業団地 ... 219 第 27 章 工業団地概要:東部その 2 1. 地域概要 ... 230 2. 主要工業団地 ... 233 第 28 章 工業団地概要:北部 1. 地域概要 ... 237 2. 主要工業団地 ... 240 第 29 章 工業団地概要:東北部 1. 地域概要 ... 242 2. 主要工業団地 ... 244 <付録編> 付録 1.進出企業へのアドバイス ... 246 付録 2.よくある質問(FAQ) ... 248 付録 3.投資奨励対象業種表 ... 254 付録 4.タイにおける工場立ち上げ主要手続 きの流れとスケジュールの例... 287 付録 5.奨励証書見本 ... 288 付録 6.タイ王国投資委員会奨励申請書 292 付録 7.関係機関連絡先リスト ... 300

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タイ 県名の英語表記

(バンコク周辺、中部、東部、西部、北部、東北部、南部の7 地域)

地域 日本語 英語 地域 日本語 英語

バンコク Bangkok ナコンラチャシマ Nakhon Ratchasima サムットプラカーン Samut Prakan ブリラム Buri Ram

ノンタブリ Nonthaburi スリン Surin

パトムターニー Pathum Thani シーサケート Si Sa Ket ナコンパトム Nakhon Pathom ウボンラーチャタニー Ubon Ratchathani

サムットサコン Samut Sakhon ヤソートン Yasothon

アユタヤ Ayutthaya チャイヤプーム Chaiyaphum

アーントーン Ang Thong アムナートジャルン Amnat Charoen ロッブリー Lop Buri ノーンブアラムプー Nong Bua Lam Phu

シンブリ Sing Buri コンケン Khon Kaen

チャイナート Chai Nat ウドンタニ Udon Thani

サラブリ Saraburi ルーイ Loei

チョンブリ Chon Buri ノンカイ Nong Khai

ラヨン Rayong マハーサーラカム Maha Sarakham

チャンタブリ Chanthaburi ローイエト Roi Et

トラート Trat カーラシン Kalasin

チャチェンサオ Chachoengsao サコンナコン Sakon Nakhon プラチンブリ Prachin Buri ナコンパノム Nakhon Phanom

ナコンナヨック Nakhon Nayok ムクダハン Mukdahan

サケーオ Sa Kaeo ナコンシータマラート Nakhon Si Thammarat

ラチャブリ Ratchaburi クラビー Krabi

カンチャナブリ Kanchanaburi パンガー Phang-nga

スパンブリ Suphan Buri プーケット Phuket

サムットソンクラーム Samut Songkhram スラーターニー Surat Thani

ペチャブリ Phetchaburi ラノン Ranong

プラチャワブキーリーカン Prachuap Khiri Khan チュムポン Chumphon

チェンマイ Chiang Mai ソンクラ Songkhla

ランプーン Lamphun サトウン Satun ランパーン Lampang トラン Trang ウトラディット Uttaradit パッタルン Phatthalung プレー Phrae パッタニー Pattani ナーン Nan ヤラー Yala パヤオ Phayao ナラティワート Narathiwat チェンライ Chiang Rai メーホンソーン Mae Hong Son ナコンサワン Nakhon Sawan ウタイタニ Uthai Thani カンペンペット Kamphaeng Phet ターク Tak スコータイ Sukhothai ピサヌローク Phitsanulok ピチット Phichit ペチャブーン Phetchabun 東   北   部 南   部 東   部 西   部 バ ン コ ク 周 辺 中   部 北   部

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タイ 全体図

(出所)タイ投資委員会(BOI)資料より作成 ゾーン1 ゾーン2 ゾーン3(36 県) ゾーン3(特別地区 22 県) 投資奨励ゾーン

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関係機関等の略称

A AOT タイ空港会社 Airports of Thailand Public Company Limited ADB アジア開発銀行 Asian Development Bank

AEC アジア経済共同体 Asian Economic Community AFTA アセアン自由貿易地域 ASEAN Free Trade Area

ASEAN 東南アジア諸国連合 Association of Southeast Asian Nations

B BAAC 農業農協銀行 Bank of Agriculture and Agricultural Cooperatives BIBF バンコク国際バンキング・

ファシリティー Bangkok International Banking Facility BOI 投資委員会 Board of Investment

BOT タイ中央銀行 Bank of Thailand

C CAT タイ通信公社 Communications Authority of Thailand CLMV タイ周辺インドシナ4ヵ国 Cambodia、Laos、Myanmar、Vietnam CEPT 共通実効特恵関税制度 Common Effective Preferential Tariff

E EGAT タイ発電公社 Electricity Generating Authority of Thailand EMS 国際エクスプレス・メール Express Mail Service

EPZ 輸出加工区 Export Processing Zone

ESCAP アジア・太平洋経済社会委員 会

United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific

EXIM タイ輸出入銀行 Export-Import Bank of Thailand FAO 国際連合食糧農業機関 Food and Agriculture Organization

F

FRA 金融再生庁 Financial Restructuring Agency FTI タイ工業連盟 Federation of Thai Industries

G GDP 国内総生産 Gross Domestic Product GHB 政府住宅銀行 Government Housing Bank GIZ 一般工業区 General Industrial Zones GSB 政府貯蓄銀行 Government Saving Bank

I IEAT タイ工業団地公社 Industrial Estate Authority of Thailand ILO 国際労働機関 International Labour Organization IMF 国際通貨基金 International Monetary Fund IPP 独立系発電事業者 Independent Power Producers

J JBIC 国際協力銀行 Japan Bank for International Cooperation JCCB 盤谷(バンコク)日本人

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JCIF (財)国際金融情報センター Japan Center for International Finance JETRO 日本貿易振興機構 Japan External Trade Organization

JTEPA 日・タイ経済連携協定 Japan-Thailand Economic Partnership Agreement

L LCT タイ労働組合協議会 Labour Congress of Thailand

M MAI 第二部証券市場 Market for Alternative Investment MEA 首都圏配電公社 Metropolitan Electrocity Authority MOR 当座貸越優遇金利 Minimum Overdraft Rate

MLR 最優遇貸出金利 Minimum Lending Rate

N NESDB 国家経済社会開発庁 National Economic & Social Development Board NSO 国家統計局 National Statistical Office

O OBOI 投資委員会事務局 Office of the Board of Investment

P PAT タイ港湾公社 Port Authority of Thailand PEA 地方電力公社 Provincial Electricity Authority

R ROH 地域統括本部 Regional Operating Headquarters

S SET タイ証券取引所 Stock Exchange of Thailand

SMEDB 中小企業開発銀行 Small Medium Enterprise Development Bank SPP 小規模発電事業者 Small Power Producers

T TAI タイ自動車研究所 Thailand Automotive Institute TBDC タイ債券流通センター Thai Bond Dealing Center THP タイ郵便会社 Thailand Post

TOT タイ電話会社 Telephone Organization of Thailand Corporation TRIM 貿易関連投資措置協定 Agreement on Trade-Related Investment Measures

TRIPS 知的所有権の貿易関連協定 Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights

U UNDP 国連開発計画 United Nations Development Programme UNCTAD国連貿易開発会議 United Nations Conference on Trade

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ひとくちメモ一覧

第 2 章 政治、外交

ひとくちメモ(1):外部機関からみたタイ政府のガバナンス評価... 9 ひとくちメモ(2):タイ政治の混乱 ...12

第 3 章 経済概況

ひとくちメモ(3):1997 年のアジア通貨・経済危機の経験 ...25 ひとくちメモ(4):メコン地域におけるタイの政治的・経済的な位置付け...27

第 6 章 外資導入政策と管轄官庁

ひとくちメモ(5):タイの外資政策の変遷 ...39

第 9 章 主要投資インセンティブ(奨励ゾーン、奨励業種等)

ひとくちメモ(6):バンコクからの距離 ...50 ひとくちメモ(7):在タイ日系企業から進出検討中の中小企業へのアドバイス ...54

第 10 章 外資規制業種

ひとくちメモ(8):中小企業向け賃貸工場...64

第 12 章 税制

ひとくちメモ(9):税務調査...80 ひとくちメモ(10):経理担当者が重要...80

第 13 章 用地取得

ひとくちメモ(11):タイでマンションの購入は可能か? ...81

第 17 章 金融制度

ひとくちメモ(12):タイの金融再編...99

第 19 章 労働事情

ひとくちメモ(13):現地幹部職員採用事情 ... 112 ひとくちメモ(14):好調な経済の牽引役となっている自動車産業の弊害:賃金上昇を後押し .. 114 ひとくちメモ(15):タイ人労働者気質(その 1)∼マイペンライの意味∼ ... 115 ひとくちメモ(16):タイ人労働者気質(その 2)∼駐在員からのアドバイス∼ ... 116 ひとくちメモ(17):違法にもかかわらず、突然のストライキも ... 126

第 20 章 物流・インフラ

ひとくちメモ(18):タイのインフラ受注競争... 140

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第 21 章 タイ投資環境の優位点と留意点

ひとくちメモ(19):法務・税務上の問題の具体例... 149

第 22 章 主要産業の動向と AFTA および FTA の影響

ひとくちメモ(20):自動車産業の集積(日系企業に係る最近の傾向) ... 179

第 23 章 地域別の概要

ひとくちメモ(21):同じ工業団地内の企業の特徴で賃金上昇率が左右される ... 191 ひとくちメモ(22):東北部の人はなぜよく働くか... 191 ひとくちメモ(23):派遣社員の活用... 192

第 24 章 工業団地概要:バンコク周辺

ひとくちメモ(24):日系企業の立地状況 ... 198

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図表一覧

図表 1-1 タイの全地勢図 ... 3 図表 1-2 タイの歴史 ... 6 図表 2-1 インラック内閣主要閣僚一覧(2012 年 8 月現在)... 11 図表 2-2 タイの現在の政党(下院)(2012 年 8 月時点)... 12 図表 2-3 ASEAN 主要国の保有軍事力の概要(2010 年) ... 15 図表 3-1 実質経済成長率と寄与度の推移 ... 16 図表 3-2 タイの経済成長と 1 人当たり GDP の推移 ... 17 図表 3-3 タイの主要経済指標 ... 17 図表 3-4 産業別実質 GDP 比率の推移 ... 18 図表 3-5 産業別就業者と GDP に対する産業別寄与 ... 19 図表 3-6 製造業の実質 GDP 成長率と構成比の推移 ... 19 図表 3-7 タイの輸出入の推移 ... 20 図表 3-8 タイの主要輸出品 ... 21 図表 3-9 タイの主要輸入品 ... 21 図表 3-10 タイの主要貿易相手国(2011 年) ... 22 図表 3-11 輸出入の国別構成の推移 ... 23 図表 3-12 タイの ASEAN・主要国との貿易(2011 年) ... 23 図表 3-13 ASEAN 諸国の比較表(2011 年) ... 24 図表 3-14 ASEAN 諸国間の貿易総額の変化(2001 年→2011 年、単位 100 万ドル) ... 25 図表 3-15 ASEAN 諸国・中国との賃金コスト等の比較... 26 図表 4-1 タイの外国直接投資受入状況(認可ベース) ... 28 図表 4-2 タイの直接投資受入状況(国別) ... 29 図表 4-3 タイの直接投資受入状況(業種別、2010 年)... 30 図表 5-1 タイの対日輸出入の推移 ... 31 図表 5-2 日本との貿易品目(2010 年) ... 32 図表 5-3 日本からタイへの直接投資流入状況(認可ベース) ... 33 図表 5-4 日本からタイへの直接投資の投資先業種 (金額ベース、2010 年)... 34 図表 6-1 BOI 事務局(OBOI)の組織 ... 36 図表 6-2 OSOS に代表される政府機関 ... 37 図表 8-1 4 つの進出形態と企業進出の 3 つの方法 ... 43 図表 9-1 タイの投資奨励制度の枠組み ... 47 図表 9-2 BOI の投資奨励ゾーン ... 48 図表 9-3 投資奨励ゾーンとその特典 ... 49 図表 9-4 投資奨励 7 分野 129 業種と特別重要業種 ... 51 図表 9-5 持続的発展のための投資奨励策における特典及び特典を享受するための条件 ... 52 図表 9-6 ROH 設置奨励特典を受けるための要件 ... 54 図表 9-7 STI 特別奨励の対象となる STI 対策(3 ケース) ... 55 図表 9-8 STI 8 業種 ... 56 図表 9-9 工業団地の種類 ... 59 図表 10-1 外国人事業法による規制 43 業種 ... 62 図表 10-2 現地調達比率の向上のための措置 ... 63

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図表 11-1 申請から操業開始までの手続きの流れ(その 1)... 68 図表 11-2 設立総会の議決事項と株式会社の登記事項 ... 69 図表 11-3 申請から操業開始までの手続きの流れ(その 2)... 70 図表 11-4 土地所有権許可申請必要書類 ... 71 図表 11-5 工場設立許可申請の際の必要書類 ... 72 図表 12-1 法人が源泉徴収を求められる主な支払 ... 74 図表 12-2 中小企業に対する法人所得税率の軽減措置 ... 74 図表 12-3 日本の法人税との主な違い ... 75 図表 12-4 特定事業税課税対象事業と適用税率 ... 76 図表 12-5 個人所得税の累進税率 ... 77 図表 12-6 個人所得税の各種控除制度 ... 77 図表 12-7 非居住者への海外送金に対する源泉徴収課税 ... 78 図表 12-8 物品税課税品目 ... 78 図表 14-1 タイの保護対象となっている知的財産権の概要 ... 83 図表 14-2 技術援助契約書に盛り込むべき事項 ... 84 図表 15-1 タイの主な環境法一覧 ... 87 図表 15-2 環境アセスメントが必要な事業 ... 88 図表 15-3 憲法第 67 条に基づく EIA の作成を義務付ける 11 事業 ... 90 図表 16-1 商務省輸入規制品目と輸入禁止品目のリスト ... 91 図表 16-2 輸出規制品目と輸出禁止品目のリスト ... 92 図表 16-3 輸出入通関手続きに必要な書類 ... 93 図表 16-4 外国為替レートの推移 ... 94 図表 17-1 タイの金融機関 ... 97 図表 17-2 地場銀行の主要勘定残高(2010 年 12 月末)... 99 図表 17-3 在タイ外国銀行の主要勘定残高(2010 年 12 月末)... 101 図表 17-4 ファイナンスカンパニーの主要勘定残高(2010 年 12 月末)... 101 図表 17-5 政策金利とコアインフレ率、主要金利の推移 ... 102 図表 17-6 タイ国債のイールド・カーブ ... 103 図表 17-7 株価指数(SET 指数)の推移 ... 104 図表 17-8 債券残高の推移 ... 105 図表 18-1 邦銀 3 行支店の当座貸越優遇金利(MOR)の水準 ... 107 図表 18-2 タイの金利の期間構造(イールド・カーブ)の推移 ... 107 図表 19-1 タイの労働力構成 ... 109 図表 19-2 一般就業者の産業別構成(2012 年 6 月)... 110 図表 19-3 タイの日本語教育機関の現状 ... 111 図表 19-4 タイの代表的な大学 ... 111 図表 19-5 一般就業者の学歴別構成(2012 年 6 月)... 112 図表 19-6 主要産業の平均賃金の推移(月額) ... 113 図表 19-7 周辺諸国との平均賃金比較 ... 114 図表 19-8 支払わなければならない解雇補償金の額 ... 117 図表 19-9 解雇に際し、事前通告、解雇補償金が不要とされる場合 ... 117

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図表 19-12 タイの最低賃金制度 ... 120 図表 19-13 時間外労働と休日労働に対する手当ての基準 ... 122 図表 19-14 タイの社会保険制度と保険料 ... 123 図表 19-15 社会保険給付の資格と給付内容 ... 123 図表 19-16 労働条件協定の内容 ... 124 図表 19-17 労働争議の発生状況 ... 125 図表 19-18 外国人就労禁止職業(39 職業) ... 128 図表 19-19 外国人の労働許可取得の難しさ ... 129 図表 19-20 労働許可が比較的容易に取得できるケース ... 130 図表 20-1 タイの主要港湾と国際空港 ... 131 図表 20-2 クロントイ港とレムチャバン港の輸送重量と輸送コンテナ数の推移 ... 132 図表 20-3 タイの国際空港の乗降客数と輸送貨物量(2010 年 9 月期)... 133 図表 20-4 バンコク 2 国際空港の乗降客数と輸送貨物量の推移 ... 134 図表 20-5 タイ国内のチャネル別輸送貨物量の推移 ... 135 図表 20-6 タイのアジアハイウェイ路線網 ... 136 図表 20-7 道路距離と舗装率の推移 ... 137 図表 20-8 タイ国鉄の鉄道網 ... 138 図表 20-9 BTS、地下鉄の路線図 ... 140 図表 20-10 電力消費量の伸びと実質 GDP 成長率の推移 ... 142 図表 20-11 タイのエネルギー供給の内訳(2009 年)... 143 図表 20-12 タイの電力供給体制 ... 143 図表 20-13 タイの主要携帯電話会社 ... 145 図表 20-14 タイの郵便料金 ... 145 図表 21-1 中期的に見て企業が進出先として有望と考えている国・地域 ... 151 図表 21-2 タイを有望視する理由 ... 152 図表 21-3 企業が指摘するタイが抱える課題 ... 152 図表 21-4 浸水被害の跡 ... 153 図表 21-5 被災した工業団地 ... 154 図表 21-6 HDD 生産台数の推移(タイおよびその他諸国)... 156 図表 21-7 タイの自動車生産台数の推移 ... 156 図表 21-8 日系企業の事業再開場所(単位:社、複数回答) ... 158 図表 21-9 洪水で被災した日系企業とその対応例 ... 158 図表 21-10 代替生産に関する緊急対応 ... 159 図表 21-11 BOI 奨励企業の再投資に対する措置 ... 159 図表 21-12 工業団地の堤防建設計画 ... 160 図表 21-13 タイ政府の持続的な水資源管理マスタープラン ... 162 図表 21-14 タイ政府の長期的戦略 ... 163 図表 21-15 保険基金の保証内容 ... 163 図表 22-1 実質 GDP に占める産業の構成比 ... 164 図表 22-2 実質 GDP に占める主な製造業(小分類)の構成比 ... 165 図表 22-3 HDD メーカーの世界シェア ... 166 図表 22-4 タイのハードディスク生産メーカーと生産能力 ... 166 図表 22-5 タイのハードディスクドライブ生産量 ... 167

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図表 22-6 コンピューター機器類の実質 GDP 構成比と主要 HDD メーカーの設備投資動向 . 167 図表 22-7 タイ製 HDD の世界市場におけるシェア ... 168 図表 22-8 HDD 輸出入統計(シンガポール、タイ) ... 169 図表 22-9 中国向け輸出が伸びている HDD 製品 ... 170 図表 22-10 タイの自動車産業の構成 ... 171 図表 22-11 2009 年世界の自動車製造・販売ランキング... 171 図表 22-12 自動車産業の実質 GDP 構成比と自動車生産台数の推移 ... 172 図表 22-13 自動車生産台数と輸出台数の推移 ... 173 図表 22-14 アジアの主要自動車生産国の輸出比率比較(2008 年)... 173 図表 22-15 輸出比率の推移 ... 174 図表 22-16 自動車生産台数の内訳 ... 175 図表 22-17 所得水準と乗用車普及率 ... 175 図表 22-18 主要各社の生産能力予測 ... 176 図表 22-19 タイの日系自動車メーカーの近年の動き ... 177 図表 22-20 主要自動車メーカーの組立・生産拠点の概要(2010 年 12 月末時点) ... 178 図表 22-21 自動車部品の輸出入の推移 ... 179 図表 22-22 FTA 交渉の進捗状況 ... 180 図表 22-23 タイの FTA 進捗状況 ... 181 図表 23-1 タイの地域分類 ... 184 図表 23-2 地域別にみた名目 GDP の産業別構成比(全国=100%) ... 185 図表 23-3 地域別にみた名目 GDP の産業別構成比 ... 186 図表 23-4 地域別実質 GDP 成長率の推移 ... 188 図表 23-5 タイの地域別人口の推移 ... 189 図表 23-6 地域別 1 人あたり GDP ... 189 図表 23-7 地域別人口と労働力(2009 年第 3 四半期時点)... 190 図表 23-8 職種別にみた初任給の水準(製造業、バーツ/月) ... 191 図表 23-9 BOI への FDI 申請状況(件数ベース) ... 192 図表 23-10 BOI への FDI 申請状況(金額ベース) ... 193 図表 23-11 タイ国内の工業団地分布図 ... 194 図表 23-12 地域別の気温と降水量(2007 年) ... 195 図表 24-1 バンコク周辺(地図) ... 196 図表 24-2 バンコク周辺および東部地域の工業団地 ... 197 図表 24-3 バンコク周辺に進出した場合のメリットと留意点 ... 199 図表 25-1 中部地域(地図) ... 207 図表 25-2 アユタヤ周辺に進出した場合のメリットと留意点 ... 208 図表 26-1 東部地域(地図) ... 214 図表 26-2 ラヨンおよびチョンブリ周辺に進出した場合のメリットと留意点 ... 215 図表 26-3 物流事業への進出事例 ... 217 図表 26-4 タイにおける在留邦人の状況(2009 年)... 218 図表 27-1 東部地域の県別名目 GDP(2009 年) ... 230 図表 27-2 プラチンブリからチョンブリ・レムチャバン港方面への幹線道路網 ... 231

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図表 28-2 北部に進出した場合のメリットと留意点 ... 238 図表 29-1 東北地域(地図) ... 242 図表 29-2 東北部に進出した場合のメリットと留意点 ... 243

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タイの国旗

第1章 概観(国土、民族、社会、歴史等)

1.正式国名

タイ王国(Kingdom of Thailand)。国旗は 5 本の横縞から なり、青は王室を、白は仏教の潔白を、赤は王室と仏教を守 る国民の血を表すという。

2.人 口

約6,785 万人(2012 年 5 月時点、NSO 統計)。バンコクを中心とした中央部に人口の約 3 分の 1 が集中している。広大な東北部にも同程度の人口があり、労働力の供給源となって いる。

3.国 土

インドシナ半島の中央に位置し、面積は51 万 3,115 ㎢(日本の約 1.4 倍)。カンボジア、 ラオス、ミャンマー、マレーシアの4 ヵ国と国境を接する。行政区画としては、77 の県に 分かれているが、大きく中部、東部、西部、北部、東北部、南部の 6 つの地域に分けて語 られることが多い。中部はチャオプラヤ川の肥沃なデルタで、米作地帯をなし、北部は山 岳地帯に盆地が点在し、東北部のラオス国境をメコン川が流れる。南部マレー半島部分は シャム湾(南シナ海)とアンダマン海(インド洋)に挟まれている。

4.首 都

「天使の都」を意味するバンコクが首都で、首都バンコクには8.9%、約 570 万人が住ん でいる。日本との時差は2 時間。

5.気 候

熱帯性気候。暑季(3∼5 月)、雨季(6∼10 月)、涼季(11∼2 月)の 3 シーズン。年間 平均気温約28℃程度。バンコクでは 4 月平均 30℃程度、12 月平均 25℃程度。

6.民 族

大多数がタイ族(85%)。タイ族以外では、華人系(10%)、マレー系、インド系、カン ボジア系を中心に様々な民族で構成される。なお、マレー系民族は南部の 4 県に住み、ほ とんどがイスラム教徒である。

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図表 1-1 タイの全地勢図 中華人民共和国 トンキン湾 チェンマイ

ミャンマー

ラオス

メコン川 ウドンタニ ピサヌロヌーク アユタヤ

タイ

■バンコク ナコンラチャシマ ◆ナコンシータマラート ウボンラチャタニ 南シナ海 シャム湾 ◆ソンクラー ニコバル諸島 (インド) アンダマン諸島 (インド) アンダマン海

マレーシア

インドネシア

カンボジア

ベトナム

(出所)各種資料よりJOI 作成

7.王 室

現在のラタナコーシン朝(チャクリー王朝とも言う)は、1782 年にラーマ 1 世によって 創設され、以来 9 代の国王によって継承されている。日本の明治維新と相前後して、国王 の指導の下で西洋列強諸国と修好条約を結び、タイの植民地化を防ぎ、社会経済制度の改 革を進めてきた歴史があり、国民の王室に対する信頼と尊崇の念は強固なものがある。

8.言 語

タイ語。タイ文字は13 世紀末にカンボジアのクメール文字に範をとって作られた表音文 字である。現在のタイ文字は42 の子音文字と 32 の母音文字があり、これらを組み合わせ、 音節を作り、5 種類の音調により発音される。英語は一般的ではないが、ビジネスでは使用 されている。

9.宗 教

憲法は信仰の自由を規定しているが、国教は仏教とされ、タイ国民の 9 割以上が仏教徒

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厳格である。タイ全国の仏教寺院数は約3.3 万、僧侶は約 25 万人。庶民の生活と仏教とは 密接な関係を持っている。男子は一生の内一度は出家し僧となって修行をする。約 3 ヵ月 の修行を終えると、還俗し、もとの職場へ戻っていく。出家のための休職は役所でも会社 でも全て許される。この修行を終えて、やっと一人前の男として認められるという。 仏教の他には、イスラム教、キリスト教、ヒンズー教、シーク教、山岳民族固有の宗教 もある。なお、南部4 県において、2004 年 1 月以来、分離独立を掲げるイスラム過激派に よるテロが発生し、近年も警察や軍関係者が銃撃に遭う等、引き続き緊張が続いている。 バンコク市内の寺院

10.教 育

就学前教育(幼稚園)の後、初等学校(小学校)、前期中等学校(中学校)、後期中等学 校(高校)、高等教育機関(大学等)で構成され、言わば六・三・三・四制で、義務教育は 初等学校6 年間および前期中等学校 3 年間である。 近年、高等教育機関は増加傾向にあり、大学(国立大学78 校と私立大学 69 校)がある (数字はいずれも2009 年現在)。最初に設立された大学はチュラロンコン大学(1917 年設 立)、次がタマサート大学(1934 年設立)である。

11.通 貨

タイの通貨はバーツで、2012 年 8 月末現在、1 米ドル=31.39 バーツ、1 円=2.50 バー ツである。

12.歴 史

以前は、タイは「シャム(サイアム)」(「タイ語を話す人」の意味)と称していたが、1949 年に、「タイ王国」と改められた。「タイ」は自由を意味する言葉である。その歴史を簡単 にたどると以下の通り。

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軍事政権と文民内閣の確執期 タイは歴史と伝統を有する古くからの独立国である。いわゆるタイ 族は、中国西南部(現在の雲南省辺り)から南下、定住し、8 世紀頃にはバンコク西部にま で進出。王国の基礎は13 世紀のスコータイ朝により築かれ、その後アユタヤ朝(14 世紀∼ 1767 年)、トンブリー朝(1768 年∼1782 年)を経て、現在のラタナコーシン朝(1782 年 ∼)に至る。 タイも、日本同様、19 世紀中頃、西欧列強の植民地化の脅威にさら され、ラーマ 4 世(モンクット王)治世下、門戸開放、修好通商条約締結を余儀なくされ たが、ラオス、カンボジア、マレー諸国の割譲等巧みな外交政策によって植民地化の危機 を回避、国内的には行政組織の近代化など国家の諸制度を改革して近代国家へと脱皮して きた。ちなみに、モンクット王は映画「王様と私」のモデルとなった。 次のラーマ 5 世(チュラロンコン王)は、外交努力で主権維持を図る一方、西欧型の中 央集権化を図り、官僚制度を整備し、タイの政治的近代化を推進した。また、西欧近代科 学の導入を図り、タイの植民地化の阻止に努めた。 連合国として参戦、その後、国際連盟への加盟、不平等条約の改 正等国際的地位を向上させた。しかし、半面で王権強化に対する反発が強まり、1932 年に は、少壮文武官僚による「立憲革命」が発生し、専制君主制が崩壊、臨時憲法が公布され、 立憲君主制に移行した。 立憲革命後、軍部、警察、文官の間の政争から、内政は混乱が続いたが、1935 年に軍部 出身のパポンが首相に就任、安定化した。 1938 年に陸軍出身の国家主義者ピブーンが首相となり、日 本と同盟条約を締結、枢軸国側に着いたが、次第に抗日地下組織の運動が活発化し、1944 年に失脚、日本の降伏後、同条約はタイの自由意思によるものではないとして対米英宣戦 布告の無効を宣言、敗戦国となることを免れた。1946 年に国際連合に加盟、国際社会に復 帰したが、その後、共産主義の脅威を背にしてピブーンが復帰し、その後も、サリット政 権、タノーム政権と、1973 年まで、長い間、軍部を中核とした強権政治が引き継がれた。 1973 年から 1992 年までは、軍事政権と文民政権の確執 の時代である。1973 年 10 月、民主化要求を掲げる学生運動が過激化し(後に学生革命と 呼ばれるようになった)、タノーム政権が崩壊、3 年間、サンヤー、ククリット、セーニー の文民内閣が続いたが、第一次石油危機後の経済の低迷から、反政府運動が頻発、1976 年 10 月、軍部によるクーデター(血の水曜日事件)で、ターニンを首班とする軍事政権が成 立、1980 年にプレーム政権に代わったものの、以降 1988 年まで、軍事政権が続いた。 近 代 以 前 19 世 紀 第一次世界大戦期 第二次世界大戦期と戦後

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な政治姿勢で 8 年にわたる長期政権を維持したが、次第に求心力を失い、自ら退陣するこ ととなった。1988 年に、第一党となった国民党のチャチャイ党首を首班とする、国民党、 社会行動党等6 党からなる連立政権(12 年ぶりの文民内閣)が発足したが、次第に軍部と 対立するようになり、1991 年に軍部のクーデターにより崩壊した。 図表 1-2 タイの歴史 年代 歴史 タイ族、中国西南部から南下 12世紀 アンコール朝カンボディアの統治下に 13世紀前半 アンコール朝の支配を脱し、タイ王国の基礎が築かれる(スコータイ朝) スリランカから上座部仏教(小乗仏教)伝来 1283年 ラームカムヘン王、クメール文字を改良してタイ文字を創作 1351年 アユタヤ朝興る(∼1767) 1431年 アユタヤ朝、カンボディアに侵攻、王都アンコールを陥落させる 16世紀後半 対外交易活発化、アユタヤ朝最盛期 1767年 ビルマの攻撃でアユタヤ朝滅ぶ 1768年 トンブリー朝興る(∼1782) 1782年 チャオプラヤー・チャクリー(ラーマ1世)、ラタナコーシン朝を興す 19世紀中頃ラーマ4世モンクット王(在位1851∼68年)、西欧列強に門戸開放、英米仏と相次いで修好通商条約 締結 19世紀後半ラーマ5世チュラロンコン王(在位1868∼1910年)、巧みな外交政策によって英仏による植民地化の危機を回避、タイを近代国家に転換 1887年 日・タイ国交樹立(「修好条約締結ニ関スル宣言書」に調印) 20世紀初頭第一次世界大戦に連合国として参戦、国際連盟への加盟、不平等条約の改正を達成、国際的地位を 向上 1932年 ラーマ7世プラチャーティポック王(在位1932∼35年)治下、立憲革命が起き、専制君主制から立憲 君主制へ移行 1935年 ラーマ8世(在位1935∼46年)即位 1938年 陸軍出身のピブーンが首相となった 1941年 日タイ同盟条約締結、ラオスとカンボジア、マレーの一部を回復 1945年 日タイ同盟条約は自由意志によるものでないとし、敗戦国となることを免れる 1946年 現プーミポン国王即位。国際連盟に加盟。 1957年 共産主義の脅威を背景に、陸軍主導の政権が確立 1973年 民主化要求を巡り学生と警察の衝突事件(学生革命)を契機に文民内閣成立、以降90年代初頭まで 軍事政権と文民内閣の確執が続く 1976年 反政府運動の頻発から軍部クーデター発生(血の水曜日事件)、軍事政権が復活 1992年 チュアン民主党内閣発足、政治制度の民主化、所得格差是正、市場原理に基づく経済政策の推進、 労働・社会問題の解決、ASEAN諸国との協力強化を打ち出す 1995年 国民党を含む7党連立のバンハーン政権発足 1996年 新希望党を第一党とするチャワリット政権誕生、経済の低迷、金融・為替の安定等の問題解決のた めに次々と施策を打ち出す 1997年 アジア通貨・経済危機発生、金融会社16社の営業停止、バーツ変動相場制移行、チャワリット首相 退陣、第二次チュアン内閣発足、97年憲法公布 2001年 4党連立によるタクシン政権発足 2004年 未曾有のインド洋大津波発生 2005年 総選挙でタクシン党首率いるタイ愛国党圧勝、タイ憲政史上初の単独政権発足 2006年 タクシン首相の政治手法、一族への利益誘導等をめぐる反タクシン運動が高まり、軍部の政変によりタクシン政権終焉。 2007年 新憲法公布 2008年 アピシット民主党政権発足 2010年5月 デモ隊と治安部隊が衝突し、多数の犠牲者が出る 2011年8月 総選挙でタクシン派のタイ貢献党が第一党となり、インラック政権発足 2011年10月 豪雨の影響により、大規模な洪水被害に見舞われる (出所)在タイ日本大使館ホームページより作成

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その後、全権を掌握した軍部は最高意思決定機関として国家平和秩序維持評議会を設置 し、議長にクーデターを決行したスントーン国軍最高司令官を、暫定内閣首相に元外交官 で財界人のアナンを起用し、軍政から民政への移行を図るとともに、国際的に傷ついたタ イのイメージの回復に努めた。 文民中心のアナン暫定政権は、付加価値税の導入、金融システムの整備、大型プロジェ クトの推進などにより経済の競争力強化に貢献したが、新たに制定した軍部寄りの新憲法 に対する学生、知識人の批判を受け、総選挙で敗北、代わって軍部のスチンダ国軍最高司 令官が首相に就任した。しかし、1991 年のクーデターの首謀者の 1 人であったスチンダ首 相に対する国民の拒否反応は強く、反政府デモが拡大、多数の死傷者が出て(5 月事件と言 われる)、スチンダ政権は崩壊した。 1992 年 9 月の総選挙で、それまで反軍政の立場を取ってきた政党 が勝利し、民主党のチュアン党首を首班とする 5 党連立政権が成立した。以降現在に至る まで、文民政権が続いている。1995 年 7 月には、国民党等の 7 党連立のバンハーン政権が 発足、次いで、1996 年 12 月には、新希望党等の 7 党連立のチャワリット政権が発足した。 しかし、1997 年 7 月の通貨・経済危機の発生で政権は崩壊、11 月には民主党のチュアン 党首を首班とする第 2 次チュアン連立政権が発足した。その後、タクシンを党首とするタ イ愛国党が、中小企業や農村重視の姿勢を打ち出したことで、国民の間に支持が広がり、 2001 年 1 月の総選挙で圧勝。2001 年 2 月に、タイ愛国党、新希望党、国民党、自由正義 からなる4 党連立のタクシン政権が発足した。その後、2005 年 2 月に実施された下院総選 挙でタイ愛国党が圧勝、タイの政治史上初の一党単独政権として第 2 期タクシン政権が発 足した。しかし、首相に対する批判の高まりから、タクシン政権は2006 年 2 月に下院を解 散し、同年 9 月には、クーデターによりスラユット枢密院顧問官が首相に就任した。暫定 政権の下、2007 年 8 月には新憲法が発効した。2007 年憲法は、タクシン政権のような強 力な首相の誕生を抑制するため、下院議員の選出方法を小選挙区制から中選挙区制に戻す 等の改定が行われた。 2007 年 12 月には、暫定政権の下で総選挙が実施され、そ の結果タクシン派である国民の力党が第1 党となり、2008 年 1 月にサマック党首が首相に 就任した。しかし同年 3 月以降、改憲に反発する反タクシン派勢力である民主化市民連合 (PAD)の反政府抗議活動が活発化し、同年 9 月にはサマック首相が失職した。代わって ソムチャイ政権が発足したものの、PAD による反政府デモを抑えることができず、同年 11 月、バンコクのスワンナプーム国際空港が占拠された。このような混乱の中、同年 12 月、 憲法裁判所は国民の力党に選挙違反の判決を言い渡し、ソムチャイ政権は内閣総辞職に追 い込まれた。 文民政権継続期 反政府活動と政治混乱期

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アピシット政権が発足した。新政権発足後はタクシン元首相を支持する反独裁民主戦線 (UDD)が反政府抗議活動を展開し、2010 年 4 月にはバンコク及び周辺地域に対し非常事 態宣言が発令される程にデモ活動が激化した。その後、非常事態宣言の対象は全都県の 3 分の1 の 25 県にまで拡大した。治安部隊はデモ隊の強制排除を試みたが、デモ隊の反撃を 受けて撤退したため、政府は同年 5 月にデモ隊への武力行使を行った。これによりタクシ ン派はデモ集会の終結を宣言し、一連の衝突は終結した。この 3 ヵ月間の犠牲者数は日本 人を含め約90 名に及んだ。 UDD のデモを終息させたアピシット首相は、2011 年 5 月、任期満了を待たずに下院を 解散し、同年7 月に総選挙が実施された。選挙の結果、タクシン派のタイ貢献党が 500 議 席中265 議席を獲得し、勝利した。タイ貢献党は、その他 4 党と連立政権を組み、同年 8 月にインラック新政権が発足した。 インラック首相は、施政方針演説において、外需に大きく 依存した経済構造のリスクについて触れ、国内消費を喚起する内需拡大の政策を実行する 方針を打ち出した。この他、農村地域を支援する政策の推進を計画している。同政権の掲 げる政策は、①法定最低賃金の一律 300 バーツ(日給)への引き上げ、公務員給与等の引 き上げ、②法人所得税率の引き下げ、③低所得者、零細農民の債務(元利金支払い)の3 年間猶予、④高齢者の生活手当支給額の引き上げ、⑤初めての自動車購入、持ち家購入 に対する免税措置、⑥村落投資基金の資金増強、⑦各県1 億バーツの女性基金の設立、 ⑧小学生へのPC タブレットの配布等である。 インラック首相は国外退避しているタクシン元首相の実妹であるため、インラック政権 はタクシン元首相の影響を大きく受けていると言われている。現在、同政権では、2007 年 憲法が2006 年のクーデターを主導した暫定政権によって制定されたため、民主的な仕組み に反しているとし、憲法の改正に取り組んでいる。それに対して、野党からは、「クーデタ ー体制下での暫定憲法や一連の施策の合法性を定めている第 309 条を改正することで、タ クシン元首相の追放を非合法とし、同氏の帰国を実現させる目的がある」との批判が出て いる。 また、インラック政権発足から間もない2011 年 10 月、タイは例年の雨量を大幅に超え る大雨に見舞われ、中部、バンコク北部を中心に洪水被害が発生。同地に進出していた日 系企業も工場の浸水等により大きな被害を受けた。日本政府は、排水ポンプ車の派遣、緊 急援助の他、チャオプラヤ川流域洪水対策マスタープランの策定支援等、今後の治水対策 への支援を表明している。 タクシン派新政権の発足

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ひとくちメモ (1): 外部機関からみたタイ政府のガバナンス評価

政治的混乱が続いているタイ政府のガバナンス力は、他国に比べて著しく劣っているのだろうか。この 点については、世界銀行とブルッキングス研究所が、民間企業、市民、専門家等に対して行ったサーベイ (Worldwide Governance Indicators)を基に発表している、200 ヵ国以上を対象とした各国政府のガバナ ンスの 6 つの指標が参考になる。

6 つの指標とは、①民意と説明責任(Voice and Accountability)、②政治的安定と暴力のない社会 (Political Stability and Absence of Violence /Terrorism)、③政府の能力(Governance Effectiveness)、 ④規制監督の質(Regulatory Quality)、⑤法の支配(Rule of Law)、⑥腐敗の抑制(Control of Corruption)、 であり、100 点満点で評価されている。 タイ政府のガバナンス力は、他の ASEAN 加盟 9 ヵ国に比べて総じて 高い評価を受けている(右図)。2009 年の 6 指標の平均スコアは 45.3。 シンガポール(86.0)、ブルネイ(72.0)、マレーシア(56.8)に次ぐ 4 番目に高いスコアである。 しかし、その一方で構成要素の内、②の「政治的安定と暴力のない社 会」では著しく低く評価されている(下図左)。時系列にみると、 2002 年を境に②のスコアは低下している(下図右)。背景には、2004∼ 2005 年にかけて南部でイスラム武装勢力による放火・襲撃事件が相次い だことに加え、2006 年 9 月にはクーデターによりタクシン政権が終焉し たことや、その後の政治混乱が続いていることがあると推察される。 2002 年に比べ、タイの他に②の「政治的安定と暴力のない社会」の スコアが低下したのは、フィリピン(-16.6 ポイント)、マレーシア (-12.0 ポイント)、ミャンマー(-4.9 ポイント)、ベトナム(-3.9 ポイント)と 4 ヵ国あるが、低下幅は タイ(-47.9 ポイント)が突出している。 タイ政府に対して政治の安定やテロの撲滅が求められていることが、外部機関の見方からも窺える。

(出所)World Bank 資料より作成(http://info.worldbank.org/governance/wgi/index.asp)

国名 平均 シンガポール 86.0 ブルネイ 72.0 マレーシア 56.8 タイ 45.3 インドネシア 37.3 フィリピン 36.8 ベトナム 35.7 カンボジア 23.0 ラオス 17.5 ミャンマー 2.1 平均値 41.3 中央値 37.1

90th-100th Percentile 50th-75th Percentile 10th-25th Percentile 75th-90th Percentile 25th-50th Percentile 0th-10th Percentile

0 20 40 60 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ タイ 平均(除くタイ) 民意と説明責任 政治的安定と暴力 のない社会 政府の能力 規制監督の質 腐敗の抑制 法の支配 0 20 40 60 80 100 1996 1998 2000 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 南部でイスラム武装勢力に よる放火・襲撃事件 クーデター(タクシン政権の終焉)

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第2章 政治、外交

1.政 体

1932 年 6 月の立憲革命による臨時憲法公布以来、立憲君主政体をとっている。その後、 何度か憲法改正が行われたが、国王を国家元首とする民主政体に変化はない。同じ立憲君 主制を敷く英国の制度を取り入れ、議会制民主主義の下で首相と内閣が政治運営を司る。 国王は憲法に基づき任命権や解散権等を有するが、直接的な政治への関与は原則行わない。 現在の憲法は2007 年 8 月に制定された。

2.元 首

プーミポン・アドゥンヤデート国王。1927 年 12 月 5 日、米国マサチューセッツ州ケン ブリッジで生まれる。1946 年 6 月、ラーマ 8 世王(兄)の死去により、19 歳でチャクリー 王朝9 代目の国王(ラマ 9 世)に即位。シリキット王妃との間に 1 男 3 女あり。2006 年 6 月には在位60 周年を迎え、世界 24 ヵ国の国王や皇太子など王族が参列する慶祝式典をは じめ国を挙げて祝賀行事が催された。現在タイ国王としての在位最長記録を更新中である。

3.首 相

インラック・シナワット。1967 年 6 月 21 日生(45 歳)。タクシン元首相の実妹。チェ ンマイ県サンガンペーン郡で出生。チェンマイ大学で学士号(政治学)、ケンタッキー州立 大学で修士号(行政学)を取得。シナワット一族同族企業である、シナワット・ダイレク トリーズ社、Advanced Info Service 社を経て、2006 年から 2011 年まで、SC アセット社 の社長を務める。政治経験のないまま、2011 年 7 月の総選挙でタイ貢献党から出馬し民主 党を破る。2011 年 8 月から首相を務める。

4.内 閣

内閣は国王によって任命された首相1 名及び 35 名以内の国務大臣(大臣・副大臣)によって 構成されている。現憲法下では、首相・閣僚の下院議員との兼職が禁止されている。 インラック内閣は、2011 年 7 月の総選挙にて、民主党のアピシット前政権に大勝し、2011 年 8 月に発足。タイ貢献党、タイ国民発展党、国家開発党、パランチョン党、マハチョン 党の連立政権である。同内閣は、発足から5 ヵ月後の 2012 年 1 月に、財務相、運輸相、国 防相等の主要閣僚の入れ替えを行い、インラック新内閣を発足させている。

5.行政組織

タイの行政組織は高度に中央集権化されており、中央行政組織は1 府 19 省よりなる。

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図表 2-1 インラック内閣主要閣僚一覧 (2012 年 8 月現在) 主要閣僚 閣僚氏名 備考 1 首相 インラック・シナワット 元SCアセット社長、元AIS社長 2 副首相兼内務相 ヨンユット・ウィチャイディット タイ貢献党党首 3 副首相 チャルーム・ユーバムルン 警察大尉、元内務相、元法務相 4 副首相 ユタサック・サシプラパ 前国防大臣、元国軍副最高司令官 5 副首相兼財務相 キティラット・ナ・ラノン 前商務大臣、シナワット大学学長、元タイ証券取引所理事長 6 副首相兼観光・スポーツ相 チュンポン・シンラパーチャ 元副運輸相、元上院議長 7 首相府大臣 ニワッタムロン・ブーンソンパイサン 元シンコーポレーション副会長、元ITVテレビ社長 8 首相府大臣 ウォラワット・ウーアピンヤクン 前教育相、元文化相 9 首相府大臣 ナリニー・タウィシン 通商代表、元バンコク都議員 10 国防相 スカンポン・スワンナタット 前運輸層、空軍副司令官(空軍大将) 11 外務相 スラポン・トウィチュクチャイクン 下院議員 12 社会開発・人間の安全保障相 サンティ・プロムパット 元運輸相、元運輸相顧問、元内務相顧問 13 農業・協同組合相 ティラ・ウオン・サムット 前農業・共同組合相 14 運輸相 チャルポン・ルアンスワン タイ貢献党幹事長、元法務省・労働省事務次官 15 天然資源環境相 プリチャ・レンソンブンスック 元副内務相 16 情報技術・通信相 アヌディット・ナーコンタブ 下院議員 17 エネルギー相 アラック・チョンラタノン タイコム社チーフアドバイザー、元シンコーポレーション取締役 18 商務相 ブンソン・テーリヤプロム 前財務副大臣、元ソムチャイ元首相私設秘書 19 法務相 プラチャ・プロムノーク 元工業相、元警察庁長官 20 労働相 パドゥームチャイ・サソンサブ 元運輸副大臣 21 文化相 ソクモン・クンプルム 下院議員 22 科学技術相 プロードプロソプ・スラサワディ タイ貢献党副党首、元天然資源・環境次官 23 教育相 スチャート・タダーダムロンウェート タイ貢献党経済チームリーダー、元財務相 24 公衆衛生相 ウィタヤ・プラナシリ タイ貢献党幹事長、元工業相秘書官、元財務相秘書官補 25 工業相 ポンサワット・サワディワット タマサート大学イノベーション学部長 (出所)JETRO ホームページより作成

6.地方行政制度

全国を77 の県に分け、①県 ⇒ 郡 ⇒ 区 ⇒ 村という内務省による直接的な監督下にあ る縦割りの地方行政単位と、②県行政機構、自治市町、区行政機構、バンコク都、パタヤ 特別市というような自治が認められた地方自治体が混在している。前者の①の県知事およ び郡長は内務大臣による任命制であるが、1985 年に公選制が復活したバンコク都に代表さ れるように、後者の②の県行政機構、自治市町等の地方自治体の首長は公選制である(た だし、パタヤ特別市は独自のシティー・マネージャー制を採用している)。なお、県名と県 庁所在地名はほぼ同じで分かりやすい。

7.国 会

タイの国会は議会制民主主義のもと、元老院(上院)及び人民代表員(下院)の二院制 を敷く。現憲法下では、いずれも公選制で(旧憲法下では上院は勅選であった)、上院は150 議席(うち77 名が一県一区制による選挙で選出、73 名は選出委員会により任命)、任期 6 年であるのに対し、小選挙区比例代表並立制による下院は500 議席(うち 375 名は小選挙 区制による選出、125 名は比例代表による選出)、任期 4 年である。上院には政治的中立機 関として監査機能が期待され、三権の長、閣僚、上下両院議員の罷免権等強力な権限が付 与された。首相は下院から選出される。法律発案権を有さない上院には解散がないが、下

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8.政 党

2011 年 7 月に実施された下院総選挙の結果に基づく主な政党の勢力図は図表 2-2の通り。 それまで第一党であった民主党に代わりタクシン派のタイ貢献党が躍進した。タイ貢献党 は、タイ国民発展党、国家開発党、パランチョン党、マハチョン党の以上 4 党と連立政権 を組み、インラック政権は 500 議席中、299 議席を占めている。一方、現在の野党は、民 主党、タイ名誉党、タイ友愛党、マトゥプーム党、愛平和党、新民主党である。 図表 2-2 タイの現在の政党(下院) (2012 年 8 月時点) 政党名(党首) 議席数 連立与党 299 1. タイ貢献党 (ヨンユット党首) 265 2. タイ国民発展党(チュムポン党首) 19 3. 国家開発党 (ワンナラット党首) 7 4. パランチョン党 (チャオ党首) 7 5. マハチョン党(アピラット党首) 1 野党 201 1. 民主党 (アピシット党首) 159 2. タイ名誉党 (チャワラット党首) 34 3. タイ友愛党 (チュウィット党首) 4 4. マトゥプーム党 (ソンティ党首) 2 5. 愛平和党 (タウィン党首) 1 6. 新民主党 (スラティン党首) 1 合計 500 (出所)各種資料より作成 ひとくちメモ (2): タイ政治の混乱 2001 年に発足したタクシン政権は、国民による高い支持と下院における安定多数を背景に、2005 年 2 月 の下院総選挙ではタイ史上初のタイ愛国党による単独政権となった。しかし、2006 年以降、タクシン首相 の政治手法や親族による株式売買などをめぐり、民主化市民連合(PAD、通称「黄シャツ」)を中心とする 反タクシン運動が活発化した。同年 2 月の下院解散に伴う総選挙では野党がボイコットし、憲法裁判所が 総選挙のやり直しを命じるなど政治の混乱が深まった。同年 9 月、タクシン首相の外遊中に軍部が政権を 掌握し、タクシン政権は事実上終焉した。 政変を受けて発足したスラユット首相(当時枢密院顧問官、元国軍最高司令官)を首班とする暫定政権 の下、2007 年 8 月にタイ政治史上初の国民投票による新憲法が制定された。同憲法に基づき、下院総選挙 が 2007 年 12 月に実施され、その結果、解党されたタイ愛国党を継承する国民の力党が過半数に迫る議席 を獲得し、2008 年 2 月、同党を中心とする 6 政党によりサマック党首を首相とする連立政権が発足した。 サマック政権樹立後、汚職疑惑をめぐる裁判で出頭を要請されていたタクシン元首相が帰国し、国民の 力党による憲法改正の動きが始まると、憲法改正は同党及びタクシン元首相の利益に資することを目指し たものであるとの反発を招き、更に、カンボジアとの国境地帯にあるプレア・ビヒア寺院の世界遺産登録 をめぐる政府の対応に対し批判が高まった。これを受けて PAD は、2008 年 5 月末より連日にわたり反政府 集会を展開し、8 月 26 日には、PAD のデモ隊が首相府を占拠し、サマック政権の退陣を迫った。政府と PAD との間で膠着状態が続き、政府は非常事態宣言を出すに至ったが、同年 9 月懸案となっていたサマック首 相のテレビ料理番組出演問題について憲法裁判所が違憲の判決を下し、同首相は失職し、政権も崩壊した (料理番組出演による報酬が、憲法で定める首相の副業禁止に抵触)。

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これを受け、同月国会で首班指名を受けたソムチャイ副首相兼教育相が首相に選出され、新政権が発足 した。しかし、激化する反政府デモに有効な対応策がとれない中、2008 年 12 月に 2007 年 12 月の選挙違 反を理由に、憲法裁判所により、国民の力党は解党処分となった。その後、同党の一部及び連立与党が民 主党支持に回ったため、民主党を軸にした連立政権が誕生した。 2009 年 3 月、アピシット新政権に対して、タクシン元首相支持の反独裁民主戦線(UDD、「赤シャツ」) が反政府デモを断続的に実施した。同年 4 月にパタヤで開催が予定されていた ASEAN 関連首脳会議は会議 場へのデモ隊乱入により延期となる事態が発生した。政府はバンコク及びその周辺に非常事態宣言を出し、 事態を収拾した。2010 年 2 月、最高裁判所は、タクシン元首相の国内資産を没収する判決を出した。UDD は不満を高める中、3 月中旬より国会の即時解散を求めてバンコク都内において大規模な反政府抗議集会 を実施。4 月 10 日、デモ隊と治安部隊との間で衝突が発生。邦人 1 名を含む多数の死傷者が出た。その後、 タイ政府による和解案の提示や上院議長による仲介努力等平和的な問題解決の試みも行われたが不調とな る中で、5 月 19 日政府治安部隊はデモ隊への行動を開始し、治安部隊が包囲網を狭める中で、UDD 幹部が デモ集会の終結を宣言した。その後、タイ政府による国民和解のプロセスとして、国家改革委員会や事実 究明委員会など各種委員会が立ち上げられた。タイ政府発表によると、同年 3 月以降の一連のデモ行動に 伴う混乱による死亡者数は 87 名を数える。 その後、2011 年 8 月のインラック政権の発足により政情は安定を見せている。しかし、憲法の改正案の 審議等をめぐっては、反タクシン派がデモ活動を繰り広げる等、予断を許さない状況となっている。

9.司 法

タイの裁判所制度は、新憲法に基づき、(1)通常の民事・刑事訴訟を担当する司法裁判所 のほかに、特別な裁判所としての(2)憲法問題を担当する憲法裁判所、(3)行政事件訴訟を担 当する行政裁判所、(4)軍に関する訴訟を担当する軍事裁判所、により構成されている。一 般的な訴訟案件を扱う(1)の司法裁判所は、第一審裁判所、控訴裁判所(バンコク都及び全 国9 管区の計 10 ヵ所)および最高裁判所の三審制をとっている。第一審裁判所としては、 首都バンコクに民事裁判所、刑事裁判所、全国各地に少年家庭裁判所、簡易裁判所、県裁 判所がそれぞれ設置されているほか、労働、租税、知的財産権・国際通商、破産等の諸問 題に絡む訴訟を担当するものとして、特別に労働裁判所、租税裁判所、知的財産権・国際 通商裁判所および破産裁判所の4 つが設けられている。 訴訟の維持に当たっては、裁判所に対する手数料、弁護士費用、その他経費が掛かるた め、少額事件の場合には、経費倒れになる可能性もある。このため、労働事件や国際取引、 破産事件等に絡む訴訟については、迅速結審の措置が取られているほか、当事者双方の合 意を前提にした一審限りの仲裁裁判所の制度が準備されている。

10.外 交

タイは、伝統的に柔軟な全方位外交を基本とし、ASEAN 加盟国として域内諸国との連 携・協調を重視する一方、米国、中国、日本といった当該地域に影響力を有する主要国と の良好で安定的な関係の維持に努めてきている。

ASEAN との関係では、1967 年の ASEAN 結成に参加し、以降 ASEAN 重視を基本方針 として掲げ、1995 年以降、ベトナム、次いでラオス、カンボジア、ミャンマーの参加への

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ASEAN 共同体設立に向けた活動など重要な役割を担っている。また、日中韓を加えた ASEAN+3、アジア欧州会合(ASEM)、アジア地域フォーラム(ARF)等、ASEAN 以外 の諸国・地域との関係強化においても意欲的である。 対米関係では、ベトナム戦争の終結時や軍事政権の成立時、あるいは通貨・経済危機に際 して、一時的に対米協調姿勢が冷却化することもあったが、その後2004 年からタイ米自由 貿易協定(FTA)交渉が開始されるなど次第に改善してきている。また安全保障上の協力 関係の構築も進み、タイはアジアにおける平和と安定の基礎をなしているとして米国から 評価されている。 対中国関係では、タイは、歴史的、人種的に中国に近い関係にあり、1975 年の対中国交 正常化後、華僑問題や南沙諸島問題を抱えながらも、関係改善に力を入れてきており、こ れまで ASEAN と中国との関係強化において中心的な役割を担ってきた。2010 年にはタ イ・中国国交正常化35 周年を迎えた。また、同年にはタイを含む ASEAN 先行 6 ヵ国と中 国との間でASEAN・中国 FTA(ACFTA)が発効。タイにとって中国は、日本に次ぐ第 2 の貿易相手国となっている。 日本との関係では、600 年に亘る交流の歴史を背景に、経済・貿易面に留まらず人的交流 や地域開発など幅広い分野で協力関係が築かれている。タイに対するODA のうち無償資金 協力は原則終了したが、草の根無償・人間の安全保障資金協力、技術支援、円借款などを 通じ、日本からの援助供与は継続されている。また、2007 年 11 月に発効された日・タイ 経済連携協定(JTEPA)では貿易、投資、政府調達、協力等の幅広い分野で経済関係の強 化が実現すると期待されている。また、同年は1887 年に日タイ修好宣言に調印して近代的 外交が開始されてから「日タイ修好 120 周年」にあたり、幅広い交流促進のための行事が 行われた。 一方、隣接するインドシナ 4 ヵ国(CLMV)及びマレーシアとの関係は、歴史的に複雑 なものがあり、国境のほとんどが未確定であることに加えて、麻薬、不法移民、少数民族 (反政府活動)等の国境を越える問題を抱えている。中でも、対カンボジア関係は、紛争 に発展する等の緊張が続いた。2008 年に、両国国境に位置するプレアビヒア寺院がカンボ ジアの遺跡として世界遺産に登録されたことが、両国間の紛争の火種となった。2010 年 12 月末には、下院議員を含むタイ人 7 名が両国の国境線未確定地域に侵入したとして、カン ボジア当局に身柄を拘束される事件が発生。その後2011 年 2 月に、国境付近で両国軍の武 力衝突が勃発し、民間人の犠牲者が出る事態となった。同年 7 月、国際司法裁判所は、寺 院周辺の国境線未確定地域から軍を即時撤退、問題解決に向けた話し合いの再開、ASEAN 議長国インドネシア政府の監視団の受け入れの 3 点について命令を下した。両国は、判決 を受け入れることで合意したものの、国境付近から軍の撤退を開始したのは、判決から約1 年後の2012 年 7 月。両国共に、警官の再配備を行っており、引き続き情勢を見守る必要が ある。 なお、タイには、国連経済社会理事会の下部地域委員会の1 つである ESCAP(アジア・

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太平洋経済社会委員会)本部事務局のほか、UNDP(国連開発計画)、FAO(国連食糧農業 機関)、ILO(国際労働機関)等多数の国際・国連機関地域事務所が設置されている。

11.国 防

タイの国防体制は、国王が軍を統帥し、国軍最高司令官が陸・海・空軍を指揮する。総 兵力は正規兵が約30 万人、予備役約 20 万人、準備隊(志願制非正規兵)4.5 万人。現役兵 力と予備役等の合計数は50.5 万人と、ベトナム(548.2 万人)、インドネシア(70.2 万人) に次いで多い。タイでは徴兵制が取られており、21 歳以上の男子は徴兵対象者となり、2 年間の兵役義務がある。対象者が多いため、志願者を除きくじ引きによって決定される。 女子は原則徴兵の対象外であるが、21 歳以上で希望すれば訓練を受けられる。 図表 2-3 ASEAN 主要国の保有軍事力の概要(2010 年) 陸軍 海軍 海兵 空軍 総計 ベトナム 8,902 41.2 4.0 0 3.0 48.2 500.0 548.2 インドネシア 23,251 23.3 2.5 2.0 2.4 30.2 40.0 70.2 タイ 6,813 19.0 4.6 2.3 4.6 30.5 20.0 50.5 ミャンマー 5,049 37.5 1.5 0.1 1.5 40.6 0.0 40.6 シンガポール 483 5.0 0.9 0 1.3 7.2 31.2 38.4 フィリピン 9,361 8.6 1.7 0.7 1.5 12.5 13.1 25.6 カンボジア 1,505 7.5 0.1 0.15 0.1 12.4 6.7 19.1 マレーシア 2,791 8.0 1.4 0 1.5 10.9 5.1 16.0 【参考】 韓国 4,850 52.2 4.3 2.5 6.5 65.5 450.0 515.5 中国 135,414 160.0 24.5 1.0 30.0 228.5 51.0 279.5 北朝鮮 2,399 102.0 6.0 0 11.0 119.0 60.0 179.0 台湾 2,297 20.0 3.0 1.5 4.5 29.0 105.7 134.7 日本 12,699 15.1 4.5 0 4.7 24.7 5.6 30.3 アジア展開米軍 2.8 2.4 1.1 2.0 8.3 極東ロシア 7.3 3.5 0.3 4.1 15.1 陸軍 海軍 国防費 戦車 総隻数 作戦機 海軍機 億ドル/年 ベトナム 1,315 74 223 0 24.1 インドネシア 350 120 100 0 44.7 タイ 283 119 165 39 48.1 ミャンマー 150 70 136 0 -シンガポール 196 54 148 0 83.4 フィリピン 7 72 34 0 21.3 カンボジア 150 11 24 0 2.7 マレーシア 48 52 82 0 28.1 【参考】 韓国 2,514 197 490 8 254.0 中国 7,050 448 1,681 311 7,640.0 北朝鮮 3,500 48 620 0 -台湾 926 123 477 32 93.0 日本 850 115 374 95 528.0 アジア展開米軍 170 60 186 180 国名 空軍 合計 (万人) 国名 人口 (万人) 現役兵力(万人) 予備役等 (万人)

図表  1‑1  タイの全地勢図  中華人民共和国 トンキン湾 チェンマイミャンマー ラオス メコン川ウドンタニピサヌロヌーク アユタヤ タイ ■バンコク ナコンラチャシマ ◆ ナコンシータマラート ウボンラチャタニ 南シナ海シャム湾◆ソンクラーニコバル諸島(インド)アンダマン諸島(インド)アンダマン海 マレーシアインドネシア カンボジア ベトナム         (出所)各種資料より JOI 作成  7.王    室      現在のラタナコーシン朝(チャクリー王朝とも言う)は、1782 年にラーマ 1
図表  2‑1  インラック内閣主要閣僚一覧    (2012 年 8 月現在)  主要閣僚 閣僚氏名 備考 1 首相 インラック・シナワット 元SCアセット社長、元AIS社長 2 副首相兼内務相 ヨンユット・ウィチャイディット タイ貢献党党首 3 副首相 チャルーム・ユーバムルン 警察大尉、元内務相、元法務相 4 副首相 ユタサック・サシプラパ 前国防大臣、元国軍副最高司令官 5 副首相兼財務相 キティラット・ナ・ラノン 前商務大臣、シナワット大学学長、元タイ証券取引所理事長 6 副首相兼観光・スポーツ相
図表  3‑5  産業別就業者と GDP に対する産業別寄与 
図表  3‑8  タイの主要輸出品  12.4% 10.5% 12.6%11.4%19.3%31.3%10.2%5.1%7.4%5.5% 13.7%7.5%28.6%24.4%05001,0001,5002,000 2001  2011 (億ドル)その他(工業製品、鉱産物等)工業製品(化学・石油製品)工業製品(機械)工業製品(自動車)工業製品(電気・電子機器)工業製品(農産物加工)農林水産物 2,288652 (注)通関ベース (出所) BOT 資料より作成     図表  3‑9  タイの主要輸入品  8
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