第7章 地方大学国際化のための理念型経営の展開と組織変革
1 設置形態別の大学組織
大学の設置形態は、大きく分類すると国が設置する国立大学、地方自治体が設置する公 立大学、学校法人が設置する私立大学の三つに分類することができ、設置形態別にその設 置に関する法律が異なる。
まず、国立大学は、国立大学法人法に基づいている5。2004年世界的な競争的環境のな かで、構造改革を進め、世界的な水準の大学となるために国立大学法人法が制定され、国 立大学法人となっている6。
つぎに、公立大学は、地方独立行政法人法7に基づいて設置されている。2004年に大学 改革を推進する目的として、地方独立行政法人法による公立大学法人制度が創設され、地 方自治体は選択によって、公立大学の法人化が可能となり、民間的な発想によるマネジメ ントが可能となった。そして、地域社会における知的・文化的拠点として、さらなる発展 が期待されている8。
私立大学は、設置運営する主体として学校法人により設置されており、学校法人は私立 学校法による設置認可を受けなければならない9。また、私立大学ではあっても「各学校が 創意工夫を持ってより良い教育を行える『自主性』と、そのような教育を行うからこその
『公共性』」を有している10。その学校法人は、2004年には特区として株式会社立も認め られている11。つぎに、設置形態別に法人と大学の組織のガバナンス体制について概括す る。
(1) 国立大学法人のガバナンス体制
法人の代表である理事長は、大学の学長も兼ねており、権限の集中が図られ、法人の経 営に関する重要事項を審議する経営評議会、大学の教育研究に関する重要事項を審議する 教育研究評議会が設置されている12。
図表7-1は、国立大学法人のガバナンスの仕組み全体を表したものである。大学運営と して、法人を運営するために経営協議会、教学を運営するために教育研究評議会が、合議 制の審議機関として設置されている。理事長は、学長を兼ねていて、法人運営と教学運営
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におけるリーダーシップを発揮することができるとともに、双方の運営におけるバランス をとることができるよう配慮されている。
図表7-1 国立大学法人のガバナンスの仕組み
(出所)文部科学省(2013、24頁)
(2) 公立大学法人のガバナンス体制
公立大学には、2つの形態がある。第1に、従来からある地方自治体が自ら経営する地 方独立行政法人である。第2は、地方自治体が公立大学法人を設立し、土地や施設の寄付 を行い、財政援助を行って経営管理を行う形態であり、公設公営大学ともいわれる13。
図表7-2は、公立大学法人のガバナンスの仕組み全体を表したものである。大学運営と して、法人を運営するために経営審議機関、教学を運営するために教育研究審議機関が設 置されている。法人の理事長と大学の学長は兼務を原則としている。経営審議会は、学外 の代表者等で構成されていることに特徴がある。学長は、国立大学法人と同じように、法 人運営と教学運営におけるリーダーシップを発揮することができるとともに、双方の運営
国立大学法人
学長選考会議 監事
経営協議会 学外者が半数以上と
なる
(主に経営を審議)
学外者も参画し適任者を学長に選考
学長 理事
「役員会」
*民間的思考による トップマネジメント
教育研究評議会 教学に関する学内の
代表者
(主に教育を審議)
意思決定プロセスの透明性確保や、適正な意思決定の担保といった観点から、大学運営上の特に重要な 案件について、合議制の審議機関を法定(「役員会」、「経営協議会」、「教育研究評議会」)。
国立大学法人の学長は、学外者などから構成される経営協議会の代表者と、学内者から構成される教育研究 評議会の代表者から構成される「学長選考会議」において選考され、文部科学大臣が任命する。
国立大学法人の長は、「法人を代表し、その業務を総理」する法人の長であると同時に、「校務を つかさどり、所属職員を統督する」という大学の学長としての両方の性格を有する。
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におけるバランスをとることができるよう配慮されている。
図表7-2 公立大学法人のガバナンスの仕組み
(出所)文部科学省(2013、25頁)
(3) 学校法人(私立大学)のガバナンス体制
学校法人は、建学の精神を基盤とした私立大学を設置するために設立された法人であり、
大学の経営を行うことが目的である14。学校法人は、法人の経営管理を行うために、理事 会と監事を置き、学校法人の重要事項について諮問または議決機関として評議員会を設置 している 15。図表 7-3は、学校法人(私立大学)のガバナンスの仕組み全体を表したもので ある。
公立大学法人
選考機関
監事
経営審議機関 経営に関する学外の
代表者等
「経営」と「教学の代表者」
が学長を選考
理事長=学長が原則 副理事長
理事
「役員会」
*民間的思考による トップマネジメント
教育研究審議機関
教学に関する学内の 代表者等
意思決定プロセスにおける透明性の確保や適正な意思決定の担保といった観点から、大学運営上の特に 重要な案件の審議について、合議制の審議機関を法定(経営審議機関、教育研究審議機関)。
公立大学法人の理事長は、学外者などから構成される経営審議機関の代表者と、学内者から構成される教育 研究審議機関の代表者から構成される学長選考機関において選考され、設立団体の長が任命する。
公立大学法人では、法人の長である理事長が、大学の学長を兼ね ることが原則とされているが、両者を分離することも可能。
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図表7-3 学校法人(私立大学)のガバナンスの仕組み
(出所)文部科学省(2013、26頁)
小日向(2003)は、私立大学はその設置母体や設立経緯等から、つぎのように法人組織と 大学組織の関係は「学長付託型」「理事長・学長兼任型」「経営・教学分離型」の3つの類 型に分けられると指摘している16。
① 「学長付託型」……理事会の付託を受けて、大学運営の権限を学長に付託し、経営 と教学の双方の一体的な運営を行うことを企図した型である。
② 「理事長・学長兼任型」……理事長と学長を一人が担うことで、人の面から経営と 教学の一体的運営を図ることを目的とした型である。
学校法人
「監事」
・学校法人の業務、財務状況等を監査する。
・学校法人には2人以上の監事を置かなけ ればならない。
監査
理事会
学校法人の業務に関する最終的な意思決定機関
・学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する。
・理事で組織される(学校法人は5人以上の理事を置かなければならない)。
*民間的思考によるトップマネジメント 「評議員会」
・予算、事業計画、寄附行為の変更等につ いて、理事長からあらかじめ諮問。
・委員数は理事定数の2倍を超える数。
学校法人の最高意思決定機関は、合議制機関である理事会である。
・理事長は、学校法人を代表し、その業務を総理する。
・大学の学長は、学校法人の理事として経営に参画する。
私立学校
学長(校長)は、理事に就任する。
(私立学校を複数設置している場合は、そのうち一人を理事とすることができる)
私立学校を設置・運営
(理事長が選任) 諮問
査
*評議員会の同意が必要 が必要
意見
*議長は理事長 査
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③ 「経営・教学分離型」……経営と教学の統括者として理事長がおり、経営には担当 理事を置き、教学には学長を置いて、それぞれ専門的に運営を行う型である。
理事長は、法人の代表として経営を統括する。一方、学長は、大学を統括する代表とし て、教学の責任主体である各学部の教授会の意思決定を受けて、理事会との調整を行う役 割を有している。この法人と大学との調整を行う必要があることが、大学組織の特徴であ るといえる17。これら理事長と学長の役割は管理運営に共通したものである。
このように「学長付託型」「理事長・学長兼任型」「経営・教学分離型」といった経営管 理を行う理事長と教学運営を行う学長の運営形態が異なる私立大学は、それぞれにマネジ メントが異なり、トップ・ダウン型の意思決定、対話を重視したボトム・アップ型といっ た組織文化も異なっていると考えられる。それぞれにメリットとデメリットがあろうが、
独自の組織文化を踏まえながら、組織変革を行うにあたっては、法人運営と教育研究であ る教学運営との間にコンフリクトが生じないよう進めていく必要がある。そして、それぞ れの私立大学が有する理念や目的である建学の精神に基づいた、固有の組織文化に応じた 諸改革が必要となる。