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第1章 地方創生の現状と地方大学の役割

Ⅵ 地方大学国際化の重要性

本章では、地方創生における政策動向を概観し、その地方創生における大学の役割につ いて論じた。そして、地方大学が地方創生の核となるためには、地方大学における国際化 が必要であることを考察した。技術革新とともに世界のグローバル化が進展しており、わ が国においても都市部だけでなく、地方においてもグローバル化が進んでいる状況につい て概観した。わが国企業は、グローバル化が進展するなか、国際的な競争力を確保する必 要があることから、グローバルに活躍できる人材を求めるようになった。このことは、大 企業だけでなく、都市部の中堅中小企業や地方にある地元企業も同じ状況にある。また、

地域社会のグローバル化も進んでいることから、外国籍市民や外国人労働者などへのさま ざまな対応が求められるようになっている。そういった状況を解決すべく、わが国政府が 行っている大学の国際化を促進するための政策動向について概観した。

地方の若者人口の都市部への流出が続くなか、わが国のトップレベルの大学の国際化だ けでなく、地方にある大学もまた、国際化によって教育研究における競争力を高め、大学 の魅力を増し学生募集力を強化して、財政基盤を安定させるという循環サイクルを構築し なければ、持続的経営が困難な厳しい経営環境下にある。また、地方大学の使命のひとつ である地域貢献による地域社会や経済や活性化のためにも、地域におけるさまざまなアク ターと協働し、相互理解と共生していく必要があることを概観した。そのうえで、地方大 学が国際化を進めていくうえで、解決しなければならない課題として、財政基盤の確立、

大学経営のマネジメント、地域のステークホルダーであるアクターとの協働の必要性を明 示した。

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そして、地方大学経営における課題について、つぎのとおり論じた。まず、大学の持続 的経営のために必要となる財政基盤をいかに安定させるかという課題がある。学生納付金 収入依存度の高いわが国の大学にとって、いかに入学者を確保するかは、最も重要視すべ き課題である。若者人口が減少する地方にあって、地方大学は外国人留学生をはじめとし て多様な入学者を確保し、多様性のある大学創りを進め、日本人学生にとって魅力ある大 学とならなければならない。しかしながら、外国人留学生を受け入れるためには、留学生 寮をはじめとするハード面の整備に加えて、受入教育プログラム、生活から就職支援まで 体制を整備する必要があり、コストがかかる。また、優秀な外国人教員を獲得するにあた っても、同様に支援体制を整備する必要があり、大学の国際化を推進するにあたっては、

初期投資や経常費が必要となることを踏まえておかなければならない。

また、地方大学の国際化を推進するためには、組織体制を整備しなければならない。そ して、その組織を運営し国際化を推進していくためには、教職員の意識改革と行動改革が 必要であり、教職員が共に学び合い協働していくことが重要となる。そして、国際経営を 担うためには、国際的な視野と専門的な知識を有する人材が必要となる。このような課題 を解決しなければ、国際化を推進していくことは難しいといえる。

一方で、グローバル化は都市部だけでなく、地方においても進展しており、外国籍住民 が増えていることから、地域住民とのトラブルも同時に増えている。地域住民と外国人と が共生していくためには、互いの歴史的・文化的背景を理解し、多様な価値観を受け入れ るための機会を創出しなければならい。それゆえ、大学は、大学を取り巻くさまざまなア クターと学び合い協働し、互いを理解するとともに、新たな価値を創造する機会を創出す る役割を担わなければならない。地方大学が国際化し、地域活性化や地域課題の解決に晴 らすべき役割は大きいといえる。

これらのことを踏まえ、地方大学の国際経営戦略が、大学の持続的経営を可能にすると ともに、地域経済および地域社会の活性化に寄与することについて、次章以降で明らかし ていく。

1 内閣官房『地方再生戦略』地域活性化統合本部会合、2012年11月30日、1頁。

2 内閣官房『地方再生戦略の概要』2014年1月17日。

3 『同上書』。

24 4 『同上書』。

5 『同上書』。 6 『同上書』。

7 内閣官房『前掲書』2012年、2-3頁。

8 『同上書』2頁。

9 『同上書』3頁。

10 『同上書』。 11 『同上書』。 12 『同上書』。

13 内閣官房『まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」』内閣官房まち・ひと・

しごと創生本部事務局、2015年2月、4-7頁。

14 『同上書』2頁。

15 内閣官房『まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)』2017年12月22 日、1-4頁。

16 首相官邸「まち・ひと・しごと創生本部」http://www.kantei.go.jp/jp/ singi/sousei/

info/#an12、2018年10月12日閲覧。

17 内閣官房『まち・ひと・しごと創生基本方針2018』2018年6月15日、4-9頁。

18 内閣官房『まち・ひと・しごと創生長期ビジョン-国民の「認識の共有」と「未来への 選択』を目指して-』2014年12月27日。

19 文部科学省『大学による地方創生に関する取組(資料3)-地方大学等創生5か年戦略

(まち・ひと・しごと総合戦略)』http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/chiikitf/

5kai/siryou3.pdf、1頁、2018年11月16日閲覧。

20 『同上書』。 21 『同上書』。 22 『同上書』。

23 内閣官房『まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015改訂版)』」2012年12月24日、

47-48頁。

24 文部科学省「平成25年度「地(知)の拠点整備事業」の公募」http://www.mext.go.jp/

a_menu/koutou/kaikaku/coc/1332621.htm、2018年7月31日閲覧。

25 文部科学省a『高等教育の将来構想に関する基礎データ(資料1-2)』2017年4月11日、

25 2頁。

26内閣官房『地方における若者の修学・就業の促進に向けて-地方創生に資する大学改革

-』地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議 最終報告、2017年12月8日。

27 神余隆博「大学の国際化とは何か:日本の衰退は防げるか」『関西学院大学高等教育研 究』第3号、2013年3月、13-14頁。

28 「同上稿」16頁。

29 「同上稿」17頁。

30 「同上稿」17頁。

31 次節は、荒木利雄・石原俊彦編『大学経営国際化の基礎』関西学院大学出版会、2017 年5月、16-21頁の一部を追加・修正している。

32 文部科学省他『「留学生30万人計画」骨子』2010年7月29日、1頁。

33 日本学生支援機構『平成 29年度外国人留学生在籍状況調査結果』2017 年 12月、9 頁、12頁、18頁。同調査では、日本語教育機関は専修学校を除いている。

34 日本学生支援機構『平成28年度協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果』2017年 12月、7頁。調査期間は、2016年4月1日から2017年3月31日までとなっている。

35 文部科学省「『外国人留学生在籍状況調査』」及び『日本人の海外留学者数』等について」

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1345878.htm、2018 年5月27 日閲 覧。

36 文部科学省『日本人の海外留学状況(OECD等による統計)』http://www.mext.go.jp/

a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2017/12/27/1345878_02.pdf、2018年5 月27日閲覧。

37 「※2013年及び2014年の日本人の海外留学者数については、OECD「Education at

a Glance」及びユネスコ統計局のデータが更新されたため、当該グラフについても 更

新している。※2012年統計までは、外国人学生(受入れ国の国籍を持たない学生)が 対象だったが、2013年統計より、高等教育機関に在籍する外国人留学生(勉学を目的 として前居住国・出身国から他の国に移り住んだ学生)が対象となったため、比較がで きなくなっている」(文部科学省『日本人の海外留学状況(OECD等による統計)』)。

38 太田浩「日本人学生の内向き志向」横田雅弘・小林明『大学の国際化と日本人学生の国 際志向性』学文社、2013年10月、72-86頁。

39 米澤彰純・新見有紀子「留学経験の効果意味」『IDE現代の高等教育』IDE大学協

26 会、No.581、2016年6月、48-51頁。

40「同上稿」51-52頁。

41「同上稿」52頁。

42 日本学術振興会「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業(グローバル 30)」

https://www.jsps.go.jp/j-kokusaika/、2018年5月27日閲覧。

43 日本学術振興会「大学の世界展開力強化事業」http://www.jsps.go.jp/j-tenkairyoku/、

2018年5月27日閲覧。

44 文部科学省「グローバル人材育成推進事業」http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/

24/09/attach/1326084.htm/、2018年5月27日閲覧。

45 文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援事業」http://www.mext.go.jp/ a_menu /koutou/kaikaku/sekaitenkai/1319596.htm、2018年5月28日閲覧。

46入学定員充足率は、入学者数を入学定員で除した割合である。

47日本私立学校振興・共済事業団『平成29(2017)年度 私立大学・短期大学等入学志願動 向』2018年8月、2頁。

48 『同上書』5-13頁。

49 文部科学省「大学国際戦略本部強化事業」http://www.mext.go.jp/a_menu/ kagaku/

kokusai/sesaku/1321981.htm、2018年6月8日閲覧。

50 「同上ウェブサイト」。

51 日本学術振興会『グローバル社会における大学の国際展開について~日本の大学の国 際化を推進するための提言~』2010年2月、11頁。本調査は、2009年6月に行われ たものであり、調査対象機関数は 234 機関、うち有効回答機関は 192 機関、回答率 82.1%である。

52 『同上書』70-72頁。

53 『同上書』70-71頁。

54 『同上書』71頁。

55 『同上書』。

56 『同上書』71-72頁。

57 『同上書』22頁(『同上書』内、第3章 大学の国際化に関する推移・ 現況のデータ分 析(太田 浩・JSPS))。

58 『同上書』70頁。

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59 行田臣・土屋武志「地域のグローバル化、子ども国際理解セミナー、国際理解教育」『グ ローバルな視点に立つ地域プログラムの開発 ―岡崎市子ども国際理解セミナーの実践

―』愛知教育大学教育実践総合センター、第8巻、2005年2月、31頁。

60 「同上稿」32頁。

61 「同上稿」31-33頁。

62 内閣官房『地方における若者の修学・就業の促進に向けて-地方創生に資する大学改革

-』地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議 最終報告、2017年12月。

63 『同上書』2-3頁。

64 『同上書』4-6頁。

65 文部科学省『今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理』中央教育審議会大学分 科会将来構想部会、2017年12月28日。

66 『同上書』15頁。