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第3章 地方大学経営における国際化の現状と課題

4 国際化している大学の先進事例

本項では、地方における大学の国際化の取り組み事例として「スーパーグローバル大学

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創成支援」事業に採択され、開学当初から大学経営の国際化を戦略的に実践している福島 県会津若松市に位置する公立大学法人会津大学および秋田県秋田市に位置する公立大学法 人国際教養大学の事例を取り上げている。

そして、その事例分析を通じて、成功要因を抽出し、地方大学であっても、その成功要 因を意識した戦略的な経営が実践できれば、そのほかの地方大学においても有用ではない かと考える。

(1) 会津大学の事例

地方にある大学であっても、国際化を推進し、グローバル人材を育成することによって、

地域社会や経済に貢献できるよう取り組んでいる大学がある。なかでも「スーパーグロー バル大学創成支援事業」に採択され、2018THE世界大学ランキングにはじめてランクイ ンした公立大学法人会津大学に着目する。

会津大学は、図表3-7に示したように1学年の入学定員が学部と大学院を合わせて370 人の小規模大学である。同大学は、コンピュータ理工学に特化した公立大学として1993年 4月に開学して、2006年に公立大学法人に移行している。建学の基本理念として「創造性 豊かな人材の育成」「国際社会への貢献」「密度の高い教育・研究」「地域特性を生かした特 色ある教育・研究」「福島県の産業・文化への貢献」47を掲げている。そして特色として、

先進的なコンピュータ教育、国際的な教育研究環境、高い就職内定率などをあげている48。 また、卒業論文は英語で執筆することが条件となっており、卒業論文発表会は原則として 英語で行うこととなっている。そのための支援として、卒業論文作成、プレゼンテーショ ン能力の向上のための授業科目が用意されている 49。2016 年度からは4学期制が学部で も導入50されている。そして、国際教育に熱心に取り組んでおり、外国人留学生の受入れ および日本人学生の海外留学がしやすい環境を整備している。

図表3-7 会津大学 基本情報

入学定員 (2014年度)

全学生数 201451日現在

教職員数 201451日現在

教員一人 あたりの 学生数

事務職員 一人あたり 学部 大学院 学部 大学院 教員数 職員数 学生数

240 130 370 1,054 174 1,228 107 58 11.6 21.2

(出所)会津大学(2014、1頁)に記載されているデータを基に筆者作成

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図表3-8は、会津大学のTHE世界大学ランキング日本版の評価項目である教育リソー ス、教育満足度、教育成果、国際性、総合ポイントおよびTHE世界大学ランキング(以下、

「THE」という)およびTHE Asia University Rankings (以下「THE Asia」という) における順位の2ヶ年分を表した図表である。THE世界大学ランキング日本版の項目で は、教育満足度および国際性の項目が高い値となっている。そして、2018THEに、はじ めてランクインしている。同大学では「スーパーグローバル大学創成支援」事業を機に、

国際政策本部をグローバル推進本部国際戦略室に発展的に改め、国際化を推進するための 専門部署として展開している51。このような組織を整備し、積極的に海外の大学との学術 交流協定の締結や米国シリコンバレーインターンシッププログラム、中国大連インターン シップなどを推進している52

図表3-8 会津大学のTHE世界大学ランキング日本版、THE、THE Asia推移

THE日本 版項目

教育 リソース

教育 満足度

教育成果 国際性 総合 THE世界大 学ランキング

THE Asia 2017

総合23

60.3 87.4 42.8 75.8 66.3 2017

ランク外

2017 ランク外 2018

総合34

64.8 87.0 - 72.4 63.1 2018

601-800

2018 131 (出所)Between(2017b、24頁)および Between(2018、26頁)

先述した内容および Between(2017a)53に掲載されている会津大学グローバル推進本部 長のインタビュー記事などを基に、会津大学における国際戦略の成功要因について、つぎ のように抽出を試みる。

① 建学の理念……開学当初から建学の理念に、国際化と特色ある研究による地域貢献 をうたっている。

② 特色ある強みをいかした教育研究……コンピュータ理工学に特化したカリキュラム、

英語での卒業論文執筆など、現代社会のニーズに合致した教育内容となっている。

③ 国際公募による外国人教員採用 54……外国人教員の比率は、学生数 1,000 人以上

3,000人未満規模の大学のなかで、全国1位の39.6%である55

82

④ 国際教育環境の整備……2016 年度から4学期制を導入するとともに「英語のみで 教養科目と専門科目を履修して卒業できるコースを設置」56するなど国際教育が充実 している。

⑤ 国際共同研究の推進……世界に通用する特色ある強みを活かした研究を推進し、T HEの評価指標でもある「教員・研究者1人あたりのスコーパスに掲載された論文数」

「1論文あたりの被引用数」を重点課題としている57

⑥ 外国人留学生受入体制の整備……「外部英語試験検定試験のスコアと国際バカロレ ア、SAT等の成績を活用」58した入試を実施している。

⑦ 外国人教員へのサポート体制整備……外国人教員を支援する体制として「学内に専 門相談員が常駐し、ビザ申請や引っ越しの手配、家族のケアなど、さまざまな生活サ ポート」59を行っている。

⑧ 高い就職率……世界に通用するITエンジニアを育成しており「大学院で常に

100%、学部で平均97%という高い就職内定率」60となっている。2018年度就職率は、

98.56%となっている61

このように会津大学は、世界で活躍できる人材育成、地域に貢献することを理念として 掲げ、特色ある教育研究を推進し国際化に向けたさまざまな政策を展開している。このよ うな取り組みは、小規模な地方大学が国際化し成功するうえでの、成功要因となる可能性 がある。また、国際化とともに、就職に関連する施策の充実も社会から評価される要因と して重要と考えられる62

(2) 国際教養大学の事例

国際教養大学が、地域の活性化に貢献し、経済波及効果をもたらしていることについて、

74-75 頁にて論じた。本項では、わが国で最も国際化の進んだ大学といわれる国際教養大

学の国際化に向けた教育内容や制度などに焦点をあてている。

先にも述べたが、国際教養大学は「国際教養(International Liberal Arts)」を教学理念 として掲げている。その「国際教養教育」は、カリキュラム編成に関する5つの教育目標 である「外国語コミュニケーション能力の熟達」「さまざまな学問分野にまたがる広範な基 礎知識」「知的自律性と意思決定能力」「自己の文化的アイデンティティへの認識と異文化 への理解」「グローバリゼーションに対する理解」63とそのために必要となる5つの探索方 法である「人文科学的・芸術的視点」「社会科学視点」「経験的方法」「量的論証」「批判的

83 思考」64を基に構成されている。

本項では、国際教養大学の初代学長であり理事長であった中嶋嶺雄氏の中嶋(2012a)およ び中嶋(2012b)などを基に、国際教養大学の国際化に向けた取り組みから、地方大学におけ る国際化のための成功要因の抽出を試みる。

① 建学の理念……「グローバル時代の国際社会に貢献できる人材の育成」を理念とし て掲げ65、「5つの教育目標に向かって、5つの方法を通じた知的経験によって人格の 陶冶をめざすことを国際教養(International Liberal Arts)の教学理念としてきた」66。 ② 英語で学ぶ授業……すべての授業が英語で展開されており、その授業を英語で学ぶ

ことができるよう「英語集中プログラム(EAP:English for Academic Purposes )」が 開講され学生一人ひとりに合わせた能力別教育体制が構築されている67

③ 新たな価値創造のための構想力養成……国際教養大学の「ビジネスマインドには『公 共性』という考え方がきわめて重要になる」68との考え方を基に、経済基礎理論、国 際経済に関する授業のほかに、貧困や差別などの問題などを学ぶ69

③ 国際通用性のある教育システム……すべての学生に1年間の留学を義務づけている。

海外留学を支える仕組みとして、海外の大学でも通用する成績評価方法であるGPA (Grade Point Average)、海外の大学との単位互換システムおよび科目のレベルを表す 国際的な番号をシラバスに表示することを整備している70

④ 混住型学生寮の整備……日本人学生は、入学後すぐ1年間の寮生活が義務づけられ ている。そして、外国人留学生とともに共同生活をすることにより、社会性とコミュ ニケーション能力を身につけ、異文化交流により異文化を理解する機会が創出されて いる71

⑤ 少人数教育の強み……米国式の授業として、徹底した少人数教育を行っている。

2009年秋データとして「学生専任教員比率/15対1」「学生数が50人以上の授業比 率/2.3%」「学生数が20人未満の授業比率/78%」「一科目あたり平均登録学生数/

15.3人」72

⑥ ガバナンス改革……大学の組織運営が円滑に行えるよう「トップダウン方式による 迅速で多様な意思決定システム」73としている。大学経営については「大学経営会議」

で行い、教学運営については「教育研究会議」で行うこととし、教員の人事権は教授会 にはなく、採用は全世界からの公募とし、任期制を採用している74

⑦ 高い外国人教員比率……外国人教員の比率は、学生数1,000人未満規模の大学のな