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第5章 地方大学経営の基盤となる財務戦略

2 公立大学における現状と課題

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員の教育・研究成果を評価する必要がある」18と指摘している。

すなわち、国立大学法人は、学内予算配分について、教育研究の環境整備などをはじめ として、重点的な配分を行うべきであり、そのためには学長のリーダーシップが発揮でき るようガバナンス改革が求められるとしている。

また、財務省は、国立大学が教育研究の質を高めていくためには、運営交付金に依存す ることなく、民間資金の導入をはじめ多様な財源確保をはかり、持続可能な大学運営を行 うべきであるとしている19

さらに、第3期中期目標期間における国立大学法人への運転資金について各国立大学の 機能強化を図るために、つぎの3つの重点支援区分を設け「重点支援は、各国立大学から 拠出された金額(選択した以下の重点支援の枠組みを踏まえて決定される『機能強化促進係 数』に基づく金額を運営費交付金から拠出)を、『国立大学法人の運営費交付金及び国立大 学改革強化推進補助金に関する検討会』の評価に基づき再配分する」20としている。

① 重点支援1……特色があり強みとなる世界的あるいは全国的な教育研究を推進する 国立大学法人を重点的に支援する。ただし、地域貢献や専門分野の特性に配慮する。

② 重点支援2……特色ある強みとなる分野において、地域ではなく世界的あるいは全 国的な教育研究を推進する国立大学法人を重点的に支援する。

③ 重点支援3……教育研究分野において、世界トップレベルの海外大学と競争できる よう、世界的に通用する教育研究を推進する国立大学法人を重点的に支援する。

世界的に教育研究における競争的環境が高まっていることから、わが国においても教育 研究における世界レベルでの競争力を確保するための戦略として、資金の重点的配分が行 われていることがわかる。

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2004年に公立大学法人制度が導入され、2018年4月 1日現在において公立大学数88 校のうち、74校が公立大学法人化している。1989年の公立大学数は39校であり、公立大 学に学ぶ学生数は6万人であった。2017年では、89校となり学生総数は15万人を超えて おり、大学数、在籍学生数ともに増えている。現在、大学数は779校あるうち、公立大学 は 89 校となっており、全体の 11.4%の割合となっているが、在学生数の割合は全体の

5.29%となっている22

その規模をみていくと、収容定員が 3,000 人以上の大学は、首都圏大学東京(収容人員

6,306人)、横浜市立大学(収容定員3,540人)、大阪府立大学(収容定員5,411人)、大阪市立

大学(収容定員6,040人)、兵庫県立大学(収容定員5,058人)、北九州市立大学(収容定員5,360 人)の6校であり、それ以外は小規模な大学が多い23

近藤(2016)は、公立大学の課題として「公立大学全体では、収益の約半分は運営交付金 となっているが、その額が大きく減少しているケースが多い」24、また「公立大学数の増加 に伴い学生数も増加しているが、投入される公的支援は全体として大きな変化がないこと から、学生1人あたりの額は大きく減少」25していることを指摘している。そして一方で、

設置主体である行政側の課題として「地方創生・地域活性化」「公立大学資源の積極活用」

「私立大学の公立大学化」をあげ、設置する行政の政策が「高度化・複雑化」しているこ とを指摘している26

近年、地方にある私立大学では受験生の獲得が難しく、経営困難な状況となっているな か、私立大学が、公立化するケースが増えている。図表5-2は、直近で公立大学法人に移 行した地方大学である。

地域にとって、大学は地域活性化に不可欠な存在であることをこれまで考察してきた。

しかしながら、地方自治体が経営困難に陥った地方私立大学を公立法人化することが単な る救済に終わってはならない。公立大学は、そもそも地域に貢献することが大学の存在意 義であることから、地域に求められる人材育成、そのための教育プログラムが開発できて いるのか、税金投入に見合う地域貢献、人材育成、人材輩出、地域の活性化などといった 成果をあげることができるのかということについて検証していく必要がある。そうでなけ れば、地域住民、地元企業といったステークホルダーからの理解は得られないであろう。

また、地元進学率の向上、卒業・終了してからの地元への定着率などを重要業績評価指 標(KPI:Key Performance Indicator、以下「KPI」という)として設定するなどして、

PDCAサイクルを構築し、地域への説明責任を果たし、地域のステークホルダーにその

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存在意義を示さなければならない。可視化した数値やKPIをステークホルダーに示すこ とができれば、地域のステークホルダーである地域住民や地元企業、地元経済団体等の満 足度が増すはずである。

図表5-2 公立大学法人に移行した地方大学一覧

公立大学 法人転換年

名称 開学年度 旧名称 所在地 学部 入学定員 2009 高知工科大学 1997 高知工科大学 高知県香美市 520 2010 静岡文化芸術大学 2000 静岡文化芸術大学 静岡県浜松市 320 2010 名桜大学 1994 名桜大学 沖縄県名護市 425 2012 公立鳥取環境大学 2001 鳥取環境大学 鳥取県鳥取市 276 2014 長岡造形大学 1994 長岡造形大学 新潟県長岡市 230 2016 山口東京理科大学 1995 山口東京理科大学 山口県小野田市 320 2016 福知山公立大学 2007 成美大学 兵庫県福知山市 120 2017 長野大学 1996 本州大学 長野県上田市 340 2018 公立諏訪東京理科大学 1949 東京理科大学 長野県茅野市 300 2018 公立小松大学 1988 小松短期大学と

こまつ看護学校統合

石川県小松市 240

(出所) 大学Times「特集記事一覧 地方私立大学の『公立化』特集」および各大学「歴史」

「沿革」「概要」などのウェブサイトの記述内容を基に筆者作成。公立小松大学は、小松短 期大学とこまつ看護学校が再編・統合され、新たに公立小松大学が設立されている。開学 年度は、旧名称の開学年度を示しており、前身がある大学もあるが本図表では明記してい ない。

一般社団法人公立大学協会は、2016年度に「公立大学に関する在り方検討会議」を設置 し、公立大学の在り方に関する検討を開始し、公立大学が今後解決すべき 16 の課題を提 示している。そのなかで、財政に関する課題として、公立大学法人制度も15年目を迎え、

地方自治体と大学の双方が反省しなければならないとしている27。そして「地方財政がひ っ迫する中で、公立大学運営コストへの見方は年々厳しくなっている」28と指摘している。

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さらに、公立大学はその機能を充実・強化するフェーズにあるにもかかわらず、地方財政 の悪化を背景として、大学を機能させるための諸施策が消極的になることが懸念されると 指摘している29

地域経済が疲弊しており、地方財政はこれまで以上に厳しい状況にあるなか、公立大学 は持続的な経営を行っていくために、経営戦略としての財政改革を常に実行していかなけ ればならない。また、財政状況がよくならないからといって地域社会や経済に求められる 人材育成のために、教育環境や教育内容がおろそかになってはならないのである。そして、

地域経済や社会ニーズ、地元住民といったさまざまな地域のステークホルダーのニーズに 基づいて、教育内容の充実に努めていく必要がある。