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第5章 地方大学経営の基盤となる財務戦略

3 私立大学における現状と課題

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さらに、公立大学はその機能を充実・強化するフェーズにあるにもかかわらず、地方財政 の悪化を背景として、大学を機能させるための諸施策が消極的になることが懸念されると 指摘している29

地域経済が疲弊しており、地方財政はこれまで以上に厳しい状況にあるなか、公立大学 は持続的な経営を行っていくために、経営戦略としての財政改革を常に実行していかなけ ればならない。また、財政状況がよくならないからといって地域社会や経済に求められる 人材育成のために、教育環境や教育内容がおろそかになってはならないのである。そして、

地域経済や社会ニーズ、地元住民といったさまざまな地域のステークホルダーのニーズに 基づいて、教育内容の充実に努めていく必要がある。

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3年程度の改善状況を判断し、改善しない場合は、法人解散や学生募集停止といった経営 判断をするよう促すとのことである。私学経営の厳しい経営環境を、わが国政府も放置で きない状況にまで来ているということであろう。

図表5-3 帰属収支差額比率33の状況一覧

帰属収支差額比率がマイナス 帰属収支差額 比率がプラス

合計 592大学

~△20% △20%~△10% △10%~0%

割合(%) 割合(%) 割合(%) 割合(%) 割合(%) 地方・

中小規模34

61 20.1% 29 9.5% 48 15.8% 166 54.6% 304 100.0%

都市35 中小規模

26 11.5% 16 7.0% 36 15.9% 149 65.6% 227 100.0%

地方・

大規模

1 6.3% 0 0.0% 0 0.0% 15 93.8% 16 100.0%

都市・

大規模

0 0.0% 0 0.0% 2 4.4% 43 95.6% 45 100.0%

(出所)文部科学省(2017a、14頁)の図表に記載されている地方・都市および規模別、帰属収

支差額比率別の大学数データに、各割合(%)を加えて筆者作成

上述した文部科学省が説明した内容は、2017年5月15日付けの私立大学等の振興に関 する検討会議の「議論のまとめ」には、経営困難な私立大学の状況への対応について、つ ぎのようにまとめている36

まず、18歳人口が減少している状況を踏まえ、「経営困難な状況に陥る学校法人が生ず ることは避けられないもの」37として、経営破綻しないよう継続した支援が重要であるこ とから「経営悪化傾向にある学校法人に対し、経営状況をよりきめ細かく分析したうえで、

早期の適切な経営判断が行われるよう支援し、状況に応じてさらに踏み込んだ指導・助言 を行うことが必要である」38と指摘している。そして、文部科学省と私学事業団が各学校 法人の経営状況を把握し、経営状況が悪化傾向にある学校法人に対して、継続的な経営指 導および経営改善への取り組みを推進していること、「平成27年度より私立大学等経営強 化集中支援事業として、経営改善計画の策定を条件に、経営改善に意欲的な地方の中小規

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模私立大学に対して、集中的支援を実施している」39ことを述べている。このほかにも、

ガバナンス体制の改善、適切な将来ビジョンの策定および財政基盤の確保などが重要であ ると指摘している。

これらのことは、大学を取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、特に地方にある小規模な私 立大学に対して、経営に関する支援を明確に打ち出している。そして、地方にある小規模 私立大学の多くが、このままの経営では、経営破綻しかねず、地方における高等教育機会 の保証のためにも、戦略的な経営が必要であることを示唆していると考えられる。

また、財政制度審議会は「新たな財政健全化計画等に関する建議」において、経営困難 に陥る可能性のある学校法人が約100法人もある状況のなかで、定員割れを起こしている 私立大学への特別補助が増えていることから、そういった私立大学に対する特別補助につ いては、経営改善がなされないのであれば、安易に特別補助の助成対象とすべきではない として、今後の私学助成のあり方について指摘している40

(2) 学校会計基準

2015年度に「学校法人会計基準」が大幅に改正された。その改正目的は、第1に「計算 書等の内容がより一般的にわかりやすく、社会から一層求められている説明責任を的確に 果たすこと」であり、第2に「計算書類が適切な経営判断に一層資するものにすること」

の2点である。そして、主な改正点は第1に「新たに『教育活動』、『施設設備等活動』、『そ の他の活動』の3つの活動ごとの資金の流れがわかる「活動区分資金収支計算書」の導入 であり、第2に「従来の『消費収支計算書』を廃止して、経常収支と非経常収支に分けて、

『教育活動収支』、『教育活動外収支』、『特別収支』の3区分で表示する『事業活動収支計 算書』」の導入である41。私立大学の収入は、学生納付金、補助金、手数料、寄付金、事業 収入、資産運用収入等で構成されている。その割合は、概ね学生納付金7割から8割を依 存しており、つぎに補助金収入が1割程度となっている42

私立大学では約4割の学校法人が入学定員割れを起こしており、厳しさを増す経営環境 にあって、戦略的な中長期計画や将来構想を立案し実行していくためには、財政が健全で なければならない。その財政の健全性が維持できるよう財務諸表(活動区分資金収支計算書、

事業活動収支計算書、貸借対照表)をしっかりと解釈し、重要な財務比率を常にチェックし ていくことが求められる。

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