第2章 大学経営における国際化
3 わが国独自の大学ランキング
THE社は、ベネッセコーポレーション株式会社と提携して、2017年度よりTHEの日 本版を発表している。その日本版は、2016年に米国で導入された米国版大学ランキングと 同様に、教育力を重視した評価指標をもとにしたランキングとなっている。そして、その 日本版の評価指標はTHEとは、異なる評価指標が採用されている。THE世界大学ラン キング日本版 2018は、「教育リソース」「教育満足度」「教育成果」「国際性」の分野で構 成されており、わが国の大学の教育力を総合的に評価している63。具体的な評価指標は、
図表2-6のとおりである。
図表2-1に示したように、THEは多くの研究力を測定する指標で構成されている。T HEの指標と比較すると、THEとTHE日本版における同じ評価指標は、つぎの7項目 となっている。教育関連評価指標では「教育に関する研究者のレピュテーション」「教員数 に対する学生数の比率」、研究関連指標では「教員・研究者1人あたりの研究費用」「教員 1人あたりのスコーパスに掲載された論文数」、論文影響力関連指標では「1論文あたりの 被引用数」、国際化関連指標では「外国人留学生比率」「外国人研究者比率」となっている。
これら7つの指標は、取り組みの成果としてTHEのランクアップにも、結果として資 することになり、一定程度国際的な通用性を有するものといえるであろう。一方、THE
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と日本版で異なるのが、つぎの6指標である。教育関連指標の「学士号授与数に対する博 士号授与の比率」「教員1人あたりの博士号授与数」「教員1人あたりの大学の総収入」、研 究関連指標の「研究に関する研究者の評判調査」、国際化関連評価指標の「国際共著論文数」、 知識移転関連指標の「教員・研究者1人あたりの産業界からの研究費収入」である。
これら6つの評価指標は、研究力をさまざまな観点から測定する指標といえる。しかし ながら、教育は研究成果がもととなり、教育成果に還元されるという循環を考えると、こ れらの指標が、研究と教育の国際競争力を向上させるための仕組みとして、適切な考え方 かどうか検討する必要があろう。
教育力を重視することは、大学の使命が人材育成であることに鑑みると、測定しにくい 教育力をさまざまな観点から数値化し、評価する試みとして価値ある取り組みであるとい える。しかしながら、一方で、理解しづらい指標もある。例えば、「大学合格者の学力」は
「ベネッセ総合学力テスト」64によるとあるが、大学生の学習到達度を測定するために必 要な項目になっているのかなど明らかにすべきであろう。
また、高校教員の評判調査は、「特定の地域に有利・不利が生じないよう集計」65とある が、どのように地域差が出ないように配慮されているのか明らかにされるべきである。た だし、新たに 2018年度から「外国語で行われている講座の比率」が加えられたことは、
国際化を進めていくうえで、有用な観点である。
わが国においても世界大学ランキングは、各種メディアを通じて注目されているが、そ の指標が課題として報道されることはほとんどなく、その順位のアップ・ダウンに一喜一 憂したような報道が多く、他国のトップ大学との相対的な順位比較によって各大学の競争 力を論じている。また、わが国においても、上述のランキング以外にも、就職力や財務力、
研究力、教育力、地域への貢献度などから大学の総合的な実力をランキングするものがあ る。これらランキングにある指標は、いずれも何らかの意味を有するものと考えられるが、
大学はその順位や順位の上下で一喜一憂するのではなく、大学改革の一助として活用し、
そのプロセスが評価されているものと捉えていくべきであろう。
大学の国際化について、世界における国際的な動向について概観し、大学間における競 争が激化している状況を踏まえ、世界大学ランキングおよび日本版大学ランキングについ てみてきた。これらランキングは、教育や研究、論文影響力、国際化関連などの各分野に おける評価指標で構成されている。
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図表2-6 THE日本版 評価指標とその割合一覧(年度比較)
評価指標 2017年度 2018年度
教育 リソ ース
学生一人あたりの資金 (経常収入/在籍学生数)
10%
38%
8%
34%
学生一人あたりの教員比率 (専任教員数/在籍学生数)
8% 8%
教員一人あたりの論文・被引用回数 (論文数・被引用回数/専任教員数)
7% 7%
大学合格者の学力 6% 6%
教員一人あたりの競争的資金獲得数 (大学別の獲得件数/専任教員数)
7% 5%
教育 満足度
高校教員の評判調査
(グローバル人材育成の重視)
13%
26%
13%
26%
高校教員の評判調査 (入学後の能力伸張)
13% 13%
教育 成果
企業人事の評判調査 7% 20% 10% 20%
研究者の評判調査 13% 10%
国際性
外国人学生比率
(在籍外国人学生数/在籍学生数)
8%
16%
5%
20%
外国人教員比率
(在籍外国人教員数/専任教員数)
8% 5%
日本人学生の留学比率 (留学者数/在籍学生数)
0% 5%
外国語で行われている講座の比率
(外国語で行われている講座数/全講座数)
0% 5%
(出所)Between(2017b、6-7頁)および Between(2018、2-5頁)の記述内容を基に2017年
度と2018 年度の割合が比較できるよう筆者作成。下線部分は、評価の割合が変更になっ ている箇所である。
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地方大学が国際化するにあたっては、まずどのような国際化した大学を目指すのかとい うビジョンを描き、そのビジョンを達成するための戦略目標を設定し、その戦略目標を達 成するための評価指標を設定する必要がある。その設定にあたっては、THEやQSとい った世界大学ランキングや「スーパーグローバル大学創生支援」事業における評価指標、
日本版大学ランキングの評価指標などが参考となる。