第5章 地方大学経営の基盤となる財務戦略
Ⅴ 安定的な財政基盤の確立
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な限り早期に取り組む必要がある。また、大学には、資産運用にかかる専門職がいない場 合が多いことから、そのような専門人材の育成や採用などの体制について慎重な検討が必 要となる。
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第2には、先に述べた河田(2016)と日本私立大学連盟が指摘している寄付金事業戦略で ある。寄付金を原資とした資産運用であれば、経常運営に支障なく、比較的リスクが高く、
ハイリターンは難しくともミドルリターンを狙う投資を行うことも可能となる。その寄付 金を募集するためには、組織的な取り組みが必要となる。そのためには、わが国において も寄付金を取り巻く外部環境が変化していることを認識し、中長期経営計画における財政 基盤安定化方策の一つとして、寄付金事業を組み入れ、組織体制を整備することからはじ めることが必須となろう。
以上の提言が現実化すれば、わが国の地方大学が、地域に求められる大学として持続的 経営を行っていくために必要となる安定的な財政基盤の確立につながるものと考えられる。
次章では、BSCの「学習と成長の視点」に焦点をあて、地方大学経営において競争の源 泉となると考えられる経営人材および国際経営人材の育成と能力開発について論じる。
注
1 文部科学省『学校基本調査/年次統計 総括表/4/進学率(昭和23年~)』2018年8月。
2 文部科学省『高等教育の将来構想に関する基礎データ』2017年4月、8頁。本資料は、
平成28年度文部科学省学校基本調査を基に作成されており、高卒新卒者の進学率によ る都道府県の比較データが掲載されている。
3 日本私立学校振興・共済事業団『平成 29(2017)年度私立大学・短期大学等入学志願動 向』2017年8月、2-4頁。入学定員充足率が100%未満の大学数は前年比で28校減少 し、大学全体に占める未充足校の割合は5.1%改善されている。同調査は、2017年5月 1日現在の大学588校、短期大学321校、大学院465校を対象としている。
4 『同上書』29頁。
5 『同上書』8頁。
6 文部科学省『国立大学法人等の決算について-平成28事業年度』2018年3月、1-6頁。
本章では「寄附金」という文言について「寄付金」で名称を統一して用いている。
7 『同上書』2頁。
8 『同上書』。 9 『同上書』3頁。
10 『同上書』。 11 『同上書』。
142 12 『同上書』4頁。
13 『同上書』。
14 文部科学省「国立大学法人等の平成28事業年度決算について」http://www.mext.go.jp /a_menu/koutou/houjin/detail/1402732.htm、2018年7月15日閲覧。
15 「同上ウェブサイト」。
16 文部科学省高等教育局『財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年 11 月4日開催) 資料(国立大学法人運営費交付金関係)についての文部科学省の見解』2016年11月、6 頁。
17 財政制度審議会『新たな財政健全化計画等に関する建議』2018年5月 23日、44頁。
18『同上書』45頁。
19 財務省「安定的な国立大学法人運営のための提案」https://www.mof.go.jp/zaise i/
matome/zaiseia271124/kengi/02/04/kokuritsu02.html、2018年7月19日閲覧。
20文部科学省『平成30年度国立大学法人運営費交付金の重点支援の評価結果について』
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/__icsFiles/afieldfile/2018/03/29/140299 9_001.pdf、2018年7月19日閲覧。
21文部科学省「公立大学について」http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ kouritsu/index.
htm、2018年7月20日閲覧。
22 「同上ウェブサイト」。
23 一般社団法人公立大学協会「公立大学基本情報2015 定員充足率(学士課程)」
http://www.kodaikyo.org/ui/h27/?page_id=210、2018年7月20日閲覧。
24 近藤倫明『公立大学の現状と課題(資料)』2016年5月、7頁。収益については「附属病 院収益を除いている」としている。
25 『同上書』8頁。
26 『同上書』14頁。
27 一般社団法人公立大学協会『時代をLEADする公立大学-未来マップのための16の 課題』2018年5月、5頁。
28 『同上書』7頁。
29 『同上書』。
30 文部科学省『高等教育の将来構想に関する基礎データ』2017年4月、15頁。国立大学 法人は「各国立大学法人 平成 25 事業年度財務諸表」を基に、公立大学法人は「平成
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26年度 公立大学実態調査(公立大学協会)」、私立大学は「平成 26年度 今日の私学財 政(日本私立学校振興・共済事業団)、ただし附属病院を除く」を基に作成されている。
31 帝国データバンク『私立大学を運営する 498法人の経営実態調査』2018年4月、1-2 頁。
32 日本経済新聞(全国版)、朝刊32面、2018年7月18日。
33 帰属収支差額は、学納金、寄付金等の自己収入から、人件費、教育研究費等の支出(減 価償却費、退職給与引当金等現金支出を伴わないものを含む)を差し引いたものである。
34 規模については、在籍学生数が 8,000 人以上の大学を大規模大学とし、在籍学生数が
8,000人未満の大学を中小規模として分類して表している。
35 都市とは、政令指定都市と東京都を表している。また、地方とは、政令指定都市と東京 都の都市以外を表している。
36 文部科学省「私立大学等の振興に関する検討会議『議論のまとめ』(本文)」http://www.
mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/073/gaiyou/1386778.htm、2018年7月 20 日閲覧。
37 「同上ウェブサイト」。 38 「同上ウェブサイト」。 39 「同上ウェブサイト」。
40 財政制度審議会『前掲書』45頁。
41 齋藤力夫編著『学校会計入門 改訂第7版』中央経済社、2016年7月、6-7頁。
42 文部科学省『参考1 国公私立大学の財政の状況』http://www.mext.go.jp/b_menu/
shingi/chukyo/chukyo4/031/siryo/__icsFiles/afieldfile/2010/04/22/1292935_2.pdf、39 頁、2018年11月19日閲覧。
43 山本清「財務にみる法人化後の大学行動」『国立大学財務・経営センター 大学財務経営 研究』第5号、2008年、3-4頁。
44 小藤康夫「日米における大学経営の比較-資産運用に焦点を当てて」『専修大学論集』
(専修大学)第96巻、2013年1月、63-79頁。
45 「同上稿」68-70頁。ペイアウト率とは、毎期に大学基金から一定の割合で大学に参入
される比率のことである(「同上稿」69頁)。
46 「同上稿」65-67頁。運用利回りがマイナスのなっている大学は、運用損益がマイナス
となっている。その要因として、日経平均株価の下落や円高による国内外の有価証券
144 の大幅下落などが考えられる(「同上稿」67頁)。
47 「同上稿」68頁。
48 「同上稿」69頁。
49 「同上稿」68頁。
50 「同上稿」。 51 「同上稿」70頁 52 「同上稿」72-73頁。
53 「同上稿」75-76頁。
54 「同上稿」77頁。
55 山内英貴『エンダウンメント投資戦略 ハーバードやイェールが実践する最強の資産 運用法』東洋経済新報社、2015年7月、15頁。同書では「イェール大学」と表記して いるが、本章では「エール大学」で統一表記している。
56 『同上書』23頁。オルタナティブ投資とは、株式や債券といった伝統的な投資に対し
て、ヘッジファンド、未公開・非上場の有価証券、不動産や商品などへの新たな投資の ことである(『同上書』119-121頁)。
57 早稲田大学「WASEDA VISION 150」http://www.waseda.jp/keiei/vision150/about/、
2018年8月27日閲覧。
58早稲田大学「News Waseda Vision 150の達成にむけて 積極的かつ長期的な資産運用」
http://www.waseda.jp/top/news/56452、2018年8月27日閲覧。
59 日本経済新聞(全国版)、朝刊14面、2018年8月27日。
60 「同上新聞記事」。 61 「同上新聞記事」。 62 「同上新聞記事」。 63 「同上新聞記事」。 64 「同上新聞記事」。 65 「同上新聞記事」。 66 「同上新聞記事」。
67 河田悌一「私立大学は寄付金事業に努力せよ」『IDE現代の高等教育』IDE大学協 会、No.584、2016年10月、2頁。
68 「同上稿」3頁。
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69 一般社団法人日本私立大学連盟『学校法人における戦略的な寄付募集事業推進のため に(中間まとめ)』2013年3月、4頁。
70 『同上書』18-19頁。
71 『同上書』18頁。
72 『同上書』19頁。
73 『同上書』。
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