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第5章 地方大学経営の基盤となる財務戦略

1 国立大学における現状と課題

「国立大学法人等の決算について-平成 28年度」を基に、国立大学の財務状況につい て、国立大学の財務状況を考察していくうえで、重要であると考えられる経常費用、経常 収益、運営交付金と外部資金獲得状況、寄付金の獲得状況、人件費及び人件費比率の推移 について、つぎのとおり概観する6。本資料は、4大学共同利用機関法人を含む90法人が 対象となっている。90法人の財務諸表である貸借対照表および損益計算書を集計し、1法 人ごとに特徴を示したものではなく、全体的かつ一般的な傾向を表している。

① 経常費用……経常費用は、教育経費、研究経費、診療経費(附属病院の教職員人件費 を含む)、受託研究費等、人件費(附属病院以外)、一般管理費等で構成されている。そ の割合は、2016年度における割合は、教育経費5%、研究経費10%、診療経費(附属 病院の教職員人件費を含む)38%、受託研究費等8%、人件費(附属病院以外)33%、一 般管理費等5%となっている。

経常費用における特徴点としては「教育・研究の高度化や社会的要請への対応に加 え、光熱水道料の上昇や電子ジャーナルの高騰等といった外部要因の影響もあり、全 体として増加傾向」7にあることをあげている。

② 経常収益……経常収益は、運営交付金収益、附属病院収益、学生納付金収益、外部 資金等(補助金収益、受託研究収益等、寄付金収益、研究関連収益)、その他(自己収入 等)で構成されている。2016年度における割合は、運営交付金収益34%、附属病院収

益34%、学生納付金収益11%、外部資金等(補助金収益、受託研究収益等、寄付金収

益、研究関連収益)14%、その他(自己収入等)8%となっている。

経常収益における特徴点としては「経常収益については財産貸付料収入や版権料・

特許料収入等の拡大推進により、自己収入に係る収益の割合が増加傾向にあります。

また、附属病院の事業規模の拡大により、診療経費や附属病院収益が増加」8している ことあげている。

③ 運営交付金と外部資金獲得状況(受入額ベース)……2014年から2016年にかけて3

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期連続して全体の受入額は減少している。運営交付金は、2016年度は1兆 945億円 となっており、2015年度と同額であった。しかしながら、2011年度1兆1,528億円 と比較すると 583 億円減少している。「各大学が教育・研究の質を高め社会的要請に 応えていくためには、基盤的経費である運営交付金の確保とともに更なる教育研究の 質の向上のため、外部資金を受け入れるなど、財源の多様化を図ることで、財務基盤 を強化することが必要」9としている。

受入額の割合は、受託研究32%、共同研究8%、受託事業等4%、寄付金14%、補

助金等17%、科学研究費補助金25%となっている。「補助金等については、近年大幅

に減少しています。その一方で、受託研究や寄付金といった民間企業や個人等から獲 得することが可能な外部資金は増加傾向」10としている。

④ 寄付金の獲得状況(受入額ベース)……2011年度は908億4,600万円であった受入額 と比較すると、2016年度は1,236億3,800万円と約136%増となっている。「寄付金 は、他の外部資金と比べて弾力的に教育研究の目的に使用することができる財源であ り、各法人が獲得に向けて注力している」11としている。

⑤ 人件費及び人件費比率の推移(法人全体)……2014年度1兆 4,558億円、2015年度

1兆4,835億円、2016年度1兆4,982億円となっており、3期連続して人件費が増加

している。「競争的資金等によるプロジェクト研究等の推進、附属病院における診療業 務の充実といった事業規模の拡大に伴って、人件費が増加している」12としている。

人件費比率は、上昇傾向にあり、2013年度は50%を少し下回っていたが、2016年

度は50%を少し上回っている。その要因として「平成24年度及び平成25年度は、

国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律の趣旨を踏まえた給与減額支給措 置が行われていたことが影響」13としている。

これら国立大学法人の平成 28 事業年度決算においては、2つの観点から財政基盤の強 化のための方策の必要性が指摘されている。また、併せて老朽化した資産の更新の必要性 が示されている14

① 財源の多様化による財務基盤の強化……社会の要請に応えるためには、教育と研究 の質を高めなければならない。そのためには財政基盤の確立が重要であり、運営交付 金の確保に加えて、外部資金の受け入れなど多様な財源確保が必要である。

② 大口寄付の増加……多様な方法での寄付の受入れが進んでおり、国立大学法人化後、

最も高い受入金額と件数になっている。受入件数の増加率が、受入金額の増加率を上

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回っていることから、大口の寄付金が増えたものと考えられる。

③ 老朽化した資産の更新投資の必要性……「有形固定資産(償却資産)の当期増加額や 残存度は減少傾向」15とのことで、教育・研究ニーズに対応した施設や設備の整備お よび老朽化した資産への更新が必要である。

国立大学は、社会からのニーズに応えられるよう教育研究の競争力を高める必要がある。

そのためには、運営交付金の確保はもちろんのことではあるが、競争的外部資金や寄付金 受入などの財源の多様化を一層図り、強固な財務基盤を形成する必要があることが示され ている。

運営交付金の減少が続くなかにあって、国際競争力のある教育と研究の質を確保するた めに、寄付金や外部資金といった多様な財源の確保が喫緊の課題であることがわかる。

2016年11月に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において、文部科学省高等 教育局は、その資料のなかで、2004年から2016年にかけて運営交付金が減少しているこ とを受け、その減少が及ぼす影響についてつぎのように整理している16

運営費交付金は、2004年から2016年にかけて約12%(1,470億円)減少している。その ことは、運営交付金により安定的に措置される教員数の減少を招くこととなり、外部資金 等で雇用される時限付きの不安定なポストが増加する要因となっている。さらに、若手教 員の安定的なポストおよび博士課程入学者の減少、短期外部資金プロジェクトによる雇用 では研究者の発想に基づく長期的な研究が困難である。本資料では、運営交付金に対する 見解が、財務省と文部科学省とで異なる見解が示されており、省庁間の微妙な関係を示唆 している。

続いて、財政制度審議会は2018年5月23日に発表した「新たな財政健全化計画等に関 する建議」では、大学改革に向けた資金配分として「国立大学法人間の運営費交付金等に ついては、例えばグローバルレベルの競争力の高い大学に戦略的に配分するなど、教育・

研究の質を評価して配分する割合を高め、メリハリある予算編成を実現すべきである」17 とし、また「国立大学法人の学内の予算配分については、教育研究環境整備など、新たな ニーズに対応する必要があるのであれば、外部資金も合わせ、学長裁量経費等を有効に活 用しながら、学長のリーダーシップを発揮するとともに、施策を確実に進めるために必要 となるガバナンス改革を行うことにより、重点的な配分とすべきである。そのため、各大 学において、客観的かつ定量的な成果目標の設定、執行 実績の把握や取組の評価、評価結 果の活用を適切に実施するとともに、セグメント別の予算・決算を管理し、各学科・各教

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員の教育・研究成果を評価する必要がある」18と指摘している。

すなわち、国立大学法人は、学内予算配分について、教育研究の環境整備などをはじめ として、重点的な配分を行うべきであり、そのためには学長のリーダーシップが発揮でき るようガバナンス改革が求められるとしている。

また、財務省は、国立大学が教育研究の質を高めていくためには、運営交付金に依存す ることなく、民間資金の導入をはじめ多様な財源確保をはかり、持続可能な大学運営を行 うべきであるとしている19

さらに、第3期中期目標期間における国立大学法人への運転資金について各国立大学の 機能強化を図るために、つぎの3つの重点支援区分を設け「重点支援は、各国立大学から 拠出された金額(選択した以下の重点支援の枠組みを踏まえて決定される『機能強化促進係 数』に基づく金額を運営費交付金から拠出)を、『国立大学法人の運営費交付金及び国立大 学改革強化推進補助金に関する検討会』の評価に基づき再配分する」20としている。

① 重点支援1……特色があり強みとなる世界的あるいは全国的な教育研究を推進する 国立大学法人を重点的に支援する。ただし、地域貢献や専門分野の特性に配慮する。

② 重点支援2……特色ある強みとなる分野において、地域ではなく世界的あるいは全 国的な教育研究を推進する国立大学法人を重点的に支援する。

③ 重点支援3……教育研究分野において、世界トップレベルの海外大学と競争できる よう、世界的に通用する教育研究を推進する国立大学法人を重点的に支援する。

世界的に教育研究における競争的環境が高まっていることから、わが国においても教育 研究における世界レベルでの競争力を確保するための戦略として、資金の重点的配分が行 われていることがわかる。