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第3章 地方大学経営における国際化の現状と課題

1 地域経済への波及効果

本項では、地方大学が国際化することにより、どのように地域経済の活性化に貢献する のかについて明らかにするため、「スーパーグローバル大学創成支援」事業に採択されてい るAPUの事例を基に、地域への経済波及効果について考察する。

(1) APUの事例

大分県・別府市(2010)に基づいて、APUが別府市と大分県にもたらしている経済波及 効果について概観する28。まず、APUが別府市内で直接発生している支出総額は、年間 約120億円にのぼる。詳細な内訳は図表3-3のとおりである。

図表3-3 APUの別府市への支出総額

支出内訳

支出額

(単位:億円)

支出内容

学生の支出 68.4 学生1人あたりの年間生活費と家賃を基に算出

教職員の支出 18.8 教職員の本俸や手当(27.4憶円)として受け取った家計収入か ら、2008年の大分市の平均消費性向0.684を用いて算出

大学の直接支出 30.5 人件費と減価償却費、奨学金等を除き、教育研究費、管理経費

、設備関係支出から地元で支出した費用の集計

来学者の支出 3.2 海外および他府県からの来学者数を基に、海外からは別府市 内に2泊、国内からは1泊すると仮定して算出

計 120.9

(出所)大分県・別府市(2010、7-8頁)の記述内容を基に筆者作成

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2006年度の別府市内総生産は3,565.5億円であり、このAPU関連が別府市内で支出す る総支出額 120.9 億円が生み出す付加価値額の 72.2 億円は 2.0%分となり、経済規模を

2.0%押し上げていることになる29

そして、APU関連の支出が大分県にもたらす全体の経済波及効果を図表3-4のとおり 算出している。

図表3-4 APU関連支出が大分県にもたらす経済波及効果

経済波及効果の内訳

経済波及効果 (単位:億円)

①県内産品に対する需要額 87.3 APUが関連する別府市内で発生する支出額 120.9 億円 のうち、県内で生産される財貨やサービスの購入に向けら れる額(部門毎に算定された県平均の県産品需要率で計 算)

②第1次間接波及効果 19.3 原材料の購入を通じて波及する県内産業への波及効果(原 材料調達の産業連関を通じた波及効果)

③第2次間接波及効果 13.9 ①と②の生産に伴って発生する雇用者所得が、さらに一定 の割合で消費に充てられて喚起される波及効果

④経済波及効果小計(①+②+③) 120.5

⑤APUの直接生産額 91.2 APUの年間収入(APUが直接生み出す生産額、APU の運営に含まれる付加価値額は23.5億円)

経済波及効果 合計(④+⑤) 211.7 産業連関表で推計される経済波及効果

(出所)大分県・別府市(2010、9-10頁)の記述内容を基に筆者作成

(2) 国際教養大学の事例

国際教養大学は「スーパーグローバル大学創成支援」事業にも採択されているわが国の 大学のなかでも国際化が進んでいる大学のひとつである。2004 年4月に公立大学法人と して開設された。国際教養学部の1学部及び専門職大学院としてコミュニケーション実践 研究科を有している。開学にあたって、「国際教養(International Liberal Arts)」という教 学理念のもと、国際社会と地域社会に貢献することをミッションとして、豊かな教養やグ ローバルな知識、卓越した英語をはじめとした語学運用能力を身につけた世界で活躍でき

74 るグローバル人材の育成を掲げている30

図表3-5は、国際教養大学の基本情報を記している。学生総数は約900人と小規模な大 学であるが、専任外国人教員は50%を超えており、すべて少人数クラスの英語で授業が行 われている。

これらの基本情報を踏まえて、国際教養大学が秋田県にもたらす経済波及効果について 概観する。一般財団法人秋田経済研究所は、国際教養大学からの委託を受け、国際教養大 学が地域に及ぼす経済波及効果にかかる調査を実施している。本調査は、国際教養大学の 地域への貢献度および存在意義を定量的に検証することを目的として実施されたものであ る31

その調査は、国際教養大学の諸活動として、教育・研究活動、教職員・学生の消費、そ の他の活動および施設整備という4つの経済効果ごとに費用を分類・整理している。そし て、国際教養大学が秋田県にもたらす経済効果は年間40億1,500万円と推計している32

図表3-5 国際教養大学 基本情報

入学 定員

収容 定員

学生数 2018.4.1

専任教員数 非常勤教員数

国際教養学部 175 700 884 60(うち外国人教員33) 32(うち外国人教員10) 専門職大学院 30 60 39 12(うち外国人教員5) 3(うち外国人教員0) (出所)国際教養大学「基礎データ」に記載のデータを基に筆者作成

図表3-6 国際教養大学が秋田県にもたらす経済波及効果 (単位:百万円)

直接効果 一次波及効果 二次波及効果 総合効果 教育・研究活動による効果33 561 179 88 828 教職員・学生の消費による効果34 1,532 481 213 2,225 その他の活動による効果35 137 59 28 224 施設整備による効果36 481 146 111 739

合計 2,710 866 440 4,015

(出所)一般財団法人秋田経済研究所(2013、24頁)。単位が百万円のため、図表中の合計が

合わない箇所がある。

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図表3-6の経済波及効果は、国際教養大学の 2012度財務諸表および大学関連資料なら びに「平成17年秋田県産業連関表」に基づいて算出されている。図表3-6にある直接効果 とは「国際教養大学の各活動で発生する経費支出や消費支出のなかで、秋田県内に支出さ れる金額を県内最終需要増加額といい、この需要増加額が直接的に県内産業の生産を誘発 する。この県内最終需要増加額」37のことである。一次波及効果とは「この直接効果が県 内に支出されると、関連する産業に次々と生産が波及していく。この生産誘発額」38のこ とである。そして、二次波及効果とは「直接効果、一次波及効果によって生産が増加する と、雇用者の所得増加に結び付き、その増加分の一部が消費支出に回ることによって、さ らに生産が誘発されていく。この生産誘発額」39のことである。最後に、総合効果とは「こ れらの直接効果、一次波及効果、二次波及効果である生産誘発額の合計」のことである40

また、数値に表すことが難しい効果として、つぎの地域への貢献活動を同報告書は報告 している41

① 地元高校生の国際教養大学への進学と卒業生の県内企業への就職

② 県内小・中・高等学校等との交流活動

③ 地域経済活性化への貢献

④ 地域の課題解決への貢献

⑤ メディア露出による秋田県イメージアップへの貢献

⑥ グローバル人材育成を目指すわが国高等教育機関の先駆者としての貢献

経済波及効果について、2大学の事例をみてきた。それぞれの大学の経済波及効果の算 出は、同じ考え方に基づいているものもあれば、異なった考え方に基づいた数値もある。

学校法人や公立大学法人の違いはあっても、地域社会や経済にどのように貢献できている のかを数値で広く社会に周知することは重要である。

その理由として、つぎのことが考えられる。第1に、大学の使命がどのように果たされ ているのかについて、広く社会にわかりやすく伝える機会となる。第2に、大学の地域へ の貢献度に関するレピュテーションを高める機会となる。第3に、地域における大学の諸 活動に対する理解が深まることが期待できる。

すなわち、地域における大学の存在意義について、地域に関係する地域住民、地元企業、

地元経済団体および地方自治体などのさまざまなステークホルダーへの理解を促進するこ とにつながる。こういった循環サイクルの構築もまた、地方創生の一助となるはずである。

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