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球体系 $ の分岐時間モデルによる再構成

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第 2 章 反事実条件文の再分析 21

2.2.7 球体系 $ の分岐時間モデルによる再構成

(b) ∀t1((t1 freeze−→ t1)→ ∀t2 ≥t1 (tR2t2 →t2 |=rotten)))) (B)の形式化と充足条件

M, g, t|=↓x.P(R01⟩x &

(a) F(R11⟩x & press⟩F⟨R21⟩x) &

(b) G(⟨R11⟩x→[press]G(R21⟩x →t2 |=P⟨war−1⟩⊤))) iff

∃t0 ≤t (tR0t0 &

(a) ∃t1 ≥t0 (tR1t1 & ∃t1((t1 press−→ t1) & ∃t2 ≥t1 (tR2t2)))

(b) ∀t1 ≥t0 (tR1t1 → ∀t1((t1 press−→ t1)→ ∀t2 ≥t1 (tR2t2 →t2 |=P⟨war1⟩⊤)))) これらを見比べれば、(B)の方が(CSA)をそのまま例化した一般的な形式である(a :=

press, ψ :=P⟨war1⟩⊤とすればよい)のに対して、(A)の方が、分岐時点と第一参照時 点が一致した(R0 = R1, t0 =t1)、(CSA)の退化した特殊例であることがわかる。

こうして、前件に作用を含むと含まないとに関わらず、典型的な反事実条件文のクラス が、統一的な構文論的・意味論的図式の下、肌理の細かい時間特性をもともと潜在的に含 むものとして再認識される。これは、D. ルイスに始まる現実世界と可能世界との「類似 性」という、従来の没時間的な観点から反事実条件文を捉えるのではなく、現実世界それ 自体の「時間特性」という、純粋に時間的な観点から反事実条件文を捉え直すことであ る。以後、反事実条件文に対する前者の見方による古典的分析を「類似性分析Similarity

Analysis」、後者の見方によるより現代的な——しかし筆者の誤解でなければ、カントの

「可能性」概念に則ったという意味で、より古典的な——分析を「時間性分析 Temporal

Analysis」と呼ぶことにする。次節では、D. ルイスの類似性分析の技術的な実体である

球体系 $が、必ずしも類似性によって解釈される必要はなく、時間的にも解釈できること を示すために、分岐時間モデルから球体系 $ を技術的に再構成する。

($-3) If S ̸= and S ⊆$w, then∩

S ∈$w.($w は非空な集合族の共通部分について閉 じている。)

それに対してわれわれはまず、前節で定義した過去線形な半順序分岐時間モデル M= (T, V)、そのフレーム部分T = (T,{≤} ∪ {Rn}nN∪ {−→}a aAct)から、球体系

$T を、以下のように再構成する。

いま、tを現在の時点とする。このとき、t ≤tなるすべての時点t に対し、

St ={t′′ ∈T | t ≤t′′ and tR2t′′} と定め、$Tt

$Tt ={St}tt

によって定める。するとまず、$Tt

t ≤t より

($T-C) IftR2t, then {t} ∈$Tt .

を満たす。また、$Tt は、次の条件も自明に満たす。

($T-1) IfSt, St′′ $Tt , then St ⊆St′′ or St′′ ⊆St

(証明) の過去線形性によって、{t ∈T | t ≤t} が全順序集合となることからの、直 接的な帰結である。

さらに、$Tt は、時間順序が過去方向にも未来方向にも整礎である(無限な時点列を もたない)という条件——これらの条件はそれぞれ、時制論理式

(WF-P) H(Hφ→φ)→Hφ (WF-F) G(Gφ→φ)→Gφ に対応する——を課せば、次の二つの条件も満たす*36。 ($T-2) IfS ̸= and S ⊆$Tt , then∪

S ∈ $Tt . ($T-3) IfS ̸= and S ⊆$Tt , then∩

S ∈ $Tt .

*36ただし先に述べたように、この(WF-P)(WF-F)を仮定すると、HTLCF の完全性は失われる([66], p.145を参照)。

(証明) が過去線形であることと、過去方向にも未来方向にも整礎であることによって、

{t ∈T | t ≤t}のどの部分集合も、最小の時点、最大の時点をもつことからの、直 接的な帰結である。

したがって、$T は、オリジナルの球体系$に課された条件 ($-C) {w} ∈$w.($wwに中心化されている。)

($-1) If S, T $w, thenS ⊆T or T ⊆S.($w は包含関係について全順序である。) ($-2) If S ⊆$w, then ∪

S ∈$w.($w は任意の集合族の和について閉じている。)

($-3) If S ̸= and S ⊆$w, then ∩

S ∈ $w.($w は非空な集合族の共通部分について閉 じている。)

に対応して、次の条件

($T-C) IftR2t, then{t} ∈$Tt .t自身もR2 で参照されているならば、$Tt tに中心 化されている。)

($T-1) If St, St′′ $Tt , thenSt ⊆St′′ or St′′ ⊆St.($Tt は包含関係について全順序で ある。)

($T-2) IfS ̸= andS ⊆ $Tt , then ∪

S ∈$Tt .($Tt は非空な集合族の和について閉じて いる。)

($T-3) IfS ̸= andS ⊆ $Tt , then ∩

S ∈$Tt .($Tt は非空な集合族の共通部分について 閉じている。)

を満たすことがわかる。しかも$T が満たすこれらの条件は、過去線形で過去・未来に整 礎な半順序分岐時間構造T の性質から、˙ ˙ ˙に導かれていることに注意されたい。˙

オリジナルの$との明らかな違いは、($T-C)($T-2)である。まず、($T-C)では、

現在時点tへの中心化条件が、無条件なものではなく、「t自身もR2で参照されているな らば」という条件付きになっている。これは、現実世界wへの中心化条件($-C)が、反事 実条件文における特に「帰結節の参照時点ないし基準時」という観点から見れば、むしろ 特別な場合に成り立つ条件であると考えた方が自然であることを示唆している。実際、反 事実条件文「φだったらψだっただろう」を考えるときに、特に帰結節のψが成り立つ状 況の候補として、この「現実世界」を参照することは、極めて例外的なケースであろうと 思われる。ここから翻って、それではなぜルイスが現実世界w への中心化条件($-C)を この無条件の形で立てたのかという理由も概念的に分析できる。つまり、当然のことであ るが、ルイスにおいては、参照時点ないし基準時といった時間的概念は存在せず、世界間 の類似性という形而上学的概念を、反事実条件文の絶対的な基礎概念に置いていたからで

あろう。その場合、現実世界に˙ ˙ ˙ ˙ ˙る可能世界、すなわち現実世界自身を、˙ ˙˙ ˙ 体系の中心から排除するという発想の方が、逆に極めて不自然に見えることは、よく理解 できる。ただ、いずれにせよ、もともとルイスの体系でもこの中心化条件 ($-C)は必須な ものではなく、($-C) を課さない体系も許容できるように、ルイスの体系はこの点に関し て柔軟に作られている。

次に、($T-2)においても、$Tt˙ ˙ の集合和ではなく、˙ ˙ ˙ な集合族の和について閉˙ じている、というように、条件が弱められている。その理由は、空な集合族、つまり空集 合の和

をとると、

=であるが、$Tt には必ずしも空集合が属しているとは 限らないからである。というのも、$Tt の要素St ={t′′ ∈T | t ≤t′′ andtR2t′′}が空で あるのは、tの過去の時点tの未来の時点に、tからのR2参照時点が見つからない場合で あるが、そのような場合が起こる過去の時点tが存在することが、どの時点tについても 常に起こるとは、当然言えないからである。逆に言えば、オリジナルの条件($-2)は、$w

˙˙ の集合和について閉じている、ということによって、空集合の和、つまり空集合が˙ 常に$w に属している、という強い条件を含意している。この$w における空集合の存在 は、実際、D. ルイス自身も「直観的ではないunituitive」としており、さらにそれが、類 似性体系による反事実条件文の真理条件において「何の効果ももたない has no effect at all」ことが容易に検証できる、と述べている*37

したがって、再構成された$T が、過去線形で過去・未来に整礎な半順序分岐時間構造 T の性質から派生的に引き継ぐ条件は、オリジナルの$に課された条件と本質的な違いは なく、むしろ、前者の条件は後者の条件を適切に弱めたもの、と見ることができる。

以上の構成を要約すれば、現在の時点t を含む過去の時点t たちの上方閉集合たちか ら、tからR2 で参照された時点の集合、いわば R2 参照断面を切り出した集合たちの集 合族として、t における球体系$Tt を与える、ということである。この$Tt の視覚的構造 は以下の図のように表され、これをtにおける˙ ˙ 的球体系˙ system of temporalspheres と呼ぶことにする。

*37[41], p. 15

2.11

オリジナルの球体系$w との外見上の違いは、オリジナルの類似性の範囲S たちに対し て、われわれの時間的球体系$Tt では、R2で参照される反事実的状況の範囲St たちのイ ンデクスとして、t ≤tなるt、つまり時点tより以前の分岐時点tの存在が、明示でき る点である。これは内容上も、参照される反事実的状況の範囲が、文字通り時間的な指標 によって、具体的に与え直されていることを示している。これにより、いま考えている過 去線形の分岐時間モデルでは、一般に与えられた時点tについて

∀t, t′′ ≤t (t′′ ≤t →St ⊆St′′)

となる。つまり、分岐時点を過去に遡れば遡るほど、それ以降現実の時間系列から分岐し ていく可能な時間系列は増加し、それに応じて、その後の時間進展の先で考察される、帰 結節の基準時R2 で参照される時点の数も増加する。すなわち、分岐時点を過去に遡れば 遡るほど、考察される反事実的状況の範囲は拡大することになる。

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