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既存の提案への寄与 (2) —— No False Core Evidence Proposal

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第 3 章 ゲティア問題と Red Barn 問題の多領域様相論理による分析 87

3.1.12 既存の提案への寄与 (2) —— No False Core Evidence Proposal

その情報状態oOにとって「φが決定的 conclusive である」ということであると定義 する、ということである。実際、(反例2)の (h) = (πJ)qB)について、

o̸|= [πO1]((πJ)qB))

であり、(h)は情報状態oで懐疑論的様相[πO1]を冠頭しないため、なおさら o̸|=2O1]((πJ)qB))

であり、(h) は情報状態oで二重様相2O1]を冠頭しない。したがってこの意味で (h) は「知識」ではない。

この形の提案はもちろん強すぎるものであり、筆者自身が支持するものではない。だが それは、「知識」のあり方の理念的極限、いわば「理念的知識状態」の論理学的定義とし て、一定の価値をもつと思われる。そうでなくとも、以上の No defeat proposal の論理 学的再構成の試みが示しているのは、少なくとも、このような道具立てによる「撤回可能 性」や「潜在的反証」の強さの様々な書き分けに応じて、それらを排除する様々な強さの

「知識」の形式的定義を、様々に試みることができるだろう、ということである。

3.1.12 既存の提案への寄与 (2) —— No False Core Evidence Proposal

を「知識」とすることは、デカルトへの回帰を思い起こさせる、非現実的なものであろう からである。

そこで Lehrer (1965) ([37]) 自体がその中でこの素朴な形の No False Evidence Pro-posal を弱めて修正したのが、No False Core Evidence Proposal である。これも基本的 な発想は文字通りであり、ある信念の正当化のために、除去可能 eliminable な非本質的 根拠 ‘Non-core Evidence’ と、除去不可能 ineliminable な本質的根拠 ‘Core Evidence’

とを分け、後者に偽なものを含まないことを、知識の第四条件とする提案である。実際、

(反例1)および(反例2)において、(d1) および (f) はそれぞれ、それなしではスミス は (e)および (h)を正当化できなかっただろう、という意味において、スミスが (e) およ び (h) を信じるに至る正当化の過程にとって、まさに除去不可能 ineliminable な本質的

根拠 ‘Core Evidence’ であると言え、しかもそれらは偽であったのだから、まさしく˙ ˙

本質的根拠 ‘False Core Evidence’ であると言えるだろう。

だが、ここでも容易に予想されるように、No Defeat proposal 同様、この提案に原理的 に伴う不明確さが指摘されてきた。それは、ある信念の正当化の過程にとって、何が除去 可能で非本質的か、何が除去不可能で本質的なのか、すなわち、eliminable / ineliminable,

Non-core / Core の区別をどう判定するのか、原理的に曖昧である、ということである。

しかし、この指摘に対しても、われわれのMSHLによる分析は、それに対する直接の 応答にはならないが、問題となる個々の具体的状況に応じて、「信念の正当化」の過程を 論理学的に帰結関係として明示することによって、eliminable / ineliminable, Non-core

/ Core の区別を判定する論理学的手段を提供できることになる。というのも、たとえば

(反例2)において、(h) = (πJ)q B)r が、(f) = (πJ)q に「依存している」という ことを、われわれは次のようにして形式的に表現できる。まず、J ×B×O を記述する 式のソートをuで表し、このソートu の式集合u から帰結する、同じソートu の帰結 consequence の集合を、

Conu(∆u) = | ∅; ∆u ⊢φ} と表す(‘; ∆u ⊢φ’の厳密な定義はA.5参照)。すると、一方で

u :=T h(o,[(πO|N)−1])− {J)qB)r} として、

J)qB)r ∈Conu(T h(o,[(πO|N)−1])− {J)qB)r})

は、(h) = (πJ)qB)r が、それ以外のスミスの通常様相の情報から帰結することを表

している。他方、今度は

u :=T h(o,[(πO|N)−1])− {J)qB)r,(πJ)q} として、

J)qB)r ̸∈Conu(T h(o,[(πO|N)−1])− {J)qB)r,(πJ)q})

は、スミスの通常様相の下での理論から(f) = (πJ)q を取り除くと、(h) = (πJ)qB)r はもはや、それ以外のスミスの通常様相の情報からは˙ ˙ ˙ ˙˙ ˙ ることを表している。˙ そして実際、ここまでのモデル構成の下では、

J)qB)r ∈Conu(T h(o,[(πO|N)1])− {J)qB)r}) but

J)qB)r ̸∈Conu(T h(o,[(πO|N)1])− {J)qB)r,(πJ)q}) である。前者は先に示した単純な˙ 繹(通常様相˙ [(πO|N)1]内の導入)

[(πO|N)−1](πJ)q

[(πO|N)−1]((πJ)qB)r) (H)

によって、後者はMSHLの˙˙ 性(˙ A.6)によって示すことができる。というのも∆u :=

T h(o,[(πO|N)1])− {J)qB)r,(πJ)q}として、もし; ∆u J)qB)rだった としよう。すると、MSHLの健全性により、これに対する反例モデルはないはずである。

しかし、モデル図3.4を確認すれば検証できるとおり、J ×B×O上で ⟨j, b, o⟩ |= ∆u だが ⟨j, b, o⟩ ̸|= (πJ)q B)r であり、このモデル図 3.4 の ⟨j, b, o⟩ がそのまま

; ∆u J)qB)r の反例モデルとして利用できる。これは、通常様相の下での理論 の内部で、もし (f) = (πJ)q がなければ、スミスは(h) = (πJ)qB)r を正当化するこ とはなかった、ということの厳密な表現である。

原理的にはこのようにして、ある信念がある信念に「依存していること」、つまり、あ る信念がある信念の正当化にとって「除去不可能 ineliminable」であること、ある信念が ある信念の ‘Core Evidence’ であることを、明確に証明できる。これは、「信念の正当化」

の過程を論理学的な帰結関係として明示化することによって、その過程に対して「演繹可 能性」と「健全性」の厳密な検証がかけられるようになることの、当然の効用である。

以上のようにして、ある信念の‘Core Evidence’を析出し、そこに偽なもの‘False Core

Evidence’ が含まれないことを、たとえ厳密に検証できるようになったとしても、No

False Core Evidence Proposal が知識の定義としてどこまで成功するかはまた別の問題 であり、再検討が必要である。しかし、以上の具体的手続きが提示されたことによって、

その再検討と再評価の余地が生まれたことは、確かであろうと思われる。

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