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既存の提案への寄与 (1) —— No Defeat proposal の形式化

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第 3 章 ゲティア問題と Red Barn 問題の多領域様相論理による分析 87

3.1.11 既存の提案への寄与 (1) —— No Defeat proposal の形式化

くスミスの理論」、他方でT h(o,O1])とは、「異常な場合を熟慮した上でもなお確実と言 える情報に基づくスミスの理論」と解釈できる。その意味で、[(πO|N)1]の方は「通常様 相」、それに対し、[πO1]の方は「懐疑論的様相」と呼ぶことができよう。

すると、上の観察は、次のことを述べていることになる。つまり、(f) = (πJ)q, (h) = (πJ)qB) という帰結は、あくまで通常様相の下での理論に属しているのであって、懐 疑論的様相の下での理論には属していない。これは、スミスが通常様相の下での理論の背 後に——彼がこの理論に対して潜在的に「普通は...」と意識しうる以上は——懐疑論的様 相の下での理論を同時に有しており、そしてそこでは (f) = (πJ)qも(h) = (πJ)qB)r も未だ帰結されていない、ということを、彼自身が少なくとも潜在的に理解している——

このことを示すものと思われる。そして実際、振り返ってみれば、デカルトに限らず、わ れわれの日常はまさにこのようであろう。

o|= iff

for all o ∈O with o⊑o, o |=φ.

によって定義される。つまり、oが成立するとは、情報状態oがこれ以降どのよう に更新されたとしても、依然としてφが成立し続ける、ということである。この意味で、

この2を「確立情報established information」様相、あるいは単に「確立establishment」 様相と呼ぶことにしよう。

このとき、ソートOの論理式φにこの確立様相2と懐疑論的様相−1O ]の二重様相を 冠頭した様相式

2O1

を考えてみよう。するとこれは、今後どのように情報が更新されたとしても、φが懐疑論 的様相の下での理論から撤回されることはない、という、端的な確実性の安定性 stability

of certainty を表現していることになる。そこで、この「端的に(=どんなに疑っても)

確実であることが確立されている」という二重様相2O1]が付されている命題のことを、

われわれは「決定的 conclusive」な命題と呼ぶことができるだろう。そこでさらに、

θ →2O1

を考えてみよう。するとこれは、θが決定的にφであることを含意する、ということであ るから、このθ のことを、φの「決定的な証拠 conclusive evidence」と呼ぶことができ るだろう。これに対して、

χ→2O−1]¬φ

を考えてみよう。するとこれは逆に、χが決定的に¬φであること、つまりφでないこと を含意する、ということであるから、このχのことを、φの「決定的な反証 conclusive

defeater」と呼ぶことができるだろう。付随して、たとえば

χ→ ¬O1]φ すなわち χ→ ⟨πO1⟩¬φ は、χφに疑いの余地を生む、という意味になり、

χ→32O1]¬φ

は、χによって今後φが決定的に反証される可能性が出てくる、という意味になる。これ らは、一般にある命題を「反証するもの defeater」について、その反証力の強さや弱さと いうものが存在し、その反証力の強弱が以上の設定によって様々に書き分けられることを

示唆しているだろう。

こうして、No defeat proposalにおける「撤回可能性 defeasibility」の概念はたとえば [(πO|N)1∧32O1]¬φ

つまり「通常 φだが、今後φが決定的に反証される可能性もある」のような強いヴァー ジョンや、あるいは、

[(πO|N)−1∧ ¬2O−1

つまり「通常φだが、決定的ではない」——すなわち、これを書き換えて [(πO|N)1∧3⟨π−1O ⟩¬φ,

つまり「通常 φ だが、今後φ に疑いの余地が生まれる可能性がある」のような、弱い ヴァージョンによって、形式的に表現できることになるだろう。

また、「潜在的反証 potential defeater」の概念については、たとえば、先のχφ

「決定的な反証 conclusive defeater」であることの表現 χ→2O1]¬φ に確立様相2を付けたもの

2→2−1O ]¬φ),

を考えよう。するとこれは「今後 χが得られたらφの決定的反証となることは確立され ている」ことを表すことになる。これからS4の定理2→ψ)→(3φ→3ψ)により、

3χ→32O1]¬φ

が帰結する。するとこれは「今後 χが得られる可能性がφの決定的反証の可能性を含意 する」ということであるから、この前件のこそが、いわばφの「潜在的な決定的反証 potential conclusive defeater」と言われることができるだろう。

さて、その上で、もし No defeat proposal の ‘No defeat’ の意味を˙ も強くとるなら、˙ この提案による「知識」の定義は、次のようなシンプルな形をとるだろう。

情報エージェントOの情報状態oφが「知識」である def o|=2O1

これはつまり、ある情報エージェント Oの情報状態oOが「φを知っている」とは、

その情報状態oOにとって「φが決定的 conclusive である」ということであると定義 する、ということである。実際、(反例2)の (h) = (πJ)qB)について、

o̸|= [πO1]((πJ)qB))

であり、(h)は情報状態oで懐疑論的様相[πO1]を冠頭しないため、なおさら o̸|=2O1]((πJ)qB))

であり、(h) は情報状態oで二重様相2O1]を冠頭しない。したがってこの意味で (h) は「知識」ではない。

この形の提案はもちろん強すぎるものであり、筆者自身が支持するものではない。だが それは、「知識」のあり方の理念的極限、いわば「理念的知識状態」の論理学的定義とし て、一定の価値をもつと思われる。そうでなくとも、以上の No defeat proposal の論理 学的再構成の試みが示しているのは、少なくとも、このような道具立てによる「撤回可能 性」や「潜在的反証」の強さの様々な書き分けに応じて、それらを排除する様々な強さの

「知識」の形式的定義を、様々に試みることができるだろう、ということである。

3.1.12 既存の提案への寄与 (2) —— No False Core Evidence Proposal

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