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5. 小売システム国際移転の意思決定フレームワークとカルフール・ジャパンへ

5.3. 基本戦略

5.3.1. 現地適応

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状況と、提示した意思決定フレームワークとの対比を見ていきたい。

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ている。「適応する」のは、現地市場の文化、品ぞろえ、プロモーション、従業員だという。

そのためカルフールは、進出国と業態、機能を軸としたマトリックス型の組織体制を取っ ている。その一方で、現地法人や現場(店舗)に大きな権限を委譲している。ウォルマー ト(Wal-Mart)がグローバルサプライチェーンの統制を図るために中央集権的な組織体制 を取り、アホールド(Ahold)が各国に可能な限り自律性を与える分権的な組織体制を取る のと対照的に、集権と分権を兼ね備えたより複雑なマネジメント体制を取る170。そのためシ ステムできっちり抑えるという管理方法ではなく、責任者に大きな権限を委譲するという 体制を特徴とする。そのため、人的なコミュニケーションが意思決定の重要な要因となっ ている。

本社が担う主たる機能は、マーチャンダイズ、ファイナンス、組織・システム(サプラ イチェーン、IT)、人的資源管理(HR)である。一定額以上の投資や出店は本社の決定事項 であるし、グローバルブランドとの交渉は本社のマーチャンダイズが担当することになる。

ベスト・プラクティスのグループ内流通や IT 環境の開発などは、本社の組織・システムが 担当する。本社および現地の上級管理職171の「後継者育成計画」(Succession Plan)の実施 は本社 HR が担当する。それ以外はすべて現地法人に権限委譲される。さらに現地法人の中 でも店長に大きく権限が委譲され市場適応を図るといった、分権的な体制が取られる。

具体的な現地適応の例として、次のようなものが挙げられる。アルゼンチンでは、現地 の生活水準に応じてハイパーマーケット業態の種類を多様化した。低所得層に対して品ぞ ろえを絞り、低価格で提供する業態、中間層に対する品ぞろえおよびサービスの組み合わ せを提供する業態、高所得層に対して、特にヘルス&ビューティ製品と家電を充実させた 幅広い品ぞろえとサービスを提供する業態、という 3 つを展開した172。また日本では、「フ ランスの小売業」という日本の消費者の期待に添うべく、多数の輸入品を取り扱うように マーチャンダイジングおよび品ぞろえ政策を変更した。高い現地調達率も現地適応の好例 である。中国では、カルフールブランドの開発を行っていないかあるいは限られた品質の 商品しか開発していないという状況を反映し、現地調達率が低くなっているが、このよう な特別の事情がある場合を除き、高い現地調達率を示している(図表 5-2)。また人材の現 地適応に関しては、リーダーの地位を獲得した段階で、フランス人マネジャーから現地マ ネジャーに代わり、グローバルな文化を共有するというのが常となっている173

図表 5-2 現地調達率

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出典:カルフール アニュアルレポート(Sustainability Expert Report)(2011)、91 ペ ージ

しかしながら、業態の適応はやみくもに行われるものではない。カルフールのハイパー マーケットの売場面積は、2400 から 23000 ㎡に渡るが、家計にとって必要な食品および非 食品がワンストップで手に入ること、ナショナルブランドとプライベートブランドの幅広 い品ぞろえから低価格かつ確かな品質を持つ商品を選択できることが、ハイパーマーケッ ト店舗全体に共通する特徴となっている174。しかしながら、例えばフランスでは、店舗規模、

交通、出店地域での役割に応じて 3 つのハイパーマーケット業態を提供している。まず、「大 規模」ハイパーマーケットは、幅広い品ぞろえで特別の販促キャンペーンやお祝いイベン トを特徴とする。次に「アトラクション型」ハイパーマーケットは、食品、特に生鮮食品 の現地仕入を特徴としている。最後に「コンビニエンス型」ハイパーマーケットは、便利 な立地で激安の食品を品ぞろえしている175。したがって業態を適応させる範囲は、店舗(立 地と店舗サイズ)と商品(品ぞろえ:Marchandising、価格政策:Pricing)の 2 つの側面 に限定されているといえる。

カルフールは、ハイパーマーケットは海外市場でも通用する業態であると考えており、

この業態を海外市場に持ち込んでいる。それでも現地適応能力に対する自負があるのは、

店舗と商品を商圏に合わせて適応的に変更し、その適応後の業態もハイパーマーケットと して捉えている。通常の店舗サイズや品ぞろえ、価格帯により業態を分類する発想とは異 なり、業態が持つ「役割」あるいは「コンセプト」を業態の括りとして捉えているといえ る。「役割」と「コンセプト」を維持しつつ、店舗と商品を商圏に適応させていく能力を現 地適応能力と捉えている。その考え方は、参入後に現地の状況に応じて軌道修正プロセス を踏むことを前提としている点にも表れている。

例えば中国では経営層が、経済発展のレベルが異なっても、消費者(小さな住まい、頻 繁な買い物習慣、嗜好、価値観)、小売環境(伝統的業態と近代的業態の共存、伝統的業態 の優勢)、物流供給システム(小規模な供給業者、細分化された販路)、高い人口密度、都 市への集中、政府の高い関与などの面で、母国と類似性を持つと考えており、業態の移転

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にさほど困難を感じていなかった。したがって、業態の変更は基本的には行わず、実施し たとしても品ぞろえや価格面の変更に留まった。またこのようなマイナーチェンジを試験 的なものであるとし、参入後の発展状況に伴い修正を加えるべきものと考えていた。当初、

供給体制の問題から生鮮食品の品ぞろえは名ばかりの状態であったが、特定の供給業者と の関係構築、国有の生鮮食品加工物流施設の近代化に関する政府へのロビー活動を通じて、

1、2 年後には供給体制を再構築し、生鮮食品の品ぞろえを本来の姿に戻した176。「生鮮食品 の貧弱な品ぞろえ」は、ハイパーマーケットの役割にとって望ましくない状態だったので ある。

店舗と商品の 2 つの側面で業態の現地適応を行うこと、修正プロセスを所与のものとす ること、役割に反する現地適応は修正プロセスにおいて軌道修正することが、カルフール の現地適応行動の特徴といえる。