4. ヨーロッパの小売業
4.3. フランスの流通業
4.3.2. サプライヤーの交渉力
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年時点で 66.2%(図表 4-3)、また、食品市場における大規模小売チェーントップ 5 社のシ ェアは、1996 年時点で 50.6%の対称寡占状態であった(欧州平均 52.9%)146。同様の数字 は 2000 年には 83.0%にまで上昇し、カルフールグループが 30%シェアという支配的地位 を占めるようになった147。
購買活動においてはさらに水平統合が進んでいる。フランス国内の食品市場の 90%強は、
1980 年代半ばに形成された 5 つの購買グループの購買センター(全国約 400 ヶ所)を通じ て流通・販売されている買手寡占市場であり、その数値はさらに上昇している(図表 4-20)。
規模的に最も大きいのがカルフールグループ傘下の購買グループで全体の 26.2%、次いで ルシエ(Lucie)グループが 23.8%を占める。オペラ(Opéra)グループが 15.7%、アンテ ルマルシェが 14.4%、オーシャン(Auchan)が 12.9%となっており、5 グループで 93%に 上る。中でもここ 10 年でシェアを伸ばしているのが、カルフール、アンテルマルシェ、オ ペラである。
図表 4-20 食品市場シェア(購買グループ別)
単位:%
グループ 2000 年 2012 年 増減 カルフール(ストック、コンチネント、チャンピオン、Ed) 25.4 26.2 103%
ルシエ(ルクレール、システムユー) 25.4 23.8 94%
ITM エンタープライズ(アンテルマルシェ) 13.8 14.4 104%
グループ・オーシャン(アタック) 13.1 12.9 98%
オペラ(ジェオント、カジノ、フランプリ、リーダープライス、コラ、マッチ、
モノプリ) 12.5 15.7 126%
合計 90.2 93 103%
出典:2000 年の数値は Colla(2003)、p.36(原出典:Secodip)、2012 年の数値は日本貿易 振興機構(2012)
流通チャネルにおける勢力の拡大だけでなく、消費者の支持という面でも小売業のプレ ゼンスは拡大した。INSEE の調査では、いつもの店舗で好みのブランドが手に入らないと き、56%の消費者が代替品を購入し、24%が次回店を訪れるまで待ち、20%のみがそのブ ランドを探すために他の店舗を訪問するという結果が得られたことから、食品市場におい て消費者は、ブランドよりも店舗に対する選好を強めているとしている 。
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パン焼・練り製品では、85%が非サラリーマンであるという。また 1986 年において中小企 業148は、食品製造業の企業数の 97%、従業員の 60%、総売上高の 61%と、大きな地位を占 めていた149。しかしながら中小企業のプレゼンスは、特に食肉加工や穀物加工など付加価値 率の低い分野で大きいため、、付加価値総額に占める割合は 54%に留まる。3%の大企業が 総売上高の 40%近く、付加価値の 46%を占めるが、集中化の進展は少なく、全体として製 造市場は細分化されている150。
その一方で、先述のとおり、1960 年代、70 年代に掛けて小売業の企業規模の拡大と市場 の寡占化が進んだ。そのため中小メーカーは特に、特定の小売チェーンに対して売上の大 きな部分を依存するようになった。さらに 1980 年代には、購買活動やロジスティクスの集 中化など、流通チャネル上の諸機能においても小売企業の支配力が拡大した。小売企業は 価格に対する交渉力を持つようになり、特に交渉力の弱い中小メーカーは、小売チェーン とのパートナーシップの構築を求められ、強い圧力を受けることになった。そのため中小 メーカーは多くの不満を抱えている。リサーチ会社のエシック(ETHIC)の小規模メーカー に対する調査では、交渉者がころころ変わると答えた割合は約 60%、合意事項が尊重され ないと答えた割合は 40%強であった(図表 4-21)。また、メジャーブランドを取扱いから 外すことで、短期的売上を犠牲にしても交渉を有利に進めようとする小売企業も多かれ少 なかれ存在するという151。このような行動は、メーカーの集中化が進んだカテゴリーでも行 われている。例えば 1989 年にサチャップ(Sachap:ルクレールの地域購買グループ)は、
不公平な取引条件でアンテルマルシェが安売りを行ったことに反発し、ユニ・リーバの洗 剤の取扱いを 4 ヶ月間停止した。当時のユニ・リーバの洗剤市場におけるシェアは、第 2 位の 28%であった152。このことは、例えメーカー側が市場リーダーの地位を確保しても、
小売企業の交渉力はそれをさらに上回る強さを持っていることを示している。
図表 4-21 小規模メーカーが抱える大規模小売業との問題点
問題点 %
交渉担当者がころころ変わる 60.2%
合意事項が尊重されない 43.3%
合意事項が常に修正される 37.8%
交渉担当者が多すぎる 28.9%
小売側の構造がよくわからない 26.4%
出典:Clarke et al.(2002)、p.109(原出典:ETHIC、1998)
また購買活動の集中化をもたらした購買グループの形成(4.3.1 参照)は、メーカーに対 して実務的なハードルを課している。すなわちメーカーは通常、初めに全国レベルの購買 センターと商談し、取扱リストに載せてもらう必要がある。この際に量的な購買契約は伴 わない。次に地域レベルと商談し、最後に各店舗との商談を行う。このような多段階かつ
122 複雑な商談プロセスを経なくてはならないのである。
以上ような交渉力の偏在から生じたのが、多岐に渡るリベートの慣行である。ことある ごとにリベートを徴収する機会を設定(図表 4-22)し、それによって利益を稼ぐというや り方が定着した。したがってバイヤーの商談は、仕入原価の交渉よりも、いかに多くリベ ートをもらうかの交渉に注力された。このことは 1996 年施行のガラン法(Galland Act)
で、仕入価格以下での販売が禁止されたことにより、小売企業への販売価格が均一化した ことにも起因する。仕入原価に対して、小売業の交渉力を発揮する余地が少なくなったの である。
図表 4-22 フランスにおけるサプライヤーから小売企業への割引および協賛
イベント 実施内容
初期発注 登録料
新商品投入 棚のフェース料
販促 販売スペースの購入
広告 チラシやカタログ費用への協賛 新店開店 開店協賛、商品提供
マーチャンダイジング 商品のラベルづけ、棚への陳列 投資 店舗リニューアル協賛
出典:Colla(2003)、p.37(原出典:Dupuis and Tissier-Desbordes、1996)
購買コストの削減、供給源の確保などの目的で行われる製造統合も、サプライヤーに対 する小売企業の交渉力を強化した。フランスでは、特にアンテルマルシェ(Intermarché)、
カジノ(Casino)、ルクレール(Leclerc)、プロモデス(Promodés)などが行った。ワイン の製造・ビン詰、コーヒー豆の焙煎、缶詰、チョコレートや菓子、ジャム、ソースなどの カテゴリーから始まり、次第に、食肉などの生鮮食品やチーズ、ベーカリーも加わってき た。多くの企業では、サプライチェーンの最も重要なフェーズ、例えば食肉であれば食肉 処理、ワインであればビン詰といったフェーズを統合し、品質と経済性の確保に努めた。
ルクレールは食肉処理のような優位性のある分野に特化して統合を行ったが、アンテルマ ルシェやカジノは全社戦略の礎と見なして生産統合を実施した。例えばアンテルマルシェ は、食肉処理、冷凍肉、ノンアルコール飲料、ワイン、魚、ベーカリーやペストリーなど のカテゴリーで生産機能を統合し、30%を超えるシェアを保持するなど、プライベートブ ランドのリーダー的存在になった(図表 4-23)153。
図表 4-23 主要流通グループの売上に占めるプライベートブランドのシェア(2009 年)
店舗名 %
アンテルマルシェ(Intermarché) 33.8
123 カジノ(Casino) 30.3 カルフール(Carrefour) 28.0 ルクレール(Leclerc) 27.6 オーシャン(Auchan) 25.6
全体 32.3
出典:日本貿易振興機構(2012)、6 ページ(原出典:Secodip、2010)
次に卸売業について見てみたい。1960 年代の後半のイギリスでは、大きな市場シェアを 占めている大規模小売業が、直接商品供給の手段を確保していた一方で、他の国では製造 やマーケティングの規模が小さかったため、卸売業の役割が比較的大きかった。しかしな がら 1960 年代後半から 70 年代にかけて、主として食品分野における大規模小売業の成長 と大規模製造業の台頭が、ヨーロッパ、特にフランス、西ドイツ、北海沿岸の低地帯 (オ ランダ、ベルギー、ルクセンブルク)で顕著であり、卸売業者の減少および流通チャネル の短縮化につながった。
フランスではかつて配送卸が数多く存在しており、1968 年から 1974 年の間に卸売業の販 売高は平均で 10.8%増という安定した成長を示したが、1974 年以降は毎年 1.6%の割合で 減少した。卸売業の販売高の減少は、ヨーロッパの多くの地域において典型的に見られる ものであった。売上高の減少と同時に、卸売企業の数自体もかなりの程度減少しており、
それは食品卸売業に起因するものであった(非食品卸売業は増加、産業間卸売業は横ばい)。
卸売業の数が減少する一方で、小売業同様、卸売業でも規模の経済を追求した組織規模 の拡大が進展した。組織規模の拡大の方法として、完全な組織統合と契約による統合や水 平的な統合と垂直的な統合などが挙げられるが、これらの組み合わせによって規模の拡大 が実現された。
組織統合(買収)は、長い成長プロセスを経ることなく、倉庫等の拠点ネットワークを 全国に広げることできる手法である。全国的な卸売ネットワークにより、規模の経済を獲 得し、地域市場での浸透を図ることができる。また契約による統合は、「卸売仕入グループ」
の形態を取る。仕入グループは、仕入量を増やすことにより規模の経済性を獲得すると同 時に、製造業との取引において交渉力を増すことができる。
垂直的統合、すなわち卸売業が小売業や製造業に乗り出す行動は、特に食品分野におい て見られ、買収によって実行された。メーカーが収益の多様化を目指して、川下統合に乗 り出したり、その動きに対抗して卸売業が川下や川上の活動に参入(買収やグリーンフィ ールドにより実現)したりすることにより進展した。一方水平統合は、ボランタリーグル ープの形成において見られた。水平統合であると同時に小売業を巻き込んだ垂直統合の性 質も有しており、契約による組織統合が行われた。このようなグループ化の進行は、多く の小売企業が物流チャネルを短縮しようとすることによる競争圧力から生じた受動的なも のであるが、いくつかのケースでは、新しいビジネスのやり方が登場したりするなど、多