4. ヨーロッパの小売業
4.1. 小売業態の発展プロセス
4.1.9. ディスカウントストア
102 図表 4-10 フランスにおける業態区分
百貨店(1~10万品 目)
バラエティストア
(5000~6000品目)
スーパーマーケット
(5000品目)
ハイパーマーケット(2万5000~5万品目)
その他の非食品非専
門店 スーパーレット(250~1000品目)
一般食品店 2500㎡
400㎡ 120㎡
(店舗の販売面積)
(食品の販売割合)
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出典:白石・田中・栗田(2003)、29 ページ
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ドイツと国境を接する国々、特にベルギー、オランダ、デンマークで発展した。1980 年代 にはノルウェーとフィンランド、1980 年代末から 1990 年代初頭にフランス、イギリス、イ タリアで広がった。2000 年のヨーロッパにおけるディスカウントストアの市場シェアは 14.9%であった。
フランスでは、1988 年にドイツのリドゥル(Lidl)とアルディ(Aldi)による出店が、
ディスカウントストアの始まりである。業態シェアは急成長とまではいかないが堅調に伸 び、1991 年に食品市場の 1.3%に過ぎなかったが、1996 年には 7.5%に伸びた。マーケッ トリーダーはドイツのリドゥルに奪われているものの、フランス企業もそれに対抗してハ ードディスカウントストア業態を出店している。
ハードディスカウントストアの 1970 年代のドイツでの急成長は、商業を規制する法制度、
特に営業時間に対する規制の存在に起因するところが大きかった。営業時間帯が制限され たことにより、食品の売場面積の生産性が低下し、ハードディスカウントストアの優位性 を高めた。すなわち小規模店舗は、大規模店舗のすき間を埋める存在として厳選された製 品ミックス、便利な立地、特殊なサービスの提供などによって、顧客を惹きつけることが できるとの考え方が台頭し、小規模店舗の改革が進んだのである。
小規模店舗の改革はヨーロッパ全体で見られたが、その一つの要因はコンビニエンスス トアの台頭である。コンビニエンスストアはヨーロッパのいなかではなく、都市の周辺や 街の中心地で「利便性」を提供し、大規模店舗を補完する存在として広まった。セブン‐
イレブンのフランチャイズチェーンは 70 年代後半にイギリスでオペレーションを開始した し、フランスやドイツでは、コンビニエンスストアのチェーンストア事業がかなりの数、
存在した。もう一つの理由は、百貨店やハイパーマーケットで活用された「店舗内店舗」
の発想である。店舗内店舗は、スタッフや在庫の費用を増やすことなく、店舗のイメージ を変えることができるものであり、百貨店の再生やハイパーマーケットの魅力アップに一 役買った存在である。ディスカウントストアも、大規模店舗とは異なる優位性、すなわち プライベートブランドによる「提供物の差別化」を実現し、成長した。
このような小規模店舗の再生は、小規模店舗と大規模店舗といった多様な店舗フォーマ ットが、互いに競争するというよりもむしろ補完しうるものであり、統合的なマーケティ ング戦略の概念が、ヨーロッパ内で浸透したことに起因する。大規模な企業は、お互いに 補完し合ういくつかの店舗フォーマットを運営したり、サプライチェーンを垂直統合し川 上での規模の経済性を獲得しつつ、川下では、小規模店舗と大規模店舗を同時に運営した りするといった現象が見られた104。
またハードディスカウントストアの発展には、経済危機も大きな影響を及ぼした。当該 業態が出現したのは、戦後の経済復興期であるし、1980 年代末から 90 年代初頭にかけての 経済情勢の悪化は、ハードディスカウントストアに有利な方向(より安い店舗やブランド、
プライベートブランドを選好)に、消費者の購買行動を変化させ、多数の国での発展を促 した。さらに 1980 年代には、スーパーマーケットやハイパーマーケットなどが成熟期に突
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入し、トレーディング・アップ(提供商品の範囲の拡大と品質の向上)を行ったため、低 価格の基本的な食品に対する「供給の空白」が生じた。ハードディスカウントストアが未 だ台頭していなかったイギリス、フランス、イタリアなどでは、この空白を埋めるかたち で成長した。
他方ソフトディスカウントストアは、リーダーのアルディと対峙していた 2 番手以降の 企業(テンゲルマン:Tengelmann とレーベ:Rewe)が、独自の業態を導入したことに端を 発する。それは、スーパーマーケットとハードディスカウントストアの間の空白地を生め るものであり、価格はハード型ほど安くはないが、生鮮食品を含む、より幅広い品ぞろえ を提供する業態であった。
ブリザード(1976)に倣い、ディスカウントストアの文化コアと環境コア変数を整理し たものが図表 4-11 である。ディスカウントストアは、業態の成熟化や競争の激化、商業規 制などにより、スーパーマーケットおよびハイパーマーケットなど他の大規模小売店が、
取扱商品のトレードアップを行ったことで発生した、供給の空白を埋めるかたちで発展し た。そのため特にプライベートブランドに注力することで、生活必需品を恒常的に低価格
(EDLP)で提供するという業態特性は、経済情勢の悪化や消費者嗜好の変化により、大い に支持された。最小限の投資で高い資本回転率を実現するため、生活必需品に限定した最 小限の品ぞろえで、大量仕入・大量販売を行う。さらに EDLP を好む消費者のため、広告や サービスは極めて低い水準に抑える。価格訴求業態の中で、基本的な商品について徹底的 に安く抑えることで、消費者の店舗の使い分けを促し、他の価格訴求業態の補完的役割を 担った。
図表 4-11 ディスカウントストアのコア要素
文化コア 環境コア変数
外部 内部
立地
・便利な立地
・小規模店舗(350~400 ㎡):
市街地
・大規模店舗(600~800 ㎡):
市街地周辺、郊外(幹線道路 沿い)、ショッピングセンタ ー内
・大規模小売店の成熟化
製品
・生活必需品
・高いプライベートブランド 比率(NB は売上高の 20%未満 かつリーダーブランドのみ)
・ハード DS=ドライ食品
・経済情勢の悪化
・他業態での取扱商品の格上 げ
・消費者嗜好の変化(低価格、
プライベートブランド選好)
・供給業者との密接な協働体 制
・基本商品に対するバイイン グパワー
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・ソフト DS=生鮮食品、冷凍 食品
価格
・非常に低価格(EDLP)、SM よりも 15~30%低い
・経済情勢の悪化(戦後、経 済危機)
・他業態での取扱商品の格上 げ
・消費者選好の変化(低価格、
プライベートブランド選好)
・最小限の投資と高い資本回 転率による高い投資収益率
・大量仕入・大量販売
・最小限のオペレーションコ スト
売上
・中規模 ・商業規制(営業時間) → 売場生産性の低下
・低い粗利益率
・最小限のオペレーションコ スト
品ぞろえ
・生活必需品に限定した最小 限の品ぞろえ(ハード DS:500
~1000 品目、ソフト DS:~2000 品目)
・集権的管理(仕入れと物流
面での規模の経済性を実現)
・最小限のオペレーションコ スト
広告・販促
・低い水準 ・消費者嗜好の変化(低価格、
プライベートブランド選好)
・低い粗利益率
・最小限のオペレーションコ スト
サービス
・低い水準
・パレット陳列
・消費者嗜好の変化(低価格、
プライベートブランド選好)
・低い粗利益率
・最小限のオペレーションコ スト
サプライチ
ェーン ・店舗と近接した倉庫
役割
・価格訴求業態の補完 ・大規模小売店の成熟化
・商業規制(営業時間) → 売場生産性の低下
・低い粗利益率
・最小限のオペレーションコ スト
出典:筆者作成