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外部環境要因と小売システム

2. 小売技術の国際移転に関連する既存研究

2.4. 比較流通論

2.4.3. 外部環境要因と小売システム

次に「流通システムが稼働している社会の諸要因」を扱う研究について見ていきたい。

まずバーテルズ(1970)は、比較マーケティングの研究方法を、マーケティングプロセ スとその環境との関係性の多国間での比較であるとしている。すなわち、図表 2-7 の A:C と B:D の比較である。したがって、一見、母国との差異が目立つマーケティングプロセス でも、環境との関係性(パターン、因果関係)で見た場合、類似している可能性があると

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し、このような比較の重要性を指摘している。さらにその関係性を、次のような関数で表 している。すなわち、

①社会的要因=f(物的要因)

②マーケティングタスク=f(物的要因、社会的要因)

③マーケティング行動=f(社会的要因)

④技術マーケティングシステム=f(物的要因、社会的要因、マーケティング行動)

※X の関数 Y を f(X)と表す。

の 4 つである。さらに、社会的、物的、行動の各要因がどのような技術マーケティングシ ステムを生み出すかについて、具体例を提示している(図表 2-8)。

図表 2-7 比較分析モデル

A

母国の マーケティング

プロセス

B

外国の マーケティング

プロセス

C

母国環境

D

外国環境

A:B

C:D

A:C B:D

出典:Bartels(1970)、p.238

図表 2-8 技術システムへ影響する要因とその影響

要因 技術システムへの影響

物的要因

都市化 小売制度の数と種類

製品の多様性 販路の種類、商品品ぞろえ、集荷・配荷拠点 生産者と消費者との距離 集約・集荷・大量生産の必要性

製品の季節性 貯蓄と配荷施設の必要性

生産量 規模の経済の達成のための統合・吸収・国有化

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社会的要因

教育 事業特化の形態

政府 ある種のマーケティング制度の発展に対する制限

信仰 特定販路(例えば生協)または特定の生産要素(例えば労働)

対する嗜好

家族 家族外の従業員に対する経済的機会の制限

経済価値 信用の利用

行動要因

競争 販路構築における革新

専門化 自社以外の資源の活用

消費者志向 製品の開発と改良 株主志向 情報統制システム

家族志向(父権主義) 伝統的かつ公式的な内部組織構造 出典:Bartels(1970)、pp.276-277

ブリザード(1976)は、ある流通制度がその文化コア(culture core)(立地、価格帯、

品ぞろえなど)を発展させる上で制約となるような、環境変数(environmental core、

secondary、tertiary)を 6 つに類型化している。6 つの変数とはすなわち、①テクノロジ ー(輸送、自動車、戦時中のイノベーション、テレビなど)、②社会構造(都市の人口、新 興家族、都市の衰退など)、③価値システム(戦時中の制約、自由な事業活動)、④政治的・

法的変数(戦争、消費者立法)、⑤経済的変数(富、労働の専門化、不況など)、⑥競争環 境(権力の集中化)である。この場合の流通制度とは、百貨店やスーパーマーケットのよ うな業態を指している。これらの制度が環境のコア変数に完全に調和すること、あるいは 環境のコア変数を利用することが、環境へ適応するということを意味する。そこで、アメ リカとオーストラリアにおける 4 つの業態(百貨店、スーパーマーケット、ディスカント デパートメントストア、ファストフードフランチャイズ)の起源と変遷を分析(図表 2-9)

することで、各業態の文化コアと、それらの形成に起因した環境コア変数を明らかにした

(図表 2-10)。

本研究の貢献は、環境を構成する要素と流通制度を構成する要素との関係を、歴史的事 実を詳細に分析することで明らかにした点にある。しかしながら、環境および制度は、と もにシステムとして各要素が体系的に連携して構成されるものという視点は含められてい ない。環境コア変数と文化コアを構成する要素との関係だけでなく、環境コア変数間の体 系、文化コアを構成する要素間の体系という視点を含めることで、環境システムと制度シ ステムの関係性を明らかにすることができ、また環境および制度の変遷についてもよりダ イナミックな視点を取り込むことができると考える。

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図表 2-9 ディスカウントデパートメントストアの起源

ナショナルブランド化 独占的価格維持

集中化 売り手市場

需要の激増

価格ベンチマーク

価格競争の欠如 マージンの増加

信頼性

生産・取引の激増

余剰物資

販売量の増加

戦時技術 製品の陳腐化

戦時の労働力不足 有職主婦 ワンストップショッピング

自動車

郊外 戦後の家族形成

便利な立地

備蓄の減少

戦時の物資不足

カジュアルショッピング サービスの削減

技術的経験

ニーズの高度化 高い価格意識

価格競争

低コスト立地

出典:Blizzard(1976)、p.331

図表 2-10 ディスカウントデパートメントストアの起源に関する社会生態学

文化コア 環境

コア変数 第 2 変数 第 3 変数 立地:郊外、独立型 自動車 郊外 ライフスタイル、低

コスト立地の出現 組織:多部門制 戦 時 イ ノ ベ ー シ ョ

ン、新たな家族形成

消費財の大量生産、

需給の激増

製品陳腐化、余剰

製品:豊富な種類、

耐久消費財への注力

戦 時 イ ノ ベ ー シ ョ ン、新たな家族形成

消費財の大量生産、

需給の激増

製品陳腐化、余剰

価格:低 マスメディア、戦時 制約、権力の集中

ナショナルブランド

(NB)、インフレ、競 争制限

価格ベンチマーク、

高い価格意識、価格-供給統制

売上高:高 新たな家族形成 需給の激増

品ぞろえ:幅広い、 マスメディア、戦時 ナショナルブランド 製品陳腐化、価格-供

39 浅い イノベーション、権

力の集中

(NB)、消費財の大量 生産、競争制限

給統制

広告:簡素、価格志 向

マスメディア、戦時 制約

ナショナルブランド

(NB)、インフレ

価格ベンチマーク、

高い価格意識 サービス:営業時間

の延長、その他サー ビスの簡素化

マスメディア、戦時 制約、自動車

ナショナルブランド

(NB)、インフレ、郊 外

高い価格意識、ライ フスタイル

出典:Blizzard(1976)、p.372

またケイナック・カブスギル(1982)は、食品小売業に影響を及ぼす社会・経済的環境 要因として、小売環境(小売業に関連するもの)と消費者環境(消費者に関連するもの)

とに区別し、整理している(図表 2-11)。

小売環境には、事業環境に関わる要素(初期投資、設立形態、規模、参入障壁など)、技 術に関わる要素(製品ラインの幅、セルフサービス等の販売手法、在庫レベル、調達方法、

プロモーションレベルなど)、戦略に関わる要素(成長志向性など)が挙げられ、消費者環 境には、経済発展のレベルに関わる要素(可処分所得のレベル、識字率、冷蔵庫や自動車 の保有率など)、購買行動に関わる要素(買い物頻度、購買量、出掛ける距離、信用購入な ど)が挙げられる。それぞれの状況・度合いが、発展途上国に見られるようなシンプルな 小売システム(個人オーナーが運営し、人的な販売を中心とした小規模店舗)と、先進国 に見られるような複雑な小売システム(組織的に運営され、セルフサービスを中心とした 大規模店舗)の生成に影響していると分析した。

図表 2-11 先進国と発展途上国における食品小売業の発展パターン比較分析のためのフ レームワーク

発展途上国 先進国

小売環境 小売環境

低い初期投資 高い初期投資

個人による所有 企業による所有

組織設立の手続きが簡素 組織設立の手続きが複雑

店舗サイズが小規模 店舗サイズが大規模

限定的な製品ライン 幅広い製品ライン

カウンターサービス セルフサービス

個人に依存した販売 個人に依存しない販売

低い在庫レベル 高い在庫レベル

成長志向の欠如 成長志向

プロモーション努力の欠如 プロモーションへの注力

中間業者への依存 直接取引

容易な新規参入 困難な新規参入

消費者環境 消費者環境

小さい可処分所得 大きな可処分所得

低い識字率 高い識字率

低い冷蔵庫普及率 高い冷蔵庫普及率

低い自動車保有率 高い自動車保有率

ショッピング頻度が高い ショッピング頻度が低い

少量買い まとめ買い

狭い商圏 広い商圏

信用購買(付け) 信用購買への信頼度が低い

小規模食品店

(コーナーストア)

シンプルな 食品小売システム

公的市場

大規模食品店

(スーパーマーケット)

複雑な 食品小売システム

専門食品店 ゆるやかな適応と変形

技術環境

規制環境

40 出典:Kaynak and Cavusgil(1982)、p.259

小売制度に「システム」の観点を取り入れたのは、ケイナック(1986)や白石・鳥羽(2001)

である。ケイナック(1986)はバーテルズ(1968)の比較流通の分析視角を直接小売業に 取り入れた。環境条件と小売企業の規定関係、すなわち小売システム間の比較(図表 2-12)

を行うことによって、どのような要因が生産性と効率性の違いをもたらしているのかとい うことを理解する必要性を主張している39。小売システムが、マクロ管理プロセスや流通機 構・機関に組み込まれているという視点を組み入れた点で新たな視座を提供しているが、

小売システム自体については明らかにされていない。

図表 2-12 Kaynak による比較小売の分析視角

類似性と異質性

フィ ー ドバ ック

・シ ステ ム フィ

ー ド バッ ク

・シ ステ ム

「理想的システム」

小売システムの効率性と生産性 に対する評価基準

A国における

既存小売システムの効率と効用

B国における

既存小売システムの効率と効用

A国における 現行の流通構造と機関の形態

B国における 現行の流通構造と機関の形態

A国における マクロ管理プロセスの有効性

B国における マクロ管理プロセスの有効性

A国における 環境的制約

B国における 環境的制約

各国の社会経済的、文化的、技術的 発展の類似と差異による説明

(歴史的発展の影響)

出典:白石・鳥羽(2001)、57 ページ(Kaynak(1986)、Figure4-8、p. 119 に若干の加筆・

修正)

白石・鳥羽(2001)は、バーテルズ(1968)やケイナック(1986)のフレームワークを 応用し、小売技術の海外移転は「提供物(オファーリング)」、「業態特性・補助技術」、「供 給システム」という 3 つの側面からなるシステムの移転として捉えた(図表 2-13)。そし て、「一つの業態②’は、自国の流通チャネルとの関係において、実現される供給システム

①’や進出国の社会的・文化的・経済的条件から影響が及ぶ消費者の嗜好(消費者特性)

③’との相互関係において存在し、優位性を提示している。したがって、小売企業が海外