• 検索結果がありません。

4. ヨーロッパの小売業

4.3. フランスの流通業

4.3.1. 小売競争構造

1966 年のフランスでは、食料品・酒類小売業の商店数の比率がアメリカに比べて、また 他のヨーロッパ諸国に比べて大きかった(図表 4-19)。その理由は、専門小売業の店舗数 の割合が多いことに起因していた。中でも「食肉小売業」や「菓子・パン小売業」の割合 が大きく、スーパーマーケット等が属する「各種食料品小売業」の占める割合が小くなっ ていた。このことは、歴史的に見てスーパー等大規模小売店の発展が遅かったことや食生 活の面で生鮮食品に依存する割合が高いことから、生鮮食品店を中心とする中小の食品店 が多数温存されてきたことが背景にあると考えられる143

このような状況は 10 年後の 1977 年にも同様に当てはまる。ただしこのときには、食料 品・酒類小売業、特に各種食料品小売業および食肉小売業の商店数の減少が顕著であった。

しかしながら年間販売額で見てみると、食料品・酒類小売業で 3.2 倍、各種食料品小売業 で 4.4 倍、食肉小売業で 2.3 倍に増えており、商店の淘汰と規模の拡大が進行したと推測 される。特に各種食料品小売業では規模の拡大が顕著であり、店舗当たり販売額を見てみ ると、1966 年時点の各種食料品小売業の数値は、他の小売業に比べて大きくなく、規模の 拡大が他業種に比べて進んではいない。しかしこの数値は 10 年後には 12 倍に拡大144してお り、この時期に大型総合食品店(スーパーマーケット、ハイパーマーケット)の成長があ ったことが見て取れる。主として小規模な食肉小売業および各種食料品小売業に替わる存 在として、大型総合食品店が台頭してきたといえる。

118 図表 4-19 流通の国際比較

国別小売業の商店数

合計 1,304,227 100.0% 500,531 100.0% 595,075 100.0% 450,947 100.0% 1,375,394 100.0%

食料品・酒類小売業 333,962 25.6% 227,7 44 4 5.5% 323,144 54.3% 193,00 2 42 .8 % 7 04,341 51.2%

各種食料品小売業 218,130 16.7% 123,385 24.7% 127,689 21.5% 140,704 31.2% 60,991 4.4%

専門小売業 115,832 8.9% 104,359 20.8% 195,455 32.8% 52,298 11.6% 643,350 46.8%

  食肉小売業 17,943 1.4% 38,351 7.7% 62,664 10.5% 2,970 0.7% 31,100 2.3%

  野菜および果実小売業 8,890 0.7% 27,172 5.4% 3,840 0.6% 12,966 2.9% 59,909 4.4%

  鮮魚小売業 5,466 1.1% 5,554 0.9% 2,688 0.6% 55,025 4.0%

  菓子・パン小売業 33,579 2.6% 18,099 3.6% 56,999 9.6% 7,002 1.6% 212,543 15.5%

  牛乳・乳製品小売業 4,456 0.9% 5,352 0.9% 9,552 2.1% 15,360 1.1%

  酒類小売業 39,719 3.0% 10,815 2.2% 5,543 0.9% 13,952 3.1% 101,560 7.4%

  その他の食料品小売業 15,701 1.2% 55,503 9.3% 3,168 0.7% 167,853 12.2%

非食品小売業 970,265 74.4% 272,7 87 5 4.5% 271,931 45.7% 257,94 5 57 .2 % 6 71,053 48.8%

百貨店、バラエティ・ストア 67,307 5.2% 3,009 0.6% 6,415 1.1% 3,072 0.7% 3,445 0.3%

合計 1,454,184 100.0% 385,618 100.0% 380,116 100.0% 412,714 100.0% 1,591,488 100.0%

食料品・酒類小売業 296,325 20.4% 142,2 63 3 6.9% 140,296 36.9% 128,47 1 31 .1 % 7 21,068 45.3%

各種食料品小売業 178,835 12.3% 70,373 18.2% 45,245 11.9% 82,771 20.1% 88,907 5.6%

専門小売業 117,490 8.1% 71,890 18.6% 95,051 25.0% 45,700 11.1% 632,161 39.7%

  食肉小売業 16,852 1.2% 22,289 5.8% 54,917 14.4% 7,137 1.7% 42,724 2.7%

  野菜および果実小売業 7,853 0.5% 15,246 4.0% 14,761 3.9% 8,465 2.1% 65,679 4.1%

  鮮魚小売業 3,286 0.9% 7,878 2.1% 2,143 0.5% 56,902 3.6%

  菓子・パン小売業 28,879 2.0% 13,893 3.6% 8,181 2.0% 183,696 11.5%

  牛乳・乳製品小売業 7,331 1.9% 5,353 1.4% 20,726 1.3%

  酒類小売業 44,354 3.1% 9,845 2.6% 4,152 1.1% 13,586 3.3% 105,952 6.7%

  その他の食料品小売業 19,552 1.3% 7,990 2.1% 6,188 1.5% 156,482 9.8%

非食品小売業 1,157,859 79.6% 243,3 55 6 3.1% 239,820 63.1% 284,24 3 68 .9 % 8 70,420 54.7%

百貨店、バラエティ・ストア 48,911 3.4% 19,163 5.0% 1,198 0.3% 7,574 1.8% 3,527 0.2%

日本(1966年)※5

アメリカ(1977年)※1 イギリス(1976年)※2フランス(1977年)※3西ドイツ(1979年)※4 日本(1976年)※5 アメリカ(1967年)※1 イギリス(1966年)※2フランス(1966年)※3西ドイツ(1968年)※4

※1 鮮魚は食肉に含まれる。 出典:Bureau of theCensus, U. S. Department of Commerce,

"Census of Retail Trade."

※2 出典:Business Statistics Office, Department of Industry, "Report on the Census of Distribution and Other Service."

※3 出典:INSEE, "Recensement de la Distribution Année 1966."

※4 出典:Statistisches Bundesamt, "Handels-und Gaststättenzählung."

※5 沖縄を除く。出典:「商業統計表」昭和 41 年版。

119 国別小売業の年間販売額

273,916,755 100.0% 11,000,030 100.0% 169,334,679 100.0% 142,734,455 100.0% 10,683,623 100.0%

食料品・酒類小売業 7 6,9 14 ,31 6 2 8.1 % 4 ,98 8,9 69 45 .4% 64 ,87 1,3 49 38 .3% 45 ,10 0,0 74 31 .6% 4,2 09 ,15 0 3 9.4%

各種食料品小売業 65,073,736 23.8% 2,907,655 26.4% 32,359,465 19.1% 38,601,536 27.0% 576,099 5.4%

専門小売業 11,840,580 4.3% 2,081,314 18.9% 32,511,884 19.2% 6,498,538 4.6% 3,633,051 34.0%

  食肉小売業 1,831,087 0.7% 727,972 6.6% 16,405,248 9.7% 545,415 0.4% 263,961 2.5%

  野菜および果実小売業 448,124 0.2% 314,180 2.9% 494,889 0.3% 1,282,436 0.9% 345,794 3.2%

  鮮魚小売業 80,402 0.7% 879,332 0.5% 316,591 0.2% 253,449 2.4%

  菓子・パン小売業 1,881,245 0.7% 292,629 2.7% 7,094,863 4.2% 803,761 0.6% 515,688 4.8%

  牛乳・乳製品小売業 442,342 4.0% 1,313,187 0.8% 1,321,490 0.9% 104,016 1.0%

  酒類小売業 6,662,968 2.4% 223,789 2.0% 1,245,983 0.7% 1,579,249 1.1% 932,539 8.7%

  その他の食料品小売業 1,017,156 0.4% 0.0% 5,078,382 3.0% 649,596 0.5% 1,217,604 11.4%

非食品小売業 19 7,0 02 ,43 9 7 1.9 % 6 ,01 1,0 61 54 .6% 1 04 ,46 3,3 30 61 .7% 97 ,63 4,3 81 6 8 .4% 6,4 74 ,47 3 6 0.6%

百貨店、バラエティ・ストア 43,537,419 15.9% 1,066,529 9.7% 14,916,443 8.8% 19,297,625 13.5% 1,219,244 11.4%

合計 645,418,347 100.0% 32,344,000 100.0% 388,231,302 100.0% 366,326,227 100.0% 55,674,380 100.0%

食料品・酒類小売業 17 0,9 07 ,93 0 2 6.5 % 12 ,01 6,0 00 37 .2% 2 04 ,30 3,1 57 52 .6% 1 07 ,92 8 ,3 81 29 .5% 1 6,4 88 ,91 4 2 9.6%

各種食料品小売業 147,758,535 22.9% 7,700,000 23.8% 142,796,690 36.8% 93,686,500 25.6% 4,574,142 8.2%

専門小売業 23,149,395 3.6% 4,316,000 13.3% 61,506,467 15.8% 14,241,881 3.9% 11,914,772 21.4%

  食肉小売業 3,779,993 0.6% 1,370,000 4.2% 38,152,638 9.8% 3,778,500 1.0% 1,111,535 2.0%

  野菜および果実小売業 1,088,102 0.2% 569,000 1.8% 8,410,553 2.2% 1,813,789 0.5% 1,352,193 2.4%

  鮮魚小売業 121,000 0.4% 4,277,534 1.1% 546,220 0.1% 1,074,564 1.9%

  菓子・パン小売業 2,942,679 0.5% 455,000 1.4% 2,051,173 0.6% 1,713,061 3.1%

  牛乳・乳製品小売業 865,000 2.7% 4,305,572 1.1% 300,686 0.5%

  酒類小売業 12,967,473 2.0% 936,000 2.9% 3,613,557 0.9% 4,132,701 1.1% 2,936,190 5.3%

  その他の食料品小売業 2,371,148 0.4% 2,746,613 0.7% 1,919,498 0.5% 3,426,543 6.2%

非食品小売業 47 4,5 10 ,41 7 7 3.5 % 20 ,32 8,0 00 62 .8% 1 83 ,92 8,1 45 47 .4% 2 58 ,39 7,8 4 6 70 .5% 3 9,1 85 ,46 6 7 0.4%

百貨店、バラエティ・ストア 93,947,773 14.6% 7,485,000 23.1% 20,784,178 5.4% 48,107,731 13.1% 7,913,242 14.2%

アメリカ(1977年) イギリス(1976年) フランス(1977年) 西ドイツ(1979年) 日本(1976年)

西ドイツ(1968年) 日本(1966年)

合計

アメリカ(1967年) イギリス(1966年) フランス(1966年)

出典:田島・宮下(1985)、資料 2 より作成

1960 年代、70 年代の大規模小売企業の成長に伴い、特に食品市場における大型店舗(ス ーパーマーケット、ハイパーマーケット)への市場の集中化と、大規模小売チェーンによ る小売市場の寡占化が進んだ。小売技術の向上、出店の地域集中化、地区から地域、地域 から国への市場の拡大化などが、取扱高の増加をもたらし、規模の経済性を上昇させた。

このような市場の拡大は、新規出店によるオーガニック成長だけでなく M&A 成長によって も実現された。出店の集中化による規模の経済は物流の集約化によって生み出された。ま た逆に、拠点の合理化(小規模店舗の閉鎖と大規模店舗の出店)により 1 店舗当たりの販 売量や店舗面積が増えることで、単位当たりのオペレーションコストが下がるケースも見 られた。さらに多国籍化によっても規模の経済が得られた。また、ルクレール(Leclerc)、

アンテルマルシェ(InterMarché)などの巨大なフランチャイズチェーンの存在も、大規模 小売企業への集中化を進展させた要因の一つであった。前者は主として単独店のハイパー マーケットを、後者は主として単独店のスーパーマーケットを結集している。このような フランチャイズチェーンの発展により、個店でありながら、グループとしての規模の経済 性を享受したり最新のシステムやブランド力を活用したりすることで、淘汰されずに生き 残ることが可能となっている。

しかしながら各社の大規模化戦略は限られたパイの奪い合いを伴い、1986 年の主要スー パー50 社は 1996 年までには 21 社が消滅したし、1986 年に 30 社存在したハイパーマーケ ットは、1998 年にはわずか 10 社しか残っていなかった145

食品市場における大型店舗(スーパーマーケット+ハイパーマーケット)のシェアは 1999

120

年時点で 66.2%(図表 4-3)、また、食品市場における大規模小売チェーントップ 5 社のシ ェアは、1996 年時点で 50.6%の対称寡占状態であった(欧州平均 52.9%)146。同様の数字 は 2000 年には 83.0%にまで上昇し、カルフールグループが 30%シェアという支配的地位 を占めるようになった147

購買活動においてはさらに水平統合が進んでいる。フランス国内の食品市場の 90%強は、

1980 年代半ばに形成された 5 つの購買グループの購買センター(全国約 400 ヶ所)を通じ て流通・販売されている買手寡占市場であり、その数値はさらに上昇している(図表 4-20)。

規模的に最も大きいのがカルフールグループ傘下の購買グループで全体の 26.2%、次いで ルシエ(Lucie)グループが 23.8%を占める。オペラ(Opéra)グループが 15.7%、アンテ ルマルシェが 14.4%、オーシャン(Auchan)が 12.9%となっており、5 グループで 93%に 上る。中でもここ 10 年でシェアを伸ばしているのが、カルフール、アンテルマルシェ、オ ペラである。

図表 4-20 食品市場シェア(購買グループ別)

単位:%

グループ 2000 年 2012 年 増減 カルフール(ストック、コンチネント、チャンピオン、Ed) 25.4 26.2 103%

ルシエ(ルクレール、システムユー) 25.4 23.8 94%

ITM エンタープライズ(アンテルマルシェ) 13.8 14.4 104%

グループ・オーシャン(アタック) 13.1 12.9 98%

オペラ(ジェオント、カジノ、フランプリ、リーダープライス、コラ、マッチ、

モノプリ) 12.5 15.7 126%

合計 90.2 93 103%

出典:2000 年の数値は Colla(2003)、p.36(原出典:Secodip)、2012 年の数値は日本貿易 振興機構(2012)

流通チャネルにおける勢力の拡大だけでなく、消費者の支持という面でも小売業のプレ ゼンスは拡大した。INSEE の調査では、いつもの店舗で好みのブランドが手に入らないと き、56%の消費者が代替品を購入し、24%が次回店を訪れるまで待ち、20%のみがそのブ ランドを探すために他の店舗を訪問するという結果が得られたことから、食品市場におい て消費者は、ブランドよりも店舗に対する選好を強めているとしている 。