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4. ヨーロッパの小売業

4.1. 小売業態の発展プロセス

4.1.8. スーパーマーケット

スーパーマーケットはアメリカで 1930 年代に発展した、大量消費財流通の現代化を促し た業態である。消費財のマスプロダクション化に応えるかたちで、大量仕入れ、大量販売 という規模の経済性を実現した流通の技術革新である。ヨーロッパには 1950 年代に登場し、

他業態との競争に直面した 1970 年代~90 年代に掛けて成長が鈍化したが、多くの国で食品 流通を支配した。食品に関しては、イギリス、ドイツ、スペイン、イタリアといった西ヨ ーロッパの主要国のほとんどすべてにおいて、最大の市場シェアを保持している。ハイパ ーマーケットが優勢なフランスだけが例外となっている95

まず発生の地イギリスでは、1960 年までは成長軌道にあった(1966 年で 2500 店舗、1970 年で 4400 店舗が存在)が、1970 年代初頭以降、成長のスピードが弱まった。この時期に、

より大規模で、高品質・高価格の品ぞろえを持つスーパーストアが勢力を持ち始めたので ある。イギリスの企業は、規模の経済性の実現と諸機能の合理化を目指して、同業態の展 開に専念したため、80 年代に成長が加速した。1999 年の段階で、食品中心諸業態における スーパーマーケットのシェアは 38%であり、ハイパーマーケット、スーパーストアの 46%

の後塵を拝している96

その他の国でもスーパーマーケットは成熟段階にある。ドイツではハードディスカウン トストア、スペインではハイパーマーケットが、それぞれスーパーマーケットのシェアを 奪うかたちで成長した。他方イタリアでは、ハードディスカウントストアやハイパーマー ケットとの競争に直面したものの、他国とは異なり、スーパーマーケットが強さを維持し ている。小規模の店舗や企業がいまだ数多く存在しており、生協やボランタリーチェーン、

共同仕入れグループなどがリーダーシップを発揮しているなど、大規模なチェーンストア が優勢な他国に比べ、異なる状況を呈している。

フランスにスーパーマーケットが導入されたのは 1957 年である。個人商店の経営者であ ったアンリー・バルドウ(Henri Barudou)が 750 ㎡の店舗を始めたことに端を発する。こ の時代には、EEC の結成、植民地の独立・離反による都市化現象、政府の商業近代化政策な

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ど、それまで大勢であった中小零細小売業から新しい業態の導入を推進する環境要因の変 化があった97。これらの変化のもと、アメリカの生産性セミナーに参加した何百ものフラン ス人マネジャーが持ち帰ったセルフサービスとマーチャンダイジングの技術にもとづいて、

スーパーマーケットが形成されたのである98

目覚ましい発展が見られたのは 1968 年以降であり、1971 年のシェアは 4.5%(図表 4-2)、

その後緩やかに成長し、1982 年には 8.1%(同上)に達した。1980 年代から 90 年代までの 間、ハイパーマーケットと並行して成長し、このことがフランスの競争環境を激化させた。

2008 年にはスーパーマーケットの食品分野におけるシェアは 29.9%、ハイパーマーケット は 35.7%と、双方で 65.6%と圧倒的な地位に有している(図表 4-3)。しかしながら、1990 年代以降は、ハイパーマーケットへの業態変換、ハードディスカウントストアの急速な浸 透により、スーパーマーケットはその地歩を失い始めている99

フランスのスーパーマーケット、ハイパーマーケットは、いずれも独立の単体小売業か ら出発している。これらの成長を見て他の業態を持つ小売業が参入してきているため、経 営の主体は、①既存の独立単体店(ボランタリーチェーンおよび小売商業組合を含む)が 主体となっているもの、②既存のチェーン店が主体となっているもの、③消費組合が主体 となっているものに分類される100

ブリザード(1976)に倣い、スーパーマーケットの文化コアと環境コア変数を整理した ものが図表 4-9 である。スーパーマーケットは、都市化や商業近代化、マスプロダクショ ンによる生産性の向上、可処分所得の急増を背景に、セルフサービスの確立により大量消 費財流通の現代化を推進した業態である。非食品大型店の百貨店、非食品にも注力する中 型店のバラエティストア、小型店の一般食品店という競争構造の中の空白を埋めるかたち で、食品に強い中型店として発展した。その後発展するハイパーマーケットは、より安く、

より幅広い品ぞろえ、大型店というポジショニングとなる(図表 4-10)。

図表 4-9 スーパーマーケットのコア要素

文化コア 環境コア変数

外部 内部

立地

・郊外の居住地

・ショッピングセンターの核 テナント

・EEC の結成

・都市化

・自動車の普及

・商業近代化政策

製品

・食品、グロサリー、最寄品 が中心

・非食品の売上は 3 分の 1 未 満

・他業態(大型店やチェーン 店、消費組合)との競争

・非食品注力の百貨店、バラ エティストアの存在

・中小零細小売業の優勢(~

101 1950 年代)

価格

・中程度の価格帯 ・個人所得の増大、可処分所 得の急増

・低い粗利率

・低いオペレーションコスト

売上

・中規模 ・個人所得の増大、可処分所 得の急増

・大量仕入れ、大量販売

・中程度の坪効率

品ぞろえ

・中程度の品ぞろえ(約 3000

~5000 品目)

・各カテゴリーの品目数多数

・スクランブルド・マーチャ ンダイジング

・マスプロダクションによる 生産性の向上

広告・販促

サービス

・セルフサービス

・ワンストップショッピング

・幅広いサービス(ベーカリ ー、処方箋、生花など)

・現金持ち帰り主義

・自分で商品を選べるセルフ サービス方式への選好

・近代的技術・設備の採用

サプライチ ェーン

・大量仕入れ、大量販売

役割

・食品流通の主力

・大量消費財流通の現代化を 推進

・商業近代化政策

・大量仕入れ、大量販売

出典:筆者作成

102 図表 4-10 フランスにおける業態区分

百貨店(1~10万品 目)

バラエティストア

(5000~6000品目)

スーパーマーケット

(5000品目)

ハイパーマーケット(2万5000~5万品目)

その他の非食品非専

門店 スーパーレット(250~1000品目)

一般食品店 2500㎡

400㎡ 120㎡

(店舗の販売面積)

(食品の販売割合)

1/3 23 1

出典:白石・田中・栗田(2003)、29 ページ