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5. 小売システム国際移転の意思決定フレームワークとカルフール・ジャパンへ

5.8. 店舗オペレーション

5.8.1. 店舗主権のインストアマーチャンダイジング

バイヤーが販売計画に沿って商品を確保し商談を行うが、その後の発注、売場作り、プ ロモーションは店舗の権限となる。そのため商品部が出してきた商品構成(商品とその販 売比率)を、数字責任とともに変更することができた。なお先述のとおり、店長とシニア マネジャーの会議で、商品の販促が協議・決定されるので、店舗はその合意内容に沿って 行動する。

店長は、店舗のディビジョンマネジャーの意見を聞き、売上と利益に寄与する商品を取 り扱う。したがって、バイヤーは、商談した販売数量や販促を提案することはできるが、

店舗に強制することはできなかった。

なお進出当初は、店舗ごとに単独交渉、単独仕入を行っていた。店長がすべての商談を 行い、自店の売上、利益、販売価格を管理した。台湾でも最初は店舗仕入を行っていたが、

エリアが広がり、店舗が増えた結果、ある程度共通で販促や品ぞろえを行う必要性が出た 段階で、商品部が作られた。最初から商品部があった日本は異例であった。

店舗では陳列や売価も変更することができた。もともと、売価設定の変更は、システム 上の制約からも本部でしかできなかったが、それを店長が承認すれば変更できるように、

権限もシステムも変更した。その結果、例えば販促でたくさん余っている商品があると、

値段を変えて、エンドに積んで在庫を処分することができた。また「この商品があったら 他の商品を展開するのに邪魔だ」とか、「これを見切っても今の利益には大きな損益を与え ない」というような場合、店舗でその商品を見切り、新しい商品に変えて拡売することで、

売上や利益の向上を目指すことができた。商品が欠品して入ってこないときに、棚の中身 を入れ替えて調整し、対処するといったことも、店舗の裁量で行うことが許された。

レイアウト、POP、デコレーションなどインストアプロモーション(ISP)も、すべて一 国一城の主である店長の裁量で決定することができた。大々的な改装は社長の承認がいる ものの、通常のレイアウト変更であれば店長がいくらでも好きに変えることができた。ま た、ウォルマートに見られるような企業統一の販促物は存在せず、各店が自店の状況に合 った POP を作成した。また、デコレーションチームが各店舗に常駐しており、店ごとにア レンジした装飾を施した。

カルフールはビジュアルマーチャンダイジングを得意としており、大量販売のためのボ

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リューム陳列、特に通路マーチャンダイジングのノウハウに長けていた。それに倣い、メ イン通路とサブ通路に、通路陳列(島陳列)で大量に商品を並べ、デコレーションが施さ れた。この通路マーチャンダイジングのノウハウについては、カルフール・ジャパンの店 舗を引き継いだイオンでも取り入れられたという。

なお、多箇所陳列については、基本的には行われなかった。というのも、ストラクチャ ー(5.7.6 参照)に多箇所陳列の発想自体がないためであり、顧客の混乱を防ぐだけでなく、

陳列する従業員の混乱をも防ぐというメリットがあった。従業員が混乱せずに陳列を行え るということは、オペレーションコストの低減につながることであり、カルフールにとっ て重要な要素であった。

しかしながら数年後には、日本の市場に合わせて、多箇所陳列で需要喚起が行われるよ うになり、レジ前陳列などから徐々に導入されていった。初期の段階では、フランス人の マネジメント層に理解してもらうために日本人スタッフは膨大な労力を要したという。大 手のネスレ、キャドバリー、ロッテの 3 社と交渉し、レジ前陳列を計画したり、他のスー パーの状況を見せたりすることで、トップと交渉し、少しずつレジ前の陳列を定着させた。

しかしながら結局は、陳列プロモーションの実施はフィーの徴収につながった。のみなら ず、店舗が工夫して高粗利商品を陳列し、利益に結びつけるという日本的な行動にまでつ なげることは難しかった。

5.8.2. セリングパワーの源 単品大量陳列

ゴンドラのエンド陳列は、消費者の目につきやすく、売場効率が高い場所であるため、

有効活用することが求められる。例えば、ゴンドラ内の商品や新商品、キャンペーン商品、

戦略商品などを陳列し、大量陳列、関連陳列、情報提供などを行い、当該エンドやゴンド ラの売上増進を図る。近年 GMS、スーパー、ホームセンターなどで大量陳列が目につくが、

商品の改廃やブランドが多く、消費者の要求が高い日本では、ニーズ喚起や関連購買を促 し、見て回る楽しさを演出するような提案型陳列は依然として有効である。そのため、エ ンドに特定のテーマあるいはカテゴリーを設定し、ニーズを喚起するような情報提供を行 い、POP やボードで飾りつけ、関連商品を陳列し、テーマやカテゴリー全体の拡販を図るこ とは、多くの小売企業にとって重要な手法となっている。

カルフール・ジャパンでは、ゴンドラのエンドだけでなくメインアレイ(正面入口)お よび定番売場でも、単品大量陳列によるプロモーションが実施された。多箇所での大量陳 列展開が、カルフールのセリングパワーの源の一つとなっているのだ。

まずエンド陳列は、1 ヶ月の販売期間を標準として実施された。1 エンド 1SKU のボリュ ーム陳列と天井から吊り下げた大きな POP により、高い視認性を発揮した。月間売上予算 は店舗の全体予算の 15%前後で、月間で約 7000 万円と売上金額が大きいために、リベート 契約にもとづくメーカーの協力体制のもとで実施された220。そのため消費者視点で陳列され るというよりも、メーカーにとって売りたいものを売りたい時期にリベートを取って大量

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に陳列してあげる、という性格を帯びていたという点は否めない。しかしながら消費者は 好意的に受け止めており、2003 年 2 月の日経流通新聞の調査では、「商品を高く積み上げる 陳列」について、43%が「楽しい」と答えている221

メインアレイ陳列は、金曜日から翌週日曜日までの 10 日間の販売期間を標準として実施 された。幅広い品ぞろえと圧倒的な安さを訴求するプロモーションであり、ボリューム陳 列で大きなインパクトを演出するものであった。これによりお客は、店舗に入った瞬間か ら買い物の楽しさ、ワクワク感を感じることができた。代表的な企画としては、ワインフ ェア、世界のお水フェア、バレンタイン・デーなどがあった。売上予算は店舗全体の 7%前 後で、10 日間で約 1000 万円の売上が見込めたため、取引先の協力も得やすかった222

最後の定番売場での単品大量陳列は、各売場責任者が日毎や週単位で売り込む商品を決 め、発注量の調整や原価交渉をバイヤーに依頼し、売場ごとに持っている売上予算を確実 に達成するために実施したプロモーションである。売上予算は店舗全体の 18%前後で、定 番品の販売と同じくらいの売上構成比を占めた。

エンドに単品を大量陳列すること、またメインアレイや定番棚にも単品のボリューム陳 列を行うことは、カルフールが日本に持ち込んだ革新的な手法であった。しかしながら、

過去の実績データや売場責任者の能力・経験の不足からプロモーション売場を維持するた めの発注精度を維持することが難しく、売れ筋商品の品切れや売れ行き不振商品の在庫過 多という問題も発生した223

5.8.3. 全自動発注システム

日々の発注は、自動発注システムにより行われていた。店舗ごとに発注タイミング(在 庫点数)が設定され、その点数まで商品が POS を通過すると、自動的に発注が掛かる。そ のため、他店・自店・全店の販売実績データ、季節指数、気温・天候、地域の行事などを 考慮する余地がなかった。自動発注をしたくない場合には、システムの設定を変更すれば 良いが、止め漏れを起こせば結局発注されてしまう。そのため店舗では、商品がもっとほ しい、フェース数をもっと広げたいと思っていても、本部設定数が少ないため、いつも品 切れや欠品を起こしている商品がある一方で、売れ行きが悪く、見切って販売しているの に、本部設定数が多すぎる商品もあった。これを変更するためには、本部へ申請する必要 があり、機動的な対応を行うことが難しかった。また賞味期限切れなどで商品を廃棄する 場合には、POS を通らないため、在庫を処分したという処理をシステムに対して行う必要が あった。これは、システムが発注量を推奨し、各種データや状況を勘案して最終的に発注 者が数量を決定するという、半自動のシステムに慣れている日本人にとっては、逆に煩雑 に感じられた。

5.8.4. 上意下達型の店舗オペレーション

もともとカルフールの店舗スタッフの労務管理手法は、さほど高スペックではない人材